賃貸人が正当な事由に基づいて退去を求める際、立ち退き費用の支払いが必要になるケースが多いです。本記事では、立ち退き費用がどのように算定されるのか、また実際に支払われる内訳や交渉の進め方のポイントをまとめます。これらを理解しておけば、物件の建て替えを検討している場合や退去を求められた場合、トラブルを最小限に抑えられる可能性があります。
交渉が長期化した場合の解決策や、費用を抑えるための具体的な方法についても解説します。正しい知識と適切な準備を備えることで、立ち退き交渉を円滑に進め、双方が納得できる着地点を見い出してください。
立ち退き費用(立ち退き料)とは
立ち退き費用は、賃貸人と賃借人の利害を調整するために支払われる金銭で、法律上明確に義務付けられているわけではありませんが、賃借人保護の観点から、実務や裁判例では支払いが考慮されることが多いものです。
日本では、借地借家法に基づき、正当事由がなければ賃貸人が一方的に契約解除を行うことは容易ではありません。そのため、退去を求める側は、立ち退き料を提示するなどして賃借人の不利益を緩和する対応をとることが、実務上は重要とされています。具体的な金額や算定方法は事例ごとに異なり、実態や裁判例を参照することが大切です。
立ち退き料の法的根拠
立ち退き料の法的根拠は、借地借家法や関連する裁判例が挙げられます。裁判所は、立ち退きの正当事由を補完する要素として金銭負担を考慮することが多く、賃借人に損害が生じる場合には、立ち退き料の支払いを相当と判断する傾向があります。
賃借人の居住権や営業継続への影響を考慮し、立ち退きにあたっては明確な理由に加え、財務的な補償が重視される傾向にあります。こうした制度は、両者の権利関係をバランスよく保つためにも重要な役割を果たしています。
実際に支払う金額は、地域や物件の状況、賃借人が被る不利益の程度などを踏まえて算定されるため、法的根拠の理解が計算面にも大きく影響します。
正当事由と立ち退き料の関係性
賃貸人が契約期間中に退去を求める場合、正当事由がなければ認められないのが一般的です。そこで、立ち退き料を支払うことで正当事由を補完し、退去請求を合法的かつ現実的なものにする役割を果たします。
例えば、老朽化した物件の建て替えや再開発のために退去を求める場合、正当事由が認められやすい傾向があります。しかし賃借人の引っ越し費用や新たな物件の家賃差額などを適切に補償しないと、賃借人は立ち退きに合意しない可能性があります。
正当事由と立ち退き料は表裏一体の関係であり、どちらか一方だけでは退去請求が通りづらい点を理解し、円滑に交渉を進めることが大切です。
立ち退き料が不要なケース
賃借人に重大な契約違反がある場合には、立ち退き料を支払わずに退去請求が認められるケースもありますが、違反の内容や程度に応じて個別に判断されます。例えば、無断転貸や用法違反といった重大な違反行為がある場合です。
短期利用を前提とした定期借家契約や、事前に特約を定めているケースでは、立ち退き料を前提としない合意となる場合もあります。ただし、定期借家契約の法定要件や特約の有効性を満たしているかを慎重に確認が必要です。こうした場合は、賃借人が終了条件にあらかじめ同意しているため、補償が不要と認められる可能性があります。
いずれにせよ契約書の記載や法的要件を満たしているかを慎重に確認してトラブルにならないよう、細心の注意を払いましょう。
立ち退き費用が発生する場面と注意点
立ち退き費用が必要となる背景には、賃貸人の都合や建替えなどさまざまな状況が考えられます。それぞれのケースを正しく理解することがトラブル防止のために大切です。ここでは、立ち退き費用が発生する場面と注意点について解説します。
賃貸人の都合で退去を求める場合
賃貸人の都合による退去は、物件の自己使用や経営方針の転換など、賃貸人側で必要と判断されたときに行われます。しかし、賃貸借契約は賃借人保護の要素が強く、賃貸人の都合といえども一方的な解約は認められません。
正当事由を立証すると同時に、移転費用の補償や新居にかかる初期費用の負担といった立ち退き料を提示することが交渉をスムーズに進めるポイントです。特に市場相場や類似事例の金額を提示し、賃借人が納得することが大切です。
万が一賃借人との話し合いが難航した場合、早い段階で弁護士に相談しておくと問題がこじれるのを避けられるかもしれません。
建て替えや再開発による立ち退き
