離婚理由として最も多く挙げられるのが、性格の不一致です。

しかし、性格が合わないとは具体的にどういうことなのか、漠然としていてわかりづらいと感じる人も多いはずです。

実際には、価値観や生活習慣の違い、会話が噛み合わないストレスなど、日常の中で少しずつ積み重なっていく違和感が、夫婦関係の破綻につながることも少なくありません。

ここでは、性格の不一致の具体例や、離婚できるケース・できないケース、後悔するパターンなどを解説します。

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離婚理由の性格の不一致の具体例

夫婦の性格の不一致には様々なケースがあります。ここでは性格の不一致の具体例を紹介します。

価値観の違い

人生やお金に対する価値観が違うと、夫婦関係に大きな影響を与えます、

  • お金は使いたい 対 貯金をしたい
  • 教育にかけるお金や方針の違い
  • 家や車など大きな買い物への温度差
  • 働き方・キャリア形成に対する考え方の違い
  • 実家との付き合い方(冠婚葬祭・仕送り)に対する温度差 など

性格そのものの不一致

相手の性格や気質に対してどうしても受け入れられない点があると、日々のストレスが蓄積します。

  • 極端に神経質 or だらしない
  • 嘘をつく
  • プライドが高すぎる
  • 家族より自分を優先する
  • 感情を態度に出す
  • 常識や責任感がない など

生活習慣の違い

一緒に暮らして初めて気づく生活習慣の違いが、積み重なって離婚のきっかけになることがあります。

  • 朝型と夜型で生活リズムが合わない
  • 家事の分担意識がまったく違う
  • 食事の好み・タイミングが合わない
  • 仕事優先で家族を顧みない
  • 金銭感覚や衛生感覚の違いに耐えられない

精神的な距離感

心の距離が埋まらない、または冷めきってしまったと感じると、夫婦関係の継続が難しくなります。

  • 相談しても共感や関心を示してくれない
  • 気持ちを伝えても軽く受け流される
  • 日常会話が楽しくない
  • 感謝や労いの言葉が一切ない
  • 他人と比べられて劣等感を抱くようになった

夫婦のコミュニケーションの問題

たとえば話し合いが必要な場面や、喧嘩中などに、建設的な会話ができない関係は大きなストレス要因です。

  • 話しかけてもスマホばかり見て会話が成立しない
  • すぐに大声を出して怒鳴る、冷たく黙り込む
  • 議論ができず、すべて「はいはい」と流される
  • 自分の意見を言うと否定され、話す気を失う
  • 話し合いを避けてすべてを後回しにされる

性格の不一致は離婚理由で一番多い

実は、性格の不一致は離婚理由としてもっとも多く挙げられている項目の一つです。

以下は、令和5年の司法統計年報(家事編)から、離婚調停の申立人が挙げた主な動機をまとめたものです。

【引用:令和5年 司法統計年報 家事編

この統計は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てた人が“離婚を考えた動機”として選択した項目を集計したものです。

夫・妻とも“性格が合わない(性格の不一致)”が動機として群を抜いて多く、他の理由を大きく上回っています。

このことからも、性格の不一致は離婚理由として非常に一般的であり、多くの夫婦が同じような悩みを抱えていることがわかります。

相手に非がなくても離婚はできるか?離婚を進めるポイントを解説」の記事も参考にしてください。

性格の不一致に隠された離婚の本当の理由

性格の不一致は、離婚理由としてもっとも多く挙げられますが、法律上の法定離婚事由には明記されていません。

つまり、法的には、決定的な理由がない離婚ともいえます。

もちろん、本当に性格や価値観が合わず、離婚に至るケースもあります。

しかし実際には、性格の不一致とされる離婚の裏には、以下のような深刻な事情が隠されていることも少なくありません。

  • パートナーからのモラハラ(精神的虐待)
  • DV(家庭内暴力)
  • 長期的なセックスレスによる関係の破綻
  • 義両親との不仲や介入
  • 宗教や思想、政治観などの根本的な価値観の対立

