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遺言書がある場合の遺留分について解説

平成30年の民法改正により、遺留分の規定が変更になりました。令和元年630 日までに開始した相続には改正前の規定が適用され、令和元年71日以降に開始した相続については改正後の規定が適用されます。

 

被相続人が遺した遺言書があり、特定の人物に「すべてを相続させる」と記載されていた場合、遺言書の効力や遺留分はどうなるのでしょうか。

 

ここでは、遺言書がある場合の遺留分について解説します。

 

遺言書がある場合の遺留分

「遺留分」とは、被相続人に近しい法定相続人に、一定割合の相続財産の取り分を補償する制度です。遺留分についての詳しい説明は以下の記事で解説しておりますので、ご確認ください。

参照:遺留分とは

 

遺言書の効力

遺言書があることが分かった場合は、まず、その遺言書が有効なものであるかどうかを確定させることが大切です。

 

普通形式の遺言書は以下の3種類があります。

種  類

作成者

保 管 場 所

自筆証書遺言 遺言者 遺言者・遺言執行者・法務局
公正証書遺言 遺言者+公証人 公証人役場
秘密証書遺言 遺言者 遺言者

 

このうち、自筆証書遺言と秘密証書遺言は、遺言者が作成するもので、以下の条件を満たすさない場合は無効になります。

 

  • 遺言者本人の自筆で全てが書かれている(添付資料の財産目録は除く)
  • 作成された日が明確に書かれている
  • 戸籍上の氏名がフルネームで書かれている
  • 押印してある
  • 訂正がある場合は、訂正箇所に押印し、欄外にどこを訂正したか記し署名してある

 

遺言者の死亡後、遺言書の保管者や遺言書を発見した相続人は、速やかに遺言書を家庭裁判所に提出し、「検認」を請求しなければなりません。

 

検認とは、遺言書の形状や加除訂正の状態、日付、署名など、検認の日時点の遺言書の内容を明確にし、相続人に対して遺言書の存在や内容を知らせるとともに、遺言書の偽造などを防止するための手続で、遺言が有効か無効かを判断するものではありません

 

ただし、公正証書遺言や自筆証書遺言のうち法務局の自筆遺言証書保管制度を利用している遺言書は検認の必要はありません。

 

遺言書の効力に期限はありません。遺産分割協議が終了していたり、数十年前の遺言書が見つかったりした場合も効力を持ちます。相続人のうち1人でも、「遺言書の通りにしたい」という希望があれば、遺言書が優先されます。

 

遺言書が全てではない

法的に有効な遺言書でも、書かれた内容がすべてそのまま認められるわけではありません。もちろん故人の遺志を尊重するという相続人全員の合意があれば、遺言書に書かれた内容で相続できます。

 

遺言書と遺留分がある理由

遺言書に書かれた内容がそのまま認められないのであれば、遺言書の制度に疑問を感じる方もいらっしゃるかもしれません。

 

遺言書で、特定の相続人の相続分を極端に少なくする、あるいは相続させないという遺言がなされた場合であっても、各相続人の遺留分を侵害することはできないという意味では、遺言書の内容がそのまま認められるわけでありません。

遺言は、遺言者に遺産の自由な処分を認めつつも、遺留分を定めて遺された相続人の最低限度の取り分を認めることで遺産の自由な処分と相続人の権利の調整を図っているのです。

 

遺言書の内容が不平等な内容であった場合は、民法は、遺言によっても侵されない相続人の最低限の取り分として遺留分を定めています。

 

遺言書の内容が不平等で、遺留分の侵害を受けた相続人は、遺留分侵害額請求をすることができます。

 

遺留分がないケース

遺留分があっても、初めから相続人ではなかったという扱いになり、遺留分の請求ができないケースがあります。

 

  • 相続欠格者となった場合
  • 相続人廃除がなされた場合
  • 相続欠格者と相続人廃除の違い

 

