不動産会社の倒産|手続きの流れや注意点を解説

令和5年版国土交通白書によりますと、2014年(平成26年)以降、不動産業者は増加傾向にあります。その一方で2023年4月には、不動産業に携わっている会社の倒産件数が6か月連続で増加していると発表されました。

不動産会社が倒産すると、不動産購入者などをはじめとして多くの人に影響が出ます。

今回は、不動産会社が倒産する要因や、倒産の手続き方法、注意点について解説します。

目次

不動産会社が倒産に至る要因は?

ここでは、不動産会社が倒産に至る要因について解説します。

集客ができず売り上げが低迷する

不動産業は顧客を獲得し、土地・建物の売買や賃貸借の契約を締結して仲介手数料を得ることで収入を得ます。しかし、これができないと赤字が続き、倒産に至ります。

なぜこのような状況になるのか、理由の一つとして集客に苦戦することが挙げられます。特に不動産購入は人生にとって最も大きな買い物なので、購入者は信頼できる会社に依頼したいと考えます。

そうなると知名度の高い会社が多くの顧客を獲得し、知名度が低い会社は集客に苦労する結果となります。

資金不足

開業後にかかる運転資金の読みが甘く、資金不足に陥って倒産に至るケースがあります。

賃料や人件費など開業後にかかる資金は思っている以上にいろいろあります。

開業した当初は、集客があまり望めずに売り上げが極端に上がることはありません。運転資金を十分に確保せずに開業すると、早い段階で倒産に追い込まれる場合があります。

支出管理ができない

毎月の支出管理が正確にできない経営者が倒産に至るケースもあります。

不動産営業で多数の契約を取っていた人が独立開業したものの、事務処理が苦手で毎月かかるコストを正確に把握できずに赤字経営になっていくパターンです。

不動産会社の倒産手続きの種類①|M&Aによる廃業

ここでは、不動産会社の倒産手続きの一つであるM&Aによる廃業について解説します。

M&Aには、事業譲渡、会社売却、吸収合併、会社分割の方法がありますが、不動産会社特有の注意点として、以下の2点があります。

  • 宅建業の免許がなければ不動産業を営めない
  • 事務所ごとに宅建業務に従事する従業員5人に1人以上の専任宅建士が必要

事業譲渡等をする相手の会社に、上記2点について確認をした上でM&Aの手続きを進めていくのがよいでしょう。

これを踏まえて、それぞれの方法について説明します。

事業譲渡

会社の中にある事業を他の会社に売却するのが事業譲渡です。

会社の経営権は渡さずに、撤退したい事業のみを従業員ごと引き取ってもらう方法なので、買い取る側との相乗効果が期待できます。

売却先、譲渡価格などが決定すれば、比較的スピーディーに手続きが可能です。

会社売却(株式譲渡)

会社売却株式譲渡とも呼ばれますが、会社が保有する株式の一部または全部を買い手側に譲渡する方法です。

会社の所有者は変わるものの、会社自体は消滅しないので事業が継続できます。

経営者が発行済株式を単独で所有している場合は、スムーズに手続きが進められます。

吸収合併

吸収合併は、1社を残して他の会社はすべて消滅する方法です。

合併後に残る会社が、消滅する会社の資産、負債、権利関係のすべてを引き継ぎます。合併先が決まって話がまとまれば、比較的早く手続きが進められます。

会社分割

会社が持っている事業の全部または一部を切り離し、それを別会社に承継させる方法が会社分割です。既存の会社に事業の一部を移転する吸収分割と事業の一部を移転するために新たな会社を設立する新設分割があります。

この方法を取る場合、債権者保護のため官報公告が必要なのが注意すべき点となります。そのため余裕のあるスケジュールを組んで進めていくことが肝要です。

不動産会社の倒産手続きの種類②|再建型の倒産手続き

ここでは、不動産会社の倒産手続きとして再建型を選択した場合について解説します。

民事再生

民事再生は、債務超過に陥った会社が、民事再生法に基づき裁判所の監督のもと再建を図る手続きです。

2023年4月に中堅不動産会社のユニゾホールディングスが民事再生法の適用を東京地方裁判所に申請したことが記憶に新しいですが、倒産を避け、事業を再建して債務を返済していくことが目的となります。経営陣が退任しなくても引き続き経営に携われるのが特徴です。

