「離婚を検討しているが、配偶者と揉めることなく円満に終わりたい」と考えている人は多いでしょう。
離婚の際には、まず離婚する・しないで合意に至らなければなりません。他にも、財産分与、親権、養育費、慰謝料など、決めなければならないことがあります。
すべてを円満に終わらせるには切り出し方や気遣い、タイミングなど様々な点に配慮しなくてはいけません。
ここでは、円満離婚の言葉の意味やよくあるケース、子ありでも円満離婚する方法などを広く解説します。
目次
円満離婚とは?
円満離婚とは、夫婦が互いに納得し、争いなく合意して離婚することを指します。
離婚後も仲良しでいることを円満離婚と呼ぶわけではありません。離婚の際には、感情的な対立を避け、双方が新たな人生を前向きに歩めるようにするのが理想です。
離婚に際しては、財産分与や親権などの取り決めが必要ですが、それらをスムーズに話し合い、円満に解決することが求められます。
トラブルを避け、新たなスタートを切るために、冷静で建設的な話し合いを心がけましょう。
円満離婚でよくある理由
円満離婚をする夫婦にはどのような背景があるのでしょうか。ここでは、円満離婚でよくある理由を説明します。
性格の不一致
性格の不一致は、離婚理由の中でも特に多いです。
結婚当初はお互いの違いを理解し合い、うまくやっていけると思っていても、時間が経つにつれて価値観や生活スタイルの違いが顕著になります。
性格の不一致が原因で円満に離婚する場合、お互いが感情的にならず、「これ以上続けてもお互いにとって良くない」と理解し合うことが重要です。
特に、子どもがいない場合は離婚がスムーズに進みやすいです。
「性格の不一致を理由に離婚慰謝料は請求できるのか?ケース別に解説」の記事も参考にしてください。
お互いの成長や変化
結婚して時間が経過する中で、夫婦それぞれが個人的に成長したり、変化したりすることはよくあります。
特にキャリアや趣味、価値観の変化が大きな原因となり、最初は共通の目標を持っていた夫婦でも、次第に目指す方向が異なってしまうことがあります。
こうした成長や変化の結果として、再び新しい人生を歩むために円満に離婚を選ぶ夫婦も多いです。
子どものため
別の離婚理由があるけれど、子どものために円満離婚するケースです。
離婚後も、子どもの幸せを最優先に考えるため、親同士の関係を円満に保ちながら離婚することを選ぶ親が増えています。
夫婦間で関係が悪化し、家庭内の雰囲気が悪くなると、子どもにとってはストレスになります。
円満離婚のためには、子どもが離婚後も安心して生活できる環境を作ることが、何より大切です。
「親権者とは|親権者になれる人や意味をわかりやすく解説」の記事も参考にしてください。
物理的な距離や将来の選択肢
結婚生活が長くなると、仕事や生活の環境により、物理的な距離が生まれることがあります。
転勤や異動、留学などで夫婦が別々の場所に住むことが多くなると、次第に関係が疎遠になることもあるでしょう。
たとえば、夫婦の一方が、生活の拠点を海外に変えたいなどと言い出せば、夫婦として一緒にいることが難しくなるかもしれません。
このような理由で円満離婚を選択する場合、双方が新たな人生の選択肢を尊重し合うことで、感情的な対立を避けることができます。
円満離婚の切り出し方
冷静で建設的なコミュニケーションが求められます。ここでは、円満離婚を切り出す際のポイントを4つに分けて説明します。
冷静に話せるタイミングを見計らう
冷静に話せるタイミングを見計らいましょう。例えば、夫婦げんかの最中、相手が忙しい時などに切り出すのは適切ではありません。
お互いが冷静でいるタイミングを狙って切り出すことで、一時の感情で選択したわけではない真剣さが伝わります。
さらに、感情的な対立も比較的起こりにくいため、円満離婚しやすくなるでしょう。
自分の気持ちを事前に整理しておく
離婚の切り出し方において、まず自分の気持ちを整理しておくことが大切です。
- なぜ離婚したいのか
- 離婚後どうなりたいのか
- 離婚以外の選択肢も検討したのか など
自分の本音を整理したうえで、しっかりと伝えましょう。これにより、話し合いが感情的になりにくくなります。
事前に自分の考えをまとめておかないと、相手からの質問に思い付きで答えることになります。
短絡的な回答では、やはり相手は納得しないでしょう。
相手の立場や想いも尊重する
円満離婚を実現するためには、相手の立場や気持ちを尊重することが不可欠です。
離婚は一方的に決めるものではなく、お互いにとって重要な問題です。
自分の気持ちを押し付けるのではなく、相手の意見や感情を理解しようとする姿勢が大切です。
