養育費は、父母の資力や学歴などの家庭環境を考慮して支払い条件を定めるのが一般的ですが、子どもと離れて暮らす親が無職の場合は、養育費を請求できないのでしょうか?

子どもの年齢によっては、長期間にわたって支払われる養育費ですが、生活環境に変化が生じたり、さまざまなアクシデントに遭遇したりすることもあり得ます。離婚後、養育費を払っている元配偶者が無職になった場合、養育費は請求できなくなるのでしょうか?

この記事では、主に以下の点について解説します。

  • 子どもと離れて暮らす親が無職の場合、養育費を請求できるのか
  • 無職を理由に養育費の減額を求められた場合、どのように対応すべきか

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相手が無職でも養育費の支払いを請求できる?

ここでは、相手が無職でも養育費の支払いを請求できるのか解説します。

無職でも収入があると認められるケースとは?

無職だからといって、必ずしも養育費の支払い義務を免れるわけではありません。

働けるにもかかわらず仕事をしないときは、潜在的稼働能力に応じた収入を認定して、相当額の支払義務が認められることがあります。このような場合には、厚生労働省が毎年公表している賃金センサスを用いて収入を認定し、養育費を算定します。

会社を退職して雇用保険を受給している場合は、その給付金額を養育費の算定の基礎となる収入としてみなされることもあります。

無職で収入があると認められにくいケースとは?

無職であることにやむを得ない事情がある場合は、収入の推定を行わず、現実の収入を基礎として養育費を算定します。

無職で収入があると認められにくい(潜在的稼働能力がないと判断されやすい)ケースは主に下記の2つです。

うつ病や障害により休職している場合

うつ病の発症や交通事故で重度の後遺障害を負って休職している場合は、稼働が制限されているため、実収入を養育費算定の基礎収入とする傾向があります。

しかし、一時的に働けなくても治癒すれば養育費を支払ってもらえる可能性はあります。

未就学児の育児や老親の介護で働けない場合

育児や介護で働けない場合は、収入がないことにやむを得ない事情があると認められることがあります。

しかし、子どもが1人で3歳を超えている場合や、週に数回の介護であれば、短時間の稼働は可能と判断される傾向があります。

収入がないことにやむを得ない事情があるかどうかの判断には、疾病、育児・介護、高齢等の事情に加え、潜在的稼働能力を活かす努力をしているかどうかが考慮されます。

養育費の請求を無視されたら?

相手が話し合いに応じず養育費の請求を無視されたら、内容証明郵便で養育費を請求しましょう。それでも無視するなら、家庭裁判所の調停・審判での解決を図ります。

元配偶者から無職を理由に養育費の減額を請求された場合の対処法は?

養育費を取り決めた後、支払いの途中で、元配偶者から無職を理由に養育費の減額を求められた場合、応じなければならないのでしょうか?

ここでは、元配偶者から無職を理由に養育費の減額を請求された場合の対処法について解説します。

多少の減額であれば、応じたほうがよい場合がある

無職になったからといって、養育費の支払い義務がなくなるわけではありません。

しかし、現実に収入がなければ、養育費を支払ってもらうことは容易ではないでしょう。そのため、元配偶者から養育費の減額を求められた場合、多少の減額であれば応じたほうがよいことがあります。相手の要望を受け入れることで養育費の不払いを防げれば、養育費がゼロになることを回避できます。

養育費の踏み倒しは許されない!未払いになったときにとるべき方法とは?

相手が嘘をいっていないか、資料を提示してもらう

養育費の支払いを逃れるために、無職になったと嘘をついている可能性もあります。

相手が嘘を言っていないか、無職になった理由などを詳しく聞き取り、証拠となる資料(診断書、解雇通知書など)を提示してもらいましょう。

金額をどのタイミングでもとに戻すのか、きちんと書面を交わしておく

養育費を減額したままダラダラと続けていくのは得策ではありません。減額する期間をきちんと決めて、どの時点で元の金額に戻すのか話し合いをしましょう。話し合いで合意ができたら、書面を交わします。

無職の元配偶者に養育費の請求をする場合、弁護士に相談するメリットは?

ここでは、無職の元配偶者に養育費を請求する場合、弁護士に相談するメリットについて解説します。

弁護士を代理人にすることで、相手が嘘をつけないようにする

弁護士を代理人にすることで、相手に養育費請求についての本気度が伝わります。そのため相手も都合のよい嘘でごまかしたりする可能性が低くなります。

無職でも養育費を受け取るために取り得る手段を検討できる

無職=収入ゼロというわけではありません。資産や不労所得がある場合には、それらを差し押さえることで養育費を回収できる可能性もあります。弁護士に相談すれば、養育費を早期に受け取るために取り得る手段があるかどうかなどのアドバイスを得られるでしょう。

まとめ

養育費を支払う側が無職になったら、焦りや不安から冷静に対処できないこともあるでしょう。しかし、無職になったからといって、養育費の支払い義務がなくなるわけではありません。

無職だから仕方がないと諦めず、まずは弁護士に相談をしてみましょう。無職でも不労所得や資産があれば、養育費を回収できることもあります。

ネクスパート法律事務所には、多数の離婚案件を手掛けてきた弁護士が所属しています。困ったことや疑問点があれば、お気軽にご相談ください。