建物の老朽化や都市計画による再開発など、大規模な建て替えが必要な場合には、多くの賃借人に同時に立ち退きを求めることがあります。このように規模が大きいほど、補償内容も多岐にわたるため、費用算定がより複雑になります。
再開発では補助金や公的支援制度が適用される場合もありますが、それだけでは全額カバーできないケースがあります。その場合、個別交渉で解決を目指さなければならず、特に店舗や事業用テナントが含まれる場合は、営業補償の金額が大きくなるのが特徴です。
立ち退きスケジュールの調整も重要で、移転期間中の休業損失などが発生しないように配慮を行うなど、慎重な計画立案が欠かせません。
定期借家契約以外のケース
定期借家契約は、契約期間が満了すれば原則として賃貸借が終了します。そのため立ち退き費用を支払わずに退去を求めやすい特徴があります。しかし普通借家契約の場合、賃借人が強く保護されているため、賃貸人都合のみでの解約は困難です。
普通借家契約の場合、更新拒絶で退去を求めるなら正当事由の提示が不可欠で、立ち退き料の支払いが慣例的な流れです。賃借人の居住権や営業権に与える影響が大きいほど、提示する金額も増加しがちです。
普通借家契約において立ち退きを求める場合には、裁判例や市場相場を下調べし、適正な立ち退き費用を見積もる姿勢が必須です。
立ち退き費用の相場と内訳
立ち退き費用の支払い額は、物件の種類や借主の事情などによって差が生じます。主な内訳や補償内容を把握しておきましょう。
相場の目安と参考事例
一般的な目安としては、家賃の半年から1年分程度が立ち退き料の相場とされることが多く、居住用では数十万円から数百万円、店舗やオフィスでは数百万円から数千万円に及ぶ場合もあります。
例えば、都心部の店舗では、移転コストや営業補償の内容次第で、立ち退き料が高額(数百万円〜1000万円超)になる例もあります。ただし金額は、立地・業種・売上規模・補償項目などの個別事情で大きく変動します。一方で、地方の小規模アパートでは数十万円で話がまとまることもあります。物件の規模や賃借人が受ける損失内容によって変わるため、補償内容が十分であるかを見極めることが大切です。
居住用物件(アパート・マンション・戸建て)の内訳
居住用物件の場合、主に引っ越し費用や移転先の初期費用、家賃差額などが補償の中心となります。特に賃料が上がる地域への移転では、契約初期費用が大きくなりがちです。
また、居住用は家族構成やライフスタイルによって必要な部屋数や環境が左右される点も考慮しなければなりません。子どもの通学先や公共交通の便などを理由に物件選びに制約があると、移転先の選択肢が狭まるため補償額が変動する可能性があります。
近年では、移転後の生活インフラの見直しなど、細かい費用が追加されやすいので、交渉時は全体的な出費を想定し、費目をリストアップして見積もりを作成することをおすすめします。
移転費用の補償
居住用では引っ越し業者への支払い、荷造りや荷解きにかかるコストなどが含まれます。家族が多いほど荷物が増え、費用も高くなりやすい点に注意しましょう。
移転費用は、交渉における基本的な補償項目であるため、事前に荷物の量や引っ越しプランを具体的に算出し、賃貸人側に説明できるようにしておくとよいでしょう。
利用権(借家権)の補償
賃貸または借家契約によって確保している利用権は、賃借人にとって重要な権利です。立ち退きによってその権利が消滅するため、退去による損失補填を行うのが一般的です。
居住用物件の場合は家賃以外にも、地域コミュニティや通学など生活基盤に関わる要素が損失となることがあります。その場合、立ち退き料にこれらの代替費用が反映されるケースがあります。
利用権の補償額は裁判例でもケースバイケースとなっており、周辺の類似物件や契約条件を比較して公平に算定することが望まれます。
店舗・テナントの立ち退き料の内訳
店舗・テナントの場合は営業権や内装設備、顧客への告知など、居住用よりも多面的な補償項目が存在します。移転後の新規顧客獲得や宣伝費なども考慮されることがあります。
商業用物件での立ち退きでは、営業休止期間中の売上減少が大きな論点となります。休業期間に対する補償をどのように算定するかは、業種や売上規模も踏まえて決める必要があります。
内装や設備に対する工作物補償は金額が膨らみやすいので、契約時に設置した備品の持ち出し可否などを踏まえて丁寧に精査するとトラブルを回避しやすくなります。