債務超過はしているものの、営業利益を上げている会社であれば自力で再建を目指しますが、資金提供をしてくれるスポンサーのサポートを得て経営再建を目指す方法もあります。

民事再生手続きの詳細については、弊所法務サイトの「民事再生手続きの流れを解説!手続きにかかる期間の目安はどのくらい?」をご参照ください。

会社更生

会社更生とは、会社更生法のもと更生計画を定め、会社の事業再建を図ることです。

会社更生法は株式会社のみに適用されるため、大企業向けの再建型倒産手続きといえます。経営陣は退いて、裁判所が選任した更生管財人が選んだ新たな経営陣で再建を目指します。

時間と費用が掛かり、債権者や株主などの同意が必要となるので、手続きが完了するまで1年以上かかる場合があります。

任意整理型の再建手続き

任意整理型の再建手続きとは、債権者と債務者との間の任意の協議によって会社の再建を目指す手続きです。

経営者が融資先の金融機関に対して返済の条件の変更を直接相談する純然たる私的整理もありますが、多くの場合は、一定のルールや準則に従って手続きを進めます。

任意整理型再建手続きは、原則、非公開で手続きが進められるため、会社の経営状態が悪いことを公に知られるリスクを減らせますが、手続きに強制力はないため、債権者との話し合いが上手くいかない場合もあります。

債権者との協議がうまく進まない場合には、下記の公的な再生支援機関を活用する方法もあります。

  • 中小企業再生支援協議会による再生支援
  • 中小企業再生ファンドによる再生支援
  • 企業再生支援機構による再生支援
  • 事業再生ADRによる再生支援

不動産会社の倒産手続きの種類③|清算型の倒産手続き

ここでは、不動産会社の倒産手続きとして、清算型の手続きを選択した場合について解説します。

事業を終了して会社を閉じる際には、会社を解散して清算しなければいけません。会社の状況によって、下記の3つから方法が選択されます。

通常清算

通常清算とは、会社にプラスの財産があり、債務を支払うことができる状態のときにとられる清算方法です。

裁判所が関与しないので、他の清算手続きと比べて柔軟に対応できます。

特別清算

特別清算とは、会社に残っている資産で債務が完済できない可能性がある場合にとられる方法です。

特別清算は裁判所への申し立てが必要で、裁判所が監督することで清算手続きが進められます。

特別清算については、弊所債務整理サイトの記事「特別清算とは?手続きの概要と流れ・破産との違い・メリットを解説」をご参照ください。

破産

破産は、債務超過となった会社が裁判所に破産の申し立てをして、裁判所で選任された破産管財人が中心となって行う手続きです。

会社の財産を処分換価し、債権者に対して平等に配当をし、手続きを終結することを目的としています。破産手続きが終結して登記が行われると法人格が消滅します。

法人破産については、「法人破産の手続きの流れや必要書類・予納金・弁護士費用相場を解説」をご参照ください。

不動産会社が廃業するときの流れは?

ここでは、不動産会社が廃業するときの流れについて解説します。

免許権者に対して廃業等届出書を提出する

不動産会社は、宅地建物取引業を行うにあたり宅地建物取引業免許を取得しているので、廃業する際には廃業等届出書を提出しなければいけません。

廃業の理由に該当することとなった日から30日以内に、免許を受けた国土交通大臣または都道府県知事に提出が必要です。

廃業等届出書のほかに、下記の書類の添付が必要です。

  • 宅建業免許証の原本
  • 廃業する理由が確認できる書類(会社の履歴事項全部証明書、閉鎖事項全部証明書、破産管財人の証明書など)

営業保証金または弁済業務保証金分担金の取り戻し

宅地建物取引業を営む者は、宅地建物取引業免許を取得した日から3か月以内に、本店の最寄りの供託所へ営業保証金を供託し、供託を行った旨を国土交通大臣または都道府県知事に届け出なければなりません。

