離婚時に財産分与をする際に、持ち家をどのように扱うか悩むご夫婦が多いです。

特に住宅ローンを組んで購入している場合は、返済を誰が続けるのか、あるいは売却をするのか等の問題が発生します。

この記事では、離婚時に家を財産分与する前に確認すべきことや手続きの流れについて解説します。

目次

離婚時の財産分与とは?

離婚時の財産分与とは、婚姻期間中に夫婦で築いた財産を2人で公平に分けることです。

持ち家や貯金だけでなく、住宅・車のローン等の負の財産も考慮して財産の分け方を決めます。

財産分与の対象となる財産・対象とならない財産については、「離婚時に財産分与の対象とならないものは何か?」をご参照ください。

持ち家を財産分与する前に確認すべきことは?

持ち家を財産分与する前に確認すべきことは、以下の4つです。

住宅ローンの支払い状況を確認する

住宅ローンの支払い状況を確認しましょう。

住宅ローンの契約は誰がしているのか、何年のローンを組んでいて残債はどのくらいあるのかなどを確認しましょう。

家の名義が誰なのか確認をする

家の名義が誰なのか確認をしましょう。

通常、ローンを組む際には、所有権移転登記申請と同時に抵当権設定登記をします。

法務局で家の登記事項証明書を取得して、現在の権利関係を確認しましょう。

家を売るのか売らないのか決める

家を売るのか売らないのかを決めましょう。

家を売る場合は、どのぐらいの金額で売れそうか査定をしてもらわなければいけません。

査定した金額とローン残債のバランスを考えながら、売るのか売らないのかを決めます

家を売らない場合はどちらが取得するか決める

家を売らない場合は、どちらが家を取得するか決めます。

家を取得しない人に対して、代償金を支払う必要があるかどうかも検討しましょう。

住宅ローン債務のない不動産や、家の査定額が残ローン額を上回る不動産をどちらか一方が取得する場合、家を取得する人が他方に対して代償金を支払うか、他の分与対象財産を取得させることが多いです。

例えば、家以外に分与対象財産がなく、一方の当事者が評価額2000万円の家を単独で取得するとします。この場合、家を取得した人が他方に対して1000万円を支払うことが一般的です(分与割合が2分の1の場合)。

持ち家の財産分与の方法については、「離婚の際、持ち家はどうなる?|ケース別に解説」でも詳しく説明しています。

離婚時の財産分与で持ち家を売却する場合の手続きの流れ

離婚時の財産分与で、持ち家を売却する場合の手続きの流れは以下のとおりです。

オーバーローンの場合は債権者と交渉して売却の同意を得る

家の査定をし、住宅ローンの残債が査定額より多い(オーバーローン)場合は、債権者と交渉をして売却の同意を得なければいけません

売却する際には抵当権抹消登記をしなければならないため、債権者からはローンの残債を一括で支払うように求められます。

売却価格に関しても債権者の同意を得る必要があります。

不動産業者を選定して媒介契約を締結する

不動産業者を選定して、媒介契約を締結します。

媒介とは不動産業者に間にはいってもらい、買主を探してもらう方法です。

とにかく早く売却したいのであれば、複数の不動産会社と媒介契約を締結してもよいですし(一般媒介契約)、面倒なやり取りはできるだけ避けたい場合は、特定の不動産業者と媒介契約を締結したほうがよいでしょう(専属選任媒介契約もしくは専任媒介契約)。

購入希望者との交渉を経て売買契約を締結する

物件に対して購入希望者が現れたら、交渉を経て売買契約を締結します。

不動産業者と媒介契約を締結している場合、購入希望者との交渉や契約書類等の作成は、不動産業者が行ってくれます。

決済・引渡し後に売買代金を分配する

購入者との決済・引渡しが終了したら、売買代金を分配します。

具体的には、売却代金から売却に必要な諸費用や税金、住宅ローンが残っている場合はローンを控除し、その残額を当事者間で分与割合に応じて分配します。

オーバーローンの場合は当事者間で分配する金銭がありません。この場合、残債務の支払者や負担割合を、あらかじめ当事者同士で決めます。

ローンが残っている持ち家の財産分与については、「住宅ローンが残っている家の財産分与はどうなる?」も参考にしてください。

離婚時の財産分与で持ち家を維持する場合の手続きの流れ

離婚時の財産分与で、持ち家を維持する場合の手続きの流れは以下のとおりです。

オーバーローンの場合は残債務の支払者を決める

オーバーローンの場合は、残債務をどちらが支払うか決めます。

支払い能力はもちろんのこと、離婚後の生活状況を考慮して検討しなければいけません。

債務者の変更等を要する場合は債権者と交渉をする

ローンの支払者が変更になる場合は、債権者とその旨を交渉します。

免責的債務引受けや借り換えによって、債務者の変更や負担割合を定めた履行の引き受けを検討する場合、事前に債権者と交渉して合意を得なければいけません

配偶者が連帯債務者や連帯保証人になっていて、当該配偶者が家を取得しない場合は、連帯債務者・連帯保証人から除外するかどうかを検討しなければいけません。

ただし、除外するためには債権者の承諾を得なければなりません。新たな連帯債務者・連帯保証人を加えるなどの事情がない限り、承諾してもらえる可能性は極めて低いと考えたほうがよいでしょう。