相続欠格者となった場合

「相続欠格者」とは、欠格事由により相続人になることができない人のことで、民法第891条に定められています。

 

(相続人の欠格事由)

第八百九十一条 次に掲げる者は、相続人となることができない。

一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者

二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。

三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者

四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者

五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

 

相続人廃除がなされた場合

相続人廃除とは、被相続人に対して、虐待や重大な侮辱行為等があった場合に、被相続人の意思により相続人としての権利を無くすことです。

 

方法には、下記の2つがあります。

  • 被相続人が家庭裁判所に申立てをする
  • 遺言書に相続人廃除を希望する旨を記載し、遺言執行者が家庭裁判所に申立てをする

 

どちらも、審判で認められなければ、相続人廃除とはなりません。

 

相続人欠格者と相続人廃除の違い

相続欠格者は被相続人の意思とは無関係で、何らの手続きを要することなく相続人としての地位を失います。これに対し、相続人廃除は、申立てが必要という意味で被相続人の意思で行われます。

 

ただし、相続人廃除は、家庭裁判所に廃除が相当であると認められなければならない為、「嫌いだから」などといった主観的な感情だけでは、認められません。

 

遺留分侵害額請求とは

遺留分侵害額請求とは、被相続人が、財産を遺留分権利者以外に贈与または遺贈したために、遺留分に相当する財産を受け取ることができなかったとき、贈与または遺贈を受けた者に対して、その侵害額に相当する金額の支払いを請求することです。

 

遺留分侵害額請求は、遺言書の種類によって変わることはありません。

 

令和元年年71日より前は、「遺留分減殺請求」といい、不動産ならば不動産というように、遺産そのものに対する権利でした。民法改正後は、侵害を受けた分をお金で解決できるようになりました。

 

遺留分侵害額請求の注意点

遺留分侵害額請求についての注意点は以下のとおりです。

 

時効がある

遺留分の請求は、相続や遺留分を侵害する贈与があると知った日から、1年間以内に請求しなければなりません。この期間を過ぎてしまうと、請求権が消滅します。

 

また、相続開始から10年経過すると権利が消滅するため、長らく音信不通で、相続があることを知ったのが1年以内だとしても、請求することはできません。

 

任意である

遺言書の内容が不公平で、遺留分を侵害されたとしても、遺留分侵害額請求をするかどうかは、それぞれの意思で判断します。

 

遺留分の放棄

相続開始前であれば、遺留分権利者本人が家庭裁判所に申立て、許可を受けることで遺留分の放棄ができます。

 

例えば、遺留分権利者が生前多額な援助を受けており、遺留分を放棄しておかないと、のちのちトラブルになりかねない場合などに有効です。

 

ただし、放棄した遺留分は、その他の相続人の遺留分に影響することはありません

 

遺言書作成時にできること

遺言書を残すことで、遺言者が希望する相続の割合などを相続人に伝えることはできますが、兄弟姉妹以外の法定相続人には遺留分があるため、かならずしも遺言書のとおりになるとは限りません。

 

では、どのような遺言書にすれば、余計な争いをせずに、遺言者の希望に沿うようにできるでしょうか。

 

遺留分請求の順番を指定する

遺留分侵害額の請求に対して、①受遺者(遺贈を受けた人)②受贈者(生前贈与を受けた人)の順番で負担します。原則としてこの順番を変更することはできませんが、受遺者が複数いる場合や同時に贈与を受けた受贈者が複数いる場合は、遺言によって遺留分侵害額請求の負担者の順番を指定できるようになりました。

 

遺留分の侵害額請求の順番の代表的な例は以下のとおりです。ただし、様々な事情により順番や額は変更になりますので、詳細は弁護士に確認しましょう。

付言事項を記載する

遺言書には「付言事項」を書くことができます。遺言書の本文に、「なお」という書きだしで、本文の内容を説明したり条件等を付けたしたりすることで、「なお書き」とも呼ばれます。

