ペットを飼っていた場合の原状回復費用は誰が負担する?

賃貸物件でペットと一緒に生活していると、退去時の原状回復費用の扱いが気になるところです。

この記事では、退去時の原状回復費用は誰が負担するか、費用の相場と費用負担を抑えるコツについて解説します。

併せて、ペット禁止の物件でペットを飼った場合の注意点についても紹介します。

目次

ペットを飼っていた場合の原状回復費用は誰が負担する?

ペット可の物件で、ペットの飼育により生じた損耗の原状回復費用を誰が負担するかは、ペットの飼育を許容することで家賃が割高に設定されているかどうかが、判断基準の一つとなります。

ペットの飼育を許容することで家賃が相場よりも高く設定されている場合は、ペットがつけた傷でも通常損耗の範囲として、貸主が原状回復費用を負担するケースがあります。

家賃が相場通りの場合、ペットの飼育により生じた損耗は、特別損耗として借主が原状回復費用を負担するケースが多いです。

ただし、特別損耗として借主が原状回復費用を負担する場合も、経年劣化や通常損耗を考慮して、費用の負担割合が調整されることがあります。

例えば、借主が飼育している猫の糞尿を放置し、フローリングを腐食させたケースでは、家賃が割高に設定されていたとは認められず、特別損耗にあたると判断されました(東京地裁平成25年11月8日判決)。
この事案では、以下の理由から、借主の負担は3割程度が相当とされています。

  • ペットによる傷はフローリングの一部だった
  • 該当物件が築17年でそれなりの年数が経っていた

ペットの飼育を考慮した高額な家賃が設定されている等の事情がない場合は、ペットに起因する損耗の原状回復費用は、借主が負担することになるでしょう。

なお、この場合の通常損耗と特別損耗の見分け方は、概ね以下のとおりです。

通常損耗(貸主負担)の例特別損耗(借主負担)の例
壁紙・画鋲の跡 ・通常の使用による汚れ・噛み跡 ・ひっかき傷 ・尿などでできたシミ
フローリング・日照による変色 ・家具の設置による凹み ・次の入居者を確保するために行われるワックスがけ・ひっかき傷 ・尿などでできたシミ ・掘る等でできた深い傷
・日照による変色 ・次の入居者を確保するために行われる畳の裏返しや表替え・噛み跡 ・尿などでできたシミ ・食いちぎり
通常の使用で生じる軽い傷や汚れ・噛み跡 ・ひっかき傷 ・尿などでできたシミ
経年劣化や通常の使用による損耗・爪とぎによる破れ ・噛み跡による破れ
障子経年劣化や通常の使用による損耗・爪とぎによる破れ ・噛み跡による破れ

これらはあくまで一例であり、実際の費用負担は、損耗の程度、物件の築年数、契約内容などを総合的に考慮して判断されます。

ペットを飼っていた場合の原状回復費用の相場は?

ペットを飼っていた場合、原状回復費用の相場はいくらになるか、原状回復の対象となる場所ごとに紹介します。

壁紙の張替え|5万~

壁紙の張替えは、6畳の部屋であれば約5万円が相場となります。部屋の広さに比例して金額が上がります。

フローリングの張替え|17万~

フローリングの張替えは、6畳の部屋であれば約17万円が相場となります。部屋の広さに比例して金額が上がります。

畳の表替え|5万~

畳の表面の傷みが激しい場合に畳の表替えが必要で、6畳の部屋であれば約5万円が相場となります。部屋の広さに比例して金額が上がります。

畳の取替え|8万~

畳の取替えは、6畳の部屋であれば約8万円が相場となります。部屋の広さに比例して金額が上がります。
例えば、ペットが粗相をした場合に丁寧な掃除をしなければ、畳だけでなく土台が傷む可能性があります。その際は畳の取替えを求められます。

