空き家を取得したものの、利用する予定がなく、維持管理に頭を悩ませている所有者は少なくありません。
この記事では、空き家の維持費用の具体的な内訳と相場、過度に維持費を惜しまずに適切に管理すべき理由について解説します。
空き家の年間維持費用の全体像は?
空き家を維持するために最低限発生する費用は、必須コストと、将来発生する可能性があるリスクを回避するための管理コストに分類されます。
これらの費用は、空き家の立地、構造、評価額、所有者の管理方法によって変動しますが、具体的な内訳と相場の理解が重要です。
必須コスト①固定資産税と都市計画税
不動産を所有している限り、毎年課税されるのが固定資産税と都市計画税です。
たとえ空き家でも、この費用は避けられません。居住用の建物が建っている土地(住宅用地)には、住宅用地の課税標準の特例が適用され、税負担が軽減されます。この特例があるため、空き家でも更地と比較したら税負担が低く抑えられています。
具体的には、土地面積が200㎡以下の部分(小規模住宅用地)では固定資産税の課税標準額が本来の6分の1に、都市計画税は3分の1に軽減されます。200㎡を超える一般住宅用地部分でも固定資産税は3分の1に、都市計画税は3分の2に軽減されます。
必須コスト②火災保険・地震保険
火災や自然災害のリスクに備えて、火災保険や地震保険への加入は必須です。
火災保険料の相場は、建物の構造や補償内容、契約期間によって変動しますが、年間1万円から6万円程度です。充実した補償や地震保険を付加した場合、費用は高くなります。
必須コスト③水道・電気の基本料金
空き家でも水道や電気の基本料金の支払いは発生します。
配管の維持管理や、換気・通水などの管理作業のために、水道や電気の契約を完全に停止しないほうがよいからです。水道代や電気代は、使用量がゼロでも年間で2万円から4万円程度の料金がかかります。
管理コスト①管理委託料
遠方に住んでいたり管理作業に時間を割けなかったりする場合、専門業者に空き家の管理を委託するケースがあります。その場合は管理委託料が発生します。
管理委託料の相場は、一般的に月額5,000円から10,000円です。
基本的なサービスには、主に以下の項目が含まれます。
- 建物の外部状況確認
- 郵便ポストの中身の回収
- 巡回内容のメール報告
- 大規模自然災害時の現地確認
建物内部の確認、換気、通水、除草代行などはオプション料金で追加されることが一般的です。
管理コスト②修繕費用の積み立て金
空き家の老朽化を防ぎ、高額な修繕費の発生を防ぐために、計画的な修繕費用の積み立てが必要です。
発生する可能性がある修繕項目と費用の相場は、以下のとおりです。
- 給排水設備の漏水:3万〜6万円
- 床の腐食:5万〜10万円
- 電気設備の漏電:7千円〜3万円
- 外構の劣化:3万〜20万円
空き家の維持費を適切にかけるべき理由は?
空き家の維持費の支出を惜しんで管理を怠ると、建物を劣化させるだけでなく、管理不全な空き家として行政指導が行われたり、税制優遇が受けられなくなったりするケースがあります。
固定資産税の優遇措置が受けられなくなる可能性がある
空き家を放置して管理を怠ると、自治体が特定空家等に指定し、固定資産税の優遇措置が受けられなくなる可能性があります。
適切な管理を怠り、倒壊の危険性や衛生上有害な状態、または景観を著しく損なう状態にあると自治体が判断した場合、特定空家等に指定されます。
特定空家等に指定され自治体から勧告を受けると、その土地に適用されていた固定資産税の優遇措置(住宅用地の特例)が強制的に解除されます。特例解除により、これまで6分の1に軽減されていた固定資産税の課税標準額がもとに戻り、税金が最大で6倍になります。
工作物責任で損害賠償を負う可能性がある
管理不全で建物が劣化して他人に損害を与えた場合、工作物責任に基づき所有者が損害賠償責任を負います。
例えば台風などで瓦や外壁材が落下したり、老朽化したブロック塀が崩れたりして他人に傷を負わせると、損害賠償額は数百万から数千万円に及ぶ可能性があります。
近隣住民とのトラブル等で行政から罰則を受ける可能性がある
近隣住民とのトラブル等で、行政から罰則を受ける可能性があります。
定期的な換気や除草を怠ると、悪臭やネズミ、ハクビシンなどの害獣・害虫が発生し、近隣住民に多大な迷惑をかけます。
さらに空き家は不審者や放火犯の標的となり、治安悪化の原因になります。自治体からの勧告や命令に繰り返し従わない場合、空家法に基づき、最大50万円の過料に処される可能性があります。
売却・活用ができなくなる可能性がある
空き家の維持費をケチり建物が劣化すると、売却や活用ができなくなる可能性があります。定期的な換気等のメンテナンスを怠ると、雨漏り、カビ、シロアリ被害などが急速に進行し、建物の劣化が進みます。
たとえ売却や活用を考えたとしても、高額な修繕費用が必要となり、資産価値を著しく損ないます。最低限の維持管理をしていない空き家は、第三者から見ても悪印象です。売却交渉が不利になるか、買い手が見つからず売却機会を失います。
まとめ
空き家の管理、売却、解体、活用に関する判断に迷いが生じた場合や、すでに特定空家等への指定リスクを感じている方は、不動産に強い弁護士への相談をおすすめします。
ネクスパート法律事務所には、不動産案件を多数手掛けた実績のある弁護士が在籍しています。空き家問題は、先延ばしにすればするほど、リスクが高まりますので、早めにご相談ください。初回相談は30分無料ですので、一度ご連絡ください。


