離婚の話し合いでは、意見が対立したり、そもそも何を決めればよいのかわからなかったりすることも多いです。

そんなときは、弁護士に相談することでスムーズな解決が期待できます。ただし、弁護士費用は決して安くなく、支払いに悩む人も少なくありません。

ここでは、弁護士費用の相場や支払えない場合の対処法、無料相談できる窓口について解説します。

離婚でかかる弁護士費用の相場

依頼内容ごとの弁護士費用の相場を紹介します。

依頼内容 弁護士費用の相場
離婚交渉のみ 30万円~
離婚調停 40万円~
離婚裁判 60万円~
慰謝料を請求 30万円~+得られた金額の10~20%
慰謝料の減額交渉 30万円~+減額できた金額の10~20%

依頼する事務所によって弁護士費用は異なりますので、上記は目安として考えてください。

実際の金額は、弁護士事務所に問い合わせてみることをおすすめします。

離婚・不倫慰謝料の弁護士費用」も参考にしてください。

離婚の弁護士費用が払えないときの対処法

弁護士に依頼したくても、決して安い金額ではないため、支払いが難しい人もいるでしょう。

弁護士費用が払えない場合の対処法としては、次の方法が考えられます。

法テラスの無料相談・立替制度を利用する

法テラスとは、国が設置した法律の総合相談窓口のことです。

法テラスでは、収入が一定以下の方を対象に無料で法律相談を実施しています。

条件を満たせば、弁護士費用を立て替えてもらい、分割払いで少しずつ返済する制度も利用可能です(民事法律扶助)。

返済は月5,000円から可能で、生活保護受給者などは返済が免除されることもあります。

関連:法テラス

分割払いに対応している事務所に依頼する

毎月安定した支払いができる人は、分割払いに対応している事務所に依頼しましょう。

着手金なし、分割払い対応の事務所であれば、契約時にまとまった資金を払う必要がありません。

事務所によって分割払いの条件が異なるため、支払回数や月々の負担額を事前に確認することが大切です。

慰謝料・財産分与で弁護士費用をまかなう

完全成功報酬制の事務所を選ぶのも一つの方法です。

この制度では、依頼者が得た慰謝料や財産分与から弁護士費用を支払うため、手元に資金がなくても弁護士に依頼できるというメリットがあります。

ただし、完全成功報酬制は報酬が割高になることもあるため、契約内容をしっかり確認し、納得した上で利用することが大切です。

法テラスで弁護士に離婚問題を依頼したときにかかる費用

上記で法テラスについて触れましたが、ここでは、法テラスで弁護士に依頼をしたときの費用を紹介します。

詳細は法テラスの公式サイトをご確認ください。

なお、法テラスの立替制度(民事法律扶助)は、誰でも利用できるわけではありません。法テラスが定めた収入・資産の要件を満たす人のみが利用できます。

離婚を求める場合

離婚のための交渉を法テラス経由で弁護士に依頼した場合の費用は以下の通りです。

着手金 実費 合計
①示談交渉 66,000~110,000円 20,000円 86,000~130,000円
②調停 88,000~132,000円 20,000円 108,000~152,000円
③裁判
(調停不成立からの裁判)
165,000円 35,000円 200,000円
④裁判 231,000円 35,000円 266,000円

【参考:無料法律相談・弁護士等費用の立替 – 法テラス

調停だけで問題が解決せず、裁判を行う場合、②と③の費用の両方がかかります。

婚姻費用を請求する場合

別居中の夫婦の場合、収入の多い方から少ない方に婚姻費用が支払われます。

子どもがいる場合には養育費も含まれますが、これらが支払われない場合には、婚姻費用分担請求を行います。

下記は、婚姻費用分担請求にかかる費用の表です。

事件名 着手金 実費 合計
調停 88,000~132,000円 20,000円 108,000~152,000円
審判 88,000~132,000円 20,000円 108,000~152,000円

【参考:無料法律相談・弁護士等費用の立替 – 法テラス

報酬金について

慰謝料や養育費など、金銭が得られた場合には、得られた金額の10%+税を報酬金として上乗せします。

養育費や婚姻費用など、継続的に発生するものについては、2年分が上限となります。

離婚のみ成立など、金銭の支払いが発生しなかった場合でも、下記の基準に基づいて、審査で報酬金の額を決定します。

離婚のみ成立し、慰謝料や養育費等の金銭の支払いがない場合 66,000~132,000円
慰謝料が100万円得られた場合 110,000円(1,000,000円×0.1+税)
養育費が月額5万円得られた場合 132,000円(50,000円×24×0.1+税)
婚姻費用が月額4万円得られた場合 105,600円(40,000円×24×0.1+税)

