結婚してから短期間で離婚することを、スピード離婚と呼ぶことがあります。スピード離婚は法律用語などではないため、婚姻期間に明確な定義はありません。

記事内で詳しく紹介しますが、離婚する夫婦は婚姻期間が比較的短い傾向にあります。

ここでは、スピード離婚の一般的な定義や、離婚する夫婦の婚姻期間、スピード離婚を決意した理由などを広く紹介します。

スピード離婚とは?一般的な定義

まずはスピード離婚という言葉の意味や定義を理解しましょう。

スピード離婚とされる結婚期間の目安

スピード離婚は法律で定められたものではなく、結婚から○日以内なら該当するといった明確な定義はありません。

一般的には、結婚してから1~2年以内に離婚すると「スピード離婚」と感じる人が多いようです。

結婚から1年未満で離婚する場合は「超スピード離婚」とも呼ばれ、結婚生活がほとんど軌道に乗らないまま終わってしまうケースも見られます。

スピード離婚と通常の離婚の違い

スピード離婚は、婚姻期間が期間が短いことによって、通常の離婚とは異なる特徴があるので、紹介します。

【財産分与の影響が小さい】

  • 婚姻期間が短いため、共有財産が少なく、財産分与の手続きが比較的シンプル
  • 住宅や車などの大きな資産を持っているケースが少なく、分割の負担が軽い

【年金分割の対象になりにくい】

厚生年金の分割は原則として婚姻期間に応じて決まるため、短期間の婚姻では影響が小さい

【慰謝料が発生しにくい】

  • 短期間の結婚では、精神的苦痛や損害の立証が難しく、慰謝料請求が認められにくい
  • 不貞行為やDVがある場合には慰謝料請求が可能

【住宅ローンや借金の問題が比較的少ない】

  • 結婚後に共同で住宅ローンを組んでいる場合が少なく、ローン返済の分担などの問題が発生しにくい
  • 一方、結婚式費用や新居の初期費用を借金していると、返済の負担が残ることも

【子どもに関する問題が発生しにくい】

  • スピード離婚の場合、まだ子どもがいないケースが多く、親権争いや養育費の問題が少ない

総合的にみて、婚姻期間が短いと夫婦関係の清算がしやすい傾向にあります。

離婚時に必要な取り決めは「協議離婚とは|協議離婚の進め方や流れ・決めること」を参考にしてください。

夫婦全体のうち約30%は5年以内に離婚している

スピード離婚の定義がわかったところで、次は、日本の夫婦がどのくらいの婚姻期間で離婚しているのか確認しましょう。

下記は、2021年の婚姻期間ごとの離婚数の割合を表にしたものです。

婚姻期間 件数 割合
5年以内 54,510 29.6%
5~9年 34,114 18,5%
10~14年 24,331 13.2%
15~19年 19,793 10.7%
20年以上 38,968 21.1%
不詳 12,668 6.9&

【参考:人口統計資料集(2023)改訂版 – 国立社会保障・人口問題研究所

結婚から5年以内に離婚する夫婦は全体の約30%を占めています。

表には記載されていませんが、1年未満〜1年で離婚する夫婦は24,744件で、全体の13.4%になります。

スピード離婚とまではいかないにしても、比較的短期間で離婚している夫婦が多いことがわかります。

スピード離婚を決意した理由や原因

次に、スピード離婚を決意する主な原因を紹介します。

離婚前の見極め不足

結婚前に相手の性格や価値観を十分に確認しないまま結婚すると、結婚後に「思っていた人と違った」と感じることがあります。

特に、交際期間が短い場合や遠距離恋愛だった場合、結婚後に初めて知る一面が多く、違和感を抱きやすくなります。

  • 結婚前は優しかったのに、実は短気だった
  • 生活習慣や金銭感覚に大きな違いがあった
  • 仕事や家庭に対する考え方が合わなかった

このように、結婚後に価値観のズレが顕在化し、短期間で離婚を決意するケースは珍しくありません。

相手の親族とのトラブル

結婚は夫婦だけではなく、家族同士の関係にも大きな影響を与えます。

特に、義両親や親族との関係が悪化すると、結婚生活に大きなストレスを抱えることになります。

  • 義両親が過干渉で、夫婦の生活に口を出してくる
  • 配偶者が親族の意見を優先し、自分の意見を聞いてくれない
  • 義両親と価値観や宗教観が合わなかった など

配偶者の家族との関係が悪化し、結婚生活が困難になるケースもあります。

金銭トラブル

お金に関する価値観の違いも、スピード離婚の大きな原因です。

結婚後してからお金の使い方が見えてくることも多く、それが原因で衝突するケースもあります。

  • 浪費癖があり、貯金をしない
  • 借金が発覚し、将来が不安になった
  • 家計管理に対する考え方が大きく異なる

特に、相手に借金があることを結婚後に知った場合、「信用できない」と感じて離婚を決意することが多いです。

スピード婚の影響

交際期間が短いまま結婚するスピード婚は、スピード離婚の大きな要因の一つです。

交際期間が短いと、お互いの価値観や性格を十分に理解する時間がなく、結婚後に問題が噴出しやすくなります。

  • 恋愛感情の盛り上がりだけで結婚を決めた
  • 勢いで結婚したが、実際に一緒に生活すると違和感があった
  • 結婚後に「こんなはずじゃなかった」と後悔するようになった