工作物の補償
店舗やオフィスの内装工事、改装費などは、退去時に撤去費用がかかる場合があります。賃貸借契約上、原状回復義務がある場合は撤去費用や工事費を賃貸人が負担することも検討されます。
内装の造作権や営業上の生産設備がある場合、それらの価値をどのように算定するかがポイントとなります。裁判では、残存価値や耐用年数などを踏まえて評価されることが多いです。トラブルが発生しないよう、契約時に改装範囲や原状回復義務について明確に合意しておくことが後々の交渉をスムーズにする秘訣です。
動産移転補償
店舗やオフィスにある家具、機器、商品在庫などを移動させる際には、大きなトラックや特殊な運搬業者を手配する必要があります。その費用は立ち退き料の一部として計上されることが少なくありません。
動産が大型であればあるほど移転コストや安全への配慮が必要となり、費用がかさみます。ビジネスにおいて使い続ける重要な設備を破損することなく運ぶためにもコストは軽視できません。
賃借人の補償
店舗として借りている場合、営業そのものが制限されるため、店舗のブランド力や顧客へのアクセスなどの無形資産の価値が下がるリスクがあります。これらを補償するのが借家人補償の考え方です。
特に長年同じ場所で営業していた場合は、認知度や信頼関係を築きあげてきた可能性が高く、移転によって一時的に失われることが考えられます。
こうした無形の損失は一般的な清算項目に含まれにくいため、裁判例や専用の評価方式を用いて金額を決定することが多いです。
移転雑費補償
引っ越し関係の雑費や一時的な保管料、広報用の印刷物や看板の作り直しなど、細かな経費が積み重なるのが店舗移転の特徴です。これらは小さな出費と思われがちですが、合計すると相当な額になることもあります。
特に新たな場所を訪れる顧客への周知活動は大切であるため、チラシや広告費などの雑費補償も侮れません。費目を整理しないまま交渉を進めると、補償が不足して後々不満が生じることがあります。事前にできるだけ具体的な見積もりを作成し、漏れのないようにチェックしておくことが大切です。
営業休止補償
移転期間中は営業を停止せざるを得ない状況が発生します。この休業期間の売上損失をどのくらい補償するかが大きなテーマとなります。
一般的に、過去の売上実績や移転先の見込み売上との比較などをもとに算定されることが多く、業種によってその手法や額は変わります。例えば、飲食店などは日々の売上が生活に直結するため、金額も大きくなりがちです。
このように営業補償は、立ち退き後の事業継続を支えるためにも重要な要素であり、当事者間での入念な協議が欠かせません。
立ち退き費用の計算方法
立ち退き料の算定は裁判例や慣習をもとにした複数の方式があります。代表的な方法を理解し、案件に適した計算を選ぶことが重要です。
実務では、収益還元方式や割合方式など、状況に応じて使い分けられる計算方法が存在します。それぞれの方式にはメリット・デメリットがあるため、物件や事業形態に合わせて選択しましょう。
収益還元方式
収益還元方式では、物件が生み出す利益から立ち退きによる損失を算定します。特に店舗やオフィスなど、営業利益が明確な場合に用いられることが多い手法です。
一定期間の営業利益の推移を参考にし、それを現在価値に割り戻すことで退去による逸失利益を評価します。実務では会計数値や税務申告資料を利用することが一般的です。
この方式は客観性が高い一方で、将来の営業展開や市場環境の変化をどこまで織り込むかが課題となり、交渉に時間がかかることもあります。
割合方式
割合方式は、家賃や売上の一定比率を基準として立ち退き料を算定するシンプルな方法です。例えば「家賃の何カ月分」といった形が一般的な目安として利用されます。
この方式は計算手順がわかりやすく、交渉の基準を共有しやすいメリットがあります。ただし、実際に被る損失の大きさと必ずしも比例するわけではないため、追加で移転費用や営業補償を上乗せするなど調整が必要になる場合があります。
シンプルなだけに、相場や類似事例をしっかりと比較せずに算出すると、借主から見て金額が不十分と思われたり、逆に高すぎると感じられたりするリスクがあります。
収益価格控除方式
収益価格控除方式では、物件が将来的に生む可能性がある収益価格から、立ち退きによる費用や損失を差し引いて補償額を算定します。収益還元方式と似ていますが、より投資的な視点で考えられるのが特徴です。
