老朽化で立ち退きを求める場合に立退料は必要か?相場の金額を解説

建物を所有し、住居、事務所、店舗として貸しているオーナーにとって、建物の老朽化は頭の痛い問題です。

この記事では、建物の建て直しなどを理由に貸主に立ち退きを求める場合、立退料が必要かどうか、相場の金額等について解説します。

目次

老朽化で立ち退きを求める場合立ち退き料は必要か?

建物の老朽化で立ち退きを求める場合、立ち退き料が必要なケースが多いです。

立ち退き料は、借地借家法が適用される賃貸借契約について、貸主側の都合で借主に対して立ち退きを求める際に、借主の損害を補填する意味で支払われる金銭です。

借地借家法上、建物賃貸借につき、賃主側の事情で解約申し入れをする場合には正当な事由が必要とされています(借地借家法28条)。

この正当な事由があるかどうかは、以下の事情を考慮して判断されます。

  • 貸主および借主が建物の使用を必要とする事情(どちらがより必要としているか)
  • 建物の賃貸借に関する従前の経過(権利金・更新料等の授受の有無・賃料の履行状況等)
  • 建物の利用状況(借主の利用状況)
  • 建物の現況(建物の老朽化など物理的状況)
  • 財産上の給付(立退料の支払い)

この5つの中で最も重視されるのが、①の貸主および借主が建物の使用を必要とする事情です。
①を主たる要素②~④を従たる要素として考慮し、さらにこれらの事情を補完する要素として、⑤財産上の給付(立ち退き料の支払い)を考慮するという構造となります。

すなわち、立ち退き料は、正当な事由が完全ではないものの、一定割合まで認められるというケースにおいて、借主の不利益を経済的観点から軽減することで、正当な事由を補完・補充する要因として位置づけられています。

老朽化が甚だしく倒壊の危険や治安・衛生上の問題が発生している場合などは、正当な事由の一つとなりますが、「建物が古くなったから立て替えたい」という理由だけでは、正当事由は認められないdしょう。

建物の老朽化という事実だけで正当事由を認めることが不十分な場合は、立ち退き料の支払いによって正当事由を補完することが必要です。

老朽化による立ち退き料の相場は?

建物の老朽化による立ち退き料は、事案によって異なりますので相場の金額を提示するのは難しいです。

そのためおおよその金額について、以下3つのケースについて解説します。

賃貸アパートやマンション|100万円から200万円程度

賃貸アパートやマンションの立ち退き料は、家賃差額が高額にならなければ、だいたい100万円から200万円程度になるケースが多いです。

以下の計算式に基づいて立ち退き料を算出し、状況によっては慰謝料や迷惑料が加算されます。

(移転先の家賃―現在の家賃)×1年から3年+新規契約費用+引っ越し費用

店舗|数百万円から1000万程度

店舗の立ち退き料は、少なくとも数百万円程度になるといわれており、多い場合は1000万以上になるケースもあります。

基本的に以下の計算式に基づいて立ち退き料が算出されます。

(新規賃料―現在の賃料)×数年+移転費用+新規契約費用

店舗の立ち退きの場合、住居用のアパートやマンションと違い、以下の点に配慮しなければいけません。

  • 店舗の移転期間は休業を余儀なくされるため休業補償が必要となる
  • 新店舗をオープンするにあたり改装費用が必要となる
  • 什器の運搬が多い場合は、その分引っ越し費用が高額になる

店舗を借りている業種によって事情が違うため、立ち退き料の金額に幅が出てきます。

賃貸事務所・オフィス|数百万円から1000万程度

賃貸事務所の立ち退き料はだいたい店舗と同じで、少なくとも数百万円程度になるといわれています。

店舗と同様に以下の計算式が用いられますが、店舗と違って改装費用は認められにくいといわれています。

(新規賃料―現在の賃料)×数年+移転費用+新規契約費用

立ち退き料が高額になるケースは?

立ち退き料の金額は、貸主と借主それぞれの事情や建物の建て替えの必要性など、立ち退き要請の正当事由の内容で左右されるため、正当事由が弱いほど立ち退き料は高額になります

例えば、以下のような場合です。

  • 貸主の都合で物件を売却したい
  • 倒壊の恐れはないが賃料を上げる目的でリフォームをしたい

老朽化した建物をリフォーム目的で入居者に立ち退きを求めるなら、耐震診断を受けましょう。倒壊する危険性が高いことをデータで見える化し、立ち退きを求めることが正当事由に当たると証明すれば、立ち退き料を一定程度減額できるかもしれません。

老朽化を理由とする立ち退きに限らず立ち退き料が不要な3つのケース

老朽化を理由とする立ち退きに限らず、立ち退き料が不要になる3つのケースについて解説します。

定期建物賃貸借契約の場合

定期建物賃貸借契約の場合、契約期間終了時の退去であれば、立ち退き料は不要です。

定期建物賃貸借契約とは、期間満了時に更新せずに賃貸借契約が終了する契約形態です。一定期間に限って建物を貸したいと考える際に有効な方法で、建て替えを計画している賃貸物件の空室を埋めたい、計画的に大規模リフォームを行いたいといった目的を持つ賃貸オーナーに活用されています。

定期建物賃貸借契約は契約更新がないため、契約期間満了時の退去であれば、立ち退き料の支払いは不要です。

なお、定期建物賃貸借契約を締結する際は、「契約の更新がなく、期間の満了により契約が終了すること」を書面により説明することが必要です(借地借家法38条3項)。

仮に説明がなされなかった場合は、通常の建物賃貸借となりますので注意しましょう。

入居者が賃貸借契約に違反している場合

入居者が賃貸借契約に違反している場合は、立ち退き料が不要です。

例えば、家賃を滞納していたり無断で第三者に転貸していたりするケースです。こうした契約違反があれば、立ち退き料を払うことなく契約を解除できます。

災害で被害を受けて居住の継続に危険を伴う場合

災害で被害を受けて建物が崩壊した場合や、一部損壊して居住の継続に重大な危険が伴う場合は、立ち退き料が不要となります。

例えば、地震により建物が全壊した場合や、建物の主要部分が消失して修復のために新築するのに近い程度の費用を要する場合などです。

建物の賃貸借契約の場合は、賃貸借の目的である建物が滅失すれば賃貸借契約が終了すると解されています。

この場合の滅失とは、建物が建物としての効用を喪失した状態をいうものと解されており、崩落しているような明らかな倒壊のほか、直立はしているものの、日常使用に耐えうる状態に修繕することが困難といえる状態も、滅失に該当すると考えられています。

まとめ

建物の老朽化に伴って貸主に立ち退きを求める場合は、正当な事由がなければ立ち退き料の支払いを逃れられません。十分な期間を確保せずに一方的に立ち退きを迫るなど、配慮のない対応をするとトラブルになるおそれがありますので、気を付けましょう。

賃貸している建物の老朽化で建て直しを考えている場合、不動産に強い弁護士へ相談をおすすめします。弁護士が適切な段取りで交渉を進めていけば、トラブルに発展するリスクが低くなります。

ネクスパート法律事務所は不動産に特化した部門を設け、建物老朽化による立退きのトラブルなどを解決するノウハウがあります。不動産案件に関する知識が豊富な弁護士が迅速に対応いたしますので、お悩みごとがある方は一度ご相談ください。

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