特に、妊娠による結婚(授かり婚)の場合、子どもが生まれる前後の環境変化によるストレスで、夫婦関係が悪化するケースもあります。

スピード離婚をためらう理由として多いもの

スピード離婚を決意しても、実際に行動に移すまでにはさまざまな葛藤が伴います。

ここでは、スピード離婚をためらう主な理由について解説します。

世間体や周囲の目が気になる

スピード離婚を考えたとき、多くの人が気にするのが「周囲からどう思われるか」です。

短期間での離婚に対して偏見の目で見られたり、噂話をされたりすることに抵抗を感じる人も少なくありません。

特に、結婚式を挙げたばかりの夫婦や、親族・職場に結婚を報告したばかりの人ほど、離婚を言い出しづらくなる傾向があります。

親戚や友人から「せっかく結婚したのに」「もう少し努力すべき」と言われると、その言葉に影響を受け、決断をためらうこともあります。

世間体を気にしすぎると、自分が本当に望む決断ができなくなるため、外部の評価よりも自分自身の気持ちを優先することが大切です。

家族や友人からの反対

スピード離婚を決意しても、身近な人たちの反対が大きな壁になることがあります。

特に親世代は「結婚は努力で続けるもの」という価値観を持っていることが多いため、スピード離婚に反対されるケースが少なくありません。

友人からも「新婚生活は最初は大変なもの」などと助言されることがあり、自分の決断に自信が持てなくなることがあります。

家族や友人の意見は貴重ですが、最終的に結婚生活を続けるかどうかを決めるのは自分自身です。

周囲に流されず、自分の意思で判断することが大切です。

経済的な不安

離婚すると、これまで夫婦で分担していた生活費を一人で負担しなければなりません。

特に、結婚後に専業主婦(主夫)になった場合は、収入面での不安が大きくなります。

離婚後の生活をどのように維持するかは、多くの人が抱える現実的な課題です。

このような場合、すぐに離婚するのではなく、経済的な準備を整えてから離婚することをおすすめします。

離婚や引っ越しの手続きが大変

離婚にはさまざまな手続きが必要であり、それを面倒に感じることも、ためらいの原因になります。

離婚届の提出、戸籍の変更、財産分与、住居の契約解除や引っ越しなど、短期間の結婚であってもやるべきことが多くあります。

特に、結婚式を挙げたばかりの場合は、親戚や友人、職場に結婚の報告をした後に離婚を伝えなければならず、その精神的負担も大きいです。

こうした手間を考えると、「このまま結婚生活を続けた方が楽かもしれない」と思い、離婚を踏みとどまるケースも少なくありません。

自分が間違っているのではという疑問

スピード離婚を考えていると、自分の判断が正しいのかどうか迷うことがあります。

「もう少し我慢すれば、うまくいくのでは?」などと考え、自分の選択に自信が持てなくなるケースです。

さらに、周囲から離婚を反対されたりすると、余計に自信がなくなります。しかし、無理に関係を続けることで余計に追い詰められてしまうこともあります。

本当に関係修復が可能なのか、あるいは自分が幸せになれるのかを冷静に見極めることが重要です。

まだ相手に情がある

スピード離婚を決意しても、相手に対する情が残っていると、なかなか踏み切れないことがあります。

短期間の結婚であっても、相手と過ごした時間や思い出があるため、完全に気持ちを断ち切るのは簡単ではありません。

例えば、「短期間で離婚を切り出されて独り身になる配偶者がかわいそう」といった思いがあると、離婚の決断をためらってしまいます。

しかし、相手への情だけで結婚生活を続けても、本質的な問題が解決しない限り、いずれまた離婚を考えることになります。

相手への気持ちと結婚生活の現実を整理し、自分にとって最善の選択をすることが大切です。

スピード離婚は恥ずかしい?それでも検討すべき理由

我慢しても状況がよくなるとは限らないから

我慢して結婚生活を続けても、状況が必ずしも良くなるとは限りません。

むしろ、時間が経つことで関係が悪化し、問題が深刻化する可能性もあります。

離婚を考えている場合、状況を見極めたうえで、適切なタイミングで決断することが大切です。

この先も状況が改善しない場合、離婚を選択肢の一つとして考えるのも方法の一つです。

スピード離婚は珍しいものではないから

序盤でも説明した通り、約3割の夫婦は5年以内に離婚します。スピード離婚を選択する人は一定数おり、決して珍しいことではありません。

周囲の目を気にしすぎる必要はなく、自分にとって最善の選択をすることが重要です。

ストレスで体調に異常をきたすから

結婚生活のストレスが積み重なると、精神的な負担が増し、不眠や食欲不振、頭痛などの体調不良を引き起こすことがあります。

常に不安や緊張を抱えながら生活すると、心身ともに疲れてしまい、仕事や日常生活にも影響を及ぼします。

結婚生活を続けても状況が改善される見込みがないなら、無理に我慢するのは危険です。

自分の健康を守るためにも、離婚を前向きに考えることが必要かもしれません。

婚姻が長くなると離婚が大変になるから

結婚期間が長くなるほど、離婚時の手続きは複雑になります。

財産分与や年金分割、共同ローンの整理などが増え、話し合いに時間がかかることもあります。

子どもがいる場合は親権や養育費の問題も発生し、感情的な対立が深まる可能性があります。

離婚を考えているなら、状況が悪化する前に決断する方が負担を減らせるかもしれません。

離婚時に決めなければならないことは「離婚の際に決めるべき7つの項目と東京の弁護士相談先一覧」の記事も参考にしてください。

まとめ

スピード離婚は珍しいことではなく、短期間の結婚でも離婚を決意する人は少なくありません。

婚姻期間が短いと財産分与や手続きが比較的シンプルである一方、周囲の目や経済的な不安などが離婚をためらう理由になることもあります。

しかし、無理に結婚生活を続けても状況が改善するとは限らず、精神的・身体的な負担が増えることも考えられます。

自分の幸せを最優先に考え、必要であれば早めに決断することが大切です。