家宅捜索とは?|家宅捜索への対応等も解説

犯罪捜査を行う過程で、警察官や検察官が家宅捜索を行うことがあります。家宅捜索とはどのようなものなのでしょうか。この記事では、家宅捜索に関する以下の内容を解説します。

  • 家宅捜索の基礎知識
  • 家宅捜索のきっかけと前兆
  • 家宅捜索の範囲
  • 家宅捜索での対応と弁護士が出来ること

家宅捜索の基礎知識

犯罪の捜査が進むと、捜査機関は被疑者が事件に関与した証拠を探すため、被疑者の住居を捜索し証拠物を差し押さえる手続きをします。これを家宅捜索といいます。

ここでは、家宅捜索の基礎知識について解説します。

捜査とは何か?

捜索と似ている言葉として、捜査があります。まずは、捜査とは何かについて解説します。

捜査とは

捜査とは、犯罪が発生したと捜査機関が判断した場合に行う以下の活動のことです。

  • 公訴の提起等を目的として被疑事実に関する証拠を発見・収集・保全する
  • その罪を犯した疑いのある被疑者を発見し、必要があればその身柄を確保

捜査は、被疑者を法律で定められた刑事手続きに乗せ、適切な罰を受けさせるための手段です。

捜査の種類

捜査には次の2つの種類があります。

任意捜査

任意捜査とは、任意の方法によって進められる捜査を指します。ここでいう任意とは、法的強制力が無いことを指すので、捜査される者の承諾が必要です。

強制捜査

強制捜査とは、法的な強制力をもって行われる捜査を指します。法的な強制力に基づくため、捜査される者の承諾は必要ありません。

強制捜査は、捜査を進める上で人の身体や財産などに対する強制を伴います。被疑者の身柄を拘束したり(逮捕・勾留)、人の住居に立ち入ったり(捜索)、所有物を差し押さえたり(差し押え)することもあります。

捜索は強制捜査の一つであり、強制力をもって犯罪の可能性がある人や証拠などを探して調べることです。

強制処分をするためには、現行犯逮捕などの場合を除き、逮捕状・勾留状・捜索差押許可状などの令状が必要です。これは捜査機関による不当な人権侵害を防止するため、裁判官の発付する令状により行うべきことを憲法が要求しているためです。

捜索の目的

強制捜査の一つである捜索の目的は、犯罪に関連する証拠を探し出し、差し押さえることです。

犯行の決め手を探す

捜索の目的は、犯行の決め手を探すことです。現行犯逮捕でない限り、容疑者と犯罪を結びつけるには、いろいろな証拠を集める必要があります。

客観的な証拠が少ない、あるいはない場合、被疑者がその犯行を行ったとして逮捕・起訴することは困難です。

犯罪に関連する客観的な証拠を収集するため、捜索をします。

証拠品を差し押さえる

犯罪を行ったことがわかる証拠品は、そのままにしておくと、隠滅のおそれがあります。そのため、いち早く差し押さえて、隠滅されないようにしなければなりません。

家宅捜索の条件

家宅捜索とは、捜査機関が被疑者や関係者の住居や事務所に立ち入り、犯罪に関連する証拠物を捜索し、差し押さえる手続きをいいます。

家宅捜索は強制捜査の一つなので、実施にあたっては法的な根拠が必要です。それが、「捜索差押許可状」です。

令状(捜索差押許可状)|裁判所の事前審査

捜査機関が家宅捜索をするためには、裁判所が発付した捜索差押許可状という令状が必要です。

令状とは、捜査機関の請求に対して裁判官がその方法や範囲を定めて、捜査を行うことを認める許可状です。

逮捕や捜索差押えのように相手に対する負担が大きい一定の捜査については、中立な外部機関であり法律の専門家でもある裁判官がチェックを行い、実施について、許可される必要があります。

このルールを令状主義といいますが、令状主義は基本的人権を保護するための重要な原則であり、日本国憲法に定められています。

憲法第35条第1項 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第33条の場合を除いては、正当な理由に基づいて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。

第2項 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。

引用:e-Gov法令検索

捜索差押許可状には主に以下の内容が記載されています。

  • 被疑者の氏名
  • 罪名
  • 差し押さえるべき物
  • 捜索すべき場所 など

捜索できる場所や物は令状に記載されている場所や物に限られます。

令状なく家宅捜索できるケース

家宅捜索するためには、裁判官の事前審査が必要ですが、例外があります。事前に発付された逮捕状がなくても逮捕できる現行犯逮捕があるように、令状がなくても家宅捜索ができるケースがあります。

憲法第33条の場合を除いてはと記載されているとおり、逮捕現場においては、令状無くして捜索差押えをすることが可能です。

例えば、被疑者を覚せい剤の所持や使用で逮捕した場合、自宅に他に覚せい剤を所持していないか、家宅捜索ができます。

令状発付を待つ時間的余裕が無いような緊急性または必要性が認められる範囲内で、捜索差押えができます。

例えば、覚せい剤事件において被疑者に同居の親族が居る場合には、後日発付される令状を待っている間に証拠隠滅されてしまう可能性もあります。

そのため、逮捕と同時に行う家宅捜索には裁判所の事前審査が不要とされています。

本人不在の場合はどうなるか

家宅捜索をするために捜査機関が自宅を訪れたけれど、被疑者が不在だった場合にはどうなるのでしょう?