相手がどのように感じているのか、どんな理由で離婚を受け入れたくないのかを理解し、その上で話を進めていくことが大切です。
対立ではなく同じ方向を向けるように話す
離婚を切り出す際、対立的な言い方は避け、共に同じ方向を向くように心がけましょう。
例えば、「私たちにはお互いに合わない部分がある」「この関係を続けるのはお互いにとって良くないかもしれない」といった形で、相手を責めることなく話を進めます。
対立的な言い方を避け、あくまでお互いのためという視点で話すことが、円満な離婚に繋がります。
発言が指す意味は同じだったとしても、言い方によって、相手の受け方はまるっきり変わってしまいます。
円満離婚の際に取り決めるべきこと
円満離婚を成立させるためには、離婚時の取り決めを明確にすることが大切です。これを曖昧にすると、後になってトラブルが発生する可能性があります。
以下の内容は離婚時にきちんと話し合うようにしてください。
財産分与
財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が共同で築いた財産を公平に分けることを指します。
不動産や預貯金、株式、車、家財道具などが対象になり、一般的には2分の1ずつ分けるのが原則です。
ただし、婚姻前から所有していた財産や相続によって得た財産は対象外とされるため、まずはどの財産が分与の対象になるのかを整理する必要があります。
財産の分け方によっては、現金で清算するのか、不動産や貯蓄をどちらかが引き継ぐのかといった点でも意見が分かれることがあります。
トラブルを避けるためには、事前に財産のリストを作成し、双方が納得できる形で分配方法を決めておくことが大切です。
「財産分与の割合はどのようにして決めるか?原則と例外を解説」の記事も参考にしてください。
親権・監護権
親権とは、子どもの養育や財産管理を行う権利と義務のことを指し、監護権とは実際に子どもと一緒に生活し育てる権利のことを指します。
日本では、離婚後の親権はどちらか一方の親が持つことになります。一般的には母親が親権者になるケースが多いですが、父親が親権を持つことも可能です。
円満離婚の場合、親権は、子どもの希望を第一に考えるのがよいでしょう。
子どもがまだ小さく、自分で判断できない場合には、お互いの経済力や仕事の忙しさ、親族を頼れるか、家事育児能力などを総合して、夫婦の話し合いで決めるのが一般的です。
養育費
養育費とは、親権を持たない親が子どもの生活費や教育費として支払うお金のことを指します。
養育費の金額は、裁判所が定める算定表を基準に決められることが多く、支払う側の収入や子どもの人数によって決まります。
養育費の支払いについては、離婚時にしっかりと取り決め、公正証書に残しておくことが重要です。
【参考:養育費算定表 – 裁判所】
面会交流
面会交流とは、親権を持たない親が子どもと定期的に会う機会のことです。
日本では、離婚後も子どもが両親と適切に関係を保つことが望ましいとされており、面会交流を認めるケースがほとんどです。
面会交流の頻度や方法などは、事前にルールを決めておきましょう。
例えば月に1回対面で会う、オンライン通話をするなど、様々な方法があります。
面会交流がきっかけで元配偶者との関係が悪化したりすることのないよう、面会時の約束なども決めておくとなおよいです。
面会交流については「面会交流の一般的な頻度はどのぐらいか?頻度を減らせるケースについて解説」の記事も参考にしてください。
慰謝料
慰謝料とは、離婚に際して精神的苦痛を受けた側が請求できる金銭のことを指します。
不倫やDV(家庭内暴力)などの有責行為があった場合に支払われることが一般的です。
円満離婚の場合、慰謝料が発生しないケースがほとんどですが、離婚を切り出した側が気持ちとして慰謝料を支払うこともあります。
離婚の慰謝料の相場は100~300万円程度ですが、円満離婚の場合は、もっと少ない金額でも、お互いが納得すれば問題ありません。
金銭的な条件を譲歩することで、離婚の話し合いがスムーズに進むこともあります。
慰謝料については「離婚で慰謝料請求できる条件や理由」も参考にしてください。
離婚後の住居
離婚後の住居とは、離婚後に夫婦のどちらが現在の住まいに住み続けるのか、あるいは双方が新しい住居を探すのかを決めることを指します。
持ち家の場合、売却して財産分与するのか、一方が住み続けるのかを決めることになります。
住宅ローンが残っている場合は、ローンの支払いをどうするのかも考慮しなければなりません。
住居の問題は子どもの生活環境や学校にも影響するため、できるだけ負担の少ない選択をするのが望ましいでしょう。
子ありでも円満離婚する方法は?
