借主に立ち退きを求める場合の流れは?ケース別に解説

借主に立ち退きを求める場合は、きちんとした流れに沿って行わなければいけません。
手順を間違えると思いがけないトラブルになる可能性があります。

この記事では、以下の点について解説します。

  • 交渉によって立ち退きを求める際の流れ
  • 裁判で立ち退きを求める場合の流れ
  • 都市計画道路工事(道路拡張)で立ち退きを求める場合の流れ

借主に立ち退きを求める場合の流れは?

借主に立ち退きを求める場合の流れは、以下のとおりです。

契約更新をしない旨を書面で通知する

期間の定めのある契約の場合、契約期間満了の1年から半年前までに、契約更新をしない旨を借主に書面で通知をします。

期間の定めのない契約(最初から期間を決めないで契約をした場合や、法定更新をした後)の場合は、いつでも解約申し入れの通知ができます(この場合、正当事由があれば、通知から6か月後に契約が終了します)。

書面は通知したことを証明するために、内容証明郵便などで行うほうがよいでしょう。

書面には、以下2つの内容を必ず記載します。

  • 契約更新をする意思がないこと
  • 退去の時期

可能であれば退去を求める正当事由も述べたほうがよいでしょう。

契約更新をしない旨の書面に決められた書式はありませんが、ご自身での作成に不安があれば、立ち退き交渉を弁護士に依頼することも検討してみてください。
弁護士に依頼すれば、相手との交渉だけでなく、更新拒絶通知書の作成も任せられるので安心です。

貸主は正当な事由を提示しつつ借主と話し合いをする

契約更新をしない旨ないし解約申し入れの書面を送ったら、貸主は正当事由を提示しつつ借主と話し合いをします。

借主は、賃貸借契約が続いていれば、借地借家法によって居住する権利が守られています。貸主の立ち退き要求に正当事由が認められない場合は、立ち退きの拒否ができます。
そのため、貸主は立ち退きを求めるにあたって、正当な事由を提示しなければいけません。

借地借家法で強く権利を守られている借主に対して退去を求めるのであれば、それなりに納得ができる正当事由を示さなくてはいけませんので、貸主にとってかなり条件が厳しいものになります

正当事由の有無は、以下の要素を総合的に考慮して判断されます。

  • 貸主および借主が建物の使用を必要とする事情
  • 賃貸借に関する従前の経過
  • 建物の利用状況および現況
  • 立退料の有無

例えば、複数の物件を所有しているにもかかわらず、その物件に住みたいからという理由だけでは、正当事由として認められる可能性は低いです。

貸主は、契約を解除したい理由を丁寧に説明し、借主が契約継続を希望する場合は、その理由を聞いて話し合いを進めます。そのうえで、退去の時期、立ち退き料の金額、移転先物件の情報など、双方の事情を踏まえた話し合いをし、合意を目指しましょう。

話し合いで合意できなければ調停・訴訟による解決を図る

話し合いで合意に至らなければ、調停・訴訟を検討します。

賃貸借契約が終了する前でも調停の申立てや訴訟の提起が可能です。

最初から建物明渡請求訴訟を提起することが多いですが、調停委員を介して話し合いを進める調停を申立てて、話し合いでの合意を目指す方法もあります。
調停は、原則として、明け渡しを求める建物の所在地を管轄する簡易裁判所に申立てます。

訴訟で立ち退きを求める場合の流れは?

訴訟で立ち退きを求める場合の流れは以下のとおりです。

裁判所に明け渡し訴訟を提起する

建物の所在地を管轄する裁判所もしくは賃貸借契約書に専属的合意管轄裁判所として記載されている裁判所に、建物明渡請求訴訟を提起します。

訴訟では、1か月に1度のペースで、貸主と借主がそれぞれの主張をします。

そのため、一般的に1年ほどの時間がかかります。

貸主・借主双方の言い分を書面で提出する

裁判所に対して、貸主・借主双方の言い分を書面で提出します。

裁判官は貸主が立ち退きを求める理由や借主の事情を提出された書面で精査します。

裁判になった場合、重要な争点になるのは正当事由です。
貸主と借主、双方の事情を考慮して、正当事由の有無やそれにともなう立ち退き料の金額などにより、審理されます。

立ち退き料は、主に借主側の経済的損失をベースに決められることが多いようです。

双方の言い分を出し合ったのち、裁判官が和解案を示すケースもあります。双方が和解案に合意すれば和解が成立し、訴訟手続きは終了します。

判決が言い渡される

貸主と借主の間で和解ができなければ、裁判所から判決が言い渡されます。

貸主の言い分が認められて建物を明け渡せとの判決が出るか、明け渡しを求める請求が棄却されるかの二択です。

貸主の事情で明け渡しを求める場合は、無条件に明け渡しが認められることは少なく、〈立ち退き料○○円を払うのと引き換えに建物を明け渡せ〉という内容の判決になることが多いです。

建物を明け渡す判決が確定すれば、貸主は立ち退き料の支払いをし、借主は期限までに建物を明け渡さなければいけません。

判決内容に不服のある当事者は、判決正本送達の日から2週間以内に控訴ができます。

借主が期限までに明け渡さない場合は強制執行を申立てる

定められた期限になっても借主が建物を明け渡さない場合は、その建物の所在地を管轄する地方裁判所の執行官に強制執行の申立てをします。

強制執行にあたっては、申立人のほかに利害関係がない立会人が必要ですので、確保しなければいけません(執行官に手配を一任できる場合もあります)。

借主に対して建物明け渡しの催告が行われ、それでも建物の明け渡しに応じない場合は、家財道具等を運び出して強制執行が行われます。

都市計画道路工事(道路拡張)による立ち退きの流れ

都市計画道路工事(道路拡張)による立ち退きの流れは、以下のとおりです。

国や自治体が説明会を開催する

都市計画道路工事(道路拡張)による立ち退きを求める場合、国や自治体が住民に対して説明会を開催します。

都市計画道路工事は、地域の交通の利便性を高めたり住民の安全性の向上が望めたりするなどのメリットがあります。どのような理由で都市計画道路工事をするのか、説明がなされます。

道路の測量を行う

住民に対する説明会が行われた後、道路の測量調査が実施されます。

これによって立ち退きの対象となる土地がどれか、どのぐらいの面積になるかを確定します。

土地の所有者へ立ち退き交渉を行う

立ち退きの対象となる土地が決定したら、土地の所有者に対して立ち退きの交渉を行います。

立ち退き料の金額や立ち退く時期について話し合いがなされます。特に立ち退き料に関しては、提示した金額がどのような根拠に基づいているか、証明できるものが必要です。

土地の所有者との話し合いが合意に至れば、合意した内容を書面にして契約を取り交わします。

いったん契約を締結すると内容を変えることは難しいので、疑問点は立ち退き問題に詳しい弁護士に相談したほうがよいでしょう。

まとめ

住んでいる場所や店を経営している場所から突然立ち退きを求められたら、借主は動揺すると思います。
そのため、貸主との話し合いに応じる気持ちになれない方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、話し合いを拒否していたらいつまでたっても問題は解決しません。貸主・借主双方の事情や、立ち退きに関する正当事由、条件等を話し合い、問題解決にあたりましょう。

立ち退き料の額や正当事由などについては、個別の事情もありますので、当事者同士の話し合いをする前に弁護士に相談しましょう。双方で話し合いをした結果、話がこじれて訴訟になると時間や費用がかかります。弁護士が間に入れば、話し合いの段階でスムーズに解決できる可能性があります。

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