道路の拡張をする、街の再開発の区域に入っている等、都市再開発にともなう理由で立ち退きを請求される場合があります。立ち退きの請求を受けて退去する方法として、再開発のスケジュールに合わせて貸主との契約を解除する方法と、再開発事業の中で「借家人」の立場として、事業主から補償を受けるという方法があります。ここでは、後者の方法について、開発事業者と交渉するうえで、何に気をつけたらよいのか、確認していきましょう。

都市開発による立ち退きに関する補償金とは
主に個人間で交わされる賃貸借契約の場合、賃貸借契約の解消のために、貸主から借主に対して支払われるものが、立ち退き料といわれますが、都市再開発に際して、行政から土地所有者等に支払われるものが、都市計画補償金といわれます。
この都市計画補償金の基準は、官公庁が発行している基準価格の物価表で、路線価や公示価格は基準にはなりません。都市計画補償金は、土地所有者等に生じた損失を補償するために、支払うことが都市計画法で義務づけられています。また、土地・建物の所有権はもちろん、賃貸借契約により得ている貸借権も対象となります。
再開発の場合は、すぐに立ち退かなくてはならないのか
公共事業である道路工事や再開発工事にともなうものは、法律によって行われるものであるため、最終的に拒否することはできません。ですが、それを理由に、すぐに立ち退かなくてはならないということはありません。
工事を行う事業者は、土地の所有権や貸借権を持つ建物の管理者の権利を守らなければならないとともに、土地や建物を借りている借主の権利も守らなければなりません。そのため、双方の事情を考慮する必要があり、いきなり契約解除とはなりません。
立ち退きまでの手順は
土地収用とは、公共の利益となる事業のために、土地の所有権等を、一連の手続きを経て権利者の意思に関わらず、国または地方公共団体等に、取得させる行為を言います。
土地収用の手順は、「土地や物件の状況を調査・確認」し、「調書を土地収用委員会に申請・公開」し、その後、「土地収用委員会で審理・採決を得る」ことになります。
事業者側としても、合意に基づいて明け渡しをしてもらい、事業を進めたいので、慌てずに、説明をよく聞き、十分に話し合いをすることが大切です。
立ち退きについての話し合いのポイントは
- 調査された調書に納得がいかなければ、不服を申し立てる
権利者は、調書作成の際に、異議がないかどうかの署名・捺印を求められます。また、この調書の内容が、補償金の額に反映される可能性もありますので、不明点や不満点などの異議があれば、不服を申し立てましょう。 - 内容を確認する
例えば飲食店の場合は、借家権価格、店舗移転にかかる費用、営業補償などが立ち退き料に含まれるので、漏れがないか、確認しましょう。 - 建物使用の必要性を主張する
立ち退き料は、双方の事情を考慮して決められますので、建物の老朽化や耐震性の問題など、正当事由の有無で変わります。金額に大きくかかわるので、正当事由がない場合は、店舗とその土地の結びつき、利益が家計を占める割合等、その建物使用の必要性を主張しましょう。 - 話し合いのやりとりを書面で残しておく
立ち退きの話し合いでは、トラブルが起きることも多いので、やりとりを記録に残して、トラブルが起きた際に対応できるようにしておきましょう。 - 情報収集をする
周辺に飲食店などが多い場合は、他にも立ち退きの請求をされている店舗があるかもしれません。周囲と比べて補償額がどうなっているのか等、不当な条件を提示されていないか等、情報を収集しましょう。 - 賃料の滞納がある場合は解消する
借家であれば3か月以上、借地であれば半年から1年の賃料の滞納がある場合は、正当事由とみなされて、賃貸借契約を解除されてしまうことがあり、立ち退き料が発生しない場合があるので、滞納がないように注意しましょう。
権利変換という方法がある
立ち退き料をもらって立ち退くという方法以外に、「権利変換」という方法があります。
これは、土地・建物の所有者は、建物の取り壊しのために一旦は立ち退くものの、再開発後に建設された土地・建物について、新たに権利を取得し、元の場所に戻ってくるというものです。
権利変換には、従来の土地が合筆されて、従来の土地所有者との共有となり、新しい建物の所有者の地上権が設定される地上権設定方式、土地を新しい建物の所有者の共有とし、地上権を設定しない土地共有方式及び地域の特性に応じて権利形態を定めることができる全員同意方式の3つがあります。
まとめ
再開発には、建築物の建て替え程度のものや、一帯の地区について高層ビル群に建て替えるものなど、規模にも様々なものがあります。また、再開発の手法についても、様々なものがあります。法律のトラブルも発生することがありますので、どのような情報が必要で、どのような手順で進めたら良いのか、まずは、弁護士に相談することをお勧めします。