【賃料増額請求】弁護士が全知識を解説|利回りを上げて物件価格を上げる方法

月の賃料を5万円増額すれば、年間60万円、利回り4%の物件なら、物件価格が1500万円増加するのと同じことです。3%の物件なら約2000万円です。

物件をすぐ売却しないにしても、月5万円だと年間60万円、5年で300万円、10年で600万円、20年で1200万円の賃料を増額することになります。

金利が上昇してきている中、賃料を増額することは大家さんにとって最大の関心事です。

賃料増額請求は、法律で認められた貸主の正当な権利です。しかし、その権利を適切に行使し、望む結果を得るためには、法的な知識に基づいた戦略と交渉術が不可欠です。

この記事では、不動産問題に精通した弁護士が、賃料増額請求に関するあらゆる疑問にお答えします。この記事を最後までお読みいただければ、賃料増額請求の全体像を理解し、ご自身が次に取るべき具体的な行動が明確になるはずです。

目次

【結論】賃料増額請求は弁護士への相談が成功への近道

もしあなたが賃料増額請求を本気で成功させたいとお考えなら、できるだけ早い段階で弁護士に相談することを強くお勧めします。

ご自身で交渉することも不可能ではありません。しかし、多くの場合、貸主様と借主様の直接交渉は感情的な対立を生みやすく、話し合いが平行線をたどるケースが後を絶ちません。

法務と交渉のプロである弁護士が介入することで、以下のようなメリットが生まれ、成功の確率は飛躍的に高まります。

  • お願いベースでの賃料増額は無視されて終わることが多い
  • 感情的な対立を避け、冷静かつ有利に交渉を進められる
  • 弁護士による内容証明郵便の送付で、こちらの本気度を示せる
  • 調停や訴訟に発展した場合も、代理人としてすべて対応できる
  • 弁護士に丸投げで時間的・精神的なご負担はほとんどなし

賃料増額は、一度成功すれば将来にわたって収益を改善する、インパクトの大きい資産防衛策です。専門家の力を借りるという選択が、その成功を大きく左右します。

そもそも賃料増額請求とは?認められる法的根拠と3つの条件

「そもそも、なぜ一方的に賃料の増額を請求できるのか?」
その法的根拠と、請求が認められるための具体的な条件について、正確に理解しましょう。

法的根拠は借地借家法第32条

賃料増額請求権は、借地借家法第32条第1項に定められています。

(借賃増減請求権)
第三十二条 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。(以下略)
参照元:借地借家法 | e-Gov 法令検索

少し難しい言葉が並んでいますが、要約すると一度決めた家賃でも、その後の経済情勢の変化などによって家賃額が不相当になった場合は、貸主・借主のどちらからでも、将来の家賃を増減するよう請求できるということです。これは、契約書の内容に関わらず行使できる、法律で認められた強力な権利です。

賃料増額が認められる3つの客観的条件

では、具体的にどのような場合に賃料が不相当だと判断されるのでしょうか。法律や過去の裁判例では、主に以下の3つの要素を総合的に考慮して判断されます。

1. 固定資産税等の負担の増減

物件にかかる固定資産税や都市計画税が増加した場合、それは貸主の負担増に直結するため、賃料増額の有力な根拠となります。

毎年送られてくる納税通知書を確認し、以前と比較して税額が上がっていないかチェックしてみましょう。逆に、税額が下がれば、借主から減額請求される可能性もあります。

2. 対象不動産の価格や経済事情の変動

土地や建物の価格そのものが上昇した場合も、増額の根拠となり得ます。
例えば、近隣に新しい駅や商業施設ができて利便性が向上し、不動産価値が上がったケースなどがこれにあたります。

インフレーションのような社会全体の経済事情の変動も考慮されます。

3. 近隣の同種物件の賃料との比較

これが最も分かりやすく、実務上も重視されるポイントです。

ご自身の物件と同じような条件(立地、広さ、築年数、設備など)の近隣物件の賃料相場を調査し、それと比較して現在の賃料が明らかに安い場合は、強力な増額理由となります。レインズや不動産情報サイトなどで、複数の類似物件の募集賃料をリサーチし、客観的なデータとしてまとめておくことが重要です。

