配偶者がスマホを見る回数が増えたり、肌身離さずスマホを持ち歩いていたりすると、浮気を疑う方もいらっしゃるのではないでしょうか。

スマホや携帯の通知画面やLINEのトーク画面から配偶者が異性とやり取りしていることを発見し、浮気の慰謝料を請求したいと考える方もいるでしょう。

浮気を疑う証拠がLINEのやり取りしかない場合も慰謝料は請求できるのでしょうか?

一般に、LINEのやり取りだけの関係では、慰謝料を請求するのは困難です。

しかし、LINEの内容から肉体関係やこれに準ずる関係が推認できれば、慰謝料を請求できる可能性があります。

この記事では、LINEだけの関係で浮気の慰謝料を請求できるかどうかについて解説します。

LINEだけの関係で浮気の慰謝料は請求できるか

ここでは、LINEだけの関係で浮気の慰謝料を請求できるかどうかについて解説します。

離婚原因としての不貞行為の定義と慰謝料請求原因としての不法行為

不貞行為による慰謝料請求権の問題を検討する前に、不貞行為の定義を確認しましょう。

離婚原因としての不貞行為

離婚原因としての不貞行為の定義について、最高裁判所は、「配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいうのであって、この場合、相手方の自由な意思にもとづくものであるか否かは問わない。」と狭義に解釈しています(最判昭和481115日)。

つまり、離婚原因となる不貞行為は、配偶者以外の第三者と肉体関係を持つことを指すので、肉体関係がない場合は離婚原因としての不貞行為にあたりません。

慰謝料請求原因としての不法行為

慰謝料請求原因としての不法行為(民法709条)は、肉体関係に限定せず、より広く捉えた下級審判例が多くあります。

例えば、東京地判平成171115日は「第三者が相手配偶者と肉体関係を結んだことが違法性を認めるための絶対的要件とはいえない」と示しています。

東京地判平成221221日では「継続的な肉体関係がなくても、第三者の一方配偶者に対する行為が、他方配偶者の婚姻共同生活の平和を毀損するものであれば、違法性を有するものというべきである」判示しました。

肉体関係は不貞行為の典型的な態様ですが、慰謝料請求の原因となる不法行為の成立には、必ずしも肉体関係が要求されているわけではありません。

肉体関係がなくても浮気の慰謝料を請求できる可能性がある

慰謝料請求の原因となる不法行為には、肉体関係を推認させるような行為や既婚者の交際として社会的妥当性の範囲を逸脱する行為が含まれます。

したがって、肉体関係がなくても慰謝料を請求できる可能性があります。

ただし、肉体関係がない場合は、不法行為の成立の立証が困難です。LINEの内容や連絡頻度にもよりますが、単に異性とLINEをしているだけでは慰謝料は認められないでしょう。

LINEの内容から不法行為の成立が認められても、肉体関係がある場合に比べて慰謝料はわずかな金額に留まる可能性が高いでしょう。

浮気の証拠として有効なLINEのやり取りとは

肉体関係を推認させるやり取りや、肉体関係はなくとも社会通念上許容される範囲を超えて親密な関係を築いていたと考えられるやり取りがある場合は証拠として保管しましょう。例えば、以下のようなやり取りがあれば、肉体関係を推認させる証拠となる可能性があります。

  • 「昨日のホテルにまた行きたいね」など一夜を共にしたことがわかるやり取り
  • 「次は23日で〇〇に行きたいな」など2人で旅行に行ったことがわかるやり取り
  • 「帰りに〇〇買ってきて」など相手の家に行っていることがわかるやり取り
  • 性交渉ないし性交渉類似行為を撮影した写真が添付されているやり取り

肉体関係はなくとも社会通念上許容される範囲を超えて親密な関係を築いていたと考えられるやり取りとしては、以下のようなものが挙げられます。

  • キスをしたり抱きしめ合ったりしたことが分かるやり取り
  • 「近い将来、結婚してください。子供も欲しい。」など将来を約束するやり取り

なお、「好き」「愛している」等の愛情表現だけでは不法行為の成立を否定される傾向があります。ただし、LINEメッセージのみでは証拠として弱くても、他の証拠と合わせることで不法行為の成立が認定される可能性はあります。

 

LINEで浮気の証拠を見つけた時の対処法

ここでは、LINEで浮気の証拠を見つけた時の対処法を紹介します。

自分のスマホで撮影する

LINEのやり取りを証拠とする具体的な方法としては、以下の2つの方法が考えられます。

  • LINE画面を自分のスマホやカメラで撮影する
  • トーク履歴を印刷する

ただし、後者の場合は、写真やスタンプなどは残らないため、証拠化の方法としては撮影写真を残すケースが多いでしょう。

前後の文章も残しておく

LINEのやり取りを撮影する際は、送受信日時を明確にしなければなりません。

やり取りの日時がわかるように撮影し、前後の文章も残しておくことをおすすめします。

勝手にスマホを見ても大丈夫?

