会社が破産した場合の従業員の立場と会社が従業員にすべきこと

  • 会社の資金繰りがうまくいかない。
  • これはもう破産するしかないのではないか。
  • その場合、従業員にはどのような対応をすればいいのか。

そんなことでお悩みの会社経営者の方もいることでしょう。

そこで、今回は、会社が破産した場合に従業員の立場はどうなるのか、会社は何をすべきかについてお話しします。

目次

従業員は解雇になる

破産をすると会社の法人格が消滅するため、従業員は解雇しなければなりません。

会社が破産すると最終的には法人格が消滅する

会社について破産開始決定がなされると日常的な業務が行われなくなり、破産管財人が行う会社財産の管理・換価の業務に必要な範囲でのみ、会社の法人格が存続することになります。

そして、破産手続が終結した時点で、会社の法人格は完全に消滅します。

従業員全員が解雇になる

破産をすると会社の法人格は完全に消滅するので、従業員を在籍させられなくなります。

そのため、従業員は解雇することとなります。

解雇の対象となるのは、原則として、会社と労働契約のある全従業員です。

正社員、パート、アルバイト、嘱託職員すべてが解雇の対象となります。

どの時点で解雇するかが問題となりますが、破産申立前に解雇するのが一般的です。

仮に破産申立前に解雇しなかった場合には、破産開始決定後に、破産管財人によって解雇されます。

従業員への説明には従業員説明会を開くことが必要

従業員の説明には、従業員説明会を開くことが必要です。

従業員説明会の実施

会社が破産するという情報を事前に一部の従業員に漏らしてはいけません。

会社破産の噂が独り歩きすると、従業員間に不安が広まり、大きな混乱を招くことが予想されるからです。

会社が破産する際には、事業停止のタイミング従業員説明会を実施し、一斉に破産申立することを従業員に知らせる必要があります。

ただし、複数の事業所があり、同じ日時に従業員全員に集まってもらうのが難しい場合には、日を改めて、別途従業員説明会を開くこととなります。

従業員説明会で説明すべきこと

従業員説明会では、以下のことを説明します。

  • 会社が破産を決断した経緯
  • 全従業員を解雇する旨
  • 今後の出勤の要否や解雇通知について
  • 給料や退職金、解雇予告手当の見通し
  • 給与の未払いが発生する場合には、未払賃金立替払い制度の手続の説明
  • 雇用保険や社会保険の手続
  • その他

会社が破産して解雇されることを知ると、従業員の間に不安が広まるおそれがあります。できる限り不安を解消し、混乱を防ぐために、会社側には誠実な説明が求められます。

解雇通知と解雇予告手当の支払い

従業員の解雇にあたっては、解雇通知と解雇予告手当の支払いが必要です。

解雇通知

従業員に対する解雇通知は口頭でもできます。

しかし、従業員が雇用保険の支給を受けるためには、解雇通知書により「解雇による失業」を証明することとなるため、会社としては、解雇通知書を用意して交付することが一般的です。

解雇予告手当の支払い

従業員の解雇にあたっては、少なくとも30日前にその予告をしなければならないとされています。

したがって、解雇通知書は解雇の30日前までには交付しなければなりません。

30日前までに予告しないで解雇する場合には、解雇予告手当の支払義務が会社に発生します。

解雇予告手当の金額は、平均賃金の30日分以上とされています(労働基準法20条)。

会社が事業停止にあたって、解雇予告手当を用意できる場合には、解雇通知の際に支払うこととなります。

解雇予告手当を支払うことができない場合

会社に解雇予告手当を支払う資金がない場合には、破産申立時に裁判所に提出する債権者一覧表に労働債権として解雇予告手当を計上します。

解雇予告手当は、破産手続において優先的破産債権となり、一般の破産債権よりも優先した位置付けになるのです。

ただし、解雇予告手当は、後に解説する未払賃金立替制度の対象にはなりません。

未払給与と退職金の取り扱い~未払賃金立替制度について

未払給与や退職金が発生する場合には、労働債権として裁判所に報告しなければなりません。未払賃金と退職金の一部を立替払いする制度(未払賃金立替払制度)の概要とともに解説します。

