親が亡くなり、空き家となった実家の売却を考えている人がいらっしゃると思います。
この記事では、空き家を売却する方法と一般的な流れ、売却にかかる費用について解説します。
空き家の売却に関してよくある質問に対する回答も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

空き家を売却する方法は?
空き家を売却する方法は、主に以下の3つがあります。
空き家をそのままの状態で売却する
空き家をそのままの状態で売却する方法です。
売主にとっては修繕費がかからず、買主にとっては即入居できるメリットがあります。
ただし、長年空き家の状態が続いていると、建物の老朽化が進んで思わぬトラブルが生じる場合があります。
不動産を売却した後に、目的物の種類・品質または数量に関して契約内容と異なる点が見つかった場合は、売主が契約不適合責任を負います。
空き家をそのまま売却しようとした際、念のため耐震診断をしたところ、倒壊、又は崩壊する危険性が高い物件と判断され、空き家をそのままの状態で売却するのを諦めるケースもあります。
空き家の状態が長く続いた場合は、売却する前に不動産の専門家に相談したほうがよいでしょう。
空き家をリフォームして売却する
空き家をリフォームして売却する方法です。
リフォームは老朽化した設備を新築に近い状態にすることです。壁紙を張り替えたり、キッチン・お風呂・トイレ等の水回りを新しくしたり、外壁を塗り替えたりします。
リフォームをすれば、買主が空き家に対して良いイメージを持つ可能性があります。
ただし、リフォームには100万円単位で費用がかかりますし、工事中は物件を売り出せないので、売却のタイミングを逃す可能性があります。
空き家を解体して土地のみを売却する
空き家を解体して更地にし、土地のみを売却する方法です。
土地のみであれば、新築の建物を建てたい人や駐車場など住宅以外で利用を考えている人など、購入希望者の幅が広がります。
解体費用がかかりますが、最近では解体費用の一部を補助してくれる自治体があるため、そうした補助金について問い合わせてみるのもよいでしょう。自治体によっては、補助金を受けるにあたり細かい条件を設定しているので、担当者からもれなく説明を聞いておきましょう。
更地にすると固定資産税が高くなるデメリットもあります。買主が現れてから解体したほうがよい場合もあるため、解体の時期は慎重に検討しましょう。
空き家を売却する際にかかる費用は?
空き家を売却する際に、かかる可能性がある費用は以下の4つです。
譲渡所得税等の税金
空き家を売却し利益が出た場合は、利益に対して譲渡所得税がかかります。
譲渡所得税は、所得税、復興特別所得税(2027年12月31日まで)、住民税の3種類を合算したものとなります。
なお、相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等を、2016年4月1日から2027年12月31日までの間に売却し、一定要件を満たす場合は、譲渡所得の金額から最高3千万円まで控除できます。
参照:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁
仲介手数料
空き家の売却を不動産会社に依頼する場合、空き家を売却できたら仲介手数料が発生します。
仲介手数料とは、売主と買主の間に入って契約や調整を行った不動産会社に対して支払う手数料です。
仲介手数料の金額は、宅地建物取引業法で以下のように上限が決められています。
売買価格 | 報酬額 |
---|---|
200万円以下の部分 | 取引額の5%以内 |
200万円超400万円以下の部分 | 取引額の4%以内 |
400万円超の部分 | 取引額の3%以内 |
売買価格が400万円を超える場合は、上記をまとめて以下の計算式で算出します。
仲介手数料=物件価格×3%+6万円 |
なお、2024年7月1日より、売買価格が800万円以下の低廉な空き家等の売買や交換の媒介に関して、宅地建物取引業者が受け取ることのできる報酬額の上限が引き上げられました。
この改訂により、低廉な空き家等(税抜800万円以下の宅地建物)の売買において、媒介契約の際に、報酬額について依頼者に十分な説明を行い合意を得られれば、不動産業者は、上記計算式で導き出される原則の報酬額を超えて、最大で30万円の1.1倍(すなわち税込33万円)まで受領可能となりました。
リフォーム代金
空き家をリフォームした場合、リフォーム代金がかかります。
どの程度リフォームをするかによって変わってきますが、国土交通省が発表している資料によると以下のとおりです。
内容 | 相場 |
---|---|
スレート屋根の塗り替え | 20万円~80万円程度 |
システムバス交換 | 60万円~150万円程度 |
システムキッチンの交換 | 40万円~80万円程度 |
畳からフローリングへ変更 | 15万円~60万円程度 |
解体費用
空き家を解体し、更地にする場合は解体費用がかかります。
建物の大きさや地域によって差がありますが、国土交通省によれば、50坪の木造住宅の解体費用は、160万円から185万円ほどが相場となっています。
空き家を売却する際の一般的な流れは?
