更新日:2024年7月11日 (木)

公開日:2024年7月11日 (木)

【弁護士解説】ペットホテルの契約書について

【弁護士解説】ペットホテルの契約書について 【弁護士解説】ペットホテルの契約書について

サマリー

有償でペットを預かるペットホテルには、寄託契約上の善管注意義務が課されます。「一切の責任を負いません」という全部免責条項は消費者契約法により無効となり、故意・重過失がある場合の一部免除条項も無効です。治療費の上限は時価額に限られないとした裁判例もあり、契約書の作り方が損害額を左右します。

ペットホテルで、預かっているペットが死亡や怪我をしてしまった場合、どのような法的責任が生じるか、免責条項を設けた契約書を締結している場合は、かかる法的責任を負うか、本記事では、ペットホテル業の法的責任について、法的な観点から解説します。

預かり中のペットが死傷してしまった場合

有償でペットを預かる、いわゆるペットホテル業については、事業者と契約者との間で寄託契約が成立します民法657条以下)。

民法659条は、無報酬の受寄者は自己の財産に対するのと同一の注意をもって寄託物を保管する義務を負うと定めています。その反対解釈により、有償の寄託契約の場合は、職業や社会的地位等に応じ、一般的に要求される注意義務をもってペットを保管すべきとする善管注意義務が課されます。返還すべきペットは特定物であるため、その保存についても契約その他の債権の発生原因および取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意が求められます(民法400条)。

ペットの保管業は、一般的に深夜は無人にし、リアルタイムでペットを管理することができる体制を整えていない事業者が多いかと思います。

これについて、善管注意義務の内容として、ペットホテル事業者には、深夜帯であっても、預かったペットが抜け出せないようなケージにする、ペットに危害が生じないような環境を整える義務はあるものといえるでしょう。

また、寄託契約を締結する段階で、預かるペットの特殊な状態等をヒアリングしている場合には、それに応じた管理体制の構築を行うべきと考えられます。

免責特約の効力

ペットを預かる際に、契約書に基づき寄託契約を締結されているペットホテル事業者も多いかと思います。

その際に、契約書内に「ペットの死亡や怪我等の事由により損害が生じた場合でも、当社は一切の責任を負いません。」という内容の免責条項を設けていた場合、免責されるのでしょうか?

これについては、消費者契約法8条1項が、事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項(1号)、および事業者の債務の履行に際してされた不法行為により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項(3号)を無効と定めています。

消費者契約法8条1項

一 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項

二 事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除し、又は当該事業者にその責任の限度を決定する権限を付与する条項

三 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項

四 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除し、又は当該事業者にその責任の限度を決定する権限を付与する条項

また、「ペットの死亡や怪我等の事由により損害が生じた場合でも、10万円分の損害を限度としてその責任を負います。」等の、責任を一部免除する条項についても、事業者に故意または重大な過失がある場合には無効となります(同項2号・4号)。

さらに、軽過失の場合の一部免除条項であっても、重大な過失を除く過失による行為にのみ適用されることを条項上明らかにしていなければ無効となります(同条3項)。責任を制限する条項を置く場合は、適用範囲を軽過失の場合に限る旨を明記する必要があります。

そのほか、法令の任意規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し、または消費者の義務を加重する条項であって、信義誠実の原則に反して消費者の利益を一方的に害するものも無効です(消費者契約法10条)。

このようにペット寄託契約書に関しては、消費者契約法等により無効と解される場合があるため、専門的な知見を持った弁護士によりこれを作成し、万が一に備えておく必要があります。

損害額

ペットを預かっている最中に、預かっていたペットが怪我等を負ってしまった場合、どの範囲で賠償する義務を負うでしょうか?

これについては、基本的に加害行為と相当因果関係が認められる範囲内の損害を負う必要があると解されています。

具体的には、ペットの治療費、入院費、通院費等がこれに含まれるものと考えられます。

また、ペットは法的に「物」とみなされるため、当該「物」の時価額以上の損害が発生した場合には、当該時価額を超えた損害を賠償する義務は生じないのではないかという問題があります。

これについては、治療費等の上限を犬の時価額とするのではなく、当面の治療や、その生命の確保、維持に必要不可欠なものについては、時価相当額を念頭に置いた上で、社会通念上相当と認められる限度でこれを認容するとした裁判例があります(名古屋高判平成20年9月30日(平成20年(ネ)第483号)交民41巻5号1186頁)。

名古屋高判平成20年9月30日 交民41巻5号1186頁

愛玩動物のうち家族の一員であるかのように遇されているものが不法行為によって負傷した場合の治療費等については,生命を持つ動物の性質上,必ずしも当該動物の時価相当額に限られるとするべきではなく,当面の治療や,その生命の確保,維持に必要不可欠なものについては,時価相当額を念頭に置いた上で,社会通念上,相当と認められる限度において,不法行為との間に因果関係のある損害に当たるものと解するのが相当である。

したがって、かかる考え方によれば、治療費等の上限は犬の時価額には限定されない可能性があり、高額に及ぶ可能性があります。

ただし、この裁判例が実際に認めた治療費等は13万6,500円であり、購入価格6万5,000円の約2倍の水準にとどまっています。「時価相当額を念頭に置いた上で」という限定が働くため、請求額がそのまま認められるわけではありません。

また、ペットが死亡等したことで、数十万円の慰謝料を認める裁判例もあり、上記治療費等と合わせて相当な賠償金を支払う必要が生じることがあります。

前掲の裁判例も、飼い主夫婦に各20万円の慰謝料を認めています。

まとめ・ご相談はネクスパート法律事務所へ

以上のように、ペットホテル事業者においては多額の損害賠償責任を負う可能性があるため、専門的な知識を持った弁護士により契約書を作成しておく必要があります。

ネクスパート法律事務所では、企業法務分野、ペット法務分野に関する専門的なチームがあり、これに対応することができます。

また、日頃分からないことがあれば、チャットワーク等でご相談いただき、弁護士からすぐに返答させていただくサービスも提供しております。

ぜひ一度、無料相談でお問い合わせください。

※本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的な対応については弁護士にご相談ください。

コラム監修者

HIROTO OMATA

HIROTO OMATA

所属:東京オフィス

弁護士登録後、企業法務・一般民事事件を扱う都内の法律事務所に入所。2023年にネクスパート法律事務所に入所、企業法務部に所属。

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