一時使用目的の建物賃貸借契約とは、建替えまでの仮住居などのように一時的な使用が目的であることが明らかに認められる場合の賃貸借契約のことで、建物賃貸借契約に関する借地借家法の適用を受けません。一時使用目的の賃貸借契約と認められるためには、「期間を〇年に限る」との合意があるだけではなく、目的や動機その他さまざまな理由から、賃貸借契約を短期間内に限ることが客観的に認められることが必要です。
また、一時使用が目的であるという事由は、大切な前提条件となるため、その具体的な内容を契約書などに記載しておくことが望ましいとされます。

契約の更新・解約はどうなる?
借地借家法により、通常の建物賃貸借契約の貸主が立退きを請求する場合は、契約期間満了の1年から半年前までに契約の更新拒絶の通知を行う必要があります。また、中途解約権の合意がある場合や賃貸借契約の期間の定めがない場合、法定更新中である場合に、貸主が契約の途中で解約するには解約の申入れをする必要があります。これらの通知や解約申入れには正当な事由が認められることを要します。
一方、一時使用目的の建物賃貸借契約の場合、契約期間の満了にあたり更新拒絶の通知は不要であり原則として更新がありません。
契約期間が満了した後に借主が使用・収益を継続し、貸主がこれを知りながら異議を述べない場合は契約の更新が推定されますが、各当事者はいつでも解約の申し入れをすることができます。解約の申入れがあった場合、申入れの日から3か月経過することにより建物賃貸借契約は終了します。この場合の解約申入れには正当な事由が認められる必要はありません。
貸主のメリットとデメリットは?
契約期間を自由に決めることができ、正当事由なしに解約の申入れを行うことができることがメリットとなりますが、借主から中途解約された場合、当初の期間までの収益が見込めない可能性があることや、一般的に貸主に有利な条件で契約されることが多いため、賃料が相場より安くなる傾向があることがデメリットとなります。
借主のメリットとデメリットは?
自由な期間の契約が可能で、更新料もなく、家賃が相場に比べて安くなる可能性がメリットとなりますが、貸主から解約の申し入れがあった場合、引越しまでの期間が短い可能性があり、その解約の申入れを断ることができないことがデメリットとなります。
まとめ
一時使用目的の建物賃貸借契約の場合、契約書に一時使用目的であることの内容が記載されていないときは、借主から法定更新を主張される問題が出てくる場合があります。契約期間が10年以上である、建物の構造上一時使用とはみなされない場合など、賃貸借契約の内容や、個別の諸事情により判断することになりますので、まずは弁護士に相談することをお勧めします。