事業を廃止して免許が効力を失った場合は、営業保証金を取り戻せます。

この手続きは、宅地建物取引業者が宅地建物取引業保証協会の会員である場合と、会員でない場合とで異なります。

宅地建物取引業保証協会の会員である場合

宅地建物取引業保証協会の会員になっている不動産会社は、所属している宅地建物取引業保証協会に廃業の報告をして退会の手続きをします。

それに合わせて保証協会に納付した弁済業務保証金分担金の取り戻しをします。

詳しい手続きは、加入している宅地建物取引業保証協会にご確認ください。

宅地建物取引業保証協会の会員でない場合

宅地建物取引保証協会の会員でない場合、営業保証金を法務局に供託している不動産会社は、廃業が決定したら、還付請求権者がいる可能性があるため官報に公告しなければいけません。

6か月を下らない期間を定めて還付請求権者に申し出るべき旨を公告し、公告したら遅滞なく免許権者に届けます。

還付請求権者に向けた官報公告で、債権の申し出がなかった場合、その旨の証明書の交付を受けて供託した法務局で営業保証金の取り戻しを受けられます。

不動産会社が清算型の倒産手続きをした場合、顧客との契約関係は?

不動産会社が清算型の倒産手続きをする際に留意すべき事項は、顧客との契約関係です。

すでに土地や建物の売買契約が締結されたものの、代金の支払いや土地・建物の引渡しまでの間に売主または買主が清算型の倒産手続きをしたらどうなるのでしょうか?

下記の例の場合について解説します。

例:不動産会社Aは、ある土地を3000万円で不動産会社Bから購入することにしました。両者の間で売買契約を締結し、Aは手付金500万円を支払いました。

会社が裁判所に破産の申し立てをすると、会社の財産を債権者に平等に配当するために裁判所が破産管財人を選任します。これを踏まえて、売主が破産した場合と買主が破産した場合、それぞれについて解説します。

売主の不動産会社が清算型の倒産手続きをした場合

売主となる不動産会社Bが清算型の倒産手続きをした場合、Bの破産管財人は下記のいずれかの選択ができます。(破産法53条)

契約をそのまま履行する

Bの破産管財人が、これまでどおり契約を履行することを選択したら、土地の引渡しや所有権移転登記に必要な書類を交付して残代金を不動産会社Aに支払うことを要求できます。
買主である不動産会社Aは、残代金を支払うことで土地の引渡請求権と所有権移転登記請求権を得られます。この2つの権利は、破産手続きを経ることなく破産財団から弁済を受けられる財団債権なので、高い確率で履行されます。

契約を解除する

Bの破産管財人が契約の解除を選択したら、すでにAから受け取っている手付金500万円を全額返金しなければいけません。Aは、契約が解除になったことでBに対して損害賠償請求ができますが、その場合は他の債権者と同じ立場で配当を受けることになるので全額を得ることは厳しいでしょう。

Bの破産管財人がどちらにするのか選択してくれない場合、Aは相当の期間を定めて契約を履行するのか解除するのかBに対して催告できます。期間内にBから回答がなければ契約は解除したものとみなされます。

買主の不動産会社が清算型の倒産手続きをした場合

買主となる不動産会社Aが清算型の倒産手続きをした場合、Aの破産管財人は下記のいずれかの選択ができます。

契約をそのまま履行する

Aの破産管財人が契約をそのまま履行することを選択した場合、Bに残額を支払って土地の引渡しと所有権移転登記の請求ができます。Aの残代金債権は財団債権なのでBに対しての支払いは高い確率で期待できます。

契約を解除する

Aの破産管財人が契約解除を選択したら、Bはすでに受け取っている手付金を返還しなければいけません。Bは債務不履行による損害賠償請求はできますが、他の債権者と同じ立場で配当を受けることになるので、全額を得ることは難しいでしょう。

Aの破産管財人がどちらにするのか選択してくれない場合、Bは相当の期間を定めて契約を履行するのか解除するのかAに対して催告できます。期間内にAから回答がなければ契約は解除したものとみなされます。