柱の修復|2万~

柱の修復は、軽い傷であれば約2万円が相場となります。ペットのひっかき傷や噛んだ傷の程度によって金額が上がります。

ふすまの張替え|2千~

ふすまが破れている場合の張替えは、最低でも約2千円からが相場となります。破れている程度によって金額が上がります。

ふすまの交換|4万~

ふすまの傷が大きい場合の交換は、最低でも約4万円からが相場となります。損傷の程度によって金額が上がります。

障子の張替え|2千~

障子が破れている場合の張替えは、最低でも約2千円からが相場となります。破れの程度によって金額が上がります。

障子の交換|4万5千~

障子の傷が大きい場合の交換は、最低でも約4万5千円からが相場となります。損傷の程度によって金額が上がります。

ハウスクリーニング|2万6千~

退去時のハウスクリーニング代は、1DKであれば最低でも2万6千円からが相場となります。部屋の広さに応じて金額が上がります。

ペット禁止の物件でペットを飼っていた場合の注意点

ペット禁止であるにも関わらずペットを飼っていた場合、原状回復費用の負担が大きくなったり、違約金を請求されたりする可能性があります。

原状回復費用が家賃2~3か月分程度に及ぶ可能性がある

ペット禁止の物件でペットを飼った場合、退去時の原状回復費用が家賃の2~3か月分程度に及ぶ可能性があります。ペット禁止の物件でペットを飼っていた場合、ペットの飼育により生じた傷や汚れは、通常損耗を超えるものと判断されることが多いです。

ペットの飼育を禁止する物件の賃貸借契約においては、これに違反してペットを飼育した場合に、ペット飼育により生じた損耗等の原状回復に要した費用を全額借主の負担とする旨の特約が設けられることがあります。

さらに、この特約の有効性を担保するために、通常の使用によって生じる自然損耗を超える損耗・汚損に加え、ペットを飼育したことによって生じたキズや破損、汚損、臭い、しみ等についても原状回復義務を負うことを貸主が十分に説明して借主に合意内容として認識させ、別途覚書等の書面を取り交わすケースもあります。

このような合意がある場合、ペットの飼育により生じた損耗の原状回復費用は、借主が全額負担しなければならない可能性があります。

ペット禁止の物件でペットを飼った場合は、多額の原状回復費用を負担しなければならないケースもあります。

契約書に定めがあれば違約金を支払わなければならないこともある

賃貸借契約書に定めがあれば、違約金の支払いを求められる場合があります

ペット禁止の物件を借りる場合、契約書にペットを飼育した際の違約金について明記されているケースがほとんどです。その場合、借主が契約違反をしたら貸主は違約金の請求ができます。

ただし、契約書にペット禁止のみ記載されており違約金について明記がなければ、貸主は借主に対して請求ができません

ペットを飼っていた場合に原状回復費用を抑えるコツは?

ペットを飼っていると、退去時になるべく原状回復費用を抑えたいと考える方がほとんどです。原状回復費用を抑えるためのコツをいくつか紹介します。

入居時に物件内の写真を撮っておく

入居時、荷物を運びこむ前に物件内の写真を撮っておきましょう

入居時からあった傷を証拠に残しておけば、退去時にペットがつけた傷と判断されるリスクが避けられます。

賃貸借契約書を熟読する

賃貸借契約書を熟読しましょう。

契約時は必ず宅建士から重要事項の説明がされます。適当に聞き流さずに契約書をよく読んで、疑問点はその場で確認しましょう。

ペットのしつけを徹底する

ペットのしつけを徹底しましょう。

無駄吠えをさせない、トイレの場所を覚えさせる等のしつけは、飼い主の責任です。

ペットがストレスを溜めないように工夫する

ペットがストレスを溜めないように工夫をしましょう。

例えば、犬ならマメに散歩へ行く、猫であれば爪とぎができる場所を確保するなど、ペットに寄り添った環境作りが大切です。

床にマットを敷いたり柱を保護したりする

床にマットを敷いたり、柱を保護したりしましょう。

フローリングや畳はペットによる傷が避けられないケースが多いです。入居時にマットを敷いておけば、ある程度の傷が避けられます。柱も保護をすれば、ペットが引っ掻いたり噛んだりしても深く傷がつく可能性が低くなります。

ペットを清潔に保つ

マメにシャンプーをしたり爪を切ったりするなど、ペットを清潔に保ちましょう

シャンプーをすればペットの臭いが抑えられますし、爪が短ければ傷をつけるリスクが低くなります。

空気清浄機や消臭剤を置く

空気清浄機や消臭剤を置きましょう。

完璧にペットの臭いを消すのは不可能ですが、ある程度軽減が期待できます。

まとめ

賃貸物件でペットを飼う場合、原状回復費用の負担が通常よりも大きくなる点は留意しなければいけません。
ただし、あまりにも高額な費用を請求された場合は、すぐに支払いを了承をせず、貸主に請求費用の根拠を示してもらいましょう。

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