こうした問題があるにもかかわらず、表立って言いづらかったりなどの事情で、性格の不一致とまとめてしまうケースも多いです。

性格の不一致で離婚できるケース・できないケース

性格の不一致は、法的に離婚が認められる、法定離婚事由には該当しません。そのため、状況によっては離婚できないことがあります。

ここでは、性格の不一致で離婚できるケースと、できないケースを紹介します。

離婚できるケース

性格の不一致による離婚でも、協議離婚や調停離婚で夫婦双方が合意すれば、法的な問題はありません。

話し合いで離婚条件がまとまれば、「性格が合わないから離婚したい」の理由だけでも離婚は成立します。

裁判に発展せずに済むため、精神的・経済的負担も少ない点が特徴です。

離婚できないケース

一方で、相手が離婚に応じない場合や、夫婦関係が完全に破綻していると認められない場合には、裁判で離婚が認められない可能性があります。

裁判で離婚が認められるには、法定離婚事由(不貞・悪意の遺棄・DVなど)が必要です。

単に性格が合わないだけで、他の事情や証拠がなければ、離婚は認められにくい点に注意しましょう。

離婚が認められる条件は?必要な手続きや法定離婚事由について解説」の記事も参考にしてください。

性格の不一致での離婚の切り出し方

離婚の切り出し方によっては、真面目に受け取ってもらえなかったり、喧嘩に発展したりすることもあります。

相手が納得しやすく、話し合いがスムーズに進むための工夫を紹介します。

感情的にならない場面やタイミングを選ぶ

離婚を切り出す際は、相手が感情的になりにくいタイミングを選ぶことが重要です。

喧嘩の直後や仕事で疲れているときなどに話を始めると、冷静な話し合いができないおそれがあります。

休日の静かな時間帯や、子どもがいない落ち着いた場面など、お互いに集中して話せる環境を整えたうえで切り出しましょう。

夫婦喧嘩が原因で離婚はできる?離婚した方がいいケースや後悔しないための方法」の記事も参考にしてください。

相手のせいにしないように言葉を選ぶ

「あなたの〇〇が嫌だ」といった表現は、相手に責任を押しつけている印象を与え、反論や感情的な反応を招きがちです。

「努力するから離婚しないで」と引き止められたり、逆に喧嘩になる可能性もあります。

そうではなく、「一緒に過ごす中で、限界を迎えてしまった」などのように、自分の気持ちや限界に焦点を当てた伝え方を心がけると、話が伝わりやすくなります。

具体的に合わないポイントや問題点を挙げる

なんとなく合わない、では説得力に欠け、相手に納得してもらうことは難しいかもしれません。

下記のように問題点を具体的に挙げてみましょう。

  • 金銭感覚が違いすぎる
  • 育児や家事への価値観が合わない
  • 会話が少ないことで孤独を感じる など

具体的にすれ違っていたポイントを伝えることで、相手にも現実的に受け止めてもらいやすくなります。

ここでも、相手のせいにしないことが大切です。あくまでも、事実をもとに冷静に伝えるようにしましょう。

離婚後の生活の見通しが立っていることも伝える

離婚後の住まいや収入、子どもの親権や養育費など、現実的な生活設計を伝えることで、感情ではなく冷静に離婚を考えている姿勢が伝わります。

準備ができていることを示すことで、相手も本気で受け止めやすくなります。

性格の不一致で離婚するのはわがまま?

性格の不一致で離婚をするのは珍しいことではない

性格の不一致を理由に離婚することは決して特別ではありません。

実際、家庭裁判所に申し立てられる離婚調停の理由として、性格が合わないは最も多く挙げられています。

価値観や考え方の違いが積み重なれば、日常生活にも支障をきたし、夫婦関係の継続が難しくなることは十分にあります。

離婚を決めた理由ランキング|男女別の離婚原因トップ5」の記事も参考にしてください。

性格の不一致は我慢すれば乗り越えられるものでもない

「性格が合わないだけなら我慢すればいい」と考えるのは危険です。

我慢を続けることでストレスが積み重なり、心身に悪影響を及ぼすこともあります。

夫婦関係が苦痛になっているなら、無理をせず、離婚もひとつの選択肢として考えるべきです。

性格の不一致で離婚したい場合、子どもはどうなる?