これらの条件は、単に「そう思う」という主観ではなく、客観的な証拠に基づいて主張する必要があります。弁護士にご相談いただければ、これらの証拠収集の段階からサポートが可能です。

賃料増額請求を弁護士と進める具体的な流れ【4ステップ】

弁護士にご依頼いただいた場合、賃料増額請求は一般的に以下の流れで進んでいきます。
各ステップで弁護士がどのように関与し、オーナー様をサポートするのか、具体的に見ていきましょう。

STEP1:内容証明郵便による賃料増額請求の通知

弁護士名義で賃料増額請求通知書を内容証明郵便で借主に送付します。

【なぜ内容証明郵便なのか?】

内容証明郵便を利用することで、いつ、誰が、誰に、どのような内容の文書を送ったかを郵便局が公的に証明してくれます。これにより、増額請求の意思表示を明確にした日付の証拠が残り、後の調停や訴訟で重要になります。

【通知書に記載する主な内容】
  • 対象物件の表示
  • 現在の賃料と、請求する新たな賃料
  • 賃料増額を求める具体的な根拠(上記3つの条件に基づく理由)
  • 交渉の期限

この通知書を弁護士名義で送付することで、オーナー様の「法的手続きも辞さない」という強い意思を相手に伝え、交渉のテーブルについてもらいやすくなるという心理的効果も期待できます。個人名で送る通知とは、重みが全く異なります。

STEP2:借主との直接交渉

通知書送付後、借主側から何らかの反応があれば、いよいよ交渉開始です。この交渉の段階から、弁護士がオーナー様の代理人としてすべての窓口となります。

【弁護士が交渉を代行するメリット】
  • 感情的な対立の回避
    オーナー様が直接交渉すると、これまでの関係性から言いたいことが言えなかったり、逆に感情的な口論になったりしがちです。第三者である弁護士が間に入ることで、法的な論点に絞った冷静な話し合いが可能になります。
  • 法的な知識に基づく交渉
    相手方から法的な反論があった場合でも、弁護士であれば即座に的確な再反論が可能です。
  • 有利な条件での合意形成
    弁護士は交渉のプロです。裁判になった場合の見通しを踏まえながら、現実的な落としどころを探り、オーナー様にとって最大限有利な条件で合意できるよう交渉を進めます。

交渉がまとまれば、後日の紛争を防ぐために、合意内容を記した賃料改定合意書などの書面を作成します。この書面作成も、もちろん弁護士が責任をもって行います。

STEP3:賃料増額調停の申立て

交渉での合意が見込めない場合、次のステップは裁判所での調停手続きです。これは、訴訟(裁判)とは異なり、あくまで話し合いによる解決を目指す手続きです。

【調停とは?】

裁判官1名と、不動産の専門家などで構成される調停委員2名が中立な立場で間に入り、双方の事情を聴きながら、円満な解決(合意)ができるように調整してくれます。非公開で行われるため、プライバシーも守られます。

【調停における弁護士の役割】
  • 申立書の作成・提出
    裁判所に提出する専門的な書類を、オーナー様に代わって作成・提出します。
  • 調停期日への同席
    弁護士がオーナー様と一緒に出席し、調停委員に対して法的な主張を論理的に説明します。言いたいことを的確に代弁し、オーナー様の精神的な負担を軽減します。
  • 有利な調停条項の獲得
    相手方との妥協点を探る中でも、オーナー様の利益が損なわれないよう、法的な観点から調停条項を精査し、交渉します。

調停が成立すれば、その内容は調停調書に記載され、これは確定判決と同じ法的効力を持ちます。

STEP4:賃料増額請求訴訟の提起

調停でも合意に至らなかった場合、最終手段として、訴訟、つまり裁判を起こすことになります。訴訟では、最終的に裁判官が、不動産鑑定士の意見なども参考にしながら、相当な賃料(適正賃料)はいくらなのかを法的に判断し、判決を下します。

