会社の経営に行き詰まると、経営者はその場しのぎの行為をしてしまいがちになります。
しかし、その場しのぎの行為が、実は犯罪に該当するものであり、それをしてしまったために、その後経済的な再起ができなくなってしまうおそれがあります。
それが計画倒産と呼ばれるものです。
本稿では、計画倒産とは何か、計画倒産をしないようにするためにはどのようなことが必要かについて解説します。

計画倒産とは
この章では、違法性のある計画倒産とはどのようなものかについて、解説します。
計画倒産の定義
計画倒産の定義は、定まっておらず、様々ありますが、一般的には、最初から借金や支払を踏み倒すこと意図して行う倒産のことを言います。
計画倒産というと、なるべく取引相手や従業員に迷惑をかけずに段取りをして行う倒産(計画的な破産)という良いイメージを抱く人もいるかと思いますが、決してそうではありません。
計画倒産と計画的な倒産はイコールではないのです。
計画倒産に該当する具体的なケース
計画倒産に該当すると言われているのは、以下のようなケースです。
イ.倒産予定であるにもかかわらず新規に借り入れを行い、代表者個人が費消するケース
会社の経営の継続が困難な状況で、経営者もこれ以上経営を継続する意思がないにもかかわらず、金融機関から追加融資を受けて、これを経営者個人が費消したり隠ぺいしたりするケースが挙げられます。
ロ.倒産予定であるにもかかわらず、商品を仕入れて販売代金を隠ぺいするケース
経営者が経営を継続する意思がないにもかかわらず、新たに商品を仕入れてこれを販売し、代金を会社に入れて借金の返済などに充てたりせず、経営者個人が費消・隠ぺいするケースです。
ハ.倒産直前に会社の資産を別の会社に移転するケース
会社が破産する場合には、会社財産を処分して得た利益を債権者に配当する必要があります。これを回避するために、別会社に無償又は著しく低価で会社財産を譲渡するケースが挙げられます。
計画倒産は犯罪になる場合がある
計画倒産は、以下の犯罪に該当して処罰される可能性があります。
詐欺罪に該当する可能性
1-2のイのケースのように、返済するつもりもないのに新たな借り入れをする場合は、刑法の詐欺罪(246条)に該当する可能性があります。
この場合、10年以下の懲役刑に処されることとなります。
詐欺破産罪に該当する可能性
債権者を害する目的で、以下の行為をして、破産手続開始決定が確定した場合には、詐欺破産罪(破産法265条)に該当するとして、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金に処される可能性があります(懲役刑と罰金刑が併科される場合もあります)。
- 債務者の財産を隠匿し、又は損壊する行為
- 債務者の財産の譲渡又は負担を仮装する行為
- 債務者の財産の現状を改変して、その価格を減損する行為
- 債務者の財産を債務の不利益に処分し、又は債権者に不利益な債務を債務者が負担する行為
1-2のハのケースは上記の④に該当し、詐欺破産罪が成立するおそれがあります。
犯罪に該当しないようにするために倒産手続を進めるためにはどうすればよいか
犯罪に該当すると思わずにしてしまう行為が、2章で見たような詐欺罪や詐欺破産罪に該当してしまう場合があります。
そして、一度犯罪に該当する行為を行うと、破産を申立ててもこれが認められず、会社を消滅させられないリスクが出てきます。そうすると会社はその後も存在することになるので、負債から逃れられないこととなります。
このような事態に陥らないようにするために必要なことは、公明正大に破産をするということです。
破産の申立をする場合、原則として、裁判所が破産管財人を選任して会社の資産や負債の状況を調べ、財産隠しや不当な廉価で会社財産を売却していないかなどを調査します。
そのような調査の中で、財産隠し等が見つかれば、先に解説したように刑事罰が科されたり、免責許可が受けられなかったりするリスクが高くなるのです。
財産隠しや不当な財産処分をした経営者は、このようなリスクを恐れて、夜逃げすることもありますが、そうすると二度と表舞台に出てくることができず、経済的に再起を図ることもできなくなってしまいます。
そうならないようにするためには、経済的に行き詰まっても、財産隠しや不当な財産処分をしたりせずに、粛々と破産手続を採ることが必要です。
破産手続の中で、破産管財人により公正な価格で会社の資産を売却され、その売却代金が債権者に配当されれば、債権者の納得を得ることにもつながります。
その後、再度事業を起こしたいと考えれば、一定期間経過後には、再び融資を受けることも可能になり、経済的に再起することができます。
会社の経営が行き詰まっても、その場しのぎのためにリスクの高い行為をしようとしないことが大切です。
さいごに
計画倒産という行為がいかにリスクが高い行為かということ、行き詰まると意図せずして計画倒産に該当しうる行為をしてしまうおそれが高いことをお分かりいただけたと思います。
どんなに状態が悪い会社でも、違法な行為さえしなければ、破産することが可能です。そして、そうすることによって、経営者は再度事業にチャレンジすることが可能となります。
破産は決して絶望的なものではありません。
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