再開発は、都市が抱える問題を解決し、安心・安全なまちづくりのために不可欠なものです。
しかし、住み慣れた場所から立ち退きを迫られた場合、戸惑う人も多いと思います。立ち退きをする場合引っ越し費用等がかかるため、それを補填できる程度の立ち退き料が支払われるのかどうかが気になるところでしょう。
この記事では、再開発で立ち退きを求められた場合の立退料の相場と金額に納得できない場合の対処法について解説します。

再開発の立ち退き料の相場はいくらぐらい?
再開発で立ち退きを求められた場合、相場の金額は〇円ですと明確にいえません。
なぜなら、住居用なのか店舗なのか、持ち家か賃貸か等によって、事情が変わってくるからです。
状況別にどのような内容で立ち退き料の金額が算出されるのか、以下で解説します。
持ち家の場合
持ち家の場合、家が建っている土地についても所有権ないし借地権を有しています。
そのため、再開発によって立ち退きを要求された場合、一般的には、次のいずれかを選択することになります。
持ち家を手放す代わりに再開発で建設される新たな土地・建物の権利の一部を取得(権利変換)する
または
立ち退き料をもらって再開発の地区外に転出する
権利変換を希望せず、再開発の地区外に転出する場合に支払われる立ち退き料は、以下の要素を考慮して算出されます。
- 土地・建物の評価額
- 建物や工作物、立木等の移転費用(移転先への移転や再築にかかる費用)
- 動産の移転費用(家財道具等の移転に要する費用)
- 仮住まいの家賃
- 移転雑費(移転先選定費用(仲介手数料等)、転居通知費などの補償)
上記①の評価については、土地と建物を区別して行います。
土地は公示価格や基準価格、近隣の取引価格、不動産鑑定士による鑑定価格等を参考にして算出します。借地の場合は、更地として評価し、その更地価額を地主と借地人により合意した借地権割合に基づき評価します。
建物は、現在の構造・用途・仕様・規模を考慮し、評価時点において同じような建物を立てた場合の建築費(再調達原価)から、評価時点までの築年数・建物の管理状態に応じた価値の減少分を差し引いたものが評価額となります。
なお、権利変換を選択する場合は、前記①の土地・建物の評価額に相当する金銭的補償は、それに等しい再開発後にできあがる建物の床の一部(とそれに応じた土地の共有持分)を取得する権利に置き換えられます。
権利変換する場合も、前記②~⑤のうち、該当するものの補償は受けられます。
分譲マンションの場合
分譲マンションの立ち退き料を算定する要素も、基本的には持ち家の場合と同様です。
分譲マンションを賃貸している場合で、移転期間中、家賃が入らないことになる場合は、家賃収入相当額から管理費相当額を控除した額が補償の対象となります。
なお、分譲マンションが再開発地域の対象となった場合も、権利変換を選択できます。
賃貸マンションやアパートの場合
賃貸マンションやアパートの場合も、賃借人が権利変換を希望しないときは、単独で金銭給付の申し出ができます。
立ち退き料は、以下の要素を考慮して算出されます。
- 建物等の移転料(内装・造作・設備等の移転先への移転や再築にかかる費用)
- 動産の移転料(家財道具、備品等の運搬費用(引越し代)の補償)
- 仮住まいの家賃や新たに賃借りするために要する費用(家賃差額、一時金)の補償
- 移転雑費(移転先選定費用(仲介手数料等)、転居通知費などの補償)
上記③の家賃差額については、例えば移転により現在より家賃が高くなってしまうケースなどには、その差額を2年分~3年分補償するという考えになります。
一時金については、賃借人に返還されない一時金(礼金等)と返還される約定の一時金(敷金)に係る補償があります。
なお、家主が再開発後に建物を取得するのであれば、希望により建物の一部で借家を継続できます。
店舗の場合
店舗の場合、再開発によって営業を廃止するのか、一時的に休止するのか、規模を縮小して営業をするのかによって立ち退き料の金額が変わってきます。
業種によって立ち退き料の金額は前後しますが、一般的に住居用の物件に比べて、立ち退き料は高額になる傾向があります。
営業を廃止する場合
再開発によってこれまでと同様に営業を続けるのが難しいと認められる場合、以下の点を考慮して立ち退き料を算出します。
- 行政庁の免許に基づく営業権やのれん等の独立の価値を有するものへの補償
- 営業用の資産の売却損
- 従業員への解雇予告手当
- 転業に必要な期間の休業手当
- 転業に必要な期間中の収益相当額
- 解雇された従業員への離職者補償
営業を一時休止する場合
移転に伴って、営業を一時休止する必要があるケースでは、以下の点を考慮して立ち退き料を算出します。
- 休業期間中に必要な公租公課、光熱費の基本料金、営業資産の維持管理費等固定経費
- 従業員の休業手当
- 休業期間中の収益減・所得減の補償
- 休業による得意先損失の補償
- 移転広告費、移転通知費及び開店祝費等
基本的には、その間の売上げや利益、費用等の補償をする項目となっています。
営業を縮小する場合
移転により、営業を縮小しなければならないケースでは、以下の点を考慮して立ち退き料を算出します。
- 営業縮小にともなう固定資産の売却損
- 従業員解雇予告手当相当額
- 営業縮小に伴い経営効率が低下する場合の損失額
立ち退き料に納得ができない場合に取るべき方法は?
立ち退き料に納得ができない場合、どのような方法を取ればいいのか、以下で解説します。
立退料の増額を求める
立ち退き料の増額を求めましょう。
その際には立ち退きによってどの程度の損失になるか具体的に計算をして、数字を示して交渉をしましょう。
立ち退きを拒否する
立ち退き料に納得できなければ、立ち退きを拒否する方法もあります。
ただし都市計画法に基づく再開発の場合、いつまでも立ち退きの拒否はできません。
なぜなら、都市計画法では、都市計画をスムーズに進めるため、土地の明け渡しをしなければならないと定められているからです。
いつまでも立ち退きを拒否し続けると、強制的に土地収用が実行(行政代執行)される可能性があるため注意しましょう。
弁護士に依頼する
立ち退き料に納得ができなければ、再開発問題を手掛けた経験のある弁護士に依頼をしましょう。
立ち退き料に相場の金額はないため、素人が金額の増額を求めて交渉するのは難しい側面があります。弁護士であれば判例を参考にして立ち退き料の増額交渉ができる可能性があります。
立ち退き料の増額交渉が上手くいかず訴訟になった場合も、弁護士であれば代理人として訴訟を任せられます。
まとめ
再開発は、防災面などの理由からまちづくりに必要なことですが、長年住み慣れた場所から離れるのは、経済的負担はもちろんのこと精神的負担も大きいでしょう。その埋め合わせができるように立ち退き料を受け取りたいと考えるのは、ごく普通のことです。
ネクスパート法律事務所には、不動産案件に特化した弁護士チームがあります。再開発による立ち退きを求められてお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。