従来、患者にとって、歯科医院で行うホワイトニングは効果が高い反面、高額になる。
セルフホワイトニングは、金額は安いけれども、効果に満足できないと言われてきました。
そこで近年、注目されているのが、薬剤の処方は歯科医院で行い、その薬剤を利用して患者がセルフホワイトニングを行う、というハイブリッド型のホワイトニングです。
オンライン診療が普及してきたために、事業者と歯科医院が連携してこのようなサービスを提供することが増えてきました。
これがなぜ認められるのかや、留意点について、以下解説いたします。
なぜ認められるか
ハイブリッド型のホワイトニングがなぜ認められるかというと、法律で禁止されていないからという点に尽きます。
では何が法律で禁止されているのか、次に述べます。
法律で禁止されていること
(1)歯科医師法
第十七条
歯科医師でなければ、歯科医業をなしてはならない。
簡単に言えば、歯や口の中の疾患の治療、予防、診断等は歯科医師でなければならないということになります。一部は歯科医師の管理下で歯科衛生士が行うことも可能です。
ここで大事なのは、ホワイトニングのための過酸化水素などの医薬品を処方する行為も歯科医師でなければできない、ということになります。
エステで利用者に渡すことができるのは、あくまで物理的なクリーニングを行うための雑貨・雑品であって、医薬品を渡すことはできません。
したがって、まず患者に過酸化水素水などの医薬品を渡すためには、歯科医師による処方が必要になります。
従来は、歯科医院に来院してもらわなければ、処方することができませんでしたが、オンライン診療により、これを遠隔でも行うことができるようになりました。
エステでは当然、歯科医業を行うことはできないので、患者・利用者自身で薬剤と照射機等を使用することになります。
(2)薬機法(旧薬事法)
上記で、エステでは利用者に医薬品を「渡す」ことができないと書きましたが、薬機法により、「販売」だけでなく「授与」が禁止されていますので、例えばエステ料金を受け取る代わりに医薬品は無料で授与するということも禁止されています。
結局、ホワイトニングのための医薬品を処方するには歯科医師による処方が必要になります。
(3)小括
では、歯科医師から処方された医薬品をエステで使用することは可能でしょうか。
患者は、歯科医院で処方された医薬品を、エステに持ち込んで使用することになりますが、これを禁止する法律はありません。
患者が医薬品をどこで使用するかは患者の自由です。
極端な例で言うと、内科で処方された風邪薬を、飲食店に入ってコップに水を入れてもらって飲むとの同じということになります。
これと同様に、歯科医院で処方された医薬品を、エステに入って照射機等を借りて使用するのと同じだということになります。
但し、照射機が医療機器に該当する場合は貸与について貸与業の許可・届出が必要になる可能性がありますので、その点は十分ご留意ください。
また、オンライン診療で留意すべき事項や、エステの利用契約・同意書の作成など、様々な留意点がありますので、事業を立ち上げ予定の方は、ぜひ一度ネクスパート法律事務所にご相談ください。
初回のご相談で事業概要をお聞かせいただき、お見積り・ご提案をさせていただきます。また、ご質問がございましたら可能な限りお答えさせていただきます。
その他の留意点
(1)薬剤を海外から輸入する場合
薬剤をオンライン診療ではなく、海外から個人輸入してもらう、という手法も一応あります。
ただ、個人輸入の手続は煩雑であり、輸入代行には広告規制もあるため、あまりお勧めではありません。
医薬品の定義や輸入代行については以下を参照ください。

(2)オンライン診療の留意点
オンライン診療については、在宅の歯科医師が対応することも可能、但し、院内に常勤の歯科医師は必要という点や、薬剤は歯科医院内から発送する、という点などに留意すべきです。
以下、ネクスパート法律事務所の他の記事もご参照ください。
オンライン診療に関する法律の整理

オンライン診療において、院内調剤を発送する際の留意点

在宅でのオンライン診療を行うために、診療所に医師が不在の時間を作ることの可否について

(3)広告規制
エステの場合は医療法の適用はなく、景品表示法と医師法に留意することになりますが、歯科医院ではこれに加えて医療法の規制を受けることになります。
厚生労働省から医療法に基づいた医療広告ガイドラインが公表されており、これを遵守する必要があります。
まず、限定解除の要件というのを満たすために必要な4項目を表示すること、次に、禁止される事項を表示しないことがポイントになります。


まとめ
どんな事業でも、まずやって良いか悪いか、やるとしたらどのようにやるべきか、という話になります。
ハイブリッド型のホワイトニング事業は、やることは可能ですが留意すべき点が少々多くあります。
ネクスパート法律事務所は、まさにこの分野で必要となる医療法・薬機法に精通した数少ない弁護士です。
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