更新日:2026年9月7日 (月)

公開日:2026年9月7日 (月)

贈与税の基礎控除とは?110万円の計算方法や注意点を解説

贈与税の基礎控除とは?110万円の計算方法や注意点を解説 贈与税の基礎控除とは?110万円の計算方法や注意点を解説

サマリー

家族への生前贈与を考える際、「年間110万円までなら税金がかからない」と耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

贈与税の基礎控除は、暦年課税において財産を受け取る人1人あたり年間110万円まで非課税となる仕組みです。

しかし、複数人から贈与を受ける際の計算ルールや名義預金とみなされるリスク、生前贈与加算の制度改正など、注意すべき点も少なくありません。

この記事では、贈与税の基礎控除の基本的な仕組みや税額の計算方法、生前贈与を行う際の注意点について詳しく解説します。

贈与税の基礎控除とは?年間110万円の仕組み

個人から財産をもらった際にかかる贈与税には、一定の非課税枠が設けられています。

贈与税の基本的な課税方式である「暦年課税」では、受贈者(財産をもらう人)1人につき年間110万円までの基礎控除が認められています。

1年間に受け取った財産の合計額が110万円以下であれば、原則として贈与税は課税されず、税務署への申告も不要です。

課税期間は毎年1月1日から12月31日までの1年間

贈与税の計算期間は、毎年1月1日から12月31日までの「暦年(カレンダー通りの1年)」で区切られます。

この1年間に贈与を受けた財産の評価額をすべて合算して計算を行います。

例えば、同じ年のうちに複数回に分けて金銭を受け取った場合は、それらをすべて合算した金額から110万円を差し引きます。

年をまたいで贈与を受けた場合は、それぞれの年ごとに別々に基礎控除を適用して計算します。

基礎控除額の範囲内であれば原則として申告は不要

年間の贈与受取額が110万円以下にとどまる場合、納付すべき税額が発生しないため、原則として贈与税の申告書を税務署へ提出する必要はありません。

ただし、一定の特例制度(住宅取得等資金の非課税特例や相続時精算課税制度など)を併用・選択する場合は、納税額が0円であっても申告書の提出が要件となる場合があります。

暦年課税の基礎控除のみを利用する範囲であれば、特別な届出をせずに非課税扱いとなります。

贈与税の基礎控除に関する計算方法と注意点

贈与税の計算において重要なのは、「誰を基準に110万円を判定するか」というルールです。

基礎控除は財産を渡す側(贈与者)ごとではなく、受け取る側(受贈者)1人につき年間110万円と定められています。

例えば、同一年に父親から80万円、母親から80万円の贈与を受けた場合、合計額は160万円となります。
この場合、160万円から基礎控除の110万円を差し引いた50万円に対して課税が行われます。

複数の親族からそれぞれ110万円以下で贈与を受けていても、受贈者が1年間に受け取った合計額が110万円を超えれば贈与税の申告と納税が必要になります。

一般贈与財産と特例贈与財産の区分

基礎控除額を超えた部分に適用される贈与税率は、贈与者と受贈者の続柄や受贈者の年齢によって「特例税率」と「一般税率」の2つに分かれます。

特例税率は、贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上の受贈者が、直系尊属(父母や祖父母など)から財産を受け取る場合に適用される区分です。

一般税率よりも税率の上昇が緩やかに設定されており、税負担が軽くなる傾向があります。

一方、一般税率は特例税率に該当しない贈与に適用されます。

兄弟姉妹間や夫婦間での贈与のほか、直系尊属からの贈与であっても受贈者が未成年(18歳未満)である場合は一般税率によって計算されます。

基礎控除を超えた場合の税額計算の流れ

贈与税額を算出する際は、1年間に受け取った財産の総額から基礎控除110万円を差し引き、その残額(課税価格)に該当する税率を掛けた後、控除額を差し引きます。

贈与財産の総額 基礎控除後の課税価格 適用区分・税率 税額の目安
300万円 190万円 特例税率(10%・控除なし) 19万円
500万円 390万円 特例税率(15%・控除10万円) 48.5万円
500万円 390万円 一般税率(20%・控除25万円) 53万円

同じ金額の贈与であっても、適用される税率区分によって納税額が異なるため、誰から誰へ財産を移動させるのかを事前に確認した上で計算を進めることが大切です。

基礎控除を活用する際に気をつけたいポイント

贈与税の基礎控除枠である年間110万円を活用する際は、税務上のトラブルや思わぬ課税を防ぐためにいくつか注意すべき点があります。

形式的に金額を抑えるだけでなく、適切な手続きや管理実態を整えることが大切です。

定期贈与(連年贈与)と判断されないための対策

毎年一定額を継続して贈与していると、当初から「総額◯◯万円を分割して渡す契約(定期贈与)」を結んでいたと税務署からみなされるリスクがあります。

毎年一定額を継続して贈与しているだけで、直ちに定期贈与と判断されるわけではありません。

一方、贈与を開始した時点で、あらかじめ複数年にわたって一定額を贈与することが決まっていた場合には、各年の贈与ではなく、まとまった財産の贈与として課税される可能性があります。

定期贈与とみなされるのを防ぐためには、毎年の贈与について、その都度、贈与者と受贈者の間で贈与の意思を確認し、贈与契約書や振込記録などの資料を残しておくことが重要です。

