婚約は結婚の約束にすぎないと思われがちですが、法的にも成立が認められた場合は拘束力があり、一方的な破棄は損害賠償の対象となることがあります。

結婚式場のキャンセル料や婚約指輪の費用だけでなく、精神的苦痛への慰謝料が請求されることもあります。

特に、妊娠や結納が絡むとトラブルは深刻化しやすくなります。

こうした婚約破棄のトラブルには、弁護士に相談することが有効です。弁護士が代理人として交渉や裁判に対応し、適切な解決へと導いてくれます。

ここでは、婚約破棄に関する弁護士費用の相場や、慰謝料・損害賠償が発生するケース、弁護士に依頼できる内容などをわかりやすく解説します。

婚約破棄に関する弁護士費用の相場

まずは、弁護士費用の内訳と相場を解説します。

相談料:30分5,000~10,000円

弁護士に話を聞いてもらうための費用です。

婚約破棄に関するトラブルの概要や、請求できる慰謝料の可能性、今後の進め方などについてアドバイスをもらう段階で発生します。

多くの事務所では30分あたり5,000円前後が相場ですが、初回無料の事務所もあります。

時間が延びると料金が加算されるため、事前に話す内容を整理しておくとよいでしょう。

内容証明の作成:数万円程度

婚約破棄に関して慰謝料や損害賠償を請求するために、弁護士が内容証明郵便を作成・送付する費用です。

弁護士に依頼すると、相手に対して強い心理的プレッシャーを与えられる点がメリットです。

費用は2〜5万円程度が相場ですが、主張内容が複雑になるほど高くなる傾向があります。

示談交渉の着手金:5~10万円程度

婚約破棄に伴う損害賠償や慰謝料について、示談交渉を弁護士に依頼するためにかかる初期費用です。

示談交渉とは、裁判を起こさずに、当事者で話し合いをして解決することを指します。

費用には、相手とのやり取りや条件の整理、合意書の作成なども含まれます。

交渉が長引くケースや、交渉が決裂して裁判に移行する場合は、さらに費用が発生することがあります。

裁判の着手金:請求額に応じて10万円~

話し合いで解決しない場合、裁判に移行する際に支払う費用です。

請求額によって段階的に料金が変わり、たとえば100万円請求する場合は10〜15万円、300万円請求する場合は20〜30万円程度が目安です。

この金額は、被告(請求を受ける側)であってもあまり変わりません。

証拠が多く整理に手間がかかったり、主張が複雑だったりするケースでは、追加の準備費用がかかることもあります。

成功報酬:得られた利益の10~20%程度

示談や裁判で慰謝料や損害賠償金を得られた場合に支払う成果報酬です。

たとえば、300万円の慰謝料を受け取れた場合、報酬として30〜60万円を支払うのが一般的です。

請求を受けた側の場合、慰謝料を減額できたことを経済的利益と評価し、成功報酬が発生することもあります。

事務所によっては、成功報酬を設けていない事務所もあるので実際に問い合わせてみましょう。

【参考:離婚の弁護士費用の相場はいくら?費用を安く抑えるには

婚約破棄で慰謝料や損害賠償金が発生するケース

婚約破棄をしたからといって、必ず慰謝料が発生するわけではありません。

ここでは、慰謝料や損害賠償の対象となる代表的なケースを紹介します。

一方的な婚約破棄

正当な理由もなく、一方的に婚約を破棄した場合は、慰謝料や損害賠償が発生する可能性があります。

特に結婚式場の予約、指輪の購入、衣装の準備など、具体的な結婚準備が進んでいた場合は、経済的・精神的な損害が認められやすくなります。

他にも、両家へのあいさつや招待状の発送などを済ませていた場合などは要注意です。

正当な事情がないにもかかわらず突然破談にするのは、法的にも不誠実とみなされやすいです。

不貞行為による婚約破棄

婚約中に不貞行為(浮気や不倫)があった場合、それが原因で婚約が破談になれば、婚約者に対して慰謝料を請求できる可能性があります。

不貞行為は結婚を前提にした信頼関係を著しく傷つけるものであり、精神的苦痛が大きいため、損害賠償が認められやすいです。

婚約者だけでなく、浮気相手に対しても損害賠償請求が認められることがあります。

【参考:浮気・不倫等で慰謝料を請求された方に向けた無料相談窓口【東京】

暴力やモラハラによる婚約破棄

暴力やモラハラが原因で婚約を破棄した場合、加害者の方が慰謝料を支払う立場になります。

暴言や威圧的な態度、精神的に追い詰めるような言動は、明らかな非があると判断されやすく、正当な理由のある婚約破棄とみなされます。

慰謝料請求には証拠が必要になるためLINEや録音、診断書などを用意できるとよいでしょう。

婚約破棄してトラブルになった場合の対処法

自分が婚約破棄をしたことがきっかけでトラブルになった場合、どのように対処すればよいかを紹介します。

慰謝料請求された場合

まずは、慰謝料請求の理由や、請求金額が妥当かどうか確認しましょう。妥当な場合には、非を認めて支払いを行うか、減額交渉を行います。

誠意ある謝罪をすることで減額してもらえる可能性もあります。

一方、不当な請求だと感じた場合は、応じる前に弁護士へ相談しましょう。話し合いで解決できないときは、調停や裁判に進むことも考えられます。

【参考:慰謝料を請求された方に弁護士相談をおすすめする理由

裁判で訴えられた場合

訴状が届いたら無視せず、記載された期日までに答弁書を提出しましょう。

出廷せずに放置すると、相手の言い分がそのまま認められるおそれがあります。

事実関係や経緯を整理し、できれば弁護士に依頼して対応するのが安全です。証拠ややり取りの記録があると、主張を裏付けやすくなります。

婚約破棄に関して弁護士に依頼できること

婚約破棄をめぐるトラブルは、どちらの立場であっても、早めに弁護士に相談することで、適切な対応がとれ、不要な争いを避けられます。

ここでは、婚約破棄した側・された側それぞれが弁護士に依頼できる主な業務を紹介します。

婚約破棄された側の場合

婚約破棄された側が弁護士依頼できる内容の例は以下の通りです。

【慰謝料請求・内容証明の作成送付】
婚約破棄の精神的苦痛に対する慰謝料を請求できます。弁護士に依頼すれば、法的根拠に基づいた内容証明を作成・送付してもらえ、スムーズかつ確実な請求が可能になります。

