夫婦の関係が破綻し、離婚を視野に入れた話し合いを進める際には、冷静な対話が困難になる場面も少なくありません。

こうした場合に、弁護士が同席した方が、冷静かつ有利に交渉を進めることができます。

本記事では、離婚の話し合いに弁護士が同席する際の費用相場を中心に、費用の内訳や同席のメリットなどを解説します。

弁護士が協議離婚の話し合いに同席する場合の費用

協議離婚に向けた話し合いに弁護士を同席させると、主に以下のような費用が発生します。依頼前に費用の目安を把握しておくことで、想定外の出費を防ぐことができます。

項目 内容 相場・金額目安 備考
法律
相談料
初回相談や事前ヒアリング費用 30分あたり5,500円程度 初回無料の事務所も多い
着手金 弁護士に依頼した時点で発生する初期費用 20〜40万円程度 交渉成立に関係なく発生。協議・調停・訴訟と進むごとに追加発生するケースあり
成功報酬 離婚成立や経済的利益(財産分与等)に応じた成果報酬 30万円〜50万円程度が基本報酬+獲得額の10〜20%程度 金額や割合は契約時に要確認
日当 同席や裁判所出廷、現地調査など拘束時に応じた費用 1日あたり3〜5万円 遠方の場合は別途、交通費・宿泊費が必要な場合あり
実費 裁判所への印紙代・戸籍取得・コピー代など 数千円〜1万円程度が目安 内容によって大きく変動することもあり

※報酬体系は事務所によって異なるため、契約前に詳細な説明を受けるようにしましょう。

このほか、弁護士が交渉をメインに対応する案件では、着手金や成功報酬ではなく、執務時間に応じて費用を計算する「タイムチャージ制(時間報酬制)」が採用されることもあります。

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離婚時に弁護士の同席が推奨されるケースとは

離婚に向けた話し合いでは、当事者だけで冷静に協議を進めることが難しい場面も少なくありません。

とくに一方が感情的になったり、法的な知識に差がある場合には、交渉が不利に傾くリスクもあります。

ここでは、弁護士の同席が有効とされる典型的なケースを整理し、それぞれの理由を解説します。

相手と直接話したくない場合

以下のような状況に該当する場合、自分自身が出席せず、弁護士のみを話し合いの場に出席させることも可能です。

  • DVやモラハラ被害を受けており、相手と接触することに恐怖や強いストレスを感じている
  • 相手が威圧的・高圧的で、対等な立場での冷静な協議が期待できない
  • 自分が感情的になってしまい、主張を整理して伝える自信がない

このようなケースでは、当事者の精神的安全を確保しつつ、法的に整った交渉を進めるためにも、弁護士の介入が重要です。

代理人として弁護士のみが出席することで、交渉の質と安全性の両立が可能となります。

離婚条件などで揉めている場合

相手との間で、財産分与や慰謝料、親権、養育費、面会交流などの条件に関して意見が対立している場合、弁護士の同席が大きな助けになります。

特に、相手にDVやモラハラ気質があるような場合、夫婦間だけの話し合いでは、対等な交渉が進められないことも少なくありません。

法的知識や交渉の経験がない場合、一方的に押し切られたり、自分に不利な内容で合意してしまったりするおそれもありますが、弁護士が同席することでこれらのリスクを回避できます。

離婚協議書や公正証書を作成する場合

離婚後の合意内容を明確にしておくことは、将来のトラブルを未然に防ぐうえで極めて重要です。特に以下のような義務履行が発生する場合には、文書の法的有効性が問題になります。