買取や売却を前提とした場面で活用されることが多く、物件の価値と借主の営業損失を合わせて評価することで、バランスの取れた立ち退き料を導き出そうとする手法です。
しかし、計算には将来の利回りや市場動向を織り込む必要があるため、専門家の意見を聞かないと大きなぶれが生じる可能性があります。
比準方式
比準方式は、近隣の類似物件の賃料データや売買価格、過去の立ち退き交渉事例などを総合的に比較して算定する方法です。相場観が重視されるため、実務ではよく用いられます。
具体的には、過去に同じ地域や規模の物件で発生した立ち退き料事例を参考にして、物件の状態や借主の立場を加味しながら金額を決めます。目安としては家賃の半年~1年分が示されることが多いですが、営業補償などで大きく変動します。
ただし、物件や契約内容の個別性が強いと、他の事例との単純比較が難しい場合もあるため、詳細な事情をきちんと整理することが重要です。
実際の事例から見る計算シミュレーション
例えば、賃料10万円の店舗で月商が60万円程度ある場合、割合方式では家賃の10か月分として100万円、さらに営業補償として数百万円が上乗せされるケースが一般的です。
収益還元方式であれば、月商と利益率をベースに営業損失の幅を試算し、それを何か月分補償するかで調整します。営業を休止する期間が1~2か月なら、立ち退き料は合計数百万円から1000万円前後になることもあります。
実際には、交渉次第で最終金額は変動しますが、固定観念を持たず柔軟に算定方法を比較してみることが重要です。
立ち退き交渉の手順とポイント
立ち退きを求める際には、正当事由の説明や通知方法など、具体的な手順を踏んで交渉することが必要です。
立ち退き交渉では、賃借人の理解と納得を得るためにも、早めの段階から誠実な態度で話を進めることが大切です。
一方的に退去してくださいと通知すると、相手が強く抵抗する可能性が高まります。
また、交渉に入る前に十分な準備と情報収集を行い、可能であれば専門家のアドバイスを受けるのが望ましいです。特に建て替えや再開発など大きなプロジェクトの場合は、細かい補償項目が多数あるため慎重さが求められます。
もし交渉が難航した場合でも、適切な期限を設定したり、仲裁者を入れたりして冷静に解決の糸口を探す姿勢が大切です。
通知のタイミングと方法
通知を行うタイミングは、契約更新の数か月前、あるいは工事計画が具体化した段階など、できるだけ余裕をもって伝えることが好ましいです。急な通告は借主に大きな不安を与えるため、結果的に交渉が長引く傾向があります。
方法としては書面での通知が基本ですが、面談や電話で趣旨を伝えたうえで、書面を送付するケースも多いです。重要なことは、後日トラブルにならないよう、いつ、どのように通知したかを証拠として残すことです。
もし口頭連絡だけで済ませてしまうと、通知日や内容を巡って言い分が対立するリスクが高まります。書面化は必ず行い、送付方法や相手方の受領確認を徹底しましょう。
立ち退き理由の説明と交渉準備
正当事由がなければ、いかに大規模な建て替え計画があろうと賃借人を納得させることは極めて難しいです。そのため、なぜ立ち退きが必要なのかを明確に示し、それを裏付ける資料を提示することが大切です。
さらに、同時に立ち退き料や補償内容の概算を示し、現実的なラインを提案するのがスムーズです。賃借人の損失の内容や規模を理解し、それをどう補填するつもりなのかを具体的に説明しましょう。
多くの場合、裁判所の判断基準でも正当事由に立ち退き料を加えることで退去請求が認められるケースがあるので、この点をしっかりと押さえておくと交渉を進めやすくなります。
契約満了前後に行うべき手続き
普通借家契約では更新拒絶を行う場合、原則として契約期間満了の1年前から6か月前までの間に通知する必要があります。タイミングを誤ると自動更新が成立してしまい、さらに長い期間の賃貸契約延長につながる可能性があります。
契約満了時には、立ち退きの具体的な日程や支払い条件などをまとめた書面を交わすのが一般的です。お互いが納得できるかたちでの合意書を作成し、あとから言った・言わないの争いにならないようにしましょう。
また、もし更新時期を過ぎてしまった場合でも、合意解除の形をとれば立ち退きは可能ですが、現実には補償額が増大する可能性があるので注意しましょう。
不動産会社や弁護士に相談するメリット
