浮気相手から慰謝料請求されたら支払いを検討すべき3つのケース

  • 最終更新日: 2024.11.29

不倫関係の解消後、浮気相手から慰謝料を要求されるケースが少なからずあります。

通常、不倫関係にある当事者は、共同して、一方または双方の配偶者に対する不法行為責任を負うため、原則として浮気相手からの慰謝料請求は認められません。

ただし、あなたが浮気相手の権利を侵害した場合などには、慰謝料請求が認められることもあります。

この記事では、主に以下の点を解説します。

  • 浮気相手からの慰謝料請求が認められる可能性があるケース
  • 浮気相手から慰謝料請求されても原則支払う必要がないケース
  • 浮気相手から慰謝料請求されたら弁護士のサポートを受けるべき理由

対応方法についても説明しますので、ぜひご参考になさってください。

浮気相手からの慰謝料請求は基本的には認められない

浮気相手からの慰謝料請求は、原則として認められません。

不倫関係にある男女には、お互いに相手に慰謝料を請求する権利は原則としてないからです。
不倫は公序良俗に反するものであり、不倫関係にある男女は、一方または双方の配偶者に共同不法行為をしていることから、関係解消について法律上の保護を受けられません。

そのため、不倫の当事者は、相手から同意を得ることなく関係を解消できます。つまり、浮気相手が別れたくないと望んでいても、あなたは相手の了承を得ずに別れられます。

したがって、関係解消を理由とした慰謝料請求には、原則として応じる必要はありません。

浮気相手からの慰謝料請求が認められる可能性がある3つのケース

次のような場合は、浮気相手からの慰謝料請求が認められる可能性があります。

  • 独身と嘘をつき結婚をちらつかせて肉体関係に及んだ
  • 浮気相手が妊娠・中絶した際に非情な対応をした
  • 浮気相手と重婚的内縁関係にあった

これらのケースで慰謝料の支払い義務が生じる条件や、請求された場合の対応方法を以下で解説します。

独身と嘘をつき結婚をちらつかせて肉体関係に及んだ

既婚のあなたが独身と嘘をつき、浮気相手と肉体関係に及んだ場合は、浮気相手からの慰謝料請求が認められる可能性があります。
あなたが騙した浮気相手には、肉体関係を結ぶ相手を自分で選ぶ権利や自分の意思に反して純潔を侵害されない権利(貞操権)があるからです。

独身と偽ったり、既婚であるのに結婚をちらつかせたりして、肉体関係を伴う交際をした場合、浮気相手の性的な自由を不法に侵害したことになるため、慰謝料請求の原因となる不法行為が成立する可能性があります。

ただし、浮気相手があなたの嘘を疑いもせず軽信して交際に至った場合は、慰謝料請求が認められないこともあります。

浮気相手から貞操権侵害を理由に慰謝料を請求されたら、下表をご参照の上、慰謝料請求が認められやすい事情・認められにくい事情が存在するかを確認してみてください。

慰謝料請求が認められやすい事情がある場合は、すぐに弁護士に相談して対応方針を検討しましょう。

相場に鑑みて妥当と思われる金額以上の慰謝料を請求されたのであれば、減額交渉をすることになりますが、ご自身のケースで慰謝料の金額がいくら程度になるのかを判断するのは困難でしょう。

経験豊富な弁護士であれば、過去の裁判例や交渉実績から慰謝料の適正額を導き出せます。

慰謝料請求が認められない事情があったとしても、浮気相手から慰謝料請求の連絡が来たのであれば、無視をせず誠実に対応することが重要です。不誠実な態度を取り続けると、浮気相手がストーカー化したり、要求がエスカレートしたりする危険性もあります。

あなたが既婚であることに気づいていたと考えられる事情や言動があれば、それを証明する証拠を持って弁護士に相談することをおすすめします。

浮気相手が妊娠・中絶した際に非情な対応をした

浮気相手の妊娠・中絶に際し、あなたがろくに話し合いにも応じずに不誠実な対応をとった場合は、浮気相手からの慰謝料請求が認められることがあります。

性交渉が同意のもとに行われた以上、基本的には、浮気相手が妊娠・中絶したことだけでは、慰謝料請求は認められません。

しかし、次のような場合には、浮気相手からの慰謝料請求が認められる可能性があります。

  • 避妊していると嘘をつき、実際には避妊せずに肉体関係に及んで妊娠させた場合
  • 妊娠を告げられ途端、一方的に連絡を遮断した
  • あなたの曖昧な態度が原因で中絶時期が遅れ、浮気相手の身体的・精神的負担が大きくなった
  • 暴力や脅迫を用いて中絶を強要した