売主・買主が再建型の手続きを取った場合

再建型の倒産手続きを取った場合は、会社が引き続き存続するのが清算型の倒産手続きとの大きな違いです。

しかし、民事再生法や会社更生法でも破産法53条と同じような趣旨の規定があるため、売買契約の当事者の債務が履行されていなければ契約の履行か解除のいずれかを選択できますし、相手方にどちらにするのか選択を促す権利があります。

いずれを選択しても効果は清算型の倒産手続きを取った場合と同様です。ただし、再生債務者が期間内に回答をしない場合、解除権を放棄したものとみなされるという点は、清算型の倒産手続きをとった場合と異なります。

不動産会社が倒産した場合、賃貸借契約はどうなるか?

不動産会社は、土地や建物の売買だけでなく賃貸借も扱っています。会社が破産することで賃貸借契約はどうなるのでしょうか?

賃借人が破産した場合

賃借人である法人が破産したら、賃貸人は破産を理由に契約を解除できるような気がしますが、借地借家法にのっとり、破産を理由とした契約解除はできません。

たとえ賃貸借契約書に「賃借人が倒産した場合は契約解除ができる」と記載されていても、この条項は無効の扱いとなります。

ただし、賃料を長期間滞納しているなど、当事者間の信頼関係を破壊するに至る程度の債務不履行がある場合には、債務不履行を理由として賃貸人から賃貸借契約を解除される可能性はあります。

賃借人の破産管財人が、破産手続開始を理由として賃貸借契約を解約することもあり得ます。

賃貸人が破産した場合

賃貸人である法人が破産したことで、すぐに賃貸借契約が解除になることはありません。

会社が破産手続きを開始すると破産管財人が会社の財産の処分をしますが、破産管財人は当該賃貸借契約を解除するか、破産者である賃貸人側の債務を履行して、賃借人に賃料の支払など債務の履行を請求するかを選択できるのが原則です(破産法53条1項)。

ただし、賃借人が賃借権について登記・登録・その他第三者に対抗できる要件を備えている場合、破産管財人は、破産法53条1項に基づいて賃貸借契約を解除できないとされています(破産法56条)。

もっとも、賃借人に債務不履行や無断転貸があった場合には、催告による解除や催告によらない解除、民法612条2項に基づいて賃貸借契約を解除することは可能ですし、破産管財人と賃借人との間の話し合いで合意解除することもあり得ます。破産管財人は、債権者へ平等に配当することが最大の使命となるため、賃貸している物件を任意売却する可能性があります。この場合でも新たな買主に賃貸借契約が引き継がれることが多いです。

ただし、賃借人が住んでいる物件が任意売却できずに競売された場合、新たな買主に賃貸借契約が引き継がれないので退去を余儀なくされます(※抵当権設定登記が賃貸借契約より前にされている場合)。この点は注意しましょう。

不動産会社が倒産を考えたとき弁護士に相談するメリットは?

ここでは、不動産会社が倒産を考えたとき、弁護士に相談するメリットについて解説します。

再建型か清算型か的確なアドバイスが受けられる

倒産と一言でいっても、再建型や清算型といったさまざまな方法があります。

会社の経営が立ち行かなくなり倒産を考えたら、早い段階弁護士に相談をして、どの方法を取るのが最適なのか、的確なアドバイスを受けることをおすすめします。

倒産=会社がなくなると考えている人は多いと思いますが、財務状況によっては会社を存続させる方法もあります。思い込みや独断で行動するのではなく、弁護士とともに冷静に判断をしてください。

複雑な手続きを任せられる

M&Aによる廃業や再建型、清算型のいずれを選択しても、会社を立ち直らせる手続きは複雑なものです。

弁護士に依頼すれば一連の手続きを任せられるので、弁護士のアドバイスに従って会社を立ち直らせることに集中できます。

弁護士に依頼するメリットは「倒産・破産で弁護士に依頼すべき理由|費用・相場・流れを解説」をご参照ください。

まとめ

不動産会社は、土地や建物の売買や賃貸借を取り扱っていることから、倒産すると多くの人々に影響がでます。こうしたことから倒産を考えたら、少しでも影響を小さくするための方法をとることが肝要です。

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