【結納金や婚約指輪の返還請求】
婚約時に渡した結納金や婚約指輪は、返還請求をする権利があります。弁護士を通じて請求すれば、相手が返還に応じる可能性も高まります。

【婚約費用の損害賠償請求】
式場キャンセル料や衣装代など、婚約に関連して支出した費用は損害として請求できる場合があります。弁護士が請求内容を整理し、損害の妥当性を主張してくれるので安心です。

【示談交渉・和解書の作成】
トラブルを長引かせたくない場合、示談による解決が有効です。弁護士が代理人として交渉を行い、公正な和解書を作成することで、後々のトラブルを防ぐことができます。

【裁判の代理人となる】
相手と話し合いができず訴訟に進む場合、弁護士に依頼すれば裁判所への書類提出や主張立証をすべて任せられます。

【参考:婚約破棄の慰謝料を請求されたら

婚約破棄した側の場合

相手が弁護士をつけてきた場合などは、こちらも弁護士をつけることをおすすめします。以下、婚約破棄をした側が弁護士に依頼できる内容の例です。

【婚約が成立していたかどうかの判断】
本当に婚約関係だったのかを確認することは、慰謝料請求への対応を考えるうえで重要です。弁護士は証拠や経緯を踏まえて、婚約の成立・不成立を客観的に判断してくれます。

【示談交渉の代理人になる】
慰謝料や損害賠償を請求された場合でも、弁護士が代理人として交渉することで、減額や支払条件の調整が期待できます。自分で交渉しなくてよいため、感情的なやりとりを避けられる点もメリットです。

【SNSや第三者への暴露対応】
相手が婚約破棄の内容をSNSや周囲に拡散した場合、名誉毀損に該当する可能性があります。弁護士は削除要請や損害賠償請求など、法的な対応をサポートしてくれます。

【参考:慰謝料減額に強い弁護士に出会うために|口コミ以外のチェックポイント

婚約破棄の慰謝料・示談金の相場

婚約破棄によって発生する慰謝料や示談金の金額は、状況や経緯によって大きく変わります。ここでは、ケース別のおおよその相場や背景を紹介します。

婚約直後・結婚準備前の場合

婚約して間もない時期で、結婚準備が具体的に進んでいない場合は、慰謝料の相場は10〜30万円程度とされています。

ただし、婚約が成立していたこと自体を証明するのが難しいことも多く、請求が認められないケースもあります。

結婚式の準備が進んでいた場合

式場の予約、招待状の準備、衣装の手配など、結婚準備が進んでいたにもかかわらず一方的に婚約を破棄された場合、慰謝料の相場は30〜70万円程度になることがあります。

さらに、式場のキャンセル料など実費分については、慰謝料とは別に損害賠償として請求される可能性があります。

結納や妊娠があった場合

結納を交わしていたり、妊娠していたりした場合は、婚約破棄による精神的・社会的ダメージが大きくなるため、慰謝料の相場も高額になります。

一般的には50〜100万円程度とされ、妊娠中絶を伴った場合や、出産に至ったケースではさらに高額になることもあります。

【参考:婚約破棄の慰謝料相場と慰謝料を払わなくてもいいケース

婚約破棄の弁護士費用に関するよくある質問

婚約破棄で訴えるためにかかる費用は?

弁護士費用は内容によりますが、着手金が10〜20万円程度、成功報酬が得られた金額の10〜20%程度が目安です。裁判になると費用は高くなりがちです。

婚約破棄で調停をするのは無意味?

婚約破棄に関する慰謝料請求でも、家庭裁判所で調停を行うことは可能です。

ただし、強制力がないため、相手が応じない場合は不成立となります。話し合いで解決の余地があるなら、まずは調停を検討する価値はあるでしょう。

性格の不一致が原因の婚約破棄の慰謝料の相場は?

性格の不一致のみを理由とした婚約破棄では、慰謝料は高額になりにくく、相場は10〜30万円程度です。

ただし、結婚準備が進んでいたり、妊娠している状況での破棄であれば、慰謝料が100万円を超えるケースもあります。

【参考:性格の不一致・モラハラ|離婚慰謝料を相談できる法律事務所7つ

まとめ

婚約破棄は単なる約束破りではなく、相手に精神的・経済的損害を与える行為として、慰謝料や損害賠償請求が認められることがあります。

破棄の理由や状況によっては、100万円以上の請求に発展するケースもあります。

当事者間での話し合いでは解決が難しい場合、弁護士に相談することで適切な対応が可能になります。

弁護士は婚約破棄した側・された側のいずれでも依頼でき、慰謝料請求の交渉、返還請求、示談書の作成、裁判対応などを任せることができます。

費用の目安は、着手金が10〜20万円程度、成功報酬は得られた金額の10〜20%が一般的です。

早めに相談することで、トラブルが深刻化する前に解決することが望めます。