必ずしも本人が立ち会わなくても、家宅捜索は可能です。被疑者の自宅を捜索する場合、被疑者が不在であっても、家族や同居人がいる場合には家族に捜索差押許可状を示して、家族や同居人立ち合いのもとで家宅捜索ができます。

本人も家族も不在にしている場合には、法律上は隣人や市役所の職員に令状を示して立ち会ってもらい、家宅捜索が可能ですが、実際には稀です。

家宅捜索のきっかけと前兆

家宅捜索が行われるきっかけはどのようなものでしょうか?また、前兆はあるのでしょうか?以下、解説します。

家宅捜索が行われるきっかけ

家宅捜索が行われるきっかけはいくつかあります。以下紹介します。

被害届の提出

犯罪の被害に遭った人が、警察に被害届を提出することにより、警察が犯罪事実を把握します。被害届が受理されると、警察が捜査を開始します。

通報

被害者や目撃者などの通報によって、警察が捜査を開始することもあります。

告訴・告発

告訴とは、犯罪の被害にあった告訴権者が捜査機関に対して犯罪事実を申告し、加害者の処罰を求めることです。

告発とは、告訴権者ではない第三者が犯罪事実を申告し処罰を求めることです。

告訴・告発がされた場合には、警察は速やかに書類等を検察に送らなければならないので、迅速な捜査がなされることもあります。

職務質問

職務質問とは、以下に該当する人を停止させて質問をすることです。

  1. 異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を行っている者
  2. もしくは犯罪を行おうとしていると疑うに足りる相当な理由がある者
  3. または既に行われた犯罪について、もしくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者

警察による職務質問をきっかけに犯罪事実が発覚することもあります。

家宅捜索の前兆

家宅捜索はとくにこれといった前兆は無く、ある日突然捜査員が家に来ることによって始まります。

証拠隠滅を防ぐため、何の予告も無しに行われます。

家宅捜索でどこまで捜索されるのか|拒否は可能?

家宅捜索ではどこまで捜索されてしまうのでしょう?

捜索できる場所や物は令状に記載されている事項に限られています。

捜索差押許可状に記載されていない内容の捜索や差押えは出来ません。

令状を持っている場合

捜査機関は、捜索差押許可状を持っている場合には、処分を受ける者に示さなければなりません。

必ずしも読み上げがされるわけではなく、処分を受ける者がその内容を理解できる方法で示します。処分を受ける者に閲読させたり、要旨を告げたりする方法で呈示されることもあります。

捜査機関が捜索差押許可状を持っている場合には、裁判官の令状に基づき強制的に行われる処分であるため、許可された範囲内の捜索差押えは拒否できません。

実力で抵抗すれば、公務執行妨害罪で現行犯逮捕されることもあります。

令状を持っていない場合

捜索差押許可状が無い場合や、被疑者の逮捕に伴い行われる家宅捜索ではない場合には、強制的に行われる処分ではないので捜索差押えを拒否できます。

断っても警察官があきらめずに自宅に押し入ろうとした場合には、その状況を写真や動画等で記録するという方法があります。

後々の裁判で、違法に収集された証拠として、証拠能力を争う弁護活動ができる可能性があります。

家宅捜索での対応と弁護士が出来ること

捜査機関が家宅捜索に来た場合の対応と、弁護士が出来ることについて解説します。

弁護士の立ち合いは可能か?

弁護人の立ち合いを認めた規定は無いので、捜査機関が弁護人を立ち会わせる義務はありません。

しかし、住居主(通常は被疑者)から依頼されれば、弁護士は起訴前段階の捜索差押えについても、依頼を受けた代理人として立ち会えます。

証拠が見つかった場合

家宅捜索によって被疑事実に関する証拠が見つかった場合には、警察によって押収されたものを参考にして、今後の刑事弁護活動の方針を定めます。

また、家宅捜索によって被疑事実に関する証拠が収集されたことで、証拠隠滅のおそれが無くなり、逮捕勾留の必要性が無いと主張することで、逮捕・勾留が避けられる可能性があります。

証拠が見つからなかった場合

家宅捜索によって被疑事実に関する証拠が見つからなかった場合には、捜索差押手続きに違法性がなかったかを検証します。違法性があると疑わしい場合には、それを根拠に不起訴や無罪を獲得する刑事弁護活動を行います。

示談の検討

証拠の有無にかかわらず犯罪を行った自覚がある場合には、事実を認めて被害者に謝罪し、示談の検討をすべきです。

被害者の救済にもなり、示談が成功して被害届を取り下げてもらえれば起訴される可能性が低くなります。

まとめ

家宅捜索を受けた場合には、早急に今後の対応を考えなければなりません。法律の専門家である弁護士に相談することにより、迅速で最適な対応策を検討できます。

家宅捜索を受けたら、早急に弁護士に相談することをお勧めします。

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