補足

債権者の承諾を得られない場合、当事者間で、ローン負担者を変更する旨のどちらかが月々いくらの住宅ローンを支払う等の合意をするケースもあります。

例えば、ローン契約上の債務者がAで、離婚後はBがローンを負担する(BがAに毎月ローン返済額に相当するお金を支払う)約束をした場合などです。

しかし、これは、あくまで当事者間の合意に過ぎません。

そのため、仮にBがAに対してお金を支払わず、ローンの返済が遅れた場合、債権者からの請求に対して、Aは「契約上の債務者は私だが、Bが負担すると合意したから、私には住宅ローンを支払う義務はない。」と主張できません。

ペアローンの解消方法については、「ペアローンは離婚時にどうなる?名義変更やおすすめの処理方法を紹介 」の記事もご参照ください。

必要に応じて家の名義変更手続きをする

財産分与で家を取得する人の名義に変更する所有権移転登記の手続きをしましょう。

共有名義であれば、単独取得者への共有持分の移転が必要です。

登記の原因は財産分与で、その際に不動産の評価額の2%にあたる登録免許税がかかります。

家の敷地が借地の場合の財産分与はどうなる?

家の敷地が借地の場合、財産分与はどのようにすればよいか以下で解説します。

家を売却する場合は地主の承諾が必要

家の敷地が借地の場合、家と一緒に借地権を譲渡しなければならないため、地主の承諾が必要です。

家の売却をする前に地主に対して承諾をしてもらえるかどうか、借地権の譲渡にあたって条件はあるか、譲渡承諾料についてどのような意向があるかを確認しておきましょう。

地主から承諾を得て家の売却先が決定したら、地主に対して新しい買主の情報を共有しておきましょう。

家の名義を変更する場合も原則として地主の承諾が必要

財産分与によって、土地の賃借人となっている人以外が家を取得する場合、原則として地主の承諾が必要です。

信頼関係を破壊するに足りない特段の事情がある場合は、例外的に地主の承諾は不要とした判例もありますが(最判昭和41421日)、その場所に引き続き住むのであれば、地主の承諾を得て新たに賃貸借契約を締結したほうがよいでしょう。

なお、すでに土地の賃借人となっている人が家を取得する場合は、地主の承諾は不要です。

土地の賃借人を変更する場合は、地主と交渉し、承諾を得られたら新たに土地の賃貸借契約を締結し登記をします。

借地の場合、家の借地権自体に価値があるとして財産分与の際に考慮することはあまり多くありません。
そのため、代償金の支払いの有無や他の財産を取得させる等で調整を検討することも少ないです。

家の財産分与についてよくあるQ&A

家の財産分与について、よくある質問と回答を紹介します。

相続で取得した家は財産分与の対象になるか?

夫婦のどちらかが相続で取得した家は、財産分与の対象となりません。

相続で取得した家は、特有財産だからです。

家の頭金を特有財産から出している場合は分配時に考慮される?

家を購入する際に、頭金を特有財産から出している場合は、財産分与時に考慮されます。

実務では、以下の計算式で算出することが一般的です。

財産分与の対象となる額=自宅の評価額×(1-特有財産の額÷取得額)

財産分与で取得した家に税金はかかるか?

原則、財産分与で取得した家に贈与税や不動産取得税はかかりません。

ただし、財産を多くもらい過ぎた場合には、例外的に贈与税や不動産取得税がかかることがあります。

家の財産分与でお悩みの場合は弁護士に相談を

家の財産分与でお悩みの場合は、弁護士に相談をしてください。

財産分与の中に家が含まれていると、住宅ローンが絡んできたり他の財産との兼ね合いがあったりして複雑になるケースがほとんどです。

財産分与を平等に行い、後々トラブルにしないためにも弁護士に依頼をして話し合いを進めたほうがよいでしょう。

まとめ

この記事では、家を財産分与する前に確認すべきことや手続きについて解説しました。

オーバーローンの家については、簡単に売却ができず金融機関や保証人に対しても協議を依頼しなければなりません。家を売却しない場合も、やらなければいけない手続きが生じる場合があります。

ネクスパート法律事務所には、財産分与をはじめとして離婚全般に強い弁護士が在籍しています。
公平な財産分与をするためにも早い段階でご相談いただくことをおすすめします。

初回相談は30分無料となりますので、お気軽にお問い合わせください。