賃借人の認知症を理由に立ち退きを求められるか?

日本は、総人口に占める65歳以上の人口の割合が29%で超高齢社会です。
そのため、一人暮らしの高齢者に部屋を貸している賃貸人もいらっしゃることでしょう。

賃借人との意思の疎通がうまくできなくなった、賃借人が家賃の支払いを忘れるようになったなど、賃借人に認知症の症状が出た場合、立ち退きを求められるでしょうか?

この記事では、認知症を理由に立ち退きを求められるかどうかについて解説します。
認知症を患う賃借人の対応に困った場合に、弁護士に依頼すべき理由も説明していますので、ぜひ参考になさってください。

目次

認知症を理由に立ち退きを求められるか?

認知症のみを理由とした立ち退きは求められません。ただし、認知症の賃借人に賃料滞納や用法遵守義務違反がある場合には、賃貸借契約の更新拒絶・解約申し入れにより、明渡請求等の法的措置を講じられる場合があります。
以下で詳しく解説します。

認知症のみを理由に立ち退きは求められない

認知症のみを理由に賃借人に対して立ち退きは求められません

賃借人は借地借家法で立場を強く守られており、認知症になっただけでは、賃貸借契約解除事由に当たらないからです。

例えば、認知症を発症しても、本人や周囲の人の生命や身体に危険が及んでいない場合や、貸室の管理に支障がない場合には、契約を解除したり立ち退きを求めたりすることは認められません。

トラブルが生じたら立ち退きを求められるケースがある

賃借人が認知症によって家賃を滞納したり、他の入居者に迷惑をかける行為をしたりする場合は、賃貸借契約の更新拒絶や解約申入れを根拠に立ち退きを請求できるケースがあります。

賃貸借契約の更新拒絶や解約の申し入れは、貸している部屋を適切に管理できず、本人やまわりの人たちに危険が及ぶ可能性があるなどの理由がなければいけません

例えば、次のような事情があり、賃借人との間の信頼関係が破壊されたと言えるときには、賃貸借契約を解除できる場合があります。

  • 家賃を滞納し督促しても全く話が通じない
  • 賃借人が賃貸人からの度重なる催告や要請に応じない
  • 賃借人が奇声を上げて近所の人に迷惑をかけた など

賃借人がどの程度家賃を滞納しているか、どのような迷惑行為をしているかなどを記録して、証拠に残しておいたほうがよいでしょう。

認知症の賃借人に立ち退きを求める場合の注意点

賃貸人が賃貸借契約の更新を拒絶したり、解約を申し入れたりする場合には、賃借人に対して適切に通知(意思表示)を行う必要があります。

ところが、賃借人が認知症を患っている場合には、その通知が法律上有効になるかが問題となります。

賃借人本人に意思表示を受領する能力がない場合、本人に対して更新拒絶や解約の通知をしても、後に「そんな通知は受けていない。」と言われると、賃貸人は、当該通知をしたことをもって「意思表示は有効である。」と主張できません(成年後見人等の法定代理人が、その意思表示を知った後は除く)。

そのため、賃貸人は、内容証明郵便にて更新拒絶ないし契約解除の通知を発送しつつ、親族や連帯保証人、ケースワーカー等と連携しながら、任意退去を実現させることが一般的です。

必要に応じて、賃借人の親族や市区町村長などに後見開始の申立てをしてもらうよう、働きかけることもあります。

なお、信頼関係を破綻する事情がなくとも、本人の生命・身体に危険が及ぶおそれがあるときは、親族や行政機関に対し、適切な対応を求めることが望ましいでしょう。

認知症の賃借人の対応に困ったら弁護士に依頼すべき理由は?

認知症の賃借人の対応に困ったら、ご自身で対応は難しいケースが多いです。その場合に弁護士に依頼をしたほうがよい理由について述べます。

親族や行政機関等との連絡調整を任せられる

弁護士に依頼すれば、賃借人の親族や行政機関等との連絡調整を任せられます。

賃借人の判断能力が低下している場合、賃貸人には、親族や行政機関に協力を求めたり、必要に応じて成年後見等の申立てを促したり、個々の状況に応じた適切な対応が求められます。

弁護士であれば、これらの調整や手続きを代理できるため、賃貸人の負担を大幅に軽減できます。
さらに、法的に妥当な対応方針を示しつつ進めてもらえるため、後のトラブルを防ぐことにもつながります。

裁判を考えた場合に代理人として対応ができる

弁護士であれば裁判を考えた場合に、代理人として対応ができます。

賃借人が認知症で意思疎通ができず、後見人の選任から行わなければならないケースはもちろんのこと、後見人が選任されている場合でも、裁判手続きをスムーズに行うには、弁護士に依頼をしたほうが確実です。

まとめ

今後、一人暮らしの高齢者はますます増えていく可能性があります。賃貸人は入居者が認知症になるリスクに備えておかなければいけません。

賃借人への対応が難しくなったと感じたなら、早急に弁護士に相談したほうがよいでしょう。

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