不貞行為により210万円の慰謝料請求が認められた後に、慰謝料請求権が破産法上の非免責債権には該当しないと認定された事案

本件は、不二子が、愛子に対し、愛子と不二子の夫との不貞行為により婚姻共同生活の平和を侵害され夫婦関係が破綻する危機に瀕したとして、不法行為による損害賠償請求権に基づき550万円の賠償金(慰謝料500万円及び相当弁護士費用50万円)の支払を求めた事案です。


愛子と不二夫は、かねてからバスケットボールを共通の趣味とする知人であり、フェイスブックでメッセージを交換する程度の関係でしたが、携帯電話の連絡先を交換したころから、急速に親密な関係となりました。


愛子は、不二夫が不二子と婚姻していることを認識した上で不二夫と肉体関係を持つに至り、その不貞関係が継続し、その後不二子に発覚し不二子と不二夫との婚姻関係は破綻の危機に瀕したということができ、愛子と不二夫との不貞行為は、不二子に対する関係において共同不法行為として、不二子が被った損害を賠償する責を負うべきであり、そして、不二子が3人目の子を身ごもっていた時期に継続して不貞関係を持っていたこと、不二夫との不貞関係において愛子は決して受け身なものであったとはいえないことなど愛子と不二夫との不貞行為の態様、及び不貞関係発覚直後の愛子の不二子に対する対応など一切の事情に鑑みると、不二子が被った精神的苦痛を慰謝するための慰謝料は、多くとも本件提起前に不二子愛子間でおおむね合意に達した210万円を超えることはないと認めるのが相当であるとされました。


しかし、愛子は、ほかにも200万円程度の借金があり、和解金の頭金を捻出することができず、分割金として7万円を支払ったのみで、自己破産の申立てをしました。破産手続開始決定と同時に破産手続廃止の決定を受け、不二子の慰謝料請求権も破産債権として掲げた上で免責許可決定を受けています。

そこで、破産法の「破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」は非免責債権であるという規定が問題になってきます。破産法が非免責債権を設けた趣旨及び目的等に照らすと、そこでいう「悪意」とは故意を超えた積極的な害意をいうものと解するのが相当であり、本件においては、愛子の不法行為はその違法性の程度が低いとは到底いえないが、他方で、共同不法行為者である不二夫の行為をも考慮すると、愛子が一方的に不二夫を篭絡して不二子の家庭の平穏を侵害する意図があったとまで認定することはできず、不二子に対する積極的な害意があったということはできず、不二子の愛子に対する慰謝料請求権は破産法所定の非免責債権には該当しないといわざるを得ないと判断されました。よって、不二子の慰謝料請求権につき、愛子は法律的には責任を免れており、認容することはできないという判決になっています。

当事者の情報

不貞期間約半年
請求額550万円(うち慰謝料500万円)
認容額0円
子供人数3人(5歳、3歳、1歳)
婚姻関係破綻の有無不明

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