会社破産時の未払賃金や退職金の取り扱い

会社は、解雇時まで、従業員に対する賃金の支払い義務を負います。

そのため、従業員解雇後解雇時までの未払い賃金を計算します。

未払賃金がなければ問題はありませんが、破産会社の多くでは、破産申立にあたり、未払賃金が発生しています。

その場合には、未払賃金の額を労働債権として、債権者一覧表に計上して裁判所に提出します。

未払賃金のうち破産手続開始3か月間の給料は、破産手続の中で、財団債権として最優先で支払われる債権となります。

残りの未払い賃金は、最優先とはなりませんが、一般の債権よりは優先的に支払われる優先的破産債権となります。

就業規則や退職金規程により退職金が労働者に発生している場合には、退職金の額を計算して債権者一覧表に計上します。

退職金のうち、退職前3か月分の給料の合計額に相当する額は、財団債権として、最優先で支払われる債権となり、それ以外の部分も一般債権より優先的に支払われる債権となります。

未払賃金立替制度の利用

未払賃金や退職金は、本来破産管財人から財団債権ないし優先的破産債権として支払いがなされるべきものです。

しかし、実際に支払いができるようになるのは、会社財産がある程度換価されて支払いの原資ができてからになるので、解雇されてから時間が経ってからになる場合がほとんどです。

そうすると、解雇された従業員の生活が困窮する可能性があることから、従業員を救済するために、政府が会社に代わって、未払賃金と退職金の一部を立替払いする制度(未払賃金立替払制度)が設けられました。

この制度により立替払される金額は原則として給与や退職金の8割であり、金額にも上限があります。そのため、従業員は未払賃金や退職金の全額を回収できるわけではなく、残りは、破産手続の中で、破産管財人から弁済を受けることになります。

また、従業員が解雇された日から6か月を経過して破産申立がされた場合には、未払賃金立替制度は利用できません。

従業員が未払賃金立替制度を利用するにあたっては、破産管財人の証明が必要です。破産管財人がすぐに証明できるよう、会社側は、代理人弁護士に依頼してできるだけの準備をしておくことが必要です。

雇用保険(失業保険)の手続

従業員が解雇により失業すると、雇用保険(失業保険)を受給できます。

従業員の収入を少しでも確保するため、会社側は速やかに手続をすることが必要です。

具体的には、ハローワークに対して、雇用保険彦権者の離職証明書と雇用保険被保険者資格喪失届を提出します。

社会保険の手続

会社が破産すると、従業員は、社会保険を使えなくなります。

会社側としては、管轄の年金事務所に次の書類を提出して、社会保険の適用事業所の廃止手続を行わなければなりません。

  • 健康保険・厚生年金保険適用授業所全廃届
  • 被保険者資格喪失届

従業員に対しては、社会保険が使えなくなることを説明したうえで、健康保険証を回収し、これを管轄の返金事務所に返却することが必要です。

住民税の手続

従業員の住民税は、事業停止まで、会社が特別徴収することが多いですが、破産にあたって、普通徴収に切り替えることが必要となります。

会社は、普通徴収に切り替えるための異動届を市町村に提出する必要があります。

従業員に住民税の滞納が生じないように、速やかに行いましょう。

源泉徴収票の交付

会社が破産するにあたっても、従業員の離職日までの源泉徴収票を作成して発行する必要があります。

まとめ

これまで見てきたところからわかるように、法人破産にあたっては、従業員との関係で会社側がしなければならないことが多数あります。

ひとつでも漏らしてしまうと、従業員と会社の間でトラブルが生じ、会社破産がスムーズにできないリスクがあります。

会社の破産をお考えの方は、弁護士に相談・依頼することをお勧めします。

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