離婚を決めたら、将来の生活設計をしっかり立てなければいけません。
その一つが年金問題です。
この記事では、年金分割制度とは何か、離婚時に年金分割をしないとどうなるかについて解説します。
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目次
離婚時に年金分割をしないとどうなるか?
離婚時に年金分割ができるにも関わらず手続きをしないと、将来もらえる年金の受給額が減少し、老後の生活が不安定になる可能性があります。
年金分割の制度の概要や対象となる年金については後述します。
離婚時の年金分割制度とは何か?
離婚時の年金分割制度は、専業主婦(夫)など、将来受け取れる年金額が乏しい人が離婚後、生活に困らないように将来受け取る年金額を再計算し、年金を受け取れるようにする制度です。
この制度は、婚姻期間中に納めた保険料は夫婦の協力のもと共同で納めたものとの考えが根底にあります。
制度の概要
年金分割制度とは、夫婦が離婚をする際に婚姻期間中の厚生年金保険料納付記録(年金額の計算の基礎となる標準報酬)を分割することができる制度です。夫婦が受け取る年金額の格差や離婚した専業主婦(夫)の貧困等の問題を解消するために、2007年にスタートしました。
それ以前は専業主婦(夫)が離婚すると将来受け取る年金はすべて配偶者のものとなり、専業主婦(夫)だった者は、老後不安定な生活を強いられました。
会社で働いて給料を得た者だけでなく、家事に従事する者も同様に重要な役割を担っていると考え、専業主婦(夫)を守るために本制度が制定されました。
対象となる年金
年金分割の対象となるのは、会社員や公務員等の被用者が加入する厚生年金(2015年10月1日前の共済年金を含む)です。
以下の図でいうと、2階部分が分割の対象となります。
離婚時に年金分割ができるのは、元配偶者が会社員や公務員であるケースのみです。
誰もが加入する国民年金(図の1階部分)や私的年金(図の3階部分)は分割の対象となりません。
例えば、元配偶者が自営業者で、夫婦とも婚姻中は国民年金のみに加入し、厚生年金(2015年10月1日前の共済年金を含む)に加入していなかった場合は年金分割ができません。
分割の種類
年金分割には次の2つの種類があります。
- 合意分割
- 3号分割
合意分割
合意分割とは、離婚等をした場合で、次の条件を満たすときに、夫婦の一方または双方からの請求により婚姻期間中に納めた厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を当事者間で分割できる制度です。
- 2007年4月1日以降に離婚し、婚姻期間中の厚生年金記録があること
- 当事者が合意しているか、裁判手続きで按分割合を定めていること
- 請求期限(原則、離婚をした翌日から起算して2年以内)を経過していないこと
夫婦間の話し合いで年金分割の割合を定めたときは、夫婦2人(それぞれ代理人可)が揃って、年金事務所に合意書を持参して手続きをしなければいけません。
夫婦間で合意がまとまらない場合は、当事者の一方の求めにより、裁判所が按分割合を定められます。この場合は、当事者のいずれかが、年金事務所等で手続を行う必要があります。
なお、合意分割の請求が行われた場合、婚姻期間中に3号分割の対象となる期間が含まれるときは、合意分割と同時に3号分割の請求があったとみなされます。
3号分割
3号分割は、離婚をした場合で、次の条件を満たすときに、国民年金の第3号被保険者(※)
であった方からの請求により、2008年4月1日以後の婚姻期間中の第3号被保険者期間における元配偶者の保険料納付記録を2分の1ずつ分割できる制度です。
- 2008年5月1日以降に離婚し、2008年4月1日以降に国民年金の第3号被保険者期間があること
- 請求期限(原則、離婚をした翌日から起算して2年以内)を経過していないこと
※第3号被保険者:厚生年金保険の被保険者(2015年10月1日前の共済年金の組合員を含む)の被扶養配偶者で20歳以上60歳未満の配偶者 |
第3号被保険者が単独で(当事者の合意なく)年金分割の申請ができるのが合意分割と違う点です。
ただし、分割請求をした日において、厚生年金の被保険者または被保険者であった方が障害厚生年金の受給権者で、この分割請求の対象となる期間を年金額の基礎としている場合は、3号分割請求は認められません。
年金分割を考える上で知っておくべきことは?
離婚を決めたら年金分割を忘れないように行いたいものですが、そのために知っておくべきことは何か解説いたします。
離婚後2年以内に手続きをしなければならない
年金分割の手続きは、原則離婚をした翌日から起算して2年以内にしなければいけません。年金分割は自動的にされるものではなく、年金事務所での手続きが必要です。合意分割の場合は夫婦2人で請求しなければならないので、離婚後相手方と連絡が取れなくなるリスクを考えて早めに手続きを済ませましょう。
3号分割の場合は元配偶者との合意は不要なので、単独で手続きができます。
国民年金は分割できない
すべての人が加入する国民年金は年金分割の対象となりません。
会社員や公務員等の被扶養者が加入する厚生年金(2015年10月1日前の共済年金を含む)のみが年金分割の対象となります。
共働きの場合でも年金分割ができる
年金分割を受けられる対象は専業主婦(夫)だけではなく、共働きの場合も可能です。
3号分割の場合は、厚生年金(2015年10月1日以前の共済年金を含む)の被保険者の配偶者として、国民年金の第3号被保険者に該当していた方が対象となります。
3号分割の対象とならない期間(共働き期間等)については、合意分割制度による分割を受けられます。
まとめ
年金分割は、将来受け取れる年金額が乏しい人が生活に困らないようにできた制度です。
合意分割の場合は当事者同士が話し合って合意し、一緒に手続きをしなければならずハードルが高いと感じる人もいるでしょう。実際に離婚の話し合いで、相手方が年金分割を請求しないように迫るケースもあるといいます。
早く離婚を成立させたいために、年金分割の交渉を諦めるのはやめましょう。相手方との話し合いが難航した場合は、離婚に強い弁護士に相談・依頼することをおすすめします。
ネクスパート法律事務所では、離婚案件を多数手がけている弁護士が在籍しています。
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