夫の単身赴任は、仕事の都合で避けられない場合が多いです。

離ればなれで暮らすことでコミュニケーションが減り、次第に心の距離が広がってしまうことも。

単身赴任が原因で離婚にいたるのは不思議なことではありません。

ここでは、単身赴任を理由に離婚ができるのか、また単身赴任が離婚につながりやすい原因を解説します。

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単身赴任を理由に離婚をすることは可能?

結論、夫婦どちらかの単身赴任を理由として離婚することは可能です。

離婚の方法として、協議離婚・調停離婚・裁判離婚の3つがあります。このうち、協議離婚および調停離婚は、いずれも単身赴任を理由として離婚に向けて手続きを進められます。

  • 協議離婚:夫婦間同士の話し合いによって離婚を進める
  • 調停離婚:家庭裁判所へ申し立てて第三者を介した話し合いによって離婚を進める

協議離婚や調停離婚においては、双方が離婚について同意できる状況であれば、特に離婚の理由は問われません。

そのため、お互いが納得できさえすれば、単身赴任によって心に距離が生じた・単身不妊によって結婚生活の必要性を感じなくなったといった理由でも離婚は可能です。

ただし、協議や調停で離婚が決まらなかった場合は、離婚に向けた裁判を起こす必要があります。

裁判による離婚を認められるためには、婚姻関係の存続が難しいとされるだけの法的離婚事由が必要となります。

単身赴任先で夫が不倫をしていたといった証拠があれば裁判での離婚も十分に可能ですが、単身赴任そのものだけを理由にして裁判離婚を進めるのは難しいです。

性格の不一致を理由に離婚慰謝料は請求できるのか?ケース別に解説」の記事も参考にしてください。

単身赴任で離婚が認められるケース

裁判にもつれこんだ場合、単身赴任が理由では離婚が認められない場合もあります。

裁判において、単身赴任で離婚が認められるケースは主に以下の3つです。

  • 配偶者が浮気をしていた
  • 配偶者や生活費や養育費を払わない
  • 単身赴任が長期の別居と認められた

それぞれ、具体的に紹介します。

配偶者が浮気をしていた

単身赴任中に配偶者が浮気をしていた場合は、裁判離婚が認められる可能性が高いです。

単身赴任先の夫や、自宅で暮らしている妻が浮気や不倫をした場合は、法的離婚事由の一つである不貞行為とみなされます。

浮気が発覚した場合、離婚を有利に進めるためには、ラブホテルへの出入りや親密なメッセージのやり取りなど、不貞行為を示す証拠を集めることが重要です。

一度のデートや食事だけでは裁判で浮気と認められにくいため、継続的な関係があることを証明しなければなりません。

配偶者や生活費や養育費を払わない

単身赴任中の夫婦は、生活費(婚姻費用)や養育費の負担についてしっかり取り決める必要があります。

もし配偶者が一方的に生活費の支払いを拒否した場合、それは民法第770条の悪意の遺棄に該当し、離婚が認められる可能性が高まります。

たとえば、夫が単身赴任先で新しい生活に集中し、妻や子どもに送金をしなくなった場合は、婚姻関係の維持を放棄していると判断されます。

裁判では、銀行口座の送金履歴やLINEの履歴など、相手が婚姻費用の支払いを怠っている証拠を提示することで、離婚が認められやすくなります。

悪意の遺棄があった場合は、離婚の際に未払い分の婚姻費用や養育費を請求することも可能です。

単身赴任が長期の別居と認められた

単身赴任が長期間にわたり、夫婦の実態がなくなった場合、裁判で婚姻関係が破綻していると判断され、離婚が認められることがあります。

民法770条1項5号では、不貞行為や悪意の遺棄以外でも、婚姻を継続し難い重大な事由がある場合、離婚を請求できるとされています。

単身赴任が10年以上続きその間ほとんど連絡を取らなかった、帰省も年に1回以下で夫婦としての実態がなかったなどの状況があれば、裁判で事実上の別居と判断される可能性があります。