【引用:無料法律相談・弁護士等費用の立替 – 法テラス

離婚の弁護士費用を相手に請求できるケースの例

通常、弁護士費用は自己負担です。

ただし、離婚の原因が相手にある場合や、不誠実な対応によって裁判が必要になった場合には、相手に費用の一部を請求できることがあります。

ここでは、離婚の弁護士費用を相手に請求できるケースの例を紹介します。

相手の不倫で離婚する場合

配偶者の不倫(不貞行為)が原因で離婚に至った場合、不倫相手に対して慰謝料を請求できます。

この慰謝料の一部として、弁護士費用の負担を求めることも可能です。

裁判では、慰謝料の約10%程度が弁護士費用として認められることがあります。

例えば慰謝料300万円が認められた場合、弁護士費用30万円相当を上乗せして請求できるケースがあります。ただし、必ず認められるわけではありません。

不倫の慰謝料については「浮気による離婚慰謝料の請求ができる条件や金額の相場について解説」の記事も参考にしてください。

DVやモラハラが原因の場合

配偶者からのDVやモラハラが原因で離婚する場合も、慰謝料を請求できます。この際、慰謝料の一部として弁護士費用を含めることが可能です。

DVやモラハラの場合、相手と直接交渉するのは危険なため、弁護士を介した手続きを進めるのが一般的です。

裁判所がDVの被害を認定すれば、慰謝料に加えて弁護士費用の一部負担が認められる可能性が高くなります。

財産分与で不誠実な対応をされた場合

本来、財産分与は公平に行われるべきですが、相手が財産を隠したり、虚偽の申告をしたりする場合、弁護士を雇って調査や法的措置を取る必要が出てきます。

こうした相手の不誠実な対応が原因で裁判になった場合、弁護士費用を請求できる可能性があります。

例えば、相手が預金口座や不動産の存在を隠したことが原因で裁判で争ったとします。

そこで、裁判所が「相手に不正行為があった」と認定すれば、弁護士費用の一部を負担させることが可能です。

財産分与については「財産分与の割合はどのようにして決めるか?原則と例外を解説」の記事も参考にしてください。

婚姻費用の未払いで裁判になった場合

婚姻費用(別居中の生活費)を相手が支払わず、請求しても応じない場合、調停や裁判を起こして支払わせることができます。

この際、相手の支払い拒否が悪質であると認められれば、弁護士費用の一部を相手に請求できることがあります。

婚姻費用については「婚姻費用とは|別居中の生活費を分担する義務や養育費との違い」も参考にしてください、

離婚問題を弁護士に依頼しないデメリットやリスク

離婚の条件が不利になりやすい

弁護士をつけずに離婚協議をすると、知らずしらずのうちに損をする可能性が高くなります。

以下、弁護士なしで起こりやすい不利な条件の例です。

【財産分与で本来受け取れるはずの財産を逃す】

  • 相手が財産を隠していることに気づかず、そのまま離婚してしまう
  • 住宅や預金などの分与割合について適切な交渉ができず、相手の主張通りに決まる
  • 退職金や保険解約返戻金など、財産分与の対象となる資産を見落とす

【慰謝料を適正額より低く設定される】

  • 慰謝料の相場を知らず、相手に低い金額を提示されても受け入れてしまう
  • 証拠が不十分なため、慰謝料を請求できる案件なのに認められない
  • 裁判になった際、適切な法的主張ができず、慰謝料が減額される

【養育費を十分に受け取れない】

  • 養育費の計算方法を知らず、相場より低い金額で合意してしまう
  • 支払い期間が短縮されたり、減額される条項を入れられたりする
  • 口約束だけで決めてしまい、後で相手が支払わなくなっても請求できない