 

「家族で仲良くしてください」「争いはしないように」等が多く、遺言者の想いを書き記しますが、法的な効力はありません。ですが、遺言者の想いが伝われば、無用な争いをしようと思わなくなる可能性があります。

 

あえて相続人全員と協議する

遺言書は、被相続人の遺志を書き残すものですが、後々の相続人の争いを無くすために、生前に被相続人と法定相続人全員で話し合い、その結果を遺言書に遺すという方法があります。

 

ただし、遺言書が作成されてから長年経過した後では、被相続人の考えが変わったり、資産の変動があったりするので、それらについても、協議しておくことが望ましいでしょう。

 

弁護士に依頼するメリット

相続が開始されると、しなければならない手続等が多くあります。中でも、遺産分割は相続人間でトラブルが発生し、当事者同士ではなかなかスムーズに話が進まないことも多くあります。

 

弁護士に依頼をした際のメリットは以下のとおりです。

  • 解決までの一連の流れをサポートしてもらえる
  • 精神的にもサポートしてもらえる
  • 相続人調査をしてもらえる
  • 相手方との話し合いをしなくても良くなる
  • 書類作成を任せられる

 

解決までの一連の流れをサポートしてもらえる

弁護士は、相続に関する様々な手続について熟知しています。どのような手続をどのような順番で行えば良いのか、一連の流れについてサポートしてもらえます。

 

遺留分侵害額請求には時効もあるため、早めの対応が求められます。自分には遺留分請求をする権利があるのか、遺留分侵害額の算定方法等、遺言書の内容を含めてご相談いただけます。

 

精神的にもサポートしてもらえる

相続の手続はただでさえ負担が多いうえに、親族間のトラブルが重なると精神的な負担も大きくなります。

 

誰に相談したら良いかわからずにいる方は、弁護士に依頼をすることで、適切なアドバイスをもらえ、ストレスを軽減できます。

 

相続人調査をしてもらえる

被相続人に離婚経験等がある場合、もしかしたら、把握していなかった法定相続人がいる可能性があります。

 

もちろん、ご自身で戸籍等の書類を取り寄せ、調査することはできますが、本籍地の移動が複数回ある場合は、それぞれの本籍地の役所へ申請をしなければなりません。

 

弁護士は、依頼された案件について、定められている業務を遂行するために、「職務上請求」という方法を利用し、相続人の代理人として、戸籍謄本等の交付を請求できます。相続人が多い方や本籍地を複数回変更している方の場合は、戸籍の収集に時間がかかるため、手続になれている弁護士に依頼をするとスムーズです。

 

相手方との話し合いをしなくても良くなる

親族間でトラブルが発生している場合、当事者同士では感情的になり、話し合いがスムーズに進まないケースがあります。

 

第三者であり、法律にも詳しい弁護士が間に入ることで、納得してもらいやすく、トラブルを未然に防いだり、問題を解決したりできます。

 

万が一訴訟になった場合でも、それまでの経緯を知っている弁護士が対応できるので安心です。

 

書類作成を任せられる

相続に関する書類はどのような手続を行うかによって様々なものがあり、添付する書類もそれぞれ違います。

 

遺留分侵害額請求の手続をするにしても、書類の準備や作成に多くの時間を使うことになり、仕事や普段の生活に支障がでる場合もあります。

 

弁護士に任せることで、それらの書類作成を的確に準備・作成してもらえます。

 

まとめ

遺言書があると、そこに書かれた内容がすべてであると思っている方も多いことでしょう。兄弟姉妹以外の法定相続人には、遺留分という最低限の相続を受ける権利があります。

 

相続にはそれぞれの事情があり、複雑なケースもあります。スムーズな相続手続のためにも、まずは弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。

この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)

はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。

相続問題は弁護士に依頼することでトラブルなくスピーディーに解決できます。

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