サマリー
ペットフードの口腔ケア表示は、歯垢・歯石・口臭への効果をうたうと医薬品的な効能効果と判断されるのが原則です。
「軽減」「抑える」を訴求するには物理的作用の明記が必要で、特定成分の作用による効果は認められません。「健康維持」の範囲なら成分と結びつけられる場合があります。
この記事では、ペットフードの口腔ケアに関する表示のルールを整理します。
ペットフードの口腔ケア製品において、「歯垢を軽減」「口臭を抑える」といった表示はどこまで許容されるのでしょうか。
実は、口腔ケアに関する表示には2つの異なるルールがあり、それぞれ禁止される表現と認められる表現が異なります。この違いを理解していないと、意図せず薬機法違反となるリスクがあります。
本記事では、口腔ケア表示における規制の内容と、適法な表現方法を解説します。
以下の整理は、平成25年9月11日付け25消安第2679号「ペットフード等における医薬品的な表示について」(農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課長通知)の別紙と、その上位通知である平成20年4月11日付け19消安第14721号「動物用医薬品等の範囲に関する基準について」(農林水産省消費・安全局長通知)に基づきます。
原則:歯垢・歯石・口臭の表示は医薬品的表記に該当する
ここでは、口腔ケア表示が原則として規制対象となる理由を説明します。
薬機法上、医薬品は「疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物」と定義されています(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下「薬機法」といいます。)2条1項2号)。
歯垢・歯石は疾病の原因に当たり、口臭の防止は医薬品的な効能効果と判断されるため、これらに対する効果を標榜する表示は、原則として医薬品的な表記と判断されます。
ただし、一定の条件を満たす場合には表示が認められます。条件は訴求内容によって異なります。
「改善・軽減」を訴求する場合のルール
ここでは、歯垢・歯石・口臭の「改善・軽減」を訴求する場合に適用されるルールを説明します。
認められる条件
「ケアができる」「軽減」「抑える」「解消」等の表現を使う場合、物理的作用の説明が必須です。
認められる物理的作用は以下に限定されています。
- 噛むことが促される旨
- 口腔内で消化されやすいこと
- 口臭については噛むことにより物理的に歯垢または歯石が沈着しにくくなることによって口臭を軽減する旨を明示すること
通知の別紙2(6)は、次のとおり定めています。
ペットフード等における医薬品的な表示について(25消安第2679号)別紙2(6)
製品の物理的特性として、①口腔内で消化されやすい旨や、②噛むことが促される旨を明記した上で、歯垢若しくは歯石の沈着を抑える又は歯垢が付きにくくなるということを標ぼうすることは可能である。
なお、口臭の防止は医薬品的な効能効果と判断されるが、噛むことにより物理的に歯垢又は歯石が沈着しにくくなることにより口臭を軽減するという表現は、その旨を明示していれば、直ちに医薬品的な表現とは判断しない。
禁止される表現
特定成分の作用による改善効果の訴求は禁止されます。たとえ科学的事実であっても、動物用医薬品的な効能効果と判断されます。
| 禁止される表現 | 認められる表現 |
|---|---|
| ○○成分が歯垢の沈着を抑えます | 噛むことにより歯垢の沈着を抑えます |
| ○○成分の働きで口臭を軽減 | ○○の香りで息さわやか |
| ○○配合で歯石が形成しにくい | 固めの粒をよく噛むことで歯石が形成しにくい |
また、「歯周病の予防のために独特な形状をしています。」のように歯周病の予防を直接標榜する表現は、医薬品的な効能効果と判断されます(同通知別紙2(6))。
「噛む」という語があってもNGとなる場合
「噛む」という語を使っていても、効果の発生原因が物理的作用でなければNGです。
| 禁止される表現 | 認められる表現 |
|---|---|
