子どもを養育するのに不可欠なもののひとつが学費です。
離婚をして子どもを引き取って育てていく親は、もう一方の親に対して養育費の請求ができます。
この記事では、養育費とは別に学費の請求が可能かどうかについて解説します。
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目次
養育費とは別に学費を支払ってもらえる?
一般的に学費(教育費)は、衣食住の費用とともに養育費の一部に含まれると考えられます。
教育費にいくらかかるかは、子どもの年齢や家庭の考え方によってさまざまです。
家庭裁判所は、養育費に含まれる教育費の相場の金額は、公立の小・中・高等学校の学費に相当するものと示しています。
子が私立学校に通っていたり、大学に進学したりした場合などは、養育費算定表で算出された養育費だけでは、多額の費用を賄えないことがあります。
このような場合に備えて、養育費とは別に、あるいは月々の養育費に加算して、特別の学費の負担者や負担割合などを定める方法があります。
後日の争いを避けるためにも、当事者間で合意ができるのであれば、入学金や学費の負担者を決めておくとよいでしょう。
養育費とは別に私立学校や大学の学費が認められるケース
子どもが私立学校や大学へ進学した場合、養育費とは別に相手に学費を請求し、以下に該当する3つのケースなら、認められる場合があります。
父母間での合意がある場合
父母間で、子どもが私立学校や大学へ進学するにあたって学費を負担する旨の合意があれば、養育費とは別に学費を支払ってもらえます。
離婚時に養育費に関する話し合いをして、将来子どもが私立学校や大学へ進学する可能性があるのを前提に、別途学費の支払いについて合意をとると良いでしょう。
義務者に黙示の同意がある場合
黙示の同意がある場合、養育費とは別に学費の支払いが認められるケースがあります。
離婚前に、子どもが私立学校に進学した場合は、原則として養育費の支払い義務者の承諾があったとみなされます。
父母間で、正式に私立学校や大学への進学を認めたとやり取りがない場合でも、養育費の支払い義務者が子どもの受験を応援したり、子どもとの会話の中で私立学校や大学への進学を勧めたり、進学に必要な教材を買い与えたりしたら、進学を承諾したものと解されるでしょう。
父母の学歴・生活レベルなどから私立学校や大学への進学が不相当ではない場合
父母の学歴や生活レベルなどから、子どもが私立学校や大学へ進学するのが不相当でないと考えられる場合は、養育費とは別に学費の請求が認められるケースがあります。
父母のどちらか、あるいは両方が私立学校や大学で教育を受けていた場合や、家庭環境からみて私立学校や大学へ進学するのが妥当だと考えられる場合が該当します。
特に養育費の支払い義務者の学歴が高かったり、高収入を得ていたり、社会的地位があったりする場合は、別途学費の支払いが認められる可能性が高いです。
父母間で養育費とは別に学費の負担を取り決める際に注意すべきことは?
父母間で、養育費とは別に学費の負担を取り決める際に注意すべき2点について解説します。
合意書を公正証書にする
離婚時もしくは離婚後に、父母間で養育費とは別に学費の負担を取り決める場合は、合意書を公正証書にしておきましょう。
執行認諾文言を記載した公正証書にしておけば、支払いが滞った場合に調停や裁判を経ずに強制執行ができます。
合意書を公正証書にするには、父母間で養育費や学費負担について合意がなされた後に、公証役場で公正証書を作成します。作成にあたっては、父母が両方とも同席しなければいけませんが、代理人弁護士による場合は、代理人弁護士の出席で足ります。
金額や支払時期が未確定な費用は合意書に協議条項を記載する
金額や支払時期が未確定な費用は、合意書を作成する際には、協議条項を記載しましょう。
父母間で養育費や学費について合意しても、将来子どもの教育に関して突発的な費用が必要になる場合があります。
その際柔軟に対応ができるように、【〇〇に関する費用負担については、当事者間で別途協議する】というような文言を入れておくと良いでしょう。ただし、協議が難しそうな相手であれば、将来的に困らないよう、合意書の作成は弁護士に依頼しましょう。
離婚時に取り決めてなかった場合でも養育費とは別に学費を請求できる?
離婚時に、父母間で養育費とは別に学費の請求ができる旨を取り決めていなかった場合でも、請求が可能な場合があります。
過去の裁判例で、四年制大学に進学した成人した子どもからの扶養料請求によって、大学の学費を含めた扶養料を認めた事例があります(東京高裁平成12年12月5日決定)。
未成年の子どもの親権者代理人が申し立てた扶養料調停による債務名義と親権者母が申し立てた養育費審判による債務名義があり、子どもの大学進学を理由に、その双方につき、増額請求の申立てた事例もあります。このケースでは、子どもが20歳に達したのを契機に、扶養料調停の金額を学費分も含めて増額変更して債務名義を一本化しています。つまり母からの養育費増額請求は却下され、子どもからの扶養料増額請求が認められたというわけです(大阪高裁平成30年3月15日決定)。
なお、上記判例はいずれも監護親からの養育費請求としてではなく、子どもから非監護親への扶養料請求を認めた事案です。これらは、子どもが成人したら子ども自身が監護親に対して扶養料を請求すべきという考え方が基礎となっているものと考えます(大阪高裁昭和 57 年 5 月 14 日決定)。
もっとも、事前の取り決めがなかった場合に、後日学費の負担を請求できるかどうかは、当初の養育費の額や当事者の経済状況、学費等諸般の事情を総合的に判断して決められるため、一概には言えませんが、大学進学の費用の負担を求める必要性が生じた時点で、子どもが成人している場合には、子どもから非監護親に学費を請求して認められる場合もあるのでご検討ください。
学費の支払いで合意できない場合は弁護士に相談を!
離婚時には想定しなかったことが起きて、子どもの進路に変更があった場合、一人の力では解決できず、相手に学費を請求したいと考える人もいらっしゃるでしょう。その際に話し合いで合意に至らない場合は、早めに弁護士への相談をおすすめします。
弁護士であれば、代理人として相手と交渉が可能です。離婚後に相手と直接顔を合わせて話し合いをする精神的負担が軽減されますし、感情的にならず冷静な視点で交渉ができます。相手も弁護士が代理人として話し合いを求めてきたら、無視をしたり無下に断ったりせずに対応をする可能性が高いです。
弁護士が間に入っても話し合いで解決できない場合は、調停・審判の申立てを検討しなければなりませんが、そうなった場合に、弁護士であれば代理人として手続きを行えます。
話し合いの段階から弁護士が対応していれば、どのような流れで調停に至ったかと理解しているため、スムーズなやり取りが期待できます。
まとめ
離婚して子どもを育てている人にとって、養育費と学費は切実な問題です。離婚時に想定していたとおりに子どもが進学するとは限りませんし、成長するにつれて将来の夢や考え方が変わるのはごく自然なことです。
そうなった時に、子どもが望むように進学させたいと願う一方で、学費の問題が重くのしかかり子どもにOKを出せないのは親としてつらいことでしょう。この問題は、離婚後に子どもを引き取った側の親だけが抱えて悩むのではなく、両親が共に考えて解決する問題なので、諦めずに相手方と話し合いをしてみましょう。
子どもの養育費と学費に関して悩みをお持ちの方は、ぜひ弁護士にご相談ください。
ネクスパート法律事務所には、離婚や養育費に関する案件を多数手がけてきた弁護士が在籍しています。それぞれの状況やお悩みに沿ったアドバイスが可能ですので、一度ご相談ください。