法人破産で滞納税金・社会保険料はどうなる?

経営状態が悪化してくると、滞納している税金・社会保険料の扱いがどうなるのか不安に感じる代表者も多いかもしれません。

今回は、法人破産の滞納税金について解説します。

    目次

    法人破産で滞納税金・社会保険料はどうなる?

    法人破産する場合、滞納税金・社会保険料はどうなるのか解説します。

    法人の支払い義務はなくなる

    法人破産すると、滞納した税金・社会保険料の支払い義務は消滅します。

    支払い義務を負っている主体である法人の法人格が消滅するためです。

    支払い義務が消滅する税金の具体例は、以下のとおりです。

    • 法人税
    • 事業税
    • 消費税
    • 法人市民税
    • 源泉所得税
    • 社会保険料

    代表者が法人の債務を肩代わりさせられることはない

    代表者が法人の債務を肩代わりするのではと不安を抱き、法人破産を躊躇する人も多いです。

    しかし、法人破産をしても、原則として代表者が債務を肩代わりする必要はありません。

    法人と代表者は別人格のためです。

    個人が自己破産をした場合は支払い義務が残る

    個人の場合、自己破産しても滞納していた税金・社会保険料の支払い義務が残ります。

    個人が自己破産しても支払い義務が残るものを非免責債権といい、具体的には以下のとおりです。

    • 租税等の請求権
    • 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
    • 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
    • 夫婦間の婚姻費用分担義務に基づく請求権
    • 夫婦間の相互協力扶助義務に基づく請求権
    • 親族や子どもの扶養義務および監護義務に基づく請求権
    • 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
    • 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権
    • 罰金などの請求権

    参考:破産法|e-Gov法令検索

    法人破産で滞納税金・社会保険料の支払い義務がなくなるタイミング

    法人破産は以下の流れで進んでいきます。

    1. 弁護士への依頼
    2. 受任通知を送る
    3. 会社の財産・権利義務の調査
    4. 会社財産の保全
    5. 必要書類の作成
    6. 特別清算の決議
    7. 申し立て・破産手続き開始決定
    8. 破産管財人・精算人の選定
    9. 債権者集会
    10. 手続きの終了と免責決定

    債権者に受任通知を送った段階で、滞納税金・社会保険料の取り立て・催促がストップします。

    その後裁判所により破産手続終結決定がされ確定した時点で、滞納税金・社会保険料の支払い義務がなくなります。

    法人破産をしても税金を支払わなければいけないケース

    法人破産をしても税金を支払わなければいけないケースは以下の3つです。

    合名会社・合同会社の無限責任社員

    合名会社・合同会社の無限責任社員の場合、会社の債務に対して直接連帯責任を負います。

    第二次納税義務を負っている

    第二次納税義務とは、本来納税義務を負っている人へ滞納処分をしても徴収すべき税金が徴収できなかった場合、二次的に納税義務を負う人のことです。

    第二次納税義務を負っている人の場合、法人破産をしても税金を支払わなければなりません。

    第二次納税義務を負っている人の具体例は、以下のとおりです。

    • 清算人などが税金等を支払わずに財産の分配をしてしまったケースの清算人や分配を受けた者など
    • 滞納処分をしても納税額に足りない場合に同族会社などの判断される基礎になった株主など
    • 法人財産を個人資産にするなど財産隠しをしていたケースの経営者など
    • 合名会社や合資会社の無限責任社員になっているケースの無限責任社員

    納税保証書を提出している

    過去に脱税や悪質な申告漏れがあり納税保証書を提示していた場合、法人の滞納した税金を支払う必要があります。

    滞納税金等の債権の破産手続における取扱い

    滞納していた税金は、一般的な金融機関からの借入よりも回収の必要性が高いとされており、破産手続きでも優先的な地位が認められています。

    以下では、弁済の優先度が高い債権ごとに解説します。

    財団債権

    財団債権としてもっとも優先される税金や社会保険料の具体例は以下のとおりです。

    • 破産手続開始後の原因に基づいて生じた租税等の請求権のうちで,破産財団の管理処分関する費用に該当するもの
    • 本税が財団債権となる場合の延滞税・利子税・延滞金
    • 破産手続開始後の原因に基づいて生じた本税が財団債権となる場合の加算税・加算金

    優先的破産債権

    財団債権の次に優先され弁済・配当されるのが優先的破産債権です。

    財団債権と以下で解説する劣後的破産債権に該当するもの以外が、優先的破産債権として扱われます。

    劣後的破産債権

    劣後的破産債権の具体例は以下のとおりです。

    • 破産手続開始前の原因に基づいて生じた本税が優先的破産債権となる場合の延滞税・利子税・延滞金または加算税・加算金
    • 破産手続開始後の原因に基づいて破産財団に関して生じた財団債権とならない租税等の請求権
    • 破産手続開始前の原因に基づいて生じた本税が財団債権となる場合の加算税・加算金

    法人破産を検討している人がすぐにでも手続を進めるべき理由

    法人破産を検討している人がすぐにでも手続きを進めるべき理由を解説します。

    法人破産は手続にかかる時間が長い

    法人破産の手続きは特定管財事件と少額管財事件の2つがあります。

    管財手続きの種類内容必要な期間
    特定管財事件債権者が多い、債権者との間に争いがあるケースで行われる 1年以上2年以内
    少額管財事件債権者が少ないケースで行われる3ヶ月から1年

    参考:司法統計|裁判所

    債権者が多く財産の調査・管理・処分に時間がかかる法人破産では、裁判所は特定管財事件へ振り分けを行います。

    制汗剤事件に指定されると、債権者や財産の調査に時間がかかるため、1年以上時間が必要なケースも多いです。

    なお法人破産手続き中でも、代表者は就職や企業など自分の経済的再生の途を進めます。

    税金を滞納していると突然差し押さえが行われるケースも

    法人が長期にわたり税金・社会保険料を滞納していると、突然差し押さえが行われるケースがあります。

    差し押さえられた法人の財産・資産は、取り立てにより強制換価されて税金の滞納分に充当されます。

    税金には自力執行権が与えられているため、裁判所など法の執行機関を通さなくても財産を差し押さえ可能です。

    訴訟手続きを行わなくても差し押さえは行われるので、法人が抱えている他の借金と比較すると差し押さえ手続きが容易に行われます

    差し押さえが迫っていても滞納している税金・社会保険料の返済目処が立たない場合、弁護士に相談して破産を含めた対処法を決める必要があります。

    まとめ

    法人破産をした場合、滞納していた税金・社会保険料の支払い義務はなくなります。代表者が責任を負わなければと勘違いしている人も多いですが、その必要はありません。

    ただし法人破産をしても税金を支払わなければならないケースもあります。

    税金・社会保険料を滞納しており、支払い義務を負うかわからない代表者の方は、まずは弁護士に相談しましょう。

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