「名義預金」とみなされないための管理実態

子や孫の名義で銀行口座を開設し、そこにお金を振り込んでいても、通帳や印鑑、キャッシュカードを贈与者が管理している場合は「名義預金」とみなされる可能性があります。

名義預金と判断された場合、口座名義人ではなく実質的な所有者が贈与者であると判断され、贈与者の死亡時には相続財産として相続税の課税対象となる可能性があります。

名義預金と疑われないためには、財産をもらう側(受贈者)が口座の存在を認識し、通帳や印鑑を自ら管理して自由に使える状態にしておく必要があります。

未成年の場合は親権者が管理することになりますが、本人が成人に達したタイミングで管理を引き継ぐなどの実態づくりが重要です。

相続開始前贈与の加算期間(生前贈与加算)の延長

税制改正により、相続開始前に被相続人から行われた生前贈与を相続財産に加算して相続税を計算する期間(生前贈与加算期間)が、従来の「3年」から「7年」へと段階的に延長されました。

区分 改正前(2023年12月31日以前の贈与) 改正後(2024年1月1日以降の贈与)
加算対象期間 相続開始前3年以内 相続開始時期に応じて段階的に延長(最終的に相続開始前7年以内)
基礎控除以下の贈与 加算の対象となる 加算の対象となる(相続開始前3年を超える期間の贈与は合計100万円まで控除)
対象となる受贈者 原則として相続や遺贈で財産を取得した人 原則として相続や遺贈で財産を取得した人

なお、相続開始前3年を超える期間に行われた贈与については、加算対象となる贈与額の合計から100万円を控除できます。
100万円を毎年控除できるわけではない点に注意が必要です。

2024年1月1日以降に行われる生前贈与については、順次加算期間が延びていくため、基礎控除の範囲内で贈与を行っていても相続税の対象に含まれる期間が長期化します。

生前対策を検討する際は、この加算期間の変更も視野に入れて計画を立てる必要があります。

基礎控除とあわせて知っておきたい他の贈与税の特例

贈与税には、暦年課税の基礎控除以外にも、目的に応じてまとまった資金を非課税または軽減された税負担で贈与できる特例制度が用意されています。

ライフステージや贈与の目的にあわせてこれらの制度を組み合わせることで、より柔軟な資産移転を検討できる場合があります。

相続時精算課税制度と新設された基礎控除

相続時精算課税制度は、原則として60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫へ財産を贈与する際に選択できる制度です。

累計2,500万円までの特別控除があり、その範囲内であれば贈与時の贈与税がかからず、2,500万円を超える部分には一律20%の贈与税がかかります。

贈与者が亡くなった際には、原則として贈与財産を相続財産に加算して相続税を計算します。

税制改正により、2024年1月1日以降の贈与からは、相続時精算課税制度にも年110万円の基礎控除が創設されました。

この基礎控除の範囲内であれば贈与税の申告は不要であり、将来の相続税の課税価格にも加算されません。

なお、相続時精算課税制度における110万円の基礎控除は、暦年課税の基礎控除とは別の制度です。

相続時精算課税制度を選択すると、同一の贈与者からの贈与については従来の暦年課税へ戻すことができなくなる点に留意が必要です。

目的別に用意されている主な一括贈与の特例

住宅の購入など、特定の使途に充てる資金を贈与する場合には、一定の要件を満たすことで贈与税が非課税となる制度が設けられています。

特例の名称 主な対象使途 非課税限度額の目安
住宅取得等資金の贈与税の非課税 住宅の新築・取得・増改築のための資金 省エネ等住宅は最大1,000万円、それ以外の住宅は最大500万円

(※住宅取得等資金の贈与税の非課税は、2026年12月31日までに父母や祖父母などから贈与を受け、一定の要件を満たした場合に利用できます。非課税限度額は、省エネ等住宅で1,000万円、それ以外の住宅で500万円です。)

結婚・子育て資金の一括贈与の非課税 結婚式費用、住居費、不妊治療費、分べん費用、育児費など 受贈者1人につき最大1,000万円(結婚関係は最大300万円)

これらの特例を利用する際には、贈与税がかからない場合であっても税務署への申告書の提出や、金融機関での口座開設・領収書の提出といった所定の手続きが必要となることが一般的です。

また、結婚・子育て資金をはじめとする一括贈与の特例には適用期限が設けられており、対象となる受贈者の所得制限なども定められているため、利用を検討する時点の最新の制度内容や適用要件を事前に確認することが大切です。

まとめ

贈与税の基礎控除は、財産を受け取る人(受贈者)1人につき年間110万円まで適用される制度です。

適切に活用することで将来的な相続対策にもつながりますが、名義預金とみなされないための管理や、贈与契約書を作成して記録を残すといった注意点が存在します。

また、税制改正に伴う生前贈与加算期間の延長など、時期や法改正に応じた最新のルールを把握したうえで計画を立てることが大切です。

贈与そのものの税額計算や申告は税理士の取扱分野ですが、生前贈与をめぐる家族間のトラブルや、将来の遺産分割を見据えた財産の分け方などについては、弁護士に相談することで法的な観点から整理できます。

弁護士法人ネクスパート法律事務所でも、生前対策や相続に関するご相談を受け付けています。

コラム監修者

Shunsuke Teragaki

Shunsuke Teragaki

所属:代表(東京オフィス)

広島県広島市出身。修道高校、慶應義塾大学商学部、青山学院大学法科大学院を卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、個人・法人問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。ネクスパート法律事務所の代表弁護士として、依頼者に最適な見通しと戦略的な解決策を示すことを信条とし、丁寧かつ粘り強い対応で信頼を築いている。

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