サマリー
令和6年4月1日施行の獣医療法施行規則の改正で、獣医療広告の広告可能事項が12号から17号に拡大し、専門性の認定、寄生虫病の予防措置、マイクロチップの装着、獣医師の役職・略歴などを広告できるようになりました。同時に、これらを広告する際は問い合わせ先・診療内容・リスク・副作用・費用の併記が義務づけられました。改正前後の対応関係と実務対応を解説します。
令和5年10月13日付けで「獣医療法施行規則の一部を改正する省令」(令和5年農林水産省令第52号)が公布され、令和6年4月1日からこれが施行されることとなりました。
これに伴い、農林水産省の「獣医療に関する広告の制限及びその適正化のための監視指導に関する指針(獣医療広告ガイドライン)」も令和5年11月13日付け5消安第4053号農林水産省消費・安全局長通知により全部改正され、令和6年4月1日から施行されています。
これに基づく獣医療広告の改正点を以下概説します。
改正のポイント
獣医療広告については、獣医師または診療施設の業務に関して、特定の例外を除き技能、療法または経歴に関する事項を広告してはならない旨定められています(獣医療法17条1項)。
かかる例外として、従前は
- 獣医師または診療施設の専門科名(獣医療法17条1項1号)
- 獣医師の学位または称号(同条同項2号)
- 獣医師が免許を有していること、診療施設を開設していること(獣医療法施行規則(以下「規則」といいます。)24条1項1号)
- 医療機器を所有していること(同項2号)
- 去勢・避妊手術を行うこと(同項4号)
- フィラリアの予防措置を行うこと(同項6号)
- 健康診断を行うこと(同項7号)
等のみが技能、療法または経歴に関する事項として広告できる旨定めていました。
もっとも、今回の改正により、改正規則24条1項各号に以下の広告可能事項が追加されました。改正により1項は12号建てから17号建てになっています。
農林水産大臣の指定する者が行う獣医師の専門性に関する認定を受けていること(2号)
専門性の質を高め、良質な獣医療が提供されることを目的として農林水産大臣が指定した団体が運用する認定プロセスを経ていることを広告し、その専門性の資格を有する旨を知らしめることを可能とするものです。
承認・認証を受けた動物用の医薬品等を用いる検査、手術その他の治療を行うこと(3号)
承認された医薬品等を使用した一般的な診療行為よりも高度な技能または療法を想定したもので、具体的には椎間板ヘルニアによる片側椎弓切除術、白内障の眼科手術、細胞を用いた再生医療等が想定されます。
なお、条文上は「高度な」という限定はなく、薬機法に基づく承認もしくは認証を受けた医薬品、医療機器または再生医療等製品であって、専ら動物のために使用されることが目的とされているものを用いる検査、手術その他の治療と規定されています。
寄生虫病の予防措置を行うこと(8号)
従前はフィラリアの予防措置のみが広告可能事項とされていましたが、ノミ、ダニ等のその他寄生虫に関する予防措置を行っていることも広告可能となりました。
マイクロチップの装着を行うこと(10号)
動物の愛護及び管理に関する法律(以下「動愛法」といいます。)が改正され、ブリーダーやペットショップ等で販売される犬または猫については、マイクロチップの装着が義務化され(動愛法39条の2第1項)、それ以外の所有者についてもマイクロチップの装着が努力義務とされました(同条2項)。
これに伴い、マイクロチップの装着を行うことを広告できるようになりました。
もっとも、かかる広告を出す際は、動愛法39条の5第1項に規定する犬または猫の登録に関する説明を併記しなければなりません(改正規則24条2項3号)。
獣医師の役職および略歴に関すること(11号)
勤務した診療施設や、卒業大学、大学教授であること等が広告可能となりました。なお、略歴としてテレビに出演したことを表記することや、研修履歴については、広告ができないものと解されています。
愛玩動物看護師の勤務する診療施設であること(16号)
当該診療施設に愛玩動物看護師法(令和元年法律第50号)第2条第2項に規定する愛玩動物看護師が勤務していることについて広告可能としたものです。
ただし、診療の補助として特定の診療行為を行っている旨を広告することはできないものとされています。
したがって、「愛玩動物看護師が採血を実施しています。」等は表記できず、あくまで、「当院には愛玩動物看護師が在籍しています。」等の表記等にとどめる必要があります。
追加された規制
今回の改正に伴い、技能・療法に関する事項を広告する場合にあっては、
「問い合わせ先」「通常必要とされる診療内容」「診療に係る主なリスク、副作用及び費用」を併記しなければ広告してはならないこととされました(改正規則24条2項1号ハ)。
改正前の規則24条2項3号は、去勢・避妊手術等を広告する場合に「提供される獣医療に要する費用を併記してはならない」と費用の併記を禁止していました。改正によりこの禁止規定は削除され、費用は併記しなければならないものへと転換しています。改正前の運用を前提に費用を伏せた広告を続けている場合、現行規則には適合しません。
獣医療法施行規則24条2項1号ハ
ハ 問い合わせ先、通常必要とされる診療内容並びに診療に係る主なリスク、副作用及び費用を併記しなければ広告してはならないこと。
そこで例えば避妊手術を行う場合には、
- 「問い合わせ先」…●●動物病院 住所、電話番号、ホームページのURLの記載
- 「通常必要とされる診療内容」…血液検査→手術→入院→抜糸等の診療内容と、「治療期間7日~10日(抜糸含む。)」「治療回数2回(抜糸含む。)」等通常必要とされる治療期間および回数の記載
- 「診療に係る主なリスク、副作用」…麻酔リスク、感染症リスク、術後の肥満リスク等の記載
- 「費用」…総額●●~●●円等の記載
が必要となります。
なお、狂犬病予防注射に関する事項を広告する場合には、狂犬病予防法4条に規定する犬の登録および鑑札、ならびに同法5条に規定する予防注射および注射済票に関する説明を併記しなければなりません(規則24条2項2号)。
また、広告可能事項を広告する場合は、飼育者が獣医療サービスの選択を適切に行うことができるように、獣医師または診療施設の業務について正確かつ適切な情報を提供する努力義務が課されています(規則24条3項)。
まとめ・ご相談はネクスパート法律事務所へ
上記のとおり、獣医療法施行規則が改正されたことで、広告可能事項が拡大したことに加え、新たな規制も加わりました。
獣医療等に関する広告を出す際には、上記事項を遵守するよう注意する必要があります。
ネクスパート法律事務所では、ペット法務の専門チームがあり、獣医療広告に関するお悩みに対応することができます。
広告を出す際に不安に思われた事業者様は、ぜひ一度ネクスパート法律事務所にご相談ください。
獣医療広告ガイドライン(農林水産省)も併せてご確認ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的な対応については弁護士にご相談ください。