【訴訟における弁護士の役割】
  • 訴状の作成・証拠の提出
    主張を裏付けるための客観的な証拠(不動産鑑定評価書、固定資産税評価証明書、近隣の賃貸事例など)を収集・整理し、訴状を作成します。
  • 口頭弁論期日への出席
    裁判所で行われる期日に代理人として出席し、法廷で主張・立証活動を行います。
  • 判決・和解への対応
    判決内容を精査し、控訴するかどうかの判断を助言します。訴訟の途中でも、裁判所から和解を勧められることがあり、その際の交渉も行います。

訴訟は高度に専門的な手続きであり、弁護士のサポートなしで進めることは現実的ではありません。交渉・調停の段階から弁護士に依頼することで、訴訟を見据えた一貫性のある戦略を立てられます。

【弁護士が解説】賃料増額請求でよくある失敗事例と注意点

これまで多くのオーナー様からご相談を受ける中で、ご自身で対応されて失敗したケースも数多く見てきました。ここでは、そうした典型的な失敗事例と、法的な注意点について解説します。

失敗事例1:感情的に交渉してしまい関係が悪化

長年の付き合いがある借主に対し、「周りも上げているんだから、あなたも協力するのが当然だ」と高圧的な態度で請求し、信頼関係が完全に崩壊したケースです。
借主が意固地になり、一切の交渉に応じなくなりました。

賃貸経営は継続的な関係性が基本です。法的な権利を主張する際にも、相手への配慮を欠いたコミュニケーションは禁物です。

失敗事例2:法的根拠を十分に示せず、交渉が頓挫

「とにかく家賃を上げてほしい」という希望だけを伝え、なぜ増額が妥当なのか、客観的なデータを示さずに交渉を始めてしまうケースです。

これでは借主も納得できず、「根拠がないなら応じられません」と一蹴されます。

固定資産税の課税明細書や、複数の類似物件の賃料データなど、具体的な証拠の準備が交渉の成否を分けます。

失敗事例3:請求後の賃料支払いをめぐるトラブル

増額請求後、借主が「増額には納得できない」として、従来の賃料しか支払ってこない、あるいは法務局に供託してくることがあります。この場合、貸主が何も知らずに従来の賃料を受け取ると、増額請求を取り下げたと解釈されかねないリスクがあります。

このような場合は、「増額を争う意思があることを留保し、損害金の一部として受領する」という意思表示を明確にする必要があります。

このあたりの対応は専門的ですので、必ず弁護士にご相談ください。

法的な注意点:賃料不増額特約は無効にできる可能性がある

賃貸借契約書の中に、「契約期間中、賃料を増額しない」という賃料不増額特約が定められている場合があります。

「この特約があるから、もう増額は無理だ」と諦めてしまうオーナー様もいらっしゃいますが、お待ちください。

判例では、このような特約があったとしても、その後の事情の変更が著しく、特約を維持することが信義則に反する(不公平である)と認められる場合には、貸主からの増額請求が認められるとしています(横浜地裁昭和39年11月28日判決、最高裁判所 平成15年10月21日判決)。

諦める前に、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

賃料増額請求を弁護士に依頼するメリットとデメリット

改めて、弁護士に依頼するメリットと、考えられるデメリットを整理してみましょう。

賃料増額請求を弁護士に依頼する5つのメリット

1. 最適な増額賃料の算定と法的根拠の整理

不動産鑑定士など他の専門家とも連携し、裁判でも通用するレベルの客観的根拠を固めます。

2. 借主との交渉窓口となり、精神的・時間的負担を解消

面倒でストレスのかかる交渉事は、すべて弁護士にお任せください。オーナー様は本業に集中できます。

3. 法的に有効な書面の作成

通知書から合意書、裁判所に提出する書面まで、有効な書面を作成します。

4. 調停・訴訟における代理人活動

万が一、法的手続きに移行した場合も、一貫してオーナー様の代理人として活動し、利益を守ります。

5. 借主との良好な関係維持

第三者である弁護士が冷静に交渉することで、オーナー様と借主様の直接的な対立を避け、今後の賃貸経営への影響を最小限に抑えられます。

考えられるデメリット

唯一のデメリットは、弁護士費用がかかることでしょう。

しかし、考えてみてください。弁護士費用は一時的な支出ですが、増額された賃料は、その物件を所有し続ける限り、将来にわたって得られる継続的な収入となります。

例えば、月額3万円の増額に成功すれば、年間36万円、5年間で180万円の収益アップにつながります。
交渉や手続きにかかるご自身の時間や労力、そして何より精神的なストレスを考慮すれば、弁護士費用は成功のための投資と捉えられるのではないでしょうか。