ただし、単身赴任だけが理由で離婚が認められるわけではなく、夫婦としての交流が完全に断たれていることが重要です。

離婚を求める側は、別居期間や夫婦の関係性を証明するために、通話履歴、メールの頻度、帰省の記録などを準備するといいでしょう。

裁判に関しては「離婚事件で争点になりやすいポイントと弁護士を立てるメリット」の記事も参考にしてください。

単身赴任が離婚につながりやすい理由・原因とは

単身赴任が原因で離婚を考える夫婦は一定数いますが、どちらか一方の責任ではなく、それぞれが離婚の原因を抱えているケースも十分にあります。

ここでは、単身赴任が離婚につながりやすい理由・原因を5つ紹介します。

単身赴任中は浮気しやすいから

単身赴任中は配偶者の目が届かないため、浮気のリスクが高まります。

環境の変化によって異性と接する機会が増え、寂しさを埋めるためや刺激を得るために浮気に走るケースが多く見られます。

当然ですが、残された配偶者側も寂しさから別の異性に依存してしまう可能性があります。

一人での生活が快適になるから

単身赴任中に一人暮らしの快適さを知ることで、夫婦での共同生活に戻ることがストレスに感じることがあります。

お互い家事の負担が少なくなり、自由な時間を持てることに魅力を感じる人も多いです。

好きな時間に食事をしたり、趣味に没頭しやすくなったりすることで「結婚生活よりも一人のほうが気楽だ」と考えるようになることがあります。

一人暮らしが当たり前になりすぎると、夫婦としての関係が希薄になり、離婚へとつながる可能性が高まります。

金銭トラブルが生じやすいから

単身赴任をすると、生活費が二重にかかるため、金銭的な負担が大きくなります。

その結果、どちらがどれだけ負担するのか、節約すべきかなどで夫婦の意見が対立しやすくなります。

単身赴任先の生活費が予想以上にかかって家計が圧迫されると、残された配偶者が「もっと節約してほしい」と不満を募らせることがあります。

単身赴任で離れて暮らしていると金銭トラブルに発展しやすいので注意が必要です。

別居によって気持ちが離れるから

単身赴任が続くと、物理的な距離が心の距離につながり、夫婦間の絆が薄れていきます。

忙しさや生活のリズムの違いから連絡が減ると、お互いの近況が分からなくなり、「相手がいなくても平気」と感じることもあるでしょう。

連絡の頻度が減っていくことで、夫婦でいる意味を見失い、結婚生活そのものに疑問を感じるようになります。

家事・育児のワンオペが負担となるから

単身赴任で配偶者が家を空けると、残された側が家事や育児をすべて担うことになり、精神的・肉体的な負担が大きくなります。

特に子どもが小さいうちは育児の手が足りず、ストレスが溜まりやすくなります。仕事と育児を両立しながら一人で子どもの送迎や食事の準備をするのは非常に大変です。

夫が単身赴任先で自由な生活を送っていると、残された側が「自分ばかり苦労している」と感じ、不公平感が強まります。

これがきっかけで離婚につながる可能性は十分にあります。

夫婦喧嘩が原因で離婚はできる?離婚した方がいいケースや後悔しないための方法」の記事も参考にしてください。

単身赴任中の夫と離婚をする際の流れ

単身赴任中の夫と離婚をする際は、以下の流れで進めるとスムーズです。

  1. 離婚を切り出す準備をする
  2. 夫婦間で離婚協議をおこなう
  3. 合意がなければ離婚調停をする
  4. 調停不成立なら離婚裁判を申し立てる

①離婚を切り出す準備をする

単身赴任中の夫と離婚を考える場合、十分な準備が必要です。経済面や子どもの養育について冷静に考え、離婚後の具体的なプランを立てましょう。

夫の浮気や生活費未払いなどが原因であれば、証拠を集めておくとスムーズに進みます。

離婚を検討した段階で早めに弁護士に相談するのも有効で、法的なアドバイスを受けることでより有利な条件で離婚を進められます。

②夫婦間で離婚協議をおこなう

離婚を決意したら、まずは夫婦間で話し合いを行います。

単身赴任中の夫とは直接会う機会が少ないため、電話やオンライン会議などを活用して話し合うのもおすすめです。

協議の際は、感情的にならないように努め、財産分与や慰謝料、養育費、親権などについて決めましょう。

単身赴任中の夫が離婚に前向きであり、話し合いが進めば単身赴任中であっても協議離婚が成立します。

離婚後の養育費や慰謝料などに関する取り決めについては、後々のトラブルを防ぐために書面でしっかりと残しておきましょう。

協議離婚については「協議離婚とは|協議離婚の進め方や流れ・決めること」の記事もご覧ください。

③合意がなければ離婚調停をする

夫婦間で合意に至らない場合、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。

