離婚時に決めておくべきことの一つが財産分与です。

財産分与にあたって必要なのは、婚姻時に築いた財産の正確な把握です。そのために夫婦の共有財産を管理していた預金通帳の内容を知っておかなければならないケースもあるでしょう。

この記事では、離婚時の財産分与で通帳開示請求ができるかどうか、できる場合はその範囲と拒否された際の対応方法について解説します。

離婚時の財産分与で通帳開示請求はできるか?

離婚時の財産分与で、通帳開示請求はできます。

財産分与は基本的に夫婦の共有財産を2分の1ずつ分けるため、夫婦それぞれの預貯金がどのぐらいあるか知る必要があるからです。

もっとも、通帳開示請求という法律上の手続きがあるわけではありません。そのため、通帳の開示を求めたとしても、配偶者が開示してくれるとは限りません。

離婚時の財産分与で通帳開示を請求できる範囲

離婚時の財産分与で通帳開示を請求できるのは、共有財産に該当する部分です。

特有財産は、原則として財産分与の対象とならないため、婚姻前の貯蓄や親から相続したお金だけを預け入れている預貯金は、基本的に開示の対象となりません。

婚姻前から使用している口座を、婚姻後も引き続き使用し、夫婦が協力して得たお金を入金している場合、開示を求めるのは、婚姻時から別居時または離婚時までの期間となることが一般的です。

配偶者に通帳開示を拒否された場合の対応方法

配偶者に通帳開示を拒否された場合、対応すべき方法について解説します。

弁護士に財産分与ないし離婚手続きを依頼する

弁護士に財産分与ないし離婚手続きを依頼しましょう。

弁護士に依頼をすれば、財産分与を含めた離婚手続き全般を代理人として任せられます。

弁護士は、依頼を受けた案件を処理するにあたり、弁護士会を通じて公私の団体に対して照会が行えます。これを弁護士会照会といいます。

配偶者が通帳開示に応じてくれない場合に、配偶者が口座を所有している金融機関に対して預金残高や取引履歴の照会ができます。

ただし、金融機関は正当な理由があれば回答を拒否できるので、照会の必要性・相当性がないと判断されると、回答が得られないこともあります。

調停を申立てて調停委員を通して開示を請求する

家庭裁判所に離婚調停や財産分与調停を申立てて、調停委員を通して通帳の開示請求をする方法があります。

話し合いで決着がつかない場合は、次の段階として調停での合意を目指します。

調停を申立てると、調停委員が夫婦の間に入って話し合いを進めていきます。財産分与をするにあたり配偶者の通帳開示が必要だと調停委員に主張をして、代わりに通帳開示請求をしてもらいます。

配偶者も調停委員からの申し出であれば、無下に拒否はできないため、通帳開示をしてくれる可能性は高まります。

審判・裁判の中で調査嘱託を申立てる

財産分与審判や離婚裁判の中で、調査嘱託を申立てる方法があります。

調査嘱託とは、裁判所が公私の団体に対して必要な調査の嘱託を行って回答を求める手続きです。

弁護士照会で正確な回答を得られなくても、裁判所の調査嘱託であれば回答が得られる可能性があります。

ただし、調査嘱託を申立てる場合は、配偶者名義の口座の金融機関名と支店名等を明らかにする必要があります。

離婚時の財産分与における通帳開示に関するQA

離婚時の財産分与における通帳開示に関するよくある質問と回答を紹介します。

調停で通帳開示を拒否してもペナルティはないの?

調停で通帳開示を拒否してもペナルティはありません。

調停はあくまでも話し合いの場ですので、配偶者の申し入れに対して応えるのは任意だからです。

ただし、通帳開示に関して、調停委員から強く求められる可能性がある点は承知しておいたほうがよいでしょう。

解約済みで通帳を開示できないと言われたら諦めるしかないですか?

配偶者が解約した口座の基本情報(金融機関名・支店名)がわかれば、裁判所の調査嘱託制度を利用することで、金融機関に離婚時または別居時の残高を確認できる場合があります。

配偶者が管理する子ども名義の通帳も開示請求できますか?

財産分与をする際、子ども名義の預貯金も対象になるケースがあります。

その場合は通帳の開示請求ができます。

財産分与の対象となるものとならないものを以下の表にまとめましたので、参考にしてください。

財産分与の対象となるもの 財産分与の対象とならないもの
・夫婦が協力して貯蓄した預貯金

・国や自治体から支給された出産一時金

・児童手当

・親族からもらったお年玉や入学のお祝い金

・子どものアルバイト代

・成人している子どもの預貯金

なお、学資保険については、夫婦の共有財産から保険料を支払っていた場合に、財産分与の対象になります。

夫婦どちらかの親(子どもからみて祖父母)が支払っていたり、夫婦のどちらかが婚姻前の貯蓄で支払っていたりする場合は、財産分与の対象になりません。

まとめ

離婚時、財産分与に関して納得ができる話し合いをしておきましょう。

配偶者が財産を隠している可能性が考えられるなら預金通帳の開示を請求しましょう。配偶者が任意に開示してくれない場合は、財産分与ないし離婚の手続きを弁護士に依頼することも検討してみてください。

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