夫婦の離婚により、祖父母が孫に会えなくなるケースが少なからずあります。

この記事では、孫に会えないのをどうにかしたいと考えたとき、祖父母は家庭裁判所に対して面会交流調停の申立てができるかどうか、子どもの面会交流に立ち会いが認められるのかどうかについて解説します。

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祖父母による家庭裁判所への面会交流の申立ては認められるか?

祖父母による家庭裁判所への面会交流調停・審判の申立ては認められていません。

なぜならば、民法7661項で面会交流の話し合いの主体は父母であることが定められており、同条2項は、父母が家庭裁判所に面会交流調停や審判の申立てることを想定していると考えられているからです。

このことを示す重要な判例があります。

別居状態だった娘夫婦の親が、娘が亡くなったことで孫に会えなくなり、娘の夫に(孫の父親)対して面会交流審判を申し立てました。娘が存命中は、夫と交代で子どもを養育していましたが、亡くなったことにより夫側が子どもの養育をするにようになりました。

これによって、祖父母は孫に会えなくなったため、面会交流審判を申し立てたのですが、最高裁は、以下のとおり、これを認めない決定をしています(最高裁決定令和3329日)。

民法766条1項前段は、父母が協議上の離婚をするときは、父又は母と子との面会交流その他の子の監護について必要な事項は、父母が協議をして定めるものとしている。そして、これを受けて同条2項が「前項の協議が調わないとき、 又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。」と規定していることからすれば、同条2項は、同条1項の協議の主体である父母の申立てにより、家庭裁判所が子の監護に関する事項を定めることを予定しているものと解される。

他方、民法その他の法令において、事実上子を監護してきた第三者が、家庭裁判所に上記事項を定めるよう申し立てることができる旨を定めた規定はなく、上記の申立てについて、監護の事実をもって上記第三者を父母と同視することもできな い。なお、子の利益は、子の監護に関する事項を定めるに当たって最も優先して考慮しなければならないものであるが(民法766条1項後段参照)、このことは、 上記第三者に上記の申立てを許容する根拠となるものではない。

以上によれば、民法766条の適用又は類推適用により、上記第三者が上記の申 立てをすることができると解することはできず、他にそのように解すべき法令上の根拠も存しない。 したがって、父母以外の第三者は、事実上子を監護してきた者であっても、家庭裁判所に対し、子の監護に関する処分として上記第三者と子との面会交流について定める審判を申し立てることはできないと解するのが相当である。

引用元:裁判例結果詳細 | 裁判所 – Courts in Japan

祖父母が面会交流に関与できるケースは?

祖父母による家庭裁判所への面会交流調停・審判の申立ては認められていませんが、面会交流をする際に補助者として関与できる場合があります。

例えば、子どもが幼く、面会交流を一人で行うのが難しい場合です。非監護親である父親と監護親である母親の関係が険悪であれば、子どもと一緒に面会交流に母親が立ち会うのは難しいです。そのような状況下で、子どもが慣れていて、なおかつ安心できる祖父母の立ち会いが検討されます。

ただし、このような状況の場合、監護親側の祖父母が立ち会いを認められるケースが多いです。

面会交流調停において、非監護親が祖父母の関与を求める場合で、子どもも祖父母に対して愛着を持ち、会いたいと望んでいたら、面会交流への参加が認められる場合があります。

もっとも、この場合も父母の関係が険悪で、非監護親側の祖父母が面会交流に関わることによって、両者の間にトラブルが起こる可能性がある場合、面会交流を認めないケースが多いです。

面会交流で祖父母の立会いは認められる?

面会交流を行うにあたり、祖父母の立ち会いが認められるかどうかは、父母間でどのような取り決めがされているかによって違います。以下でそれぞれ解説します。

父母間で取り決めがない場合

父母間の協議もしくは調停・審判で、面会交流をする際に祖父母の立ち会いをNGとする取り決めをしていなければ、祖父母が面会交流に立ち会っても問題はありません。

細かなルールが定められていない場合、原則として、非監護親は、子どもの利益に反しなければ、面会交流中にどこへ行くか、誰に会うかを自由に決められるからです。そのため非監護親が実家へ子どもを連れて行き、祖父母に会わせても問題ないといえます。

父母間で祖父母の立ち会いをNGとした取り決めがある場合

父母間の協議もしくは調停・審判で、面会交流をする際に祖父母の立ち会いをNGとする取り決めをしている場合は、立ち会いが認められません。

このようなルールがありながら、非監護親が守らずに祖父母に会わせれば、面会交流自体が制限される可能性があります。

祖父母からの面会交流調停・審判の申立てが可能になるかも?

2024年1月に法務省・法制審議会家族法制部会が、家族法制の見直しに関する要綱案を公表しました。

その中に親子交流(面会交流)に関する事項も入っており、次のような規律を設けることを提案しています。

  • 子どもの利益のために特に必要があると認められる場合、父母以外の親族と子どもとの交流を実施する旨を定められる
  • 父母だけでなく、父母以外の子の親族(子の直系尊属及び兄弟姉妹以外の者にあっては、過去に子どもを監護していた者に限る)が家庭裁判所への面会交流調停・審判の請求ができる

現在のところ、祖父母など父母以外の子の親族が面会交流の申立てをすることが子の利益の観点から必要となるのは、父母のどちらかの死亡や行方不明等の事情によって、父母で話し合いができない、あるいは面会交流調停・審判の申立てができないケースなどが想提されています。

この内容で法改正されることが決まったわけではありませんが、将来的には、祖父母からの面会交流調停・審判の申立てが認められる日が来るかもしれません。

まとめ

子どもが離婚したことによって、孫に会えなくなった祖父母の悲しみは深いものでしょう。特に、孫の養育に積極的に関わっていた祖父母であれば、会いたい気持ちは増すと思います。残念ながら現在のところ、孫に会いたいからといって祖父母からの面会交流調停の申立ては認められません。そのため孫にどうしても会いたいと考えるなら、監護親と話し合って理解を得なければいけません。

監護親の立場であれば、非監護親の祖父母が面会交流に同席するのを好ましく思っていない方もいらっしゃると思います。面会交流の際に非監護親の祖父母が、子どもに対して自分の悪口を言っているなど、子どもに悪い影響を及ぼす可能性があるなら、毅然とした対応を取らなければいけません。

ネクスパート法律事務所では、離婚全般を得意とする弁護士が在籍しています。子どもの面会交流について相手方と話し合いがまとまらないなど、納得できる解決方法を模索して弁護士への依頼をご検討中の方はご連絡ください。

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