妊娠・中絶による身体的・精神的な苦痛や経済的負担は、同意のもと肉体関係を結んだ2人が、等分に分担すべきものと考えられているからです。

上記に挙げた事項のいずれか一つでも心あたりがある場合には、浮気相手からの慰謝料請求に真摯に対応すべきです。すぐに弁護士に相談して、適切な対応方法についてアドバイスを受けましょう。

なお、慰謝料の支払いを免れられる場合でも、浮気相手からの求めに応じて、中絶や出産にかかる諸費用等の半分を負担しなければならない可能性があります。

浮気相手と重婚的内縁関係にあった

浮気相手と重婚的内縁関係にあり、あなたが一方的に内縁関係を解消した場合には、慰謝料請求が認められることがあります。

重婚的内縁とは、法律上の婚姻関係にある配偶者がいるのに、別の異性と婚姻意思を持って共同生活をしている(家庭を築いている)状況です。

重婚的内縁関係の場合、重婚禁止との関係において公序良俗に反するため、原則として法律上での保護を受けられません。そのため、当事者のどちらかが重婚的内縁関係を一方的に解消したり、第三者が内縁関係を破綻させたりしても、慰謝料請求は認められないのが原則です。

しかし、法律上の婚姻関係が事実上破綻状態にあれば、他方の内縁関係が法律上の婚姻関係と同様に保護の対象となり、内縁関係の不当な破棄を原因として慰謝料請求が認められることがあります。

慰謝料が認められるかどうかやその金額の決定には、以下のような要素が考慮されます。

  • 法律上の婚姻関係にある配偶者との別居の経緯・別居期間
  • 法律上の婚姻関係にある配偶者との別居後の音信・訪問・扶養状況
  • 重婚的内縁関係の継続期間・夫婦としての生活実態
  • 重婚的内縁関係にある浮気相手との間の子の有無・子の認知の有無

法律上の夫婦の実体がなくなり、重婚的内縁関係の継続期間が10年以上の長期にわたる場合などには、慰謝料が高額になる傾向があります。

あなたが内縁関係を一方的に解消した場合でも、正当な理由があった場合には、慰謝料は発生しません。
正当な理由とは、以下のような民法770条が定める離婚原因です。

  • 内縁関係の夫・妻が浮気をした
  • 内縁関係の夫・妻からDVを受けた
  • 内縁関係の夫・妻の生死が3年以上不明である
  • 内縁関係の夫・妻が回復不能な精神病を患った
  • その他内縁関係を継続し難い重大な事由がある

保護されるべき内縁関係が認められる場合の内縁解消による慰謝料の相場は、個別的な事案によって異なりますが、100万~300万円となることが多いです。慰謝料だけでなく財産分与子の養育費(認知した子がいる場合)などの問題も話し合わなければならないことがあるため、重婚的内縁関係にあった浮気相手から慰謝料を請求されたら、弁護士に相談することをおすすめします。

浮気相手から慰謝料請求されても原則支払う必要がない3つのケース

次のような場合は、基本的に、慰謝料を支払う必要はありません。

  • 別れ話がこじれて口止め料名目で慰謝料を請求された
  • 離婚するという約束を破ったと慰謝料を請求された
  • これまで貢いだお金を返せと慰謝料を請求された

別れ話がこじれて口止め料名目で慰謝料を請求された

別れ話がこじれて、浮気相手から「別れるなら、あなたの家族や会社に不倫の事実をばらす!ばらされたくないなら、◯◯万円支払って!」などと要求されても、原則として支払う必要はありません。

不倫関係の解消においては、互いに、相手に対して何らかの法的な義務を負うわけではないからです。
したがって、関係を解消する代償として請求された口止め料手切れ金などの金銭は、法的には支払う義務はありません。

ただし、相手の要求を跳ね除けるだけでは、事態が収束しないこともままあります。
あなたが一方的に関係を解消したことで、浮気相手に被害感情が生じている中で、あなたを引き止められないことを悟った相手が、最終的に金銭の支払いを要求しているものと考えると、請求を拒否することで、さらに相手の神経を逆なでする可能性があるからです。

相手の感情や要求が激化しそうな場合には、気持ちとして手切れ金を支払うことで、穏便に不倫関係の解消を図れることもあります。

浮気相手との別れ話が拗れ、関係解消の代償として金銭を要求されてお悩みの方は「不倫相手から請求された手切れ金の支払いを検討すべき2つのケース」をご参照ください。

離婚するという約束を破ったと慰謝料を請求された

あなたが「妻(または夫)と離婚する」と述べたのに、その約束を破ったとして浮気相手から慰謝料を請求されても、原則として支払う必要はありません。

約束した当初、仮にあなたが本気で離婚するつもりであったとしても、あなたの配偶者が同意しない限り離婚は成立しないため、そのような約束にはそもそも効力が発生しないからです。

