離婚時に子どもとの定期的な面会交流の合意をしたものの、約束が守られないケースは少なくありません。
このような状況に直面した場合、選択肢として考えたいのが面会交流の間接強制です。
この記事では、間接強制とは何か、認められる状況や申立ての流れについて解説します。
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目次
面会交流の間接強制とは何か?
面会交流の間接強制とは、家庭裁判所が子どもとの面会に応じない監護親に対して、制裁金を課して心理的にプレッシャーをかけ、面会交流を促す制度です。
調停や審判で決定したとおりに面会交流の義務が履行されない場合、裁判所への申立てによって行われる方法です。
面会交流の間接強制が認められる条件は?
面会交流の間接強制が認められるには一定の条件が必要です。以下でそれぞれ解説します。
調停・審判で面会交流の債務名義を取得している
面会交流の間接強制を行うには、調停や審判での債務名義の取得が必要です。
面会交流の間接強制は、調停または審判で定められた義務を履行しない義務者に対して行われるものです。履行を促すためには、面会交流の内容について記されている調停書や審判書が必須です。
当事者同士の話し合いで合意しただけでは、間接強制は求められません。調停書や審判書といった債務名義がない場合は、この時点で合意による履行を求めるために、まず面会交流調停を申立てましょう。
面会交流の内容が具体的に特定されている
面会交流の間接強制が認められるためには、具体的に面会交流の取り決めがされていなければいけません。
民事執行法上、執行を開始するためには義務の内容を特定することが要求されるからです。
最高裁は、この要求を満たす条件として、以下の3つの内容を特定すべきとしています(最高裁第一小法廷 平成25年3月28日決定)。
- 面会交流の日時または頻度
- 各回の面会交流の時間の長さ
- 子の引渡しの方法
例えば、1か月に2回、土曜か日曜、1回の面会交流の時間は6時間という取り決めでは、曜日が特定されておらず、子の引渡し方法も明示されていないので間接強制が認められない可能性があります。
面会交流の取り決めをする際には、面会交流を拒否された場合に備えて、先述した3点を満たす文言を策定する(審判の場合には裁判所に策定してもらう)ことが必要となります。
なお、実務では、上記最高裁の判示のあと、間接強制可能な条件を策定する際、最高裁の肯定事例における面会交流条項の文言が用いられることが多くなりました。
面会交流の間接強制を申立てるには?
面会交流の間接強制は裁判所への申立てが必須となります。
申立ての流れ等について以下で解説します。
申立ての流れ
間接強制の手続きのおおまかな流れは、以下のとおりです。
- 調停・審判または判決等をした家庭裁判所に対して申立てをする。
- 家庭裁判所が申立てを受理したら、面会交流の義務者に対して審尋(意見を聞く手続き)が行われる。
- 審尋の結果、家庭裁判所が間接強制を認めるか否か決定する。認めた場合は制裁金を課す命令を面会交流の義務者に対して言い渡す。
申立てができる人
間接強制の申立てができるのは、面会交流調停の調停書・審判書・判決書に記載がある債権者です。
申立て先
面会交流の間接強制の申立ては、面会交流調停の調停・審判・判決等を行った裁判所に対して行います。
申立てに必要な書類
面会交流の間接強制の申立てをするにあたって、必要な書類は以下のとおりです。
- 申立書と申立書の写しを各1通(裁判所ウェブサイトから取得可)
- 債務名義(調停証書・審判書・判決書等)の正本
- 債務名義の送達証明書(債務名義を取得した裁判所で取得可)
- 申立て費用として債務名義1通につき2000円分の収入印紙
- 裁判所との連絡用の郵便切手(裁判所によって異なるので事前に要確認)
状況によっては、他の書類の提出を求められる可能性があります。
参考:子の引渡しの強制執行 | 裁判所 (courts.go.jp)
子どもが面会交流を拒否している場合はどうなるか?
相手側が面会交流を拒否する際に、子どもが嫌がっていると述べるケースが多々あります。こうした理由で面会交流を拒否できるのかどうか、以下で解説します。
子どもが嫌がるという理由で面会交流を拒否できない
最高裁は、面会交流について日時や頻度、1回の長さ、子の引渡し方法が明確に取り決められている場合、子どもが嫌がるという理由で面会交流の拒否はできないと判示しています(最高裁第一小法廷 平成25年3月28日決定)。
子どもが本当に嫌がっている場合は、面会交流の条件の変更をする調停の申立てをする必要性が出てきます。
子どもが面会交流を拒否し間接強制を否定した判例
子どもが嫌がるという理由で面会交流の拒否はできないものの、面会交流の決定から年数が経ち、面会交流を拒否する子どもの意思を尊重して間接強制を否定した判例もあります(名古屋高裁 令和2年3月18日決定)。
この事例では、子どもが小学校6年生の時点で父親との定期的な面会交流の決定がされました。ところが決定から3年後の中学3年生になった際、もともと父親との面会交流に否定的な態度だった子どもが、父親との面会交流を拒否するようになりました。
家事事件の手続き法上では、15歳の子どもであれば意思を確認して尊重すべきとの考え方から、この場合は面会交流の間接強制になじまないと判断し、間接強制の申立ては却下されました。
まとめ
面会交流の約束が守られず、もやもやした気持ちを抱えている人にとって、間接強制の申立ては有効な場合があります。
ただし、すべての状況で間接強制の申立てができるわけではありません。自分は間接強制の申立てが可能なのかどうか、判断するには弁護士のアドバイスが不可欠です。面会交流を拒否されてお悩みの方は、早めに弁護士に相談をしてください。
ネクスパート法律事務所には、離婚全般に精通した弁護士が在籍しています。
離婚を考えているけれど、面会交流について相手と合意できないと困っている方は、ぜひ一度ご相談ください。
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