会社経営が厳しくなり、破産を考えている経営者の皆さんの中には、会社破産後、事業はどうなるのか、自分自身の生活はどうなるのか、気になっている方も少なくないでしょう。
そこで、本稿では、会社が破産した後、事業を再開することはできるのか、経営者自身の生活はどうなるのかについて、解説していきます。
会社破産の手続の流れと効果
この章では、会社破産の手続と破産した場合にどのような効果が生じるのかについて解説します。
会社破産の手続
会社を破産させる場合、まず、預金通帳や帳簿等の必要な資料をそろえて裁判所に破産を申し立てます。
そうすると、裁判所において、破産開始決定とともに破産管財人が選任され、破産管財人が、会社の債務や会社財産等について詳細な調査を行います。
調査がすべて終了して、裁判所や債権者への報告がなされたら、会社は解散し、法人格が消滅することとなります。
会社破産の効果
会社を破産する場合には、原則として、あらかじめ、全従業員を解雇しなければなりません。
その上で、破産手続開始決定が出たら、原則的に事業停止することとなります。
破産手続開始決定後、会社の全ての財産が、破産管財人によって管理されることとなり、最終的には、この中から、滞納税金を納付したり、債権者に対して配当がなされたりします。
全ての手続が終わったら、会社は解散し、法人格は消滅します。
会社経営に伴い個人が破産すべき場合と破産手続の流れ・効果
この章では、会社経営に伴って個人も破産しなければならないか、個人が破産する場合の手続2種類及び個人破産をした場合にどのような効果が生じるのかについて解説します。
会社が破産する場合、会社経営者も破産しなければならないか
会社が破産する場合、滞納税金や債権者への配当の対象となる財産は会社名義のものに限られます。経営者個人の財産が対象になるわけではないので、原則的には、会社経営者は個人破産をする必要はありません。
しかし、経営者が会社の債務を保証している場合には、会社が破産すると債権者が会社に請求することとなります。
会社債務の金額は大きいことが多く、経営者個人が支払うことは難しいため、この場合には、経営者も個人破産する必要があります。
個人破産の手続
個人破産の場合、大きく分けて2通りの手続が考えられます。
まず、1つめの手続は同時廃止手続です。
同時廃止手続の場合は、破産開始決定とともに手続が終了し、債務や財産等の調査は行われません。最後に免責許可決定が出るのを待つだけとなります。破産者の資産が乏しく、破産手続の費用を賄うのに不足することが明らかな場合の手続です。
2つめは管財手続です。細かく分けると、通常管財と少額管財がありますが、費用や免責許可決定までの期間が異なるだけで、大まかな手続の流れは同じです。
管財手続の場合は、破産開始決定と同時に管財人が裁判所により選任され、債務や財産を調査した後、滞納税金の納付や債権者への配当を行って、裁判所や債権者への報告が終了したら、原則として、免責許可決定が下されて終了します(注:免責許可が相当でない場合には、不許可決定が出されます)。
会社と経営者が同時に破産する場合には、原則的に同一の手続で行われます。会社破産はほとんどの場合管財手続で行われるので、そうすると経営者の破産も、管財手続で行われ、同一の管財人が調査をすることとなります。
個人破産の効果
個人破産は、会社破産と異なり、一定の財産が手元に残ります。
しかし、破産当事者は、信用情報上、返済に問題がある人として扱われるため、破産後は5~10年程度、新たな借り入れ等ができなくなります。
破産しても一定の財産は手元に残る
個人破産の場合には、免責許可が出ると、税金等を除き、破産開始決定時に負っていた債務がすべて免除されることとなります。
会社破産と異なり、一定の財産は、破産者の手元に残され、生活再建ができることとなっています。
具体的には、以下のものが手元に残されます。
- 99万円までの現金
- 差押禁止財産(生活に不可欠な衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具、1か月間の生活に必要な食糧及び燃料等)
- 破産手続開始決定後に取得した財産
- 自由財産の拡張により所持が認められた財産(例:生命保険の解約返戻金)
- 破産管財人が破産財団から放棄した財産
上記に列挙されていない財産でも高額で売却できるものでなければ処分されず、手元に残されることとなります。
新たな借り入れなどができるか
個人破産すると、その情報はクレジットカード会社や金融業者の間で共有され、破産当事者は返済能力に問題がある人と扱われることになります。
この状況を指して、世間ではブラックリストに載るなどと表現されます。
そのため、破産をすると5年から10年ほどの間は、新しいクレジットカードが作れなくなります。もちろん、従来持っていたクレジットカードも使えません。
また、上記のとおり、破産の情報は金融業者で共有されるため、新たな借り入れをすることもできなくなります。事業用の機材のリースもできなくなるでしょう。不動産の賃借もできなくなる可能性があります。期間はやはり、5年から10年程度です。
会社が破産した場合、事業再開はできるか?
この章では、会社が破産した場合に、破産会社で事業を再開できるか、あるいは新たに起業して事業を開始することができるかについて解説します。
破産会社で事業は再開できない
破産した会社は、先ほども解説したとおり、資産が滞納税金の納付や債権者への配当に充てられることとなり、最終的に解散して法人格が消滅します。
そのため、破産した会社自体が、従来の事業を再開することはできません。
新たに事業を開始することは可能
会社破産や個人破産の全ての手続が終わった後、経営者が、個人事業主として、あるいは会社を新たに起こして新たに事業を開始することは、法的にはなんら制限されません。
しかし、実際には、先ほども解説したとおり、経営者が個人破産した場合には、クレジットカードが使えなくなり、借り入れやリースも難しくなるため、融資を受けて起業することは極めて困難です。
そのため、破産終了後に起業したい場合には、自己資金を貯めてから行わなければならないことがほとんどでしょう。
会社が破産した場合、経営者の生活はどうなるか?
会社が破産しても、経営者個人が破産していなければ、経営者個人は、従前どおりの生活をすることが可能であり、特段不便を強いられることはないでしょう。
ただし、新たに事業を起こそうとする場合、金融機関からの借入は事実上厳しくなることが予想されます。
会社の破産とともに経営者個人も破産した場合には、クレジットカードが使えない、借り入れができないなどの不便も生じます。
ただ、破産手続中は、一定の職業への就職が制限されるものの、免責許可決定後はそのような制限もなくなります(これを復権といいます)。法律上は自由に、生活再建のための活動を行うことができます。
さいごに
会社破産や経営者が個人破産した後は、いくらかの不便はあるものの、会社経営者の努力次第で、事業再開もできれば、別な仕事に就くこともできることがお分かりいただけたかと思います。
破産後のことを考えて会社やご自身の破産に二の足を踏んでいる経営者の方は、まずは弁護士に相談してみてください。
当事務所は、会社破産や個人破産に精通した弁護士が揃っています。おひとりで悩まず、是非お気軽に当事務所までご相談ください。