離婚に際して争いが生じやすい問題に財産分与が挙げられます。
実際に、相手がなかなか財産開示に応じない、財産開示には応じても、これは財産分与の対象にならないと強固に主張されることがよくあります。
そこで今回は、財産分与で争点になりそうなことについて解説します。
ネクスパート法律事務所が
問題解決に向けて全力でサポートいたします
目次
財産分与とは
財産分与とは、婚姻生活中に夫婦で協力して築き上げてきた財産を、離婚の際にそれぞれの貢献度に応じて分配することです。
財産分与を相手方に請求することは、法律上認められた権利です。
財産分与の実務においては、対象財産をおおむね2分の1ずつ分配するように調整されることが多いです。
財産分与は、離婚時にしなくても、離婚から2年以内であれば請求できます。
争点になりそうなこと①特有財産の該当性
財産分与の争点になりそうなことの一つ目は、財産が特有財産に該当するかしないかという問題です。
以下では、そもそも特有財産とは何かについて解説した後、個々の問題について解説します。
特有財産とは
財産分与の対象となるのは、婚姻から別居あるいは離婚するまでの間に夫婦双方の名義で取得した財産です。
しかし、その中でも、夫婦の一方のみに帰属する特有財産と呼ばれるものは、財産分与の対象とはなりません。
特有財産の代表的な例は、相続財産になります。
相続財産は、夫婦で協力して築き上げてきた財産とはいえないため、特有財産として、財産分与の対象とはならないのです。
同じ理由により、生前贈与により得た財産も、財産分与の対象にはなりません。
個人名義の株式
特有財産かどうかが争われるものの代表的な例として挙げられるのが、個人名義の株式です。
個人名義の株式のうち、独身時代から保有していたものや相続・生前贈与により取得したものは特有財産に該当し、財産分与の対象にはなりません。
しかし、婚姻後の給料などの収入から資金を出して購入した株式は、特有財産には該当せず、財産分与の対象となります。
なお、婚姻後に購入した株式でも、婚姻前の自身の貯蓄から資金を捻出しているものは、特有財産にあたるといえます。
不動産
土地や建物、マンションなどの不動産については、特有財産に該当するかしないかの区別が複雑になりがちです。
婚姻前の貯蓄や相続、生前贈与により得た現金で不動産全体を購入した場合は不動産全体が特有財産となります。
例えば頭金を上記のような資金で賄った場合には、その部分のみが特有財産となります。それ以外の婚姻後の給与から住宅ローンを支払っている部分は特有財産とはならず、財産分与の対象となります。
具体例を挙げると以下のように計算することになります。
価格5000万円のマンションを、夫の婚姻前の預金1000万円、妻が相続した現金2000万円を頭金にして、残りの2000万円を婚姻後、夫名義の住宅ローンで支払った。
離婚時の価格は4000万円である。
夫の特有財産割合:1000万円÷5000万円=5分の1
妻の特有財産割合:2000万円÷5000万円=5分の2
特有財産以外の割合:2000万円÷5000万円=5分の2
財産分与割合:5分の2×2分の1=5分の1
このケースの場合、実際の財産分与は、以下のように行われます。
夫=4000万円×5分の1(特有財産)+4000万円×5分の1(特有財産以外) =1600万円
妻=4000万円×5分の2(特有財産)+4000万円×5分の1(特有財産以外) =2400万円 |
配偶者が経営する会社の株式や資産
配偶者が会社を経営している場合、会社の株式や資産についても特有財産か、財産分与の対象になるかが問題となります。
配偶者が婚姻後に会社を立ち上げて経営を始めた場合、配偶者名義の株式は、原則的に財産分与の対象となります。
しかし、配偶者が婚姻前に会社を立ち上げていた場合には、配偶者名義の株式は、特有財産となります。
婚姻後に会社を立ち上げた場合でも、他方の配偶者の貢献なくして会社の株価が大きく上昇した場合には、上昇部分については特有財産と考えられることとなります。
なお、会社名義の財産は、会社という法人の持ち物になるので、原則的には財産分与の対象とはなりません。しかし、会社という形式をとっているものの、実際には配偶者の個人事業だった場合には、会社=配偶者とみなされて、会社財産が財産分与の対象となることもあり得ます。
争点になりそうなこと②住宅ローン付きの不動産をどのように分与するか
住宅ローン付きの不動産をどのように分与するかも、特に近年、争点になることが増えています。
ローンが完済された不動産であれば特に面倒なことはありません。
売却して、売却益を夫婦で分与するか、一方配偶者が取得することにして、その価格分を他の財産の分与で調整するという方法を採ることができます。
問題は、未だ住宅ローンが完済されていない不動産の分与方法です。
特に夫婦の間に子どもがいる場合に、親権者となる配偶者が、転校などをさせたいために、不動産にそのまま住み続けることを主張し、争点になることが多いです。
解決の仕方は主に以下の3つです。
ローンの借り換えをして他方配偶者に名義を変更する
他方配偶者にもそれなりの収入がある場合には、住宅ローンの借り換えを行って、不動産名義を移転し、他方配偶者が住み続けるという方法があります。
この場合、他方配偶者は不動産の価値を全て取得することになるので、他の財産の分与で調整がなされる場合もあります。
住宅ローンや不動産の名義をそのままに他方配偶者が住み続ける
他方配偶者にローンの借り換えができるだけの収入がない場合には、住宅ローンを一方配偶者が払い続けて不動産の名義も変更せず、事実上、他方の配偶者が住み続けるという解決をする場合もあります。
この場合、月々の返済額を賃料として他方配偶者が負担する場合もありますが、そのような負担をせずに済み続けるケースもあります。いずれの場合も、他の財産の分与を調整する場合があります。
このケースは、ローンを負担する配偶者が、完済まで支払いを続ける保証や住み続ける配偶者が賃料を支払い続ける保証がないため、途中でローンの支払いが滞り、抵当権が実行されて強制退去させられるリスクを伴います。
不動産を売却し他方配偶者は他に転居する
上の2つの方法いずれも採用せずに、不動産を売却して売却益を返済に回し、他方配偶者は転居するということもあります。
他方配偶者が借り換えをできない場合には、3‐2の方法よりもトラブルが発生しにくいといえるでしょう。
争点になりそうなこと③子ども名義の預貯金をどう考えるか
子ども名義の預貯金が財産分与の対象となるかどうかも争点になりやすい事柄と言えます。
この点については、①子ども名義の預貯金の原資が配偶者の収入によるものだった場合には財産分与の対象となりますが、②子どもがもらったお年玉などを入金している場合には、子どもの特有財産となり財産分与の対象とはならないということになります。
ただし、①の場合でも、子どもにそのまま受け継がせたいという意向が配偶者の一方又は双方にある場合には、協議して分与対象財産から除外することもあります。
さいごに
離婚調停や離婚訴訟が長引く大きな原因は、財産分与で折り合いがつかないことです。
当事者がなかなか財産の開示に応じないために紛争が長引くということもありますが、個々の財産が分与の対象になるかどうかという点が争われることも少なくありません。
早く離婚したいがために財産分与を諦めると、得られるはずの財産が得られないこととなるため、離婚後の生活が困窮するリスクも生じます。
財産分与をスムーズに行うためには、弁護士が主導して、財産開示や争点に関する適切な主張を行う必要性がとても高いといえます。
ネクスパート法律事務所には、財産分与に強い弁護士が揃っております。離婚に際して、あるいは離婚後の財産分与でお悩みの方は、どうぞお気軽に当事務所にご相談ください。