  • 養育費・慰謝料など金銭的な義務の履行を確実にしたい
  • 書面に抜け漏れがあることを避けたい

このような場合、弁護士に依頼することで法的に有効かつ執行力のある協議書や公正証書の作成が可能となります。

支払いが滞った際にも、強制執行の手続きを取れるか否かは文書の内容に左右されるため、専門家による確認は不可欠です。

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相手に弁護士がついている場合

離婚交渉の場において、相手方が弁護士を代理人として立てているにもかかわらず、自分には法的代理人がいない状態で臨むのは極めて不利です。

  • 自分の主張が十分に理解されず、軽視されるおそれがある
  • 条件交渉において、専門的知識の有無がそのまま交渉結果に反映される可能性がある

このような状況では、自分も弁護士を依頼して対等な立場で交渉に臨むことが重要です。

一方だけが法律の専門家を味方につけた状態では、公平な話し合いが成立しづらくなります。

弁護士の同席を拒否された場合の対処法

離婚に向けた話し合いにおいて、弁護士の同席を希望したところ相手から拒否されるというケースも少なくありません。

話し合いは原則として任意であるため、相手の同意がなければ進めることが難しくなることもあります。

ただし、弁護士を同席させてはいけないという権利が相手にあるわけではありません。ここでは、弁護士の同席を拒否された際にとるべき現実的な対処法について解説します。

交渉を一旦打ち切る

弁護士の同席を理由に話し合いを拒否された場合は、無理に交渉を続けるよりも、いったん中断したほうが得策です。たとえば、次のような状況では要注意です。

  • 相手が一方的に主導権を握ろうとしている
  • 不利な条件を押しつけられそうになっている
  • 弁護士がいないと自分の主張が通らない

話し合いが難航しているときは、家庭裁判所での離婚調停を利用し、、法律に基づいた手続きに切り替えることを検討すべきです。

調停であれば第三者(調停委員)が間に入り、冷静に話し合いを進めることができます。

弁護士を代理人にして直接話さない

弁護士は代理人として、依頼者の代わりに相手と直接交渉を行うことができます。

相手が弁護士とは話さないと主張しても、法的には代理人との交渉を一方的に拒否し続ける正当な理由にはなりません

むしろ、正当な理由なく代理人との協議を拒否し続けた場合、後の調停・裁判において話し合いに誠実に応じていないと評価され、不利に扱われる可能性もあります。

代理人による交渉は法的に認められた正当な手続きですので、必要に応じて弁護士を前面に立たせ、相手との直接の接触を避けることが可能です。

家庭裁判所の調停に進む

相手の同意がなければ交渉が進まない場合には、家庭裁判所への離婚調停の申立てを検討するのが有効な手段です。

調停は裁判所を通じた法的な手続きであり、弁護士が同席することを相手は拒否できません。さらに、調停委員が間に入ることで、当事者間の感情的な対立もやわらぎ、冷静な議論が可能になります。

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弁護士がいるメリットを伝えるのも一つの選択肢

相手が弁護士の同席を拒否するのは、不利な条件を押しつけられるのではといった不安や警戒心から来ている場合があります。

そうしたときは、弁護士をつけた理由を丁寧に説明することで、話し合いに応じてもらえる可能性があります。

たとえば、以下のような目的を伝えることで、一方的に主張するためではないと理解してもらえることもあります。

  • 感情的にならず、冷静に話を進めたい
  • お金や子どものことなど、大事な取り決めを正確に整理したい

弁護士の関与を、対立の手段ではなく話し合いをスムーズに進めるための補助として伝えることが大切です。それによって相手の態度がやわらぎ、交渉が再開できるケースもあります。

弁護士以外で話し合いに同席できる第三者は?

離婚に向けた話し合いを落ち着いて進めるために、弁護士以外の第三者を同席させたいと考えるケースもあります。

代表的な4つの立場について、できること、できないことを以下に整理します。

第三者の種類 できること できないこと 備考
家族・友人 精神的な支えになる感情の整理を助ける 法的助言・交渉の代行 感情的対立のリスクがある
行政書士 協議内容の文書化・形式整備 法的助言、交渉や代理行為 書面作成のみで交渉や裁判の代理人にはなれない
調停委員 家庭裁判所での調停をサポート 私的な話し合いに同席 調停でのみ関与
夫婦
カウンセラー
感情整理・進行支援 法的判断や交渉 話し合いの雰囲気を和らげるには有効ですが、法的な内容には非対応

それぞれの第三者には、関わる場面や役割に違いがあります。

法律的な取り決めが関わる場面では弁護士の関与が必要ですが、感情面のサポートや対話の進行といった点では、他の立場の第三者が力を発揮することもあります。

状況に応じて、適したかたちを選ぶことが大切です。

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離婚の話し合いで利用できる第三者機関

離婚の話し合いを当事者だけで進めることが難しい場合、第三者機関を利用するという選択肢があります。

調停やADRといった制度的手段のほか、支援団体なども状況に応じたサポートを提供しています。

ただし、それぞれの機関には法的な限界や役割の違いがあるため、目的に応じて適切な機関を選ぶことが重要です。

家庭裁判所(調停)