【年金分割の手続きを忘れる】

  • 年金分割の請求をしなかったため、もらえるはずの年金が少なくなる
  • 手続きを放置した結果、期限切れ(原則離婚後2年)で請求できなくなる

【婚姻費用(別居中の生活費)を請求できない】

  • 請求方法がわからずそのままにしてしまう
  • 調停を申し立てるべきケースでも、手続きが分からず請求しないまま時間が経過する

各種手続きがうまくできない・時間がかかる

離婚には協議離婚・調停離婚・裁判離婚といった手続きがあり、それぞれ適切な書類の作成や提出が求められます。

弁護士なしで進めると、必要な手続きが分からず、時間がかかってしまうことが多いです。

特に、調停や裁判では、提出する書類の不備や法的な主張の整理不足が原因で、手続きが長引いたり、不利な判断をされたりするリスクもあります。

適切な証拠を集められずに調停や裁判で不利になることもあるため、法律の専門家である弁護士のサポートがあると安心です。

DVやモラハラの恐怖で離婚交渉ができない

相手がDVやモラハラを行っている場合、弁護士なしでの交渉はリスクを伴います。

直接交渉すると、精神的・肉体的な負担を受けるだけでなく、相手の威圧や暴力により、冷静な判断ができなくなる可能性があります。

弁護士が代理人として交渉することで、相手と直接やり取りする必要がなくなり、安全かつ適切な離婚手続きを進められます。

離婚裁判で敗訴する可能性が高まる

離婚裁判では、適切な主張や証拠の提出が求められます。

弁護士なしで裁判を進めると、法的知識が不足しているため、主張の組み立てが不十分になり、不利な判決を受けるリスクが高まります。

例えば、相手のDVや不倫を証明できなかった場合、慰謝料が認められなかったり、離婚自体が成立しなかったりする可能性があります。

離婚裁判は弁護士なしでできるのか?本人で裁判手続きをする流れを解説」の記事も参考にしてください。

無料で離婚問題を相談できる窓口一覧

「金銭的には厳しい状況だが、弁護士に相談したい」という人に向けて、弁護士に無料で相談できる窓口を紹介します。

窓口 特徴 デメリット
法テラス 弁護士費用の立替制度がある 相談回数や時間に制限がある
市役所の市民相談窓口 提携した弁護士が対応 相談時間が短い
弁護士会の相談センター 各地域の弁護士会が運営 一部の地域では有料の場合もある
弁護士事務所 初回相談無料の事務所 初回のみ無料であることが多い

市役所や弁護士会の相談センターは、気軽に利用しやすいのが特徴です。そのかわり、一度の相談時間が短かったり、相談回数に限りがあることが多いです。

ですので、「少し話を聞いてみたい、方向性だけ知りたい」という人に向いています。

弁護士事務所の場合、初回30分無料などとしている事務所が多いですが、有料で延長を希望することもできます。

本格的な相談をしたい人や、長時間の相談が予想される人は、あらかじめ弁護士事務所に相談するのがおすすめです。

離婚の弁護士費用に関するよくある質問

養育費の請求で弁護士費用が払えないときの対処法は?

法テラスの無料相談や費用立替制度を利用すれば、弁護士費用の負担を軽減できます。

成功報酬型や分割払いに対応した弁護士を探すのも有効です。

養育費請求で得た金額の一部を弁護士費用に充てる方法もあります。

離婚裁判で費用が払えないとどうなる?

弁護士費用が払えないままだと、弁護士なしで裁判をすることになります。

救済策として、法テラスの立替制度を利用することで分割払いが可能です。

弁護士に依頼しないと、手続きや主張が不十分になり、不利な判決を受けるリスクが高まるため、支援制度の活用を検討しましょう。

離婚の弁護士費用は100万円を超える?

ケースによりますが、調停や裁判に進むと100万円を超えることもあります。

特に争点が多い場合や長期化した場合、着手金+報酬+実費で費用が高額になる可能性があります。

まとめ

離婚を進める際、当事者同士の話し合いで円満に条件がまとまるのが理想ですが、意見が対立したり、法律の知識が不足して話し合いが進まなかったりすることもあります。

自分が損をしないためにも、困ったときは弁護士に相談しましょう。

弁護士費用は決して安くありませんが、無料で相談できる窓口も多く、法テラスの立替制度を利用すれば分割払いも可能です。

慰謝料や財産分与で得たお金を弁護士費用に充てることもできます。

まずは費用がないという悩みも含めて、一度相談してみることをおすすめします。