「売り上げが下がった。」
「資金繰りがうまくいかない…会社を破産させるしかないか。でも破産したら、どんな影響があるだろう?」
こんなことでお悩みの経営者の方も少なくないことでしょう。
そこで、本稿では、法人破産のメリット・デメリットについて解説していきます。

法人破産の基礎知識
法人破産とは、支払不能や債務超過となった法人について、裁判所が選任した破産管財人が法人の所有財産を処分し、債権者に配当することで法人を清算する手続です。手続の内容とともに解説します。
法人破産とは
法人破産とは、支払不能や債務超過に陥った法人の財産を処分して得た利益から優先的に税金や賃金を返済し、余った資産を債権者に配当して清算して、最終的に法人を消滅させる手続です。
法人の債務整理には他に、以下のような手続があります。
- 任意で各債権者に債務を減額してもらう任意整理
- 債権者等の利害関係者の同意のもとで計画的に法人を再建させる民事再生や会社更生
- 債権者の3分の2以上の同意を得て法人を消滅させる特別清算
法人破産は、債権者の同意を要せずに法人を消滅させる点に大きな特徴があります。
法人破産の手続
法人破産は、通常管財または少額管財という手続で行われます。
このうち、通常管財は、裁判所から選任された破産管財人が、破産した法人の資産を換価処分し、これによって得た利益から優先的に税金や賃金を返済し、余った資産を法人の債権者に配当して法人を清算する手続です。
少額管財は、基本的な流れは通常管財と同じですが、破産手続や管財業務が複雑にならない場合に採用され、通常管財より短期間で終了します。
裁判所に納める費用は通常管財で50万円以上、少額管財で20万円程度かかります。
法人破産のメリット
法人破産の主なメリットは、以下のとおりです。
- 債権者からの取り立てや資金繰りから解放される
- 法人の債務がすべて免除される
- 経営者の生活の立て直し・再出発ができる
債権者からの取り立てや資金繰りから解放される
法人破産をするにあたっては、通常、弁護士に破産申立を委任します。
受任した弁護士は、一般的には、早い段階で、「○○株式会社は、弁護士○○が代理して法人破産の手続を採ることとなりました。そのため、今後同社に対する取立や催促はおやめください」という内容の受任通知を各債権者に送付します。
これにより、債権者からの取立や督促が止まるので、経営者は、資金繰りをする必要もなくなります。
まれに、受任通知の送付をすると債権者が会社に押し寄せて、かえって混乱することが予測できる場合もあります。その場合には受任通知を送付せずに、破産申し立てを行うこともあります。
この場合、破産を申し立てた裁判所から、債権者宛に破産手続開始の通知がなされた後、取立や督促が止まります。
なお、受任通知を送付しても、債権者からの訴訟提起や判決に基づく強制執行を止めることはできません。
受任通知を発送した後、長期間自己破産の申立ができないと、このような事態を招くことになりますので、経営者の方は、早急に破産申立ができるよう弁護士と協力して準備をすることが必要です。
法人の債務がすべて免除される
裁判所に破産申立を行った時点で、法人の資産は全て換価処分され、それにより得られた金銭で債権者に対して返済し、残りの債務は免除されます。
仮に法人の債務が1億円、法人の資産を換価処分して得られた金額が500万円だとしたら、その500万円が債権者に該当されれば、残りの9500万円は免除されます。
任意整理や会社更生、民事再生では、法人の債務は残ってしまいます。
債務が法的に免除されることは、法人破産最大のメリットです。
経営者の生活の立て直し・再出発ができる
後に述べるように、法人の債務については経営者が連帯保証をしていることも少なくありません。破産に至るまで、個人の資産を切り崩して返済に回すようなケースも少なくありません。
しかし、破産に至る法人の債務の額は多額に及んでおり、一般的には、経営者個人が支払いきれる額ではありません。
そのため、法人が破産する場合には、経営者もまた、破産や個人再生といった債務整理をすることが少なくありません。
法人破産と同時に経営者も債務整理することにより、このような事態から解放され、生活を立て直して再出発できます。
債権者にとってのメリット
法人破産は債権者にとってもメリットがあります。
債務者が破産して、債権の取立が不可能になれば、債権者はその債権を貸倒損失として損金処理できます。破産もせずにだらだらと未払の状態が続くよりも税務上のメリットを得らえるので、かえって良いといえるでしょう。
法人破産のデメリット
法人破産の主なデメリットは、以下のとおりです。
- 法人が消滅して事業が継続できない
- 法人の資産はすべて処分される
- 従業員を全員解雇しなければならない
- 経営者自身も債務整理をしなければならない場合がある
法人が消滅して事業が継続できない
裁判所に破産申立をすると、破産開始決定が出された時点で法人は解散します。裁判所が破産終結決定を出した時点で、法人登記は閉鎖され、法人格が消滅します。
法人が消滅するため、当然、事業を継続できなくなります。
法人の資産はすべて処分される
法人破産では、破産申立時点で法人に残っているすべての資産が、裁判所から選任された破産管財人によって換価処分され、滞納税金を支払った後、残額が債権者らに配当されます(会社に残っている資産の集合体のことを「破産財団」と言います)。
そのため、法人の資産は全てなくなってしまいます。
従業員を全員解雇しなければならない
法人破産では法人格が消滅して事業活動を継続できなくなります。そのため、従業員は全員解雇しなければなりません。
通常は破産申立前に解雇しますが、破産開始決定後も過去されていない場合には、破産管財人によって解雇の手続がとられることとなります。
これにより、従業員は職を失うこととなります。
なお、例外的に、法人の事業に黒字部門があり、これが破産前に事業譲渡されるような場合には、これに伴って一部の従業員の解雇を免れるケースもあります。
経営者自身も債務整理をしなければならない場合がある
先にも述べたとおり、経営者が法人の債務を連帯保証していることも少なくありません。このような場合、法人が破産するとなると、債権者は経営者に対して取立や督促をしてくることになります。
法人が破産する場合の負債は大きく、経営者個人が支払うことは不可能な場合がほとんどです。
そのため、多くの場合、法人破産と同時に、連帯保証している経営者個人も破産などの債務整理をする必要が生じます。
経営者個人も破産や個人再生する場合には、不動産や自動車などを処分されてしまうことも少なくありません。
法人破産すると経営者に対しても、大きな影響が及ぶこととなります。
さいごに
以上が法人破産のメリットとデメリットです。
法人破産には、債務を消滅させることができ、経営者が取立てなどから解放されて生活再建できるといった大きなメリットがある一方、事業は原則的に停止せざるを得ず、重要な財産を手放さなければならないといった重大なデメリットもあります。
しかし、冒頭にお伝えしたとおり、他に、任意整理や、会社更生、民事再生といった制度もあります。
どのような債務整理方法が適切であるかは、法人が置かれている状況や資産などによっても異なります。法人破産すべきかどうか悩んでいる経営者の方は、一度弁護士に相談をしてみましょう。
当事務所は法人破産に精通した弁護士が在籍しております。どうぞ安心してご相談ください。
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