性格の不一致で離婚を考えるとき、忘れてはならないのが子どものことです。

親権や養育費、面会のルールなども事前にしっかり決めておく必要があります。

親権は基本的に夫婦で話し合って決める

離婚後の親権者は、夫婦の話し合いで自由に決めることができます。

どちらか一方に親権が決まった後も、もう一方の親としての責任がなくなるわけではありません。

子どもにとって最もよい形を考えて合意することが大切です。

親権者とは|親権者になれる人や意味をわかりやすく解説」の記事も参考にしてください。

話し合いで決まらない場合は調停・裁判で決める

親権をめぐる話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に、親権者指定の調停を申し立てることになります。

調停は、家庭裁判所で行われます。調停委員を交えての話し合いの場で、冷静に意見を整理できるメリットがあります。

調停でも合意できなければ、家庭裁判所の審判(裁判)で親権者が決められます。

子どもの福祉や生活環境が重視され、養育実績や関係性、経済状況などが考慮されます。

収入の多さだけでなく、子どもにとってより良い環境を整えられるかどうかがポイントです。

養育費や面会交流も決める必要がある

親権だけでなく、養育費の金額や支払方法、別居親との面会交流の方法も決める必要があります。

口約束ではトラブルになりやすいため、できる限り書面にしておくことが望ましいです。子どもの将来のためにも、ルールは明確にしておきましょう。

養育費請求で争点になりそうなことは?【弁護士が解説】」の記事も参考にしてください。

性格の不一致で離婚すると後悔する?

後悔しやすいケース

感情的になって勢いで離婚を決めた場合や、経済的な準備が不十分なまま離婚した場合は、後悔につながりやすくなります。

育児と仕事の両立が想像以上に大変で、離婚後の生活に苦しむケースもあります。

離婚を考える際には、感情だけでなく現実的な視点も持つことが大切です。

後悔しにくいケース

長年にわたり夫婦間ですれ違いや不満が続いていた場合、離婚が精神的な解放につながることもあります。

経済的・生活的に自立できていれば、離婚後の生活も安定しやすく、自分らしく生きられるようになったと感じられることもあります。

しっかり準備して決断すれば、後悔は少ないでしょう。

離婚理由が性格の不一致の場合のよくある質問

性格の不一致なのに、なぜ結婚した?

結婚後に性格が変わってしまうこともあれば、交際中は気にならなかったことが結婚後に気になり始めるなど、様々なケースがあります。

最初は愛情や勢いで結婚しても、時間と共に性格の違いが耐えがたくなるケースは少なくありません。

性格の不一致で離婚したら子供が可哀想?

確かに子どもへの影響は気になりますが、一概にかわいそうとは言い切れません。

夫婦仲の悪い家庭で過ごし続けるよりも、離婚した方が子どもにとってよい場合もあります。

離婚後も両親が協力し合い、安定した環境を整えられれば理想的です。

性格の不一致の解決方法は?

まずは冷静な話し合いやカウンセリングを通じて、お互いの価値観をすり合わせる努力が大切です。

ただし、歩み寄りが難しい場合は、無理に関係を続けるよりも、離婚という選択肢も検討すべきでしょう。

まとめ

性格の不一致には価値観や習慣の違い、精神的な距離など様々な形があり、一概に語れるものではありません。

ただし、性格の不一致だけでは法的な離婚原因にはならず、相手の合意がなければ離婚できないケースもあります。

勢いや感情だけで離婚を決めると、経済面や子どものことで後悔する可能性もあります。

性格の不一致を解消できず、夫婦関係を継続するのが苦痛であるならば、無理に我慢をつづけるのではなく、離婚も選択肢の一つに入れてもいいでしょう。