あなたが浮気相手の気を引こうとして、「妻とはうまくいってない。離婚も時間の問題」などとアピールしていたとしても、相手があなたを既婚者と認識していたことに変わりはないため、原則として責任を負うこともありません。

逆に、浮気相手は、あなたの配偶者から慰謝料を請求された場合に、あなたの言葉を鵜呑みにして、婚姻関係が破綻していると思い込んだことに過失(落ち度)があるとして、あなたの配偶者に慰謝料を支払わなければならない可能性があります。

最近の裁判例でも、「既婚者が好意を抱く異性の気を引こうとして配偶者に対する不満や自身の婚姻関係が順調ではない旨を殊更に強調することはまま見受けられる事象である」(東京地裁令和3年11月25日)として、既婚者のアプローチを鵜呑みにしたことを、浮気相手側の過失として認定しています。

これまで貢いだお金を返せと慰謝料を請求された

浮気相手があなたに貢いだお金を返せと言ってきても、応じる必要はありません。

交際中に相手から貰った金品は、通常、何かの代償として与えられたものではなく、無償によるものと考えるのが一般的です。そのため、浮気相手からのプレゼント等は、民法上の贈与に当たると考えます。
書面によらない贈与は、各当事者が撤回できますが、履行の終わった部分については撤回できないとされているからです(民法550条)。

したがって、一度受け取った金品は、法的に返す義務はありません。

浮気相手から慰謝料請求されたら弁護士のサポートを受けるべき3つの理由

浮気相手から慰謝料請求をされた場合に、弁護士のサポートを受けるべき主な理由は、以下のとおりです。

  • 配偶者にバレるリスクを抑えられる
  • 浮気相手と対等な立場で交渉してもらえる
  • 慰謝料を減額できる可能性がある

不倫とはいえ恋愛感情が絡む関係が拗れると、相手に対して、憎しみ・恨み・復讐心などを抱えやすい傾向があります。
明らかにあなたに支払い義務は生じないと考えられる場合でも、当事者間で話し合いの場を持ったところで収拾がつかないことが多いです。

ご自身で対応すると浮気相手の感情を逆撫でしてしまうことも考えられるため、第三者である弁護士を介入させることを前向きにご検討ください。

配偶者にバレるリスクを抑えられる

弁護士に依頼すると、不倫相手との連絡窓口は弁護士になるので、配偶者に知られるリスクを低められます。

不倫関係解消後のトラブルは、当事者同士での交渉が難航しやすく、感情的になった浮気相手が「奥さん(旦那さん)にバラす」などと脅してくるケースもあります。
このような場合も、弁護士が適切なタイミングで警告を与え、相手の心理を理解して交渉することで、多くのケースで事態が穏便に収束します。

弁護士であれば、将来の紛争可能性を予測し、これを防止する示談書の作成も可能です。

配偶者に知られると、さらなる紛争に発展するおそれもあるため、浮気相手から慰謝料請求をされた場合は、弁護士への相談をおすすめします。

浮気相手と対等な立場で交渉してもらえる

弁護士が、あなたに代わって相手と交渉することで、浮気相手に対する負い目から不利な条件で示談を成立させる危険を回避できます。

ご自身では相手を傷つけてしまった負い目からストレートに反論できず、相手に言われるがまま、不当に高額な慰謝料請求をのんでしまうこともあります。浮気相手が弁護士を立てている場合は、なおさら立場が弱い状況に置かれることもあります。

弁護士があなたに代わって誠実に交渉をすれば、相手から譲歩を引き出せることも多く、ご自身で交渉するよりも円満かつ早期に解決できる可能性も高まります。

慰謝料を減額できる可能性がある

浮気相手からの請求額が相場より高額であれば減額交渉が可能です。

1章で紹介した3つのケースの慰謝料の相場は数十万円~300万円程度ですが、150万円以上の慰謝料が認められるのは、相当悪質な場合です。

浮気相手が150万円以上の慰謝料を請求してきたのであれば、弁護士に依頼して相場の金額まで減額してもらうよう交渉しましょう。

弁護士であれば、裁判例の傾向や法的な権利を踏まえて説得的に交渉できます。
慰謝料請求の法的根拠や金額の妥当性について適切に判断できるので、本来支払わなくて良い慰謝料を支払わされたり、不当に高額な慰謝料を支払わせられたりするリスクはなくなるでしょう。

まとめ

不倫関係解消後のトラブルは、当事者同士での交渉が難航しやすく、配偶者に知られるなどさらなる紛争が発展することもあります。
ご自分での対応が難しいと感じたら、なるべく早く弁護士に相談することをおすすめします。

浮気相手からの慰謝料請求にお悩みの方は、ぜひ一度ネクスパート法律事務所にご相談ください。

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