気になる賃料増額請求の弁護士費用

当事務所では、オーナー様が安心してご依頼いただけるよう、明確な料金体系をご用意しております。

そして、考えていただきたいのが賃料増額のインパクトです。
先ほどお伝えしたとおり、増額された賃料は、その物件を所有し続ける限り、将来にわたって得られる継続的な収入となり得ます。

不動産取引において、重要なのは出口戦略です。
売却時のことを考えてみると、現在、月額15万円の賃料の物件だとすると、表面利回り4%で3750万円の売却価格となります。
これが月額18万円の賃料に増額できれば、表面利回り4%で4500万円の売却価格となります。月額3万円の賃料増額は、750万円もの経済的利益を得られる可能性があります。

項目費用(税込)
法律相談料初回無料
着手金交渉:28万5000円 調停:33万円(ただし、交渉からご依頼いただいている場合は11万円) 訴訟:44万円(ただし、調停からご依頼いただいている場合は11万円)
成功報酬交渉:38万5000円 調停:44万円 訴訟:55万円~
備考・別途実費を頂戴します。
・調停、訴訟は1期日あたり3.3万円の日当を頂戴します。

賃料増額請求でお悩みのオーナー様へ【弁護士からのメッセージ】

ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。

賃料増額請求は、あなたの正当な権利であり、大切な資産を守るための重要な手段です。経済状況が変化する中で、適正な賃料を確保することは、安定した不動産経営の根幹と言えるでしょう。

しかし、その手続きを一つでも誤ると、かえって借主との関係をこじらせ、多大な時間と労力を無駄にするリスクもはらんでいます。

もし、少しでもご不安な点があれば、決して一人で悩まないでください。
まずは不動産問題の専門家である私たち弁護士に、あなたの状況をお聞かせください。
オーナー様の利益を最大化するため、私たちが法的観点から最善の道筋を示し、ゴールまで責任をもって伴走します。

今すぐ弁護士に相談を|ネクスパート法律事務所の強み

賃料増額請求に関するお悩みは、ネクスパート法律事務所にお任せください。

不動産問題に関する豊富な実績

当事務所は、賃料増額請求をはじめ、立ち退き交渉、賃料滞納、境界紛争など、多岐にわたる不動産案件を取り扱ってきた豊富な実績がございます。

交渉から訴訟までワンストップでサポート

交渉で解決するのがベストですが、万が一、調停や訴訟に発展した場合でも、一貫してサポートいたします。状況の変化に応じて、最適な戦略をご提案します。

明確で安心な料金体系

ご契約前に、必ず費用に関する詳細なご説明をいたします。
ご納得いただけないまま手続きを進めることは一切ございません。

初回相談無料!まずはお気軽にお問い合わせください

「弁護士に相談するべきか分からない」という段階でも構いません。「まずは専門家の意見を聞いてみる」というお気持ちで、お気軽にご連絡ください。

賃料増額を検討されている大家さんからのご連絡を、心よりお待ちしております。

監修者情報

ネクスパート法律事務所
弁護士法人ネクスパート法律事務所
代表弁護士 寺垣 俊介 (第二東京弁護士会所属)

経歴

2011年 司法試験合格
2013年 弁護士登録(65期)
2016年 ネクスパート法律事務所設立

ご挨拶

特に東京都内では近年家賃上昇は目まぐるしいものがあります。金利も上がってきている中で、賃料を増額することは大家さんにとっての最大の関心事です。長年変わらなかった賃料を、この機会に弁護士を使って増額請求してみませんか。弁護士がご資産の増加を支援させていただきます。ぜひお気軽にお問合せください。

  • 店舗が入居するビルを建て替えるので立退くよう言われている
  • 立退くのはしょうがないけど内装に費用がかかるし立退料に納得いかない
  • 再開発でビルがなくなると言われ借家権消滅希望申出をするよう言われている
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