本件は、不二子が、愛子に対し、愛子が不二子の夫不二夫と交際するなどして不貞関係をもち、これによって不二子と愛子との婚姻生活の平穏が害されたとして、660万円(慰謝料600万円及び弁護士費用60万円)の支払を求める事案で、愛子は、不二子と不二夫との婚姻関係は既に破綻しており、また、仮にそうでないとしても、不二夫の言動からそのように信じていたのであるから、愛子に婚姻関係を侵害する意図もなかった旨を主張していました。
不二夫は、勤務会社の東京オフィスから福岡オフィスへの異動を命じられ、不二子とともに、福岡に転居し、福岡オフィスにおいて、プロジェクトマネージャーとして勤務しました。愛子は、不二夫が福岡勤務当時、福岡オフィスの総務部に勤務していました。不二子は専業主婦です。
不二夫は、愛子に対し、不二子との婚姻生活が順調でないと説明しており、また、愛子は、同じ会社に勤務していた当時の噂から、不二夫と不二子との婚姻生活が破綻していると判断して、交際を決意しました。
しかしながら、不二夫は、当時、不二子とともに同居し、生計を一にしていること、住宅ローンを組み、かつ、共に海外旅行に行っていること、不二子に対し愛子と交際していることを秘していることなどの事実が認められ、不二夫の、不二子との婚姻生活が破たんしていたとの供述に反する事実が認めらる上、ほかに、不二子と不二夫との婚姻生活が破綻していたと認めるに足りる証拠はありませんでした。
また、愛子は、不二子と不二夫の婚姻関係が破綻していると信じ、かつそのように信じることについて過失もなかったと不法行為の成立を否定する旨を主張しましたが、不二子に交際の事実が発覚しないように交際していたことは明らかであり、また、少なくとも、不二子から、不二夫との交際を絶つことを直接要求された時点で、不二夫が不二子との婚姻生活について真実を知らされていなかったことに気付きながら、なおも、交際を継続していることが認められ、愛子の主張は採用されませんでした。
以上のとおり、愛子が不二夫と交際をしたことにより、不二子の不二夫との婚姻生活が破壊されたことは明らかであり、不二子に対する不法行為を構成するといえ、不二子が受けた精神的苦痛や本件訴訟遂行のために要した支出を考慮し、他方で、愛子の不二夫との交際は、不二夫が不二子との婚姻生活が破綻していると説明していることに主な原因にあったことなど全ての事情を勘案すると、不二子の慰謝料としては、135万円と認めるのが相当であると判断されました。
なお、不二子は、本件の立証のために、調査会社に対し、合計約470万円の支出をしましたが、愛子が福岡に在住し、調査が困難であったとの事情を踏まえても、そもそも愛子と不二夫の交際は都内で頻繁に行われており、本件の立証のために必要不可欠な支出とは認めがたく、慰謝料の増額事由として考慮することは相当でないとされています。
当事者の情報
不貞期間 | 約1年 |
請求額 | 660万円 |
認容額 | 150万円(うち慰謝料135万円) |
子供人数 | なし |
婚姻関係破綻の有無 | 婚姻生活が破綻していたと認めるに足りる証拠はない |