| 噛んだりなめたりして口の中で広がることで歯垢・歯石・口臭などのお口のケアができます | 噛んだりなめたりすることで歯垢・歯石・口臭などのお口のケアができます |
前者は「口の中で広がることで」効果が生じるという構造になっており、成分の作用を示唆しています。後者のように「広がることで」を削除すれば、咀嚼や唾液分泌による物理的作用と判断できます。
「健康維持」の範囲で訴求する場合のルール
ここでは、「健康維持」の範囲で訴求する場合に適用されるルールを説明します。
認められる条件
「健康維持に貢献」「健康を保つ」「健康維持をサポート」等の表現であれば、物理的作用の説明は不要です。成分との結びつけもできます。
| 認められる表現 |
|---|
| ○○成分配合でお口の健康維持をサポート |
| ○○配合でお口の健康が気になる愛犬に |
| ○○配合で健康なお口を守ります |
禁止される表現
「健康維持」の範囲であっても、以下の表現は禁止されます。
「改善」「軽減」「予防」等の表現
| 禁止される表現 | 認められる表現 |
|---|---|
| ○○成分配合でお口の健康を改善 | ○○成分配合でお口の健康を維持 |
| ○○配合で歯のトラブルを予防 | ○○配合で健康な歯を守ります |
「抗菌」「殺菌」「滅菌」等の表現
「抗菌○○」「静菌作用」等の表現は、殺菌・滅菌に類する作用を暗示するため、薬機法上の問題が生じます。
| 禁止される表現 | 認められる表現 |
|---|---|
| 抗菌○○がお口の健康維持をサポート | ○○に含まれる特定の成分がお口の健康維持に貢献 |
同一広告内で歯垢・口臭に言及する場合
「成分×健康維持」の表現は単体では問題ありませんが、同一の広告内で歯垢・歯石・口臭への言及がある場合、成分と口腔ケア効果が結びついて解釈されるため、第2のルール違反となります。
| 禁止される表現 |
|---|
| ○○成分配合でお口の健康維持をサポート。歯垢の沈着を抑えます。 |
実務上の注意点
ここでは、実務上注意すべき点を説明します。
粉末タイプ(噛まない製品)の場合
「舐める」だけでは歯に対する物理的作用が不十分とみなされる可能性があります。
粉末タイプの場合、歯垢・歯石の「改善・軽減」訴求は難しく、「健康維持」の範囲での訴求が現実的です。
パッケージデザイン
歯を連想させるパッケージデザイン(歯のイラスト等)は、直ちにNGとは言えません。記載内容と総合的に判断されます。
ただし、歯のイラストと「改善・軽減」を示唆する表現が組み合わさると、医薬品的効果の暗示と判断されるリスクが高まります。
開発者の肩書き
「細菌学者が開発」等の表現は、製品が細菌に対して何らかの化学的作用を持つことを想起させ、医薬品的効果の暗示と捉えられる可能性があります。
上位通知である19消安第14721号は、名称、含有成分、製法、起源等の記載説明において医薬品的な効能効果を標榜または暗示するものも、医薬品的な効能効果を標榜しているものとみなすとしています。開発者の肩書きもこの「記載説明」に含まれ得ます。
なお、ペットフードの表示に関する公正競争規約施行規則8条(3)も、動物用医薬品の効能効果またはこれと同様な効能効果を標榜し、または暗示する表示を不当表示の類型として掲げています。
まとめ・ご相談はネクスパート法律事務所へ
口腔ケア表示のポイントは、次のとおりです。
「改善・軽減」を訴求する場合のポイント
- 物理的作用(噛むことが促されること、口腔内で消化されやすいこと)の説明が必須
- 特定成分の作用による効果の訴求は禁止
- 歯周病の予防を直接標榜することは禁止
「健康維持」の範囲で訴求する場合のポイント
- 物理的作用の説明は不要、成分との結びつけもできる
- 「改善」「軽減」「予防」等の表現は禁止
- 「抗菌」「殺菌」等の表現は禁止
- 同一広告内で歯垢・口臭に言及すると違反となる
ペットフードの表示規制についてご不明な点があれば、弁護士にご相談ください。
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※本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的な対応については弁護士にご相談ください。