立ち退き交渉では、法的手続きや専門的な知識が必要になる局面が少なくありません。そんなとき、不動産会社や弁護士に相談することで、スムーズに事を運ぶ可能性が高まります。
特に複数の入居者がいる物件や、大規模な開発計画の場合、個別の交渉だけでなくマネジメント力が求められます。不動産会社やコンサルタントは、過去事例や相場情報を持っているため、全体のスケジュールを整理しやすくなります。
また、法的リスクの回避や契約書作成の精度向上など、弁護士の存在は後々の紛争を回避するうえでも大きなメリットをもたらすでしょう。
立ち退き費用を抑えるための10の方法
立ち退き料は高額になりがちですが、工夫次第で支払い額を抑えられる可能性があります。具体的な方法を10項目に整理しました。
入居者数が減ってから着手する
老朽化した物件の場合、慌てて一斉に立ち退きを進めるよりも、自然退去や契約終了を見計らい、少しずつ空室を増やしながら進める手法があります。結果として立ち退き交渉が必要な戸数が減り、費用も抑えられる可能性が高いです。
空室が増えたタイミングで建て替えや改修工事を始めることで、大規模な立ち退き料の発生を回避できるだけでなく、退去交渉に費やす時間や手間も減ります。
ただし、あまり長期にわたると建物の管理維持費がかかるため、適切なタイミングを見極めるのがカギとなります。
定期借家契約への切り替えを提案する
定期借家契約は、法定の要件を満たしたうえで契約期間満了時に終了する仕組みであるため、適切に運用されていれば退去交渉を進めやすいメリットがあります。結果として、立ち退き料を支払う必要性が大幅に減る場合があります。
ただし、現状が普通借家契約であれば、借主の同意なしに一方的に定期借家契約へ切り替えることは難しいため、交渉が必要です。また、定期借家契約でも、建て替えや改修を理由として中途解約するときには一定の要件が必要なので、契約形態の選択や作成時の注意点をよく確認しましょう。
代替物件を提供する
賃借人が退去を渋る最大の理由は、引越し先の確保や家賃の上昇などによる負担が大きくなる点です。賃貸人側が新たな住居や店舗の候補を提示しサポートをすれば、納得してもらえる可能性があります。
具体的には、近隣の不動産会社と連携し、家賃や広さなどの条件が似た物件をあらかじめ複数用意しておくと、交渉がスムーズに進みます。移転先の初期費用や仲介手数料を負担することも一案です。代替物件提供は、賃借人にとって生活や営業の継続を確保できる安心材料となるため、結果的に立ち退き料を低めに抑えられるかもしれません。
用法違反等の解除事由を確認する
賃借人が契約違反を犯している場合、正当事由がなくても合意解除や契約解除に持ち込める可能性があります。具体的には、無断で形態や用途を変更している場合や、家賃滞納が続いている場合などが該当します。
ただし、解除手続きは法的に厳格な手順が必要です。適切なタイミングを逃したり、証拠が不十分なまま解除を通知したりするとトラブルになるおそれがあります。裁判になる可能性もあるため、法的根拠を十分に揃えてから交渉を進めるのが望ましいでしょう。
誠意ある姿勢で交渉を始める
立ち退き交渉はどうしても対立する場面が多くなりがちですが、最初から高圧的な態度を取ると、賃借人の不信感を煽ってしまいスムーズな合意が遠のきます。早い段階から、できるだけ賃借人の負担を軽減したいという姿勢を示すと、相手も交渉に応じる心構えが生まれやすくなります。敷金の返還や一部費用の立て替えなど、小さな譲歩が大きな効果を生むこともあります。相手の気持ちを尊重したコミュニケーションが重要です。
原状回復を免除する
賃貸人側で建て替えや大規模リフォームを予定しているのであれば、賃借人に原状回復をさせる必要がないケースもあります。そこで、原状回復義務を免除する提案を行うことで賃借人の出費を減らせるため、立ち退き料の交渉がスムーズになる場合があります。
ただし、契約上の原状回復義務の範囲をどこまで免除するかについては、お互いの認識をしっかりと一致させておきましょう。
敷金を先に返金する
退去時に清算される敷金を、通常より早く返すことを提示するのも有効です。賃借人側からすると手元資金が増えるため、次の住まいの初期費用などにあてやすくなり、心象が良くなる可能性があります。さらに敷金精算をスムーズに行うことで、発生するはずだった細かいトラブル(修繕費用の差額など)をまとめて解消できる可能性もあります。すぐに退去してもらう代わりに敷金を全額返還するといった提案は、相手から見て魅力的に映るケースがあります。
