賃貸物件を退去する際は、必ずハウスクリーニングを行います。ハウスクリーニングの代金は、賃貸人または賃借人のどちらが負担するのでしょうか?
この記事では、原状回復の際にハウスクリーニング代金は誰が負担するか、相場の金額やトラブルを避けるポイントについて解説します。

原状回復のハウスクリーニングは誰が負担するか?
原状回復のハウスクリーニング代金をどちらが負担するかは、契約内容によって変わります。
以下でそれぞれ説明します。
ガイドラインでは賃貸人負担としている
国土交通省が公表している原状回復をめぐるトラブルとガイドラインでは、ハウスクリーニング代金は賃貸人が負担するものとしています。
賃借人が善管注意義務を怠らずに、社会通念上通常の方法により部屋を使用していたなら、自然損耗や経年劣化による汚れを原状回復する意味でハウスクリーニングの代金を負担する必要はありません。
ただし、賃借人が普段の生活できちんと清掃すべきところを怠ったために、部屋に何かしらの特別な汚れが生じた場合は、善管注意義務を怠ったとして原状回復のためにハウスクリーニング代の負担をしなければならないケースがあります。
参考:原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)|国土交通省
特約で賃借人負担とする場合がある
賃貸借契約を締結する際に、特約として退去時のハウスクリーニング代金を賃借人負担とする旨を取り決めていた場合には、賃借人の負担となります。
ただし、この特約が有効となるためには、以下3つの要件を満たす必要があります。
- 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在する
- 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を越えた修繕等の義務を負うことを認識している
- 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしている
ハウスクリーニング特約が無効になるケースがある
ハウスクリーニング特約を締結していても、前章で示した要件を満たしていない場合には、無効になるケースがあります。
退去時のトラブルを避けるため、入居時には以下3つのポイントを確認しましょう。
賃借人が負担する範囲が明記されているか
賃貸借契約書に、賃借人が負担するハウスクリーニングの内容や範囲が明記されているかどうかを確認しましょう。
ハウスクリーニングに関する特約には様々なケースがあり、修繕・交換等も含めて賃借人に費用負担を義務付けるケースもあれば、クリーニングのみの費用を賃借人負担とすることを定めるケースがあります。
そのため、賃借人が負担する範囲をはっきりさせておくことが重要です。
例えば、単に[ハウスクリーニングに要する費用は賃借人が負担する]という内容の特約は、一般的な原状回復について定めたもので、通常損耗等について賃借人に原状回復義務を認める特約ではないため、無効だと判断している判例があります(東京地方裁判所判決平成21年1月16日)。
賃借人が負担する金額が明記されているか
賃貸借契約書に、賃借人が負担するハウスクリーニングの金額を明記してあるかどうか確認をしましょう。
ハウスクリーニングの金額を契約書に記載することは法的に義務付けられているものではありませんが、退去時のトラブル防止に有効だからです。
加えて、その金額が妥当かどうか確認しましょう。
例えば、契約の締結にあたって特約の内容が説明されていたこと等を踏まえ、[契約終了時に、部屋の汚損の有無及び程度を問わず専門業者による清掃を実施するとし、その費用として2万5000円(消費税別)を負担する]とした特約について、以下の事情を理由に、消費者契約法10条にも違反しないとして、有効とした判例があります(東京地方裁判所判決平成21年9月18日)。
- 賃借人にとっては退去時に通常の清掃を免れる面もあること
- 金額が月額賃料の半額以下であること
- 専門業者による清掃費用として相応な範囲のものであること
ハウスクリーニングの金額の相場はいくらか?
ハウスクリーニングの金額は、基本的に部屋の広さで決まります。
相場の金額は以下のとおりです。
部屋の広さ | 相場の金額 |
---|---|
1R~1K | 1万5,000円~3万円 |
1DK~2K | 2万円~3万5,000円 |
1LDK・2DK | 2万5,000円~4万円 |
2LDK・3DK | 3万円~4万5000円 |
3LDK・4DK | 3万円5,000円~6万円 |
4LDK・5DK〜 | 5万円~ |
ハウスクリーニング費用には、通常、以下の作業が含まれるとされています。
- キッチン、バスルーム、トイレ、洗面所のクリーニング
- フローリングの洗浄とワックスがけ
- ベランダのクリーニング
部屋の大きさが基本となりますが、壁紙や天井にタバコのヤニがあったり、壁に落書きがあったりするなど汚れが激しい場合などには、料金が変動します。
退去時に、汚れが目立つところは賃借人が事前に掃除しておくことで、費用負担が軽減できることもあります。
まとめ
賃貸物件を退去する際、ハウスクリーニング代金の負担についてトラブルになることがあります。その場合は、入居時に交わした賃貸借契約書を確認してください。契約書にハウスクリーニング代金は賃借人の負担になる旨の記載が正しくされているかどうか、チェックしましょう。
ハウスクリーニング特約や退去時の原状回復について法的トラブルが生じた場合は、弁護士に相談しましょう。
ネクスパート法律事務所では、不動産案件に強い弁護士が在籍しています。賃貸物件の退去時にトラブルが生じた場合は、お気軽にお問合せください。