空き家を売却する際の一般的な流れは、以下のとおりです。
空き家の売却を不動産会社に依頼する
不動産会社に空き家の売却を依頼します。
その際は複数の不動産会社に問い合わせをし、信頼できる会社を選択しましょう。
不動産会社と媒介契約を締結する
空き家の売却を依頼する不動産会社と媒介契約を締結します。
媒介契約には以下の3種類があり、それぞれ違いがあります。
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属選任媒介契約 | |
---|---|---|---|
複数の不動産会社と契約ができる | 〇 | 〇 | × |
自己発見取引ができる | 〇 | 1社のみ | 1社のみ |
媒介契約の有効期間 | 指定なし | 最長3か月 | 最長3か月 |
業務の報告義務 | 任意 | 2週間に1回以上 | 1週間に1回以上 |
専任媒介契約や専属選任媒介契約で締結すると、不動産会社は不動産の売却に関わる状況(問い合わせがどのぐらいあるか等)を定期的に報告する義務があるため、密にコミュニケーションが取れて安心感があります。
ただし、なかなか買主が現れない場合、3か月ごとに契約書の締結が必要となる点に気を付けなければいけません。
買主が見つかったら売買契約を締結する
買主が見つかったら、売買契約を締結します。
不動産会社の担当者が立ち会い、不動産会社が作成した売買契約書に署名・押印をします。
契約時に手付金を支払うのが一般的です。
物件の引渡し・決済を行う
物件の引渡しと決済を行います。
引渡しと決済は同じ日に行われ、司法書士の立ち会いのもと所有権移転登記の手続きを行います。
空き家を売却するにあたってよくあるQ&A
空き家を売却するにあたって、よくある質問に対する回答を紹介します。
空き家の住宅ローンが残っている場合は売却できるか?
空き家の住宅ローンが残っていても売却は可能ですが、ローンの残債を完済し、抵当権抹消登記の申請をしなければいけません。
空き家の売却を考えるなら、まずはローンの残債がいくらあるかを把握しましょう。売却の際には仲介手数料、登記費用、税金もかかりますので、それらを合算してトータルでどのくらい必要か正確に把握しましょう。
空き家バンクとは何か?
空き家バンクとは、自治体等が、空き家の売却または賃貸を希望する所有者が登録した空き家情報を、空き家の利用を希望する人に対して、提供する制度です。
地方自治体が定住促進による地域の活性化を図るために行っています。不動産が所在する自治体が空き家バンクを行っているなら、登録してみてもいいかもしれません。
まとめ
長年空き家になっている実家の売却は、やらなければならないことがたくさんあり、大変です。
面倒になってついつい先延ばしにしてしまいがちですが、先延ばしにすればするほど売却に時間がかかる可能性があります。今後実家に誰も住まないことがはっきりしているなら、早めに対応したほうがよいでしょう。
不動産に関してお困りのことがあれば、弁護士への相談をおすすめします。
売却を検討しているものの疑問点や不安がある場合は、不動産会社に依頼する前に、市区町村などの無料法律相談を利用するなどして、弁護士に相談をしてください。