離婚を考えていても、「まだやり直せるのではないか」と気持ちが揺れている方も少なくありません。とくに感情が混乱しているときには、自分だけで結論を出すのが難しいこともあります。

そうした場面で利用されることがあるのが“離婚カウンセラー”です。この記事では、離婚カウンセラーに相談できることや費用相場、弁護士との違いについて解説します。

離婚カウンセラーとは

離婚カウンセラーとは、離婚や夫婦関係に関する悩みを聞き、気持ちの整理や今後の考え方をサポートする専門職です。

「離婚するかどうか迷っている」「夫婦関係を修復できるか考えたい」といった段階で利用されることが多く、当事者の心情に寄り添いながら、感情のコントロールや選択肢の整理を手助けします。

離婚カウンセラーは、医師や弁護士のような国家資格ではなく、民間団体が認定している資格です。たとえば、一般財団法人日本能力開発推進協会(JADP)が認定する“夫婦カウンセラー”や“離婚カウンセラー”などが知られています。

離婚の判断を急がず、まず話を聞いてもらいたいというときに選択肢のひとつとして考えられる存在ですが、資格がなくてもカウンセラーを名乗ることは可能なため、相談先を選ぶ際には実績や対応内容をよく確認することが大切です。

離婚カウンセラーに向いている相談

離婚カウンセラーは、法的な助言を行う立場ではありませんが、夫婦関係に悩む方の気持ちを整理したり、状況を客観的に見つめ直すためのサポートを行っています。

とくに、以下のようなケースではカウンセラーへの相談が選択肢のひとつとなることがあります。

離婚するかどうか迷っている

離婚を考えていても、「本当にこのまま別れるべきか」「後悔しないか」と迷い続けてしまうことは珍しくありません。家族や友人に相談しづらい場合、第三者であるカウンセラーに話すことで、自分の気持ちや考えを整理しやすくなります。

カウンセラーは意見を押しつけることなく、相談者の考えを尊重しながら、判断に必要な視点を与えてくれます。

感情が整理できず、一人で決められない

怒りや悲しみが強く、冷静に判断できない状態では、離婚すべきかどうかを決めるのも難しくなりますが、感情の整理がつかないまま話を進めると後悔が残ることもあります。

離婚カウンセラーは、まず気持ちを落ち着けるところからサポートしてくれるため、自分の状況を客観的に見つめ直すきっかけになります。

離婚の危機を回避したい

「できれば離婚したくない」「関係を修復したい」と思っている方にとっても、離婚カウンセラーは頼れる存在になり得ます。

夫婦で一緒に相談を受けることで、お互いの考え方をすり合わせる機会になったり、問題の本質に気づけたりすることもあります。関係の修復に向けて行動したいと考えている場合にも、有効な手段のひとつです。

離婚カウンセラーの費用相場

離婚カウンセラーへの相談は、一般的に保険適用外の自由診療扱いとなるため、費用は相談先によって大きく異なります。料金体系は時間単位の面談料が中心で、対面・電話・オンラインなど相談方法によっても変わる傾向があります。

下記は、よくあるカウンセリングの料金相場です。

相談形式 時間目安 費用相場(税込)
対面カウンセリング 60分 5,000円〜10,000円前後
電話・オンライン 60分 3,000円〜8,000円前後
メール相談 1往復 1,000円〜3,000円程度

カウンセラーによっては、初回無料やセット割引、回数券制度などを設けている場合もあります。相談前に必ず料金体系とキャンセルポリシーを確認することが大切です。

離婚カウンセラーと弁護士に相談できることの違い

離婚の悩みを誰に相談すべきか迷ったときは、どんな内容を相談したいのかによって、適切な相談先が変わります。

離婚カウンセラーと弁護士では、対応できる範囲が異なるため、目的に応じて使い分けることが重要です。

カウンセラー:気持ちや関係性のサポート

離婚カウンセラーは、夫婦の関係に悩む方の気持ちを整理したり、感情的な混乱を落ち着けたりする役割を担います。「離婚すべきかどうか迷っている」「夫婦関係を改善したい」「感情的に整理がつかず一人では決められない」といったケースに向いています。

中立的な立場から傾聴し、必要に応じてアドバイスを行いますが、法的な判断や交渉は行いません。そのため、慰謝料や財産分与などの具体的な話には対応できない点に注意しましょう。

弁護士:慰謝料・親権・財産分与などの法的交渉

弁護士は、離婚にまつわる法律問題に対応する専門家です。離婚を決断したあとの手続きや、慰謝料・養育費・財産分与・親権などに関する交渉、調停や裁判の代理など、法的に複雑な内容も含めて対応可能です。

すでに離婚の意思が固まっている場合や、相手との交渉が難航している場合には、弁護士に相談する方が適しています。加えて、証拠の収集や書面作成などの専門的な支援を受けることで、離婚手続きがスムーズに進むケースも少なくありません。

離婚カウンセラーに相談するするメリット

離婚を検討するとき、身近な人に相談しづらいという方も少なくありません。そんなとき、第三者である離婚カウンセラーに相談することで、冷静に現状を整理しやすくなります。

中立的な立場でアドバイスをもらえる

離婚カウンセラーは、夫婦のどちらか一方に肩入れすることなく、中立的な視点で相談に応じてくれます。家族や友人に相談すると、どうしても主観が入ってしまいがちですが、カウンセラーは個人的な感情や先入観にとらわれずに対応してくれます。

「自分の気持ちは間違っていないか」「本当に離婚すべきかどうか」など、誰にも打ち明けられなかった不安や迷いについても、冷静に整理する手助けになります。

相手との関係性やコミュニケーションの問題についても、感情論ではなく客観的な視点で改善の糸口を一緒に探ってもらえる点も大きなメリットです。

精神的に落ち着ける

離婚に直面すると、怒りや悲しみ、不安、孤独感など、さまざまな感情が押し寄せてくることがあります。そのようなとき、離婚カウンセラーは感情の整理をサポートする心の専門家として寄り添ってくれます。

一人で抱え込んでしまうと、思考が偏ったり、正しい判断ができなくなったりすることもありますが、誰かに話すことで気持ちが軽くなり、落ち着いて現状を見つめ直すことができます。

自分の気持ちに向き合いながら、今後どうすべきかを考えるための心のスペースが生まれることは、大きな意義があると言えるでしょう。

離婚手続きに向けた見通しを立てられる

離婚するかどうか迷っている段階でも、離婚後の生活や必要な準備について話し合っておくことは大切です。

たとえば「子どもの生活環境がどう変わるのか」「経済的にやっていけるのか」といった不安を整理することで、漠然とした心配が少しずつ現実的な課題として見えてきます。

その結果、「どのタイミングで弁護士に相談すべきか」「どんな情報を集めておくべきか」など、次のステップが明確になりやすくなります。気持ちと向き合いながら、将来の方向性を考える手がかりが得られるのも、離婚カウンセラーに相談するメリットのひとつです。

離婚カウンセラーに相談するデメリット

離婚カウンセラーは心のサポートに特化した存在ですが、すべての悩みに対応できるわけではありません。利用を検討する際は、限界も理解しておくことが大切です。

相談費用がかかる

離婚カウンセリングは基本的に保険適用外で、1回あたり5,000円〜1万円程度の費用が発生します。継続して利用する場合は、数万円単位になることもあり、経済的な負担は無視できません。

とくに離婚後の生活に不安がある方にとっては、費用面がハードルになることもあります。

離婚カウンセリングでは対応が難しいケースもある

離婚カウンセラーは、あくまで心の整理や夫婦関係の改善を支援する立場であり、法律の専門家ではありません。

そのため慰謝料の請求や財産分与、親権・養育費などの法的な問題には対応できず、助言の範囲にも限界があります。

モラハラやDVといった深刻な問題がある場合は、カウンセリングだけでの解決は現実的ではなく、状況を悪化させるおそれもあります。こうしたケースでは、弁護士や公的機関など、より適切な専門窓口への相談が必要です。

離婚カウンセラーに相談する前の注意点

離婚カウンセリングは、1回あたりの相談時間が限られており、時間単位で費用も発生します。効率よく相談を進めるには、「何に悩んでいるか」「どうしたいのか」など、自分の考えを整理しておくことが大切です。簡単にメモにまとめておくだけでも、会話がスムーズになり、必要なアドバイスをしっかり受け取れます。

そして、カウンセリングの内容によっては、夫婦や家族双方が参加する“ペアカウンセリング”や“家族面談”を勧められることがあります。しかし、相手が同意しない限り実現は難しく、相談の方向性が変わることもあります。

こうしたケースもあるため、自分ひとりでできる範囲と、周囲の協力が必要な範囲をあらかじめ理解しておくと安心です。

離婚カウンセラー以外の相談窓口

離婚を考えたとき、必ずしも離婚カウンセラーだけが相談先とは限りません。問題の内容や自分の状態によって、適した専門家や機関は異なります。ここでは、相談先ごとの役割や特徴について紹介します。

弁護士|離婚問題全般・夫婦関係の修復

慰謝料や財産分与、親権など、離婚に関する法律問題を相談するなら、弁護士が適任です法的な交渉や手続きを見据えたアドバイスを受けられるため、「離婚するか迷っている」という段階でも、一度話を聞いておく価値があります。

そして、離婚前提ではなく、夫婦関係を修復したいという希望がある場合でも、法的な枠組みや可能性を踏まえた対応策を相談できることがあります。将来に向けて冷静な判断材料を得たいときに有効な相談先です。

【参考:離婚事件で争点になりやすいポイントと弁護士を立てるメリット

病院|離婚のストレスに伴う心身の不調

離婚に向けたストレスや不安が強くなると、心身に不調をきたすことがあります。たとえば、不眠や食欲不振、動悸、強い不安感などが続く場合は、心療内科や精神科を受診するのも選択肢です。

心のバランスを崩した状態では、冷静な判断が難しくなることもあるため、早めの対処が大切です。一時的な薬の処方やカウンセリングを通じて、気持ちを整えるサポートを受けることができます。

公的機関|各支援制度の活用や相談

生活面の不安が大きい場合には、各自治体の公的機関でも離婚に関する相談を受け付けています。たとえば、東京都のひとり親家庭等支援ナビでは、離婚後の生活に役立つ制度や支援情報をまとめて確認できます。

住宅や就労、子育てに関する支援を受けられる場合もあり、離婚後の見通しを立てるうえで非常に有益です。費用がかからず、専門の相談員が対応してくれる点も安心です。

まとめ

離婚は、法律的な問題であると同時に、大きな精神的負担を伴う人生の転機でもあります。そのため、気持ちが混乱しているときや、一人で決断しきれないときに、離婚カウンセラーのような第三者に相談することで自分の考えを整理しやすくなります。

カウンセラーは中立的な立場から話を聞き、感情面のケアや、関係性の改善に向けたアドバイスをしてくれる存在です。離婚を回避したいという思いがある場合にも、有効なサポートが期待できるでしょう。

ただし、慰謝料や財産分与、親権などの具体的な法的問題については、弁護士でなければ対応できません。状況に応じて適切な専門家を選ぶことが大切です。

無理に一人で抱え込まず、自分にとって納得できる形を見つけるために、必要に応じてカウンセラーや弁護士の力を借りながら、慎重に進めていきましょう。