退去までの賃料を免除する
退去を迅速に進めてもらう代わりに、残りの契約期間の家賃を免除する提案を行う方法もあります。これにより、賃借人は経済的なメリットを感じて円滑な退去に協力してくれる可能性があります。
ただし、家賃免除の期間が長すぎると、賃貸人側の家賃収入が減少するため、どの範囲まで容認できるかを事前にシミュレーションする必要があります。短期間であれば、賃料免除をする代わりに立ち退き料を抑えるという交渉にもつなげられるので、双方にとってメリットのある条件を模索するとよいでしょう。
再入居を確約する
建物の建て替え工事が完了した後、同じ部屋に再入居できるように優先権を与える方法もあります。これによって、賃借人は移転後に顧客や環境を再構築できる期待が持てるため、合意が得やすくなる場合があります。特に、店舗テナントでは一定の立地条件を確保したいという賃借人のニーズが強いことが多いです。再入居の権利を付与することで、仮住まい的な移転として認識され、退去に対する抵抗が和らぐ効果も期待できます。
もっとも、再入居時の賃料や契約条件も交渉に含めて事前に詰めておかないとトラブルになるリスクがあるため注意しましょう。
裁判にしない
裁判になると、裁判費用や弁護士費用に加え、時間的な負担が大きくなる傾向があるため、状況によっては裁判を避ける選択が有効となる場合もあります。長期化すると物件の建て替え時期など計画全体が遅延するリスクもあります。
話し合いによる和解は、双方が納得できる着地点を見つけやすく、かつ迅速に進められるメリットが大きいです。自分たちだけで交渉ができない場合は、弁護士を間に入れることで紛争を未然に防ぐことができます。
立ち退き交渉が難航した場合の対処法
立ち退き交渉が平行線をたどったり、賃借人が退去に強く抵抗したりする場合には、早めに対策を練りましょう。スムーズに解決できない背景には法的リスクや権利関係の複雑さがあるので、粘り強く解決策を模索すると同時に、無用な対立を避ける努力も大切です。
弁護士や不動産コンサルタントへの依頼
交渉が膠着状態に陥った場合、弁護士や不動産コンサルタントの力を借りるのは有効策です。専門家による法的見解や過去事例の分析は、立ち退き料や補償項目の妥当性を客観的に示す助けとなります。また、第三者として交渉の窓口になってもらうことで、直接的な衝突を避けられ、スムーズに協議を進められることも期待できます。特に、大型物件や複数の借主がいる場合には、粘り強い交渉と全体マネジメントが求められるため、専門家の存在が成果を大きく左右することがあります。
裁判を避ける方法を模索する
交渉が決裂し、どうしても折り合いがつかない場合は裁判に発展することがあります。しかし、裁判は長期化・費用増になる傾向が強いので、双方にとって負担が大きくなりがちです。
裁判では立ち退き料の金額や正当事由の有無が細かく審理されますが、結論が出るまでに納得が得られず、感情的対立が激化することもしばしばあります。
そのため、本当に裁判を選択する必要があるのか、別の解決策がないかを慎重に検討することが望まれます。裁判外で合意を図る基本姿勢を持つことがトラブルの拡大を防ぐカギです。
物件の売却を視野に入れる
立ち退き交渉が長引いてしまうと、賃貸人にとって大きな負担となるだけでなく、投資効率や時間的コストを考えるとあまり得策ではありません。そこで、最終手段として物件売却を検討する方法もあります。買い手側が立ち退き交渉を継続する意向がある場合は、新オーナーが交渉を引き継ぐ形で進めることが可能です。もちろん、売却価格や引き継ぎ条件など注意点は多いですが、一つの解決策として捉えられます。
加えて、建て替えを前提としたデベロッパーなどに一括売却する選択肢もありますが、その際の査定評価には立ち退きリスクが織り込まれるため、事前に情報を整理しておくことが大切です。
まとめ
この記事では、立ち退き費用の相場・計算方法・交渉のポイントについて解説しました。スムーズな立ち退き交渉をするためにもぜひ本記事を参考にしてください。
ネクスパート法律事務所では、不動産分野を取り扱う弁護士が在籍しています。初回相談は30分無料ですので、立ち退きに関してお悩みの方は一度相談を検討してみるとよいでしょう。