ロックされているスマホや携帯電話のパスワードを同意なく解除してLINEを閲覧する行為は、プライバシーを侵害する不法行為ないし不正アクセス行為の禁止等に関する法律違反に該当する可能性があります。

違法に入手した証拠は、裁判で有効な証拠として取り扱われるのでしょうか?

不貞行為を疑うについて相当の理由がある場合は、配偶者に無断でスマホや携帯電話から情報を取得しても証拠能力が否定されることは基本的にはないでしょう。

しかし、証拠の収集の仕方に社会的にみて相当性を欠くなどの反社会性が高い事情がある場合は、証拠能力が否定される可能性があります。例えば、相手を脅して精神的・肉体的自由を拘束して証拠を取得した場合や家屋に侵入して証拠を入手した場合などです。

刑事訴訟法が証拠能力について詳細な規定を設けているのに対し、民事訴訟法では自由心証主義が採用され、一般的に証拠能力を制限する規定が設けられていません。

そのため、配偶者に無断でスマホや携帯電話から情報を取得する場合は、裁判官の判断によっては違法収集証拠として排除されるケースがあることを念頭に置いておかなければなりません。

LINE以外で浮気の証拠になるものとは

ここでは、LINE以外で浮気の証拠となりうるものを紹介します。

浮気の慰謝料請求の際に有利になる証拠として、以下のようなものがあります。

  • 浮気相手との旅行写真
  • ホテルや旅館などで同室に宿泊し一夜を共にしたことが分かる写真や映像
  • 浮気相手とのメール・通話履歴
  • レシートやクレジットカードの利用明細書(ホテル、飲食店等の利用記録等)
  • ラブホテルが発行したサービス券やライター
  • 交通系ICカードの利用履歴(浮気相手の自宅や職場の最寄り駅の利用履歴等)
  • GPSやカーナビゲーションの履歴(ホテルや相手の自宅に滞在している記録等)
  • 浮気相手からの手紙やプレゼント
  • 手帳・スケジュール帳・日記等
  • 不貞行為(ないしそれに準ずる行為)を目撃したとする第三者の証言
  • 興信所・探偵社等の調査報告書

一つの証拠だけでは不貞行為を認定してもらうのが難しくても、複数の証拠を合わせることで不貞行為を立証できることもあります。

浮気の慰謝料を請求する方法

ここでは、浮気の慰謝料を請求する方法を紹介します。

交渉による請求

 浮気相手に対する慰謝料請求は、一般的には、訴訟提起前に裁判外での解決を目指すケースが多いです。裁判外で解決するためには、まずは浮気相手に対して慰謝料を請求する意思を伝えることから始めます。

慰謝料を請求する意思表示の方法には、次の3つの方法があります。

  • 浮気相手に連絡して直接会って話し合う方法
  • 内容証明郵便で慰謝料を請求する書面を送付する方法
  • 弁護士に交渉を委任する方法

どの方法を選ぶかは、浮気相手が話し合いに応じる見込みや交渉による解決で目指す条件(慰謝料の額など)を踏まえて判断しましょう。

浮気相手が不貞行為やそれに準ずる行為を素直に認め、当事者間で慰謝料の支払条件等に合意できれば、交渉開始から示談成立まで比較的スピーディに進められます。

訴訟提起による請求

当事者間で話し合いがまとまらないときは、裁判所の調停手続きを利用する方法もありますが、一般的にはあまり利用されていません。

浮気相手が調停での話し合いに応じる見込みもない場合には、訴訟による解決を図ります。

まずは裁判所に訴状を提出し、訴訟の提起をします。訴状には、請求する慰謝料の金額、慰謝料を請求する根拠となる不貞行為の詳細を記載します。それを裏付ける客観証拠も併せて提示します。

その後、被告(浮気相手)の反論やそれに対する原告(慰謝料を請求する人)の再反論という流れで進行します。

事案によっては、当事者双方から直接話を聞く当事者尋問が実施されます。原告と被告の双方が裁判所に呼ばれるため、ここで初めて浮気相手と顔を合わせることもあります。

不貞行為に基づく慰謝料請求事件では、裁判所から和解を打診されるケースが多いです。裁判官から提示された和解案に当事者双方が合意すれば、裁判上の和解で終了するのが一般的です。

和解に至らなかった場合には、慰謝料の金額がいくらになるのかを裁判官が判断して、判決が出されます。

まとめ

LINEだけの関係では浮気の慰謝料を請求することが難しいですが、LINE以外の証拠を合わせることで浮気が立証できれば慰謝料を請求できます。

慰謝料請求に有力な証拠を集めるには、弁護士のアドバイスを受けることをおすすめします。

肉体関係がない場合でも慰謝料を請求できるケースもあるので、諦めずにまずは弁護士に相談してみましょう。

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