更新日:2024年7月11日 (木)

公開日:2024年7月11日 (木)

【弁護士解説】飼い犬が噛み付きトラブルに遭ってしまった…

【弁護士解説】飼い犬が噛み付きトラブルに遭ってしまった… 【弁護士解説】飼い犬が噛み付きトラブルに遭ってしまった…

サマリー

飼っているペットが他人の飼い犬に噛まれた場合、加害犬の飼い主は動物の占有者としての責任を負い、治療費や入院費などを請求できます。ペットは法律上「物」として扱われますが、裁判例は治療費の上限を時価額に限定せず、相当と認められる限度で認めています。慰謝料が認められた例もあります。

ペットが他人の飼い犬に噛み付かれて怪我を負ってしまった、そんな場合に法的にどのような請求ができるでしょうか?

ペットの治療費等は請求できる?

動物の飼い主は、当該動物の占有者として、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負います民法718条1項本文)。

民法718条(動物の占有者等の責任)

第七百十八条 動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない。

2 占有者に代わって動物を管理する者も、前項の責任を負う。

ペットが他人の飼い犬に噛み付かれ、怪我を負ってしまった場合には、原則として当該加害行為と相当因果関係が認められる範囲の損害につき、賠償請求することができます。

具体的には、治療費、入院費、通院費等がこれに含まれます。

ペットのトラブルでよく問題となることとして、ペットは法的に「物」とみなされるため、当該「物」の時価額以上の損害が発生した場合には、当該時価額を超えた損害を賠償請求できるのかという問題があります。

これについては、治療費等の上限をペットの時価額とするのではなく、当面の治療や、その生命の確保、維持に必要不可欠なものについては、時価相当額を念頭に置いた上で、社会通念上相当と認められる限度でこれを認容するとした裁判例があります(名古屋高判平成20年9月30日(平成20年(ネ)第483号)交民41巻5号1186頁)。

この裁判例は、追突事故で車内に同乗させていた飼い犬(ラブラドールレトリバー、購入価格6万5,000円)が腰椎圧迫骨折による後肢麻痺の傷害を負った事案で、次のとおり判示しました。

名古屋高判平成20年9月30日 交民41巻5号1186頁

愛玩動物のうち家族の一員であるかのように遇されているものが不法行為によって負傷した場合の治療費等については,生命を持つ動物の性質上,必ずしも当該動物の時価相当額に限られるとするべきではなく,当面の治療や,その生命の確保,維持に必要不可欠なものについては,時価相当額を念頭に置いた上で,社会通念上,相当と認められる限度において,不法行為との間に因果関係のある損害に当たるものと解するのが相当である。

このような裁判例の考え方からすれば、時価額とかけ離れた治療費の請求は難しいものの、時価額以上の請求もできると考えられます。

もっとも、この裁判例が認めた治療費等は13万6,500円にとどまり、購入価格の約2倍の水準です。「時価相当額を念頭に置いた上で」という限定が実務上強く働くため、高額な治療費の全額が認められるわけではない点に注意が必要です。

ペットの慰謝料は請求できる?

ペットが噛み付かれ、怪我を負ってしまった際に慰謝料の請求ができるのかという法的問題があります。

この点、確かに、法律上ペットは「物」として扱われていますが、「物」の破損により慰謝料の支払義務が生じる可能性もあります。

通常、慰謝料は精神的損害の補償という意味合いが強いものであり、「物」が毀損した場合には、財産的価値が補償されることで精神的損害も補償されたものとみなされます。

しかし、ペットは飼い主にとって家族の一員であり、時価額賠償だけでは精神的損害が完全に補償されたとはいえないことがあります。

実際に数十万円の慰謝料を認める裁判例もありますが、人が噛み付かれた場合と比較すると少額な慰謝料額にとどまることが多いです。

前掲の裁判例も、飼い主夫婦に各20万円の慰謝料を認めています。重い傷害を負ったことにより死亡した場合に近い精神的苦痛を飼い主が受けたときは、その精神的苦痛は社会通念上、合理的な一般人の被る精神的な損害であるとして、財産的損害の賠償のほかに慰謝料を請求できるとしました。

飼い主が相当な注意をしていた場合、責任を負わないこともある

民法718条1項ただし書において、動物の種類および性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、損害賠償責任を負わないとされています。

最高裁は、民法718条1項ただし書の注意義務について、通常払うべき程度の注意義務を意味し、異常な事態に対処しうべき程度の注意義務まで課したものではないと解すべきであるとしています(最判昭和37年2月1日民集16巻2号143頁)。もっとも、

これにより飼い主の損害賠償責任を免責した裁判例は少なく、無過失責任に近いものと考えられます。

前掲の最高裁判決は、雇人が牽いていたグレートデン2頭が通学中の児童に跳びかかり傷害を負わせた事案で、雇人が犬の操作制御方法を十分会得していなかったなどの事情から、飼い主に保管上の過失があるとしました。散歩を他人に任せる場合も、その者が犬を制御できるかを確認しておく必要があります。

まとめ・ご相談はネクスパート法律事務所へ

上記のとおりペットは法律上「物」とみなされており、これまでの裁判例上、慰謝料額は人の事故と比較するとかなり少額にとどまります。

ペットも家族であり、ペットが死傷してしまった場合の飼い主の精神的苦悩は計り知れないものかと思います。

そのような状況を変えるためにも、一般社団法人アニマルパーソンズは、ペットを「物」と扱うという法律や裁判例を変えるために活動をしております(一般社団法人アニマルパーソンズ)。

ぜひ、ネクスパート法律事務所、一般社団法人アニマルパーソンズにご賛同、ご相談ください。

※本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的な対応については弁護士にご相談ください。

コラム監修者

HIROTO OMATA

HIROTO OMATA

所属:東京オフィス

弁護士登録後、企業法務・一般民事事件を扱う都内の法律事務所に入所。2023年にネクスパート法律事務所に入所、企業法務部に所属。

弁護士詳細を見る

関連記事を見る

知っておこうペットフードと薬機法|NGとなる広告表現と適切な表示方法

2026.08.28

ペットトラブル

動物病院

ペットショップ

ペットフード事業者

企業法務

クレーム対応

知っておこうペットフードと薬機法|NGとなる広告表現と適切な表示方法

獣医療法施行規則の改正について

2026.08.28

ペットトラブル

動物病院

ペットショップ

ペットフード事業者

企業法務

クレーム対応

獣医療法施行規則の改正について

ペットフードの口腔ケア表示、何が禁止され、何が認められるか?|弁護士が解説

2026.08.28

ペットトラブル

ペットショップ

ペットフード事業者

企業法務

ペットフードの口腔ケア表示、何が禁止され、何が認められるか?|弁護士が解説

ペットの手術に関する同意書について

2026.08.28

ペットトラブル

トリミングサロン

動物病院

ペットショップ

ペットの手術に関する同意書について

【弁護士解説】動物病院におけるオンライン診療の初診対応は可能か?

2025.04.03

動物病院

【弁護士解説】動物病院におけるオンライン診療の初診対応は可能か?

PREV
NEXT