愛子が事務職員として業務を行っていた組合で不二夫が理事を務めるようになり、業務上の繋がりができることとなりました。不二夫が本件組合の新店舗の下見に行った際、愛子もこれに同行し、不二夫と愛子は、食事をした後、合意の上で、ラブホテルにおいて性交渉に及び、不貞を開始しました。
その後も、組合での会合を終えた後などに、月に1~2回のペースで情交関係を結んでいたほか、通常の日にラブホテル等で密会したり、不二夫が所有する自家用車内で性交渉に及んだりすることもありました。また、不二夫と愛子とは、性交渉の誘いや事後の感想、密会の打合せなどを企図した親密で生々しいメールを多数回にわたりやりとりしてしています。不二夫と愛子の気持ちが離れたことからいったん関係は解消されましたが、のちに再開し、最終的に自然消滅するまで関係は続きました。
不二子は、この不貞を知ったことにより、多大な精神的苦痛を受け、情緒不安定となり、嘔吐や不眠等の身体症状も出たことから、心療内科への通院を開始し、判決当時も通院を続けていました。これにより、日常の家事などにも支障が出ているほか、今後も長期間にわたり通院加療が必要であると医師から説明を受け、慰謝料500万円と、治療費等を愛子に請求したという事案です。
それに対し愛子は、本件不貞は不二夫によるパワハラ(強姦)から始まったものであり、愛子自身の組合における雇用を守り、愛子の夫に本件不貞が露見しないようにするためには、不二夫からのパワハラとしての本件不貞を甘んじて継続するしかなかったと主張しました。
しかし、愛子が主張する不二夫からのパワハラについては、その存在を示す客観的証拠が何ら提出されていないことなどから、真実味に欠けると裁判所に判断されました。また、従前から婚姻関係が破綻していたとする愛子の主張は採用されませんでした。
本件不貞により受けた精神的苦痛に対する慰謝料額については、約17年間という不二子と不二夫との婚姻期間、不貞期間の長さ(1年弱の中断を挟むも約3年4か月)及び頻度の高さ(月に一、二回)、婚姻関係破綻の原因は本件不貞のみであること、不二子が心療内科への通院を強いられていることなどを踏まえ、本件不貞における不二夫と愛子の責任に大きな差があるとは認められないこと、不二夫が愛子の夫に対し本件不貞の慰謝料として250万円を支払ったことなど、一切の事情を考慮すると、愛子が不二子に対して支払うべき慰謝料額は、250万円と認めるのが相当と裁判所に判断されました。慰謝料の他、治療費及び交通費、将来1年間分の治療費、また不貞と相当因果関係のある弁護士費用も、愛子が不二子に対し支払うべき義務を負うと認められました。
当事者の情報
不貞期間 | 約3年4か月(うち1年弱は関係を中断していた) |
請求額 | 560万8441円(うち慰謝料500万円) |
認容額 | 284万8583円(うち慰謝料250万円) |
子供人数 | 無し |
婚姻関係破綻の有無 | 破綻はしていない(婚姻関係破綻の原因は本件不貞のみである) |