子どもがいる場合、離婚は夫婦だけの問題ではありません。子どもの気持ちを第一に考え、できる限り負担を減らせるようにすることが円満離婚のカギです。
ここでは、子どもがいる夫婦でも円満に離婚するために心がけたいことを紹介します。
子どもの気持ちを最優先に考える
離婚は夫婦の問題であると同時に、子どもの人生にも大きな影響を与えます。
そのため、まず大切なのは子どもの気持ちを最優先に考えることです。
子どもに突然離婚を告げるのではなく、年齢や理解度に応じて、丁寧に説明しながら不安を和らげる配慮が必要です。
離婚後も子どもが安心して成長できる環境を整えることは、夫婦の円満な離婚にも繋がります。
親権や養育費の取り決めをしっかり行う
離婚後も子どもが安定した生活を送れるように、親権や養育費の取り決めはきちんと行いましょう。
養育費の金額や支払方法を明確に決め、公正証書などで法的に有効な形にすることが重要です。
口約束では支払いが滞るリスクがあるため、しっかりと書面に残しておくことで、後々のトラブルを防ぐことができます。
支払い遅れが頻繁に起きたり、支払いが途絶えたりすると、元夫婦間のトラブルが発生し、円満離婚とはいえなくなってしまいます。
離婚後もいい関係を保てるようにする
夫婦としての関係は終わっても、子どもにとっては大切な両親です。
離婚後も子どものために協力し合い、できるだけ良好な関係を維持することが望ましいです。
たとえば、子どもの学校行事や誕生日などのイベントでは、適度な協力体制を築くことが、子どもの安心感につながります。
自分の存在が相手の再婚の足かせにならないようにする
円満離婚を目指すなら、離婚後も相手の人生を尊重し、お互いの新しい生活に干渉しすぎないことが大切です。
特に、相手が再婚を考えている際などは、適度な距離感を保つようにしましょう。
子どもがいる場合、再婚後の親子関係にも影響を与えるため、再婚相手との関係性をどう築くかも考える必要があります。
必要以上に相手の新しい家庭に口を出さず、子どもが混乱しないよう配慮することで、円満な関係を維持できます。
子なしの場合は円満離婚しやすい
子どもがいない場合、離婚時に話し合う争点が少ない分、スムーズに離婚が進みやすいです。
子なし夫婦であれば、離婚成立後に会う機会は基本的にないため、関係を清算しやすいと言えます。
円満離婚のデメリットは?
円満離婚は離婚の理想形ですが、デメリットも存在します。
感情の整理がつかない可能性がある
円満離婚は冷静に話し合い、互いに納得して別れる形ですが、それでも感情の整理がつかないことがあります。
特に長年連れ添った場合、離婚後に孤独感や喪失感を感じることも少なくありません。
新しい生活が始まると、「本当にこれでよかったのか?」と後悔するケースもあります。
円満に離婚できたからこそ「まだ夫婦を続けられたのでは?」と考えやすいのです。
第三者への説明が面倒になる
円満に離婚したとしても、周囲から「なぜ離婚したの?」と質問されることが増え、説明が面倒になることがあります。
特に親族や友人、職場の人たちに対して、納得してもらえる理由を伝えるのは難しいものです。
周囲に理解されにくいのもあり、何度も説明するのが負担になることがあります。
再婚時に問題が起こる可能性がある
円満離婚だった場合、相手との関係が完全に断ち切れていないことが多く、再婚の際に問題が生じることがあります。
たとえば、離婚後も良好な関係を維持していることで、新しいパートナーが不安を感じたり、不信感を抱いたりするケースがあります。
元配偶者の新しい恋愛の足かせにならないように、双方配慮しましょう。
円満離婚でよくある質問
円満離婚するには?
円満離婚を実現するためには、お互いに冷静な話し合いを心掛けることが重要です。
離婚時には、子どものことや金銭的な面も話し合うため、どうしても感情的になりやすく、対立も起こりやすいでしょう。
もし相手が感情的になった場合でも、自分は冷静さを保ち、相手の意見を誠実に聞くことが大切です。
円満離婚はありえない?
子なし夫婦の場合、比較的円満離婚になりやすいです。それは、結婚前の状態に戻るイメージで、夫婦関係の清算をすれば、揉めごとにもなりにくいからです。
子あり夫婦の場合は親権争いなどで揉めやすいため、円満離婚とはなりにくいです。
円満離婚は仲良し離婚?
円満離婚とは、大きな争いもなくスムーズに離婚できたことを指しますが、必ずしも離婚後も仲がいいとは限りません。
手続き自体は円滑に進んでも、離婚後に一度も連絡を取らない夫婦もいます。その場合でも、お互いに納得して別れたのであれば、円満離婚に含まれるといえるでしょう。
まとめ
円満離婚を実現するためには、感情的にならず冷静に話し合うことが大切です。お互いの立場を尊重しつつ、離婚条件などは明確に決めるようにしてください。
夫婦で離婚の話し合いをするのが不安な場合は、調停委員や弁護士などの第三者を交えながら離婚を進めるのも選択肢のひとつです。
夫婦で協力し、円満離婚を実現させることで、新しい人生を前向きにスタートさせることができます。