不二子が、不二夫に対し、不二夫が、愛子と不貞行為をし、その後不二子に対して不貞行為を一旦は止めると約束しながら隠れてこれを続け、不二子がそれを指摘すると愛子と示し合わせて不貞行為に及んだことを否定し、更に不二子から不貞行為を指摘されてこれを止めるよう注意されたことに立腹して自宅を出て所在を隠したこと、不二夫が代表者を務める会社が新事務所に移転した際、同社で経理等の事務に従事していた不二子に対し、罵詈雑言を浴びせるなどしたこと、不二子に対し、平成23年6月まで生活費として月額40万円を支払っていたが、その後、無断で減額した額の生活費しか支払わなかったこと、不二子に対し、東日本大震災で損傷した自宅建物を補修すると約束し、また国からの補助金等が交付されたにもかかわらず、上記補修工事をせずに放置したことがそれぞれ不法行為に当たるとして、損害賠償金等の支払を求め、原審は、不二子と愛子の不貞行為についての不法行為が成立するのみとして慰謝料150万円が相当としたが、不二子が敗訴部分を不服として控訴提起した事案である。
不二夫が愛子と性交渉を持つようになり、不二子と生活していた自宅を出て、その後、愛子のマンションで同人と同棲するようになり、愛子との間に3人の子供をもうけた事実は当事者間に争いがなく、不二夫と愛子が性交渉を持つようになった時点において、不二子らの間の婚姻関係が破綻していたとは認められないから不二夫の不二子に対する不法行為が認められたが、不二夫と愛子が共謀の上、不二子に対して不貞行為の継続を否認したことについては、不二夫が不二子に対して不貞行為の継続を自白すべき不法行為上の注意義務があったとはいえない以上、不法行為の成立を認めることはできないとした。その他の訴外会社への不二子の出社拒絶等については、不二夫が脅迫的な言辞を用いるなどしていたものとはいえず、不二夫が不二子の生活費として月額40万円を将来にわたっても継続的に支払う旨の合意が成立していたことを認めるには足りないとし、不二夫が不二子に対して自宅の補修を約束したという事実については、不二夫はこれを否認し、不二夫が自宅の補修をすべき不法行為上の注意義務を負っていたと評価するに足りる事実はないとしいずれも不法行為が成立するとは認められなかった。
不二夫が愛子と不貞行為をしたこと、その不貞行為の態様、その結果、不二子が自殺未遂に及び、パニック障害、神経性不眠症と診断されたことから窺われる不二子の精神的苦痛の程度、その他の事情を考慮すると、慰謝料200万円が相当とされた。
当事者の情報
不貞期間 | 約6年 |
請求額 | 1000万円 |
認容額 | 200万円 |
子供人数 | 3人(24歳、23歳、21歳) |
婚姻関係破綻の有無 | 破綻していたとは認められない |