調停では第三者である調停委員が間に入り、公平な立場で双方の意見を聞きながら解決策を探ります。

財産分与や慰謝料、親権などについて詳細に話し合い、合意できれば調停離婚が成立します。

調停離婚の場合は、原則として相手方の現住所を管轄する家庭裁判所に申し立てる必要がありますが、双方の合意がある場合は別の裁判所を選べます。

調停においては、交互に調停委員と話す形でお互い顔を合わせずに話し合いを進められる点もメリットです。

参考:離婚調停を申し立てる方へ|裁判所

④調停不成立なら離婚裁判を申し立てる

調停が不成立となった場合、最終手段として離婚裁判を申し立てます。

裁判では、不倫やDV、生活費の未払いなど、離婚が認められる法的な理由が必要となります。

単身赴任による長期別居が続いていれば、夫婦関係の破綻と認められることもあります。

裁判によって判決が下れば、相手の同意がなくても離婚が成立します。

単身赴任が原因での離婚を防ぐポイント

単身赴任によって気持ちが離れてしまっても、どうにか関係を修復したいと考える人も多いはず。

ここでは、単身赴任中でも夫婦関係を良好に保つコツを紹介します。

電話や手紙などで密にコミュニケーションをとる

単身赴任中は夫婦が長期間離れて暮らすため、コミュニケーションが不足しがちです。

会話が減ると、お互いの気持ちや状況を理解しにくくなり、気持ちがすれ違ってしまうこともあります。

そのため、電話やLINEなどを活用して、意識的にコミュニケーションを取ることが大切です。

日々の出来事を短いメッセージで共有するだけでも、お互いの距離を縮める効果があります。

相手の気持ちを尊重する

単身赴任中はお互いの気持ちを尊重し、思いやりを持って接することが大切です。

たとえば、仕事が忙しくて連絡が遅くなったときに「忙しい中でも連絡をくれてありがとう」と感謝の気持ちを伝えるなどです。

夫が望んで単身赴任をしているのではなく、会社の都合でやむを得ず離ればなれになっているケースがほとんどのはずです。

単身赴任中の寂しさを一方的に訴えるのではなく、相手の状況を理解し、支え合う姿勢を持つことが重要です。

週末や長期休暇には帰宅するように頼む

単身赴任中でも、可能な限り夫婦で過ごす時間を確保することが大切です。

しかし、単身赴任中で限られた休み時間を遠方の家族のもとへの移動に使うのは負担になる可能性もあります。

夫に帰宅するように無理強いするだけでなく、単身赴任先に自分も赴くといった付き合い方も愛情を伝えるうえでは大切です。

単身赴任中の離婚に関してよくある質問

単身赴任で連絡なしは離婚できる?

単身赴任中の居場所がわからない場合でも、弁護士に相談すれば離婚は可能です。

弁護士に相談すれば、配偶者の住民票を取得することにより居場所を突き止め、所定の裁判所に離婚調停の申し立てができます。

配偶者が住民票を赴任先に移動しておらず所在がわからない場合でも、公示送達という手続きによって裁判を起こし離婚することが可能です。

単身赴任で妻から離婚を求められたら?

単身赴任中に妻から離婚を求められたとしても、すぐに応じる必要はありません。単身赴任が理由での離婚は、裁判では認められないからです。

まずは妻と話し合いましょう。どうしても妻の意思が固く、離婚が避けられないようであれば、慰謝料をもらって離婚をするのも選択肢の一つです。

単身赴任での離婚は後悔する?

単身赴任の離婚で後悔するかは人それぞれです。感情に任せて離婚すると後悔する可能性が高いです。

転職なども含めて、今後の夫婦生活についてよく考えましょう。

離婚条件もきっちり話し合った上での離婚なら、後悔はしにくくなります。

10年以上の単身赴任は離婚できる?

協議離婚や調停離婚であれば、お互いの合意があればどんな理由でも離婚が可能です。

裁判離婚の場合でも、10年以上にわたる単身赴任は、婚姻関係が破綻していると判断される可能性が十分にあるでしょう。

長期間の単身赴任により、相手方と連絡が取れない状態でも適切な手続きをとれば離婚は可能です。

何年別居すれば離婚できる?別居のメリットと注意すべき点を解説」の記事も参考にしてください。

まとめ

単身赴任は夫婦の心の距離ができやすく、離婚に至る夫婦も多いです。

単身赴任中は離婚の条件などについて話し合いの場を設けることが難しいですが、話し合いはきちんと行ってください。

相手と直接連絡を取り合うのが億劫であれば、離婚問題に注力している弁護士に相談するのがおすすめです。

弁護士に相談すれば、第三者として調停離婚のサポートをしてくれたり、居場所がわからない夫に対して離婚を申し立てたりしてくれます。

単身赴任中の離婚によるリスクについても十分に説明してくれるので、まずは気軽に相談してみましょう。