不倫相手との子を妊娠中絶した方や、中絶を検討している方で不倫相手に慰謝料請求ができないかと悩まれている方はいらっしゃいますか?
不倫相手が妊娠や中絶に対して不誠実な対応を取っている、不倫相手が中絶を強要してきたなどの対応をとっている場合、慰謝料請求ができるかもしれません。
不倫相談件数9800件以上の弊所が、不倫で妊娠中絶をした方がどのような場合に不倫相手に慰謝料請求できるかについて概説します。
目次
不倫で中絶した場合、慰謝料請求は原則できません
不倫で中絶をした場合、原則的には慰謝料請求はできません。
民法上、慰謝料請求をするためにはあなたの有しているなんらかの権利が侵害されたということが必要です。
不倫で妊娠と中絶をする場合、当事者が合意したうえで肉体関係をもち、中絶の合意をしています。そのため、あなたは不倫相手から何も権利を侵害されていません。
よって、原則として不倫により妊娠し、中絶したとしても慰謝料請求をすることはできないのです。
不倫で中絶した場合、例外的に慰謝料請求できる場合があります
上記のとおり、原則として不倫による妊娠中絶で慰謝料請求はできませんが、例外的に慰謝料請求ができるケースがあります。
それは不倫相手の行為が、あなたの権利を侵害したために妊娠や中絶を余儀なくされた場合です。
具体的には以下の4つの場合があります。
- 妊娠や中絶に対し、不倫相手があなたに配慮すべき義務を怠った場合
- 性行為の強制によって妊娠させられた場合
- 不倫相手の強要、脅迫、暴行などにより中絶を余儀なくされた場合
- 避妊していると嘘をつかれた場合
妊娠や中絶に対し、不倫相手があなたに配慮すべき義務を怠った場合
不倫相手があなたに配慮すべき義務を怠った場合、あなたの有する不倫相手と等しく不利益を分配する行為の提供を受ける法的利益が侵害され、不倫相手に対し、慰謝料請求をすることができる場合があります。
東京高裁平成21年10月15日は、人工妊娠中絶を選択せざるを得ない場合、母体が被る身体的・精神的苦痛や経済的負担は、父母にあたる者が「共同で行った性行為に由来するもので…あるから」、父となる者は母となる者に対して中絶によって発生する不利益の軽減、解消、分担を行うべき義務を負うと判断しています。
この裁判例は、父となる者には、母となる者が妊娠、中絶によって被る負担に配慮すべき義務を課しています。その裏返しとして母となる者は父となる者に対して配慮してもらう権利を得るのだと判断しています。
よって、父となる者が中絶によって発生する不利益の軽減、解消、分担を行うべき配慮義務を行わなかった場合、母となる者の権利が侵害されていると言え、慰謝料請求ができることがあるのです。
もっとも、配慮義務といっても抽象的でわかりにくいと存じます。具体的なイメージをつかむために以下の裁判例をご紹介します。
【裁判例】 ・合意の上で妊娠したが、中絶の話し合いを避ける、無視する等の不誠実な対応を取ったことが配慮義務違反とされた事案(東京地裁平成21年5月27日判決参照) ・妊娠が発覚すると、妻と離婚するなどの虚偽の言動を行い、虚偽がバレると一方的に婚約破棄や連絡を絶つなどの行為に出るなどして中絶を余儀なくさせ、女性に精神的苦痛を拡大させたとして配慮義務違反があったと判断した事案(東京地裁平成24年7月31日判決参照) ・被告と交際中に妊娠した胎児を人工妊娠中絶した原告に攻撃的な態度を取り続けて中絶による原告の苦痛を拡大させたことが配慮義務違反と判断した事案(東京地裁平成27年9月16日判決参照) |
性行為の強制によって妊娠させられた場合
性行為の強制によって妊娠させられた場合には、慰謝料請求ができる場合があります。この場合、あなたの性的自己決定権(いつ、どこで、誰と性的関係をもつのか決める権利)に対する侵害があります。
よって、慰謝料を請求できます。
性行為の強制は強制性交罪に該当します。そのため、民事上の請求のみならず、刑事上の責任追及をすることもできます。
不倫相手の強要により中絶を余儀なくされた場合
女性に出産する意思があるにもかかわらず男性が中絶を強要した場合、慰謝料を請求できる場合があります。
なぜなら、女性に対する強要行為が女性の自己決定権(自分自身の生き方を自分で決定する権利)を侵害するためです。
また、暴行や脅迫によって中絶を強要した場合には強要罪として犯罪にも該当します。強要罪は未遂規定があるため、中絶させようとした場合にも罰せられる可能性があります。強要罪又は強要未遂の場合には刑事上の責任も追及できます。
中絶の強要による裁判例には以下があります。
【裁判例】 妊娠させた医師の男性が女性の同意を得ず、勤務先病院に女性を呼出し、全身麻酔を投与して昏睡させ、堕胎させた事案(広島高裁令和3年7月14日) |
避妊していると嘘をつかれた場合
避妊していると嘘をつかれ妊娠や中絶を余儀なくされた場合、慰謝料請求ができる場合があります。
女性は誰との間の子を妊娠するのか決める自己決定権があります。
そのため、女性が性交渉に応じていても避妊を希望している場合、男性はこの権利を尊重する義務がありますが、避妊すると嘘をつき妊娠させたときには女性の自己決定権が侵害されているため、女性は男性に慰謝料請求をすることができる場合があります。
慰謝料請求するためにあなたがすべき行動
慰謝料請求をするためにあなたがまずすべき行動は、弁護士に相談することです。
なぜなら、弁護士に相談することであなたが慰謝料請求をすべきか判断してもらうことができるからです。
弁護士に相談する
2で述べたような慰謝料請求できる事情がある場合、まず弁護士に無料相談しましょう。
弁護士に最初から有料相談をするとあなたに経済的な負担が生じてしまったり、請求額が少額である場合には弁護士に依頼してもあなたに利益が見込めなかったりするため、まずは無料相談で慰謝料請求の可否について見通しをたててもらい、弁護士に依頼をするか検討した方が良いです。
そのうえで、弁護士に依頼してもなお、あなたに利益が見込めそうであれば、弁護士に依頼して慰謝料請求に関する手続きを代行してもらいましょう。
弁護士に依頼できない場合は自分で交渉する
弁護士に依頼すると、あなたに利益が見込めない場合や経済的に弁護士に依頼できない場合に慰謝料請求をする方法として、不倫相手と慰謝料の支払いに関する合意を取り付けるという方法があります。
もっとも、合意してもらうために脅迫や暴行などの違法な行為を行わないように留意しましょう。このような行為を行う脅迫罪や暴行罪に該当するおそれがあり、あなたの方が刑事罰を受けることになってしまう可能性があります。
上述の通り、不倫で妊娠中絶した場合に慰謝料請求することは原則できないため、不倫相手から合意を取り付けることが困難であることは念頭におきましょう。
まとめ
不倫をしたことはあなた自身に非があります。
しかし、妊娠中絶は身体的にも精神的にもあなたに大きな傷を負わせるものです。それに対して、不倫相手が不誠実な対応を取っていたり、妊娠中絶自体があなたの意思に反するにもかかわらず強要されたりした場合には慰謝料請求をできる可能性があります。
ネクスパート法律事務所では不倫に関するご相談を9800件以上取り扱っております。
不倫による妊娠中絶で不倫相手に慰謝料請求をしたい方は是非一度、弊所にぜひご相談ください。