家庭裁判所の調停手続は、法的に認められた公的な紛争解決手段です。調停では、裁判官と調停委員(通常、男女各1名)が中立的な立場から双方の意見を聴き、合意形成を目指します

親権、養育費、財産分与、年金分割なども含めて幅広い事項について話し合うことができ、合意に至れば法的拘束力のある調停調書が作成されます。

一方、合意に至らなければ調停不成立となり、訴訟に移行することになります。調停はあくまで話し合いの手続であるため、強制力のある決定が下されるわけではありません。

民間調停・ADR

民間の離婚ADR(裁判外紛争解決手続)は、法務省の認証を受けた団体が提供する話し合いの場です。

家庭裁判所の調停と比べ、平日夜間や土日にも対応している点や、対面だけでなくオンラインでの実施が可能である点が特徴です。

多くのADR機関では、第三者調停人が間に入り、柔軟かつ迅速な解決を目指します。

平均して1件あたり数カ月程度での解決も可能とされており、早期解決を希望する当事者にとって有用な手段です

ただし、調停成立後の合意書には調停調書のような法的拘束力はなく、支払いが履行されない場合は別途訴訟手続が必要になる可能性があります。

民間の離婚支援団体

NPO法人や一般社団法人などが運営する離婚支援団体では、離婚そのものの手続きというよりも、離婚を検討する段階や離婚後の生活を見据えた心理的支援・情報提供を行っています。

たとえば、面会交流支援や元家庭裁判所調停官による相談支援を行っている団体も存在し、法的ではなく感情面や子どもとの関係維持の観点からサポートを受けることができます。

ただし、これらの団体はあくまで支援を目的とする機関であり、法的な代理権や法律行為はできません。協議書の作成、条件交渉といった場面では、弁護士の関与が不可欠です。

弁護士の話し合い同席費用に関するよくある質問

モラハラを受けている場合は話し合いに第三者を同席させるべき?

モラルハラスメント(モラハラ)を受けている場合、話し合いの場に第三者を同席させることは、精神的安全の確保および交渉の公平性を保つうえで大切です。

相手が一方的な主張を繰り返す傾向がある場合、当事者だけで冷静な協議を行うのは困難です。

こうしたケースでは、弁護士を代理人として立てるか、少なくとも同席させることにより、無理な合意を回避しやすくなります。

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離婚協議にかかる弁護士費用の相場は?

離婚協議にかかる弁護士費用の相場は、50万円〜90万円程度が一般的です。

この金額には通常、着手金および成功報酬が含まれており、具体的な請求額や調整事項の有無に応じて変動します。

たとえば、慰謝料や財産分与、親権・養育費といった争点が含まれる場合には、得られた成果に応じて追加報酬が発生することがあります。事前に報酬体系を確認し、見積書の提示を求めることが望まれます。

離婚の話し合いに弁護士を同席させるデメリットは?

弁護士の同席には多くのメリットがありますが、以下のような点はデメリットとして認識しておく必要があります。

  • 費用負担が発生する点:着手金・成功報酬・日当・交通費など、複数の費用が重なるため、経済的負担が一定程度生じます。
  • 相手に警戒される可能性:弁護士が同席することで、相手が対立姿勢と受け取り、協議を拒否するケースもあります。

ただし、これらのデメリットは、費用対効果や交渉の安全性とのバランスで考えるべき問題です。

冷静な話し合いが難しい状況では、弁護士の関与が交渉の安定化につながることが多く、結果的に長期的な負担軽減にもなり得ます

まとめ

弁護士に話し合いの同席を依頼した場合の費用の相場は、協議離婚でおおよそ50万円~90万円です。ただし、各法律事務所の料金体系や依頼する内容によっても異なります。

協議離婚で弁護士に同席してもらうことで、冷静かつ有利に交渉を進めてもらうことができます。特に、相手にDVやモラハラ気質がある場合は、弁護士を同席して話し合いを行うのが安心です。

一方で、弁護士費用の負担が難しい場合は、離婚調停を行うことで、調停委員を介して話し合いを行うことが可能です。

離婚の状況、離婚事由や慰謝料の有無、離婚条件の内容などによっても交渉の難易度は異なるため、事前に弁護士に相談して進めるのが得策です。