最後までしてないのに不貞行為の慰謝料を請求されたあなたは、今とても動揺していることと思います。
キスやハグ、2人きりで旅行をしたけれど、これだけで不貞行為になるの?と悩んでおられるのではないでしょうか。
この記事では、最後までしてないのに不貞行為の慰謝料を請求されたら確認すべきポイントや、やってはいけないことを解説します。
最後までしてないのに不貞行為の慰謝料を請求された場合、焦りや不安から不適切な対応をしてしまいがちです。
家族や知人に知られたくない一心で焦って対処すると、支払義務のない慰謝料を支払うことにもなりかねません。まずはこの記事を読んでいただき、今後の対応を冷静に検討しましょう。
目次
最後までしてないのに不貞行為になる?
最後までしてない場合、原則として不貞行為には該当しません。ただし、最後までしてなくても、不貞行為と推認される可能性があります。
そもそも不貞行為とは、配偶者のある者が自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と肉体関係を結ぶことです。
不貞行為に該当するかどうかは、原則として肉体関係があったかどうかで判断されます。肉体関係には、セックスのほか、オーラルセックスなどの性行為の類似行為も含まれます。
最後までしてないのに不貞行為と推認される可能性があるケース
最後までしてない、すなわち肉体関係がなかった場合でも、状況次第では肉体関係があったと推認される可能性があります。
最後までしてないのに不貞行為と推認される可能性があるケースは、主に以下の4つです。
- ラブホテルに入って相当時間出てこなかった
- 2人きりで宿泊を伴う旅行をした
- LINEやメール、電話などで肉体関係を連想させるような会話をした
- 頻繁に密会していた
肉体関係を持つ場合、2人きりの密室で行われることがほとんどです。そのため、滞在場所や時間、当事者のやり取りなどの客観的な状況証拠から、肉体関係があったと推認されるおそれがあります。
実際には最後までしていなくても、上記の4つのような事実がある場合、不貞行為があったと判断される可能性があります。
最後までしてない場合、不貞行為の慰謝料を支払うべき?
最後までしてない場合、原則として不貞行為の慰謝料の支払義務は発生しません。
しかし、状況次第では最後までしていなくても不貞行為と推認され、慰謝料の支払義務が発生する可能性があります。それぞれのケースにより異なりますので、不貞行為の慰謝料の支払義務があるかどうかの判断は、慎重に行う必要があります。
慰謝料の支払義務が発生する可能性も
最後までしてない場合でも、不貞行為の慰謝料の支払義務が発生する可能性があります。
不貞行為の慰謝料を請求するには、原則として不貞行為を立証する必要があります。
ただし、不貞行為がなくても明らかに社会妥当性の範囲を逸脱する行為がある場合には、慰謝料の支払義務が発生するおそれがあります。たとえ肉体関係がなくても、夫婦生活の平穏を侵害し、精神的苦痛を与えた場合は不法行為が成立する可能性があるからです。
最後までしてない場合でも、状況次第では不貞行為があったと推認される可能性があります。不貞行為があったと推認された場合は、慰謝料の支払義務が発生するおそれがあります。
慰謝料請求が認められた裁判例
慰謝料請求が認められた裁判例を以下で紹介します。
下着姿で抱き合ったことが不法行為にあたるとされた裁判例
自宅マンションで被告と異性が下着姿で抱き合い、身体を触るなどをしたが、性的不能だったため性行為には至らなかった事例です。
被告の配偶者は旅行のため不在であったこと、被告が異性の自宅の合鍵を事前に受けとり自宅を訪ねた事実、メールのやり取りなどから、婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害すると判断され、慰謝料150万円の支払いが認められました(東京地裁平成25年5月 14日判決)。
積極的に別居・離婚を要求したことが不法行為とされた裁判例
被告が原告の夫と婚約を約束して交際し、夫に対し原告との別居及び離婚を要求し、キスをした事例です。
この事実は、離婚原因となる婚姻を継続し難い重大な事由の発生に加担したものということができるため、原告に対する不法行為を構成すると判断されています。
肉体関係があったとまでは断定できないものの、被告に積極性があることを考慮して、慰謝料250万円の支払いが認められました(東京地裁平成20年12月5日判決)。
最後までしてないのに不貞行為の慰謝料を請求されたら確認すべき3つのこと
最後までしてないのに不貞行為の慰謝料を請求されたら確認すべきことは、主に以下の3つです。
- 不貞行為を推認させるような行為や、積極的に離婚を要求する行為がなかったか
- 相手が慰謝料請求に必要な不貞行為の証拠を持っているか
- 時効が成立していないか
焦って対応すると、支払義務のない慰謝料を支払うことにもなりかねません。
以下に詳述することを参考にして、冷静な対応を心がけましょう。
不貞行為を推認させるような行為や、積極的に離婚を要求する行為がなかったか
最後までしてないのに不貞行為の慰謝料を請求されたら、不貞行為を推認させるような行為や、積極的に離婚を要求する行為がなかったか確認しましょう。
具体的に、下記の3つのような行為が挙げられます。
- 配偶者の不在時に相手の自宅に宿泊した
- ラブホテルに行った
- 相手夫婦の離婚を頻繁に要求するメールやLINEのやり取り
最後までしてなくても不貞行為を推認させるような行為や、積極的に離婚を要求する行為をした証拠がある場合、慰謝料請求が認められる可能性があります。
相手が慰謝料請求に必要な不貞行為の証拠を持っているか
最後までしてないのに不貞行為の慰謝料を請求されたら、相手が慰謝料請求に必要な不貞行為の証拠を持っているか確認しましょう。
そもそも不貞行為がない場合、慰謝料請求が認められる可能性は低いです。交渉の段階では証拠の提示は必須ではないため、不貞行為があっただろうと詰め寄れば慰謝料請求に応じるかもしれないとの意図から請求しているケースも少なくありません。
不貞行為の証拠がない場合、慰謝料の支払いに応じる必要はありません。
時効が成立していないか
最後までしてないのに不貞行為の慰謝料を請求されたら、時効が成立していないか確認しましょう。
慰謝料請求権の時効は、不倫相手と不貞行為を知ったときから3年、不貞行為のときから20年です。
時効期間を経過している場合、慰謝料の支払義務は発生しないため、慰謝料の支払いに応じる必要はありません。
最後までしてないのに不貞行為の慰謝料を請求された際にやってはいけない3つのこと
最後までしてないのに不貞行為の慰謝料を請求された際にやってはいけないことは、主に以下の3つです。
- 不用意な発言をする
- 言われるがまま支払いに応じる
- 感情的になって対応する
以下に詳述しますので、今後の対応の参考になればと存じます。
不用意な発言をする
最後までしてないのに不貞行為の慰謝料を請求された場合、不用意な発言は控えましょう。
慰謝料請求の場合、書面だけでなく口頭でも合意が成立します。書面にサインしていなくても、支払いに合意する発言を録音されていた場合、合意が成立したと判断される可能性があります。
不貞行為の事実を認めてしまった場合、たとえ口頭であっても、不貞行為の証拠となりえます。
相場からかけ離れた高額な慰謝料や、支払義務のない慰謝料の支払いをすることにならないよう、不用意な発言は控えましょう。
言われるがまま支払いに応じる
相手に言われるがまま、支払いに応じるのは賢明ではありません。支払う前に、支払義務の有無を確認しましょう。
そもそも不貞行為の慰謝料の金額は、法律で定められていません。そのため、あなたにいくら請求するかは、相手が自由に決められます。
不貞行為に基づく慰謝料の相場は、それぞれの状況により異なりますが、50〜300万円程度です。
相場からかけ離れた高額な慰謝料を請求された場合は、適正な金額まで減額するよう、相手と交渉しましょう。
感情的になって対応する
感情的にならないよう心がけましょう。
感情的になって対応すると、相手の心情を害してしまい、交渉での解決が難しくなるおそれがあります。相手が不貞行為の証拠を持っている場合、訴訟に発展する可能性もあるため、冷静に対応することが重要です。
最後までしてないのに不貞行為の慰謝料を請求されたら弁護士への相談も検討しましょう
最後までしてないのに不貞行為の慰謝料を請求されたら、弁護士への相談も検討しましょう。
不貞行為の慰謝料を請求された場合、今後の対応を冷静に検討する必要があります。ご自身で対応することも可能ですが、焦りや不安から不用意な発言や感情的な対応をしてしまい、自ら相手方に慰謝料請求の根拠となる材料を与えかねません。
最後までしていない場合、証拠の有無や状況次第で、今後の対応が大きく異なります。
法的な知識が豊富な弁護士に依頼することで、ご自身の状況に合わせて適切な対応が見込めるため、スムーズかつ早期の解決が期待できます。
まとめ
最後までしてないのに不貞行為の慰謝料を請求されたら、無視せず、適切な対応を心がけましょう。不貞行為の慰謝料を請求された場合でも、必ずしも支払義務が生じるわけではありません。支払義務があるかどうか、法的観点から多角的に判断する必要があります。
ネクスパート法律事務所は、数多くの慰謝料請求についてご相談いただき、解決への道筋をご提案しています。あなたが今不安